地球連邦軍本部、ジャブロー
南米、アマゾン川流域に点在する巨大な鍾乳洞を連結して造られた連邦軍最大の軍事拠点である。
その全長は280kmにも及び、連邦軍全体の作戦指導を行う参謀本部、モビルスーツはもちろん艦艇さえ建造可能な巨大軍事工廠、数個艦隊規模の艦艇が停泊できる地下ドック、百万人規模の防衛隊が駐留する為の基地施設と、それらを支える膨大な量の軍需物資を保管できる巨大倉庫群など、連邦軍本部に必要なありとあらゆる機能を備えていた。
また、広大なジャングルの下に広がる強固な地盤の下に存在するため、その基地施設はミサイルや爆弾といった通常兵器はもちろん、核兵器の直撃にさえ耐え得ると言われていた。
更に地上には無数のトーチカや対空砲がハリネズミの針のように配備されており、それらが植物等によって巧妙にカモフラージュされる事により、正に難攻不落の巨大要塞となっていた。
そんなジャブローを攻略するため、ジオンは地上と宇宙からの同時侵攻を開始した。
まず最初に動いたのは、ソロモンに集結していたドズル率いる宇宙攻撃軍である。
宇宙空母「ドロス」を旗艦とする100隻近い数のジオン艦隊は、ジャブロー上空に展開していた連邦のパトロール艦隊を一蹴すると、ミサイルに搭載して打ち上げられていた多数の宇宙機雷の排除を開始した。
宇宙攻撃軍のモビルスーツ隊によってジャブロー上空の掃除が終わると、次にオデッサ上空に展開してたアクシズが姿を見せた。
オデッサから打ち上げられたグワダンとザンジバル、多数のHLVをその内側に納めた宇宙要塞の出現に警戒する連邦軍であったが、次の攻撃は全く予想だにしなかったジャブローの内部から始まった。
密かにジャブロー内部への潜入に成功していたランバ・ラル隊によって、ジャブロー各所に時限爆弾が仕掛けられ、それがこのタイミングで一斉に起爆したのである。
爆発の規模はそれほど大きなものではなかったものの、主に発電施設や指揮通信施設を目標として行われたため、臨戦態勢にあった連邦軍に大きな混乱を与える事に成功していた。
その隙をつくようにジオン側はアクシズに繋留されていた無数のアステロイドをジャブロー上空へと展開させる。
「我招く無音の衝裂に慈悲は無く、汝に普く厄を逃れる術も無し。連邦よ、滅べ。メテオスウォーム!」
突如として中二病に目覚めたかのようなギレンの台詞とともに備え付けられたロケットモーターに点火したアステロイド達は、事前に設定された地点に向け落下を開始した。
「この一撃は、愚劣なる地球市民に対する、裁きの鉄槌である!神の放ったメギドの火に、必ずや彼らは屈するであろう!!」
グワダンのブリッジでそんな中二感に満ちた台詞を連発して周囲に怪訝な顔をされるギレンを他所に、地上では対宙ミサイルやレールガンを用いた必死の迎撃が始まっていた。
虎の子である格納式大型メガ粒子砲まで投入して多くのアステロイドを迎撃した連邦軍であったが、ジオンによって放たれたアステロイドの数はそれを遥かに上回るものであった。
落着するアステロイドの威力によって、地上に設置されていたトーチカをはじめとする連邦軍施設が次々と破壊されていく。
上がってくる損害報告に顔色を悪くするジャブロー防衛隊司令部であったが、これはまだジャブローを襲う悲劇の始まりでしかなかった。
次にジャブローを襲ったのは、アステロイドに紛れて宇宙から降下してきた量産型アプサラスと空の魔王率いるジオンの青い死神達であった。
量産型アプサラスは、ジオンの鬼才であるギニアス・サハリンがアプサラス計画の集大成として開発した地上攻撃型モビルアーマーである。
生産性を高めるためアプサラスIIをベースに開発されたこの機体は、ドムのジェネレーターやザクのパーツを多数流用する事で極短時間での量産を可能にしていた。
ジャブロー上空に降下した24機もの量産型アプサラスは、搭載された高出力メガ粒子砲によって生き残ったトーチカや対空砲を次々と吹き飛ばして、ジャブローの対空防衛網を崩壊させつつあった。
無論、連邦側もただ傍観していた訳ではなかった。
生き残った発進口から数多くのセイバーフィッシュやガンタンクを出撃させ、空を飛ぶジオンの新兵器の迎撃を試みたのである。
だが、それを阻んだのは、開戦以降地上の空を支配したジオンの青い死神達であった。
「いやぁ…この新型機を貰った事も嬉しかったが、それ以上にこうやって宇宙から急降下できる事はもっと嬉しいな。なぁ、ガーデルマン?」
「た、大佐!もう地表です!そろそろ減速してください!」
「なあに、慌てるな。ダイブブレーキをかければまだまだ大丈夫だ!」
「この機体にそんなのはついてませんよ!」
YMS-18「ケンプファー」一年戦争末期に投入されたジオン公国軍の試作機である。
連邦軍のMS大量投入に対抗するために開発されたこの機体は、当初は高い機動性による一撃離脱をコンセプトとした強襲機として開発される予定であったが、異常な戦果をあげる某軍人の助言により頑丈かつ大量の弾薬を搭載可能な機体というほぼ逆のコンセプトで開発される事になった。
機体強度をあげる為にザクではなく試作機のひとつであったイフリートをベースに開発され、フレームやジェネレーター、スラスター等を強化されたこの機体は、基礎フレームや装甲材にガンダリウムβを採用し、更に三重の耐ビーム・コーティングを施す事で極めて高い耐久性能の獲得に成功していた。
また、背中と足にスラスター搭載型のウエポンバインダーを装備する事で大量の武器の搭載にも成功しており、更にこの試作機ではコックピットを複座にする事で、ウエポンバインダーに搭載されたサブアームを用いた複数目標への同時攻撃や、モビルスーツの足となるドダイの遠隔操作も可能としていた。
そんなアメイジングな機体とともに現れた空の魔王率いる72機のグフは、迎撃のために展開したセイバーフィッシュをガトリング砲による掃射で蝿でも落とすかのように簡単に撃ち落とすと、地上に展開したガンタンクによる攻撃を空を飛び回る事で回避し、ジャイアント・バズや対艦ライフルを用いた反撃によって次々と撃破していった。
因みに、ジャブロー攻略作戦でアプサラスとグフとケンプファーの各機種が上げた総戦果は、概ね1:1:2の比率だったと言われている。あれ?
一連の襲撃によって地上の防衛施設がほぼ壊滅したジャブローに、北米からガウが、軌道上からザンジバルとHLVが次々と飛来してモビルスーツ隊の降下を開始する。
僅かに生き残っていた防空施設が必死の対空砲火を浴びせかけるも、空を埋め尽くすかのようなジオンの降下部隊の前には焼け石に水の状態であった。
モビルスーツ隊の降下にあわせ、上空の量産型アプサラス達がジャブローの発進口に向け大型メガ粒子砲を発射する。
核兵器の直撃にさえ耐えると言われたジャブローであったが、山さえ貫く威力を持った大型メガ粒子砲を一点に集中されて耐えられるハズもなく、まもなく地下へと通じる巨大な通路が姿を現した。
これにより戦場は地上から地下へと場所を移す事になる。
やあ…諸君。ギレン・ザビである。
アステロイドによる地上爆撃から始まった一連の戦いは、ルナツーから出撃した連邦艦隊による迎撃がなかったため、想定以上に順調に進んでいた。
ルナツーから発進した100隻を超える数の連邦艦隊は、一度散開して行方をくらませた後に地球軌道上に集結している姿が確認されたのだが、我が軍によるジャブローへの降下作戦が始まってもなお大きな動きを見せなかったため、その対応に苦慮していた。
連中は何故動かない?まさかティターンズがやったようにジャブローに引き付けてから核兵器でジャブローごと吹き飛ばすつもりなのか?
だが、ランバ・ラルからの報告によってかなりの規模の防衛隊の存在が確認されているのでそんな手段はとれないと思うのだが…。
追い詰められた連邦がどんな手段をとろうとしているのか予想できず、内通者を介しておこなった降伏の事前交渉でもあまりジャブローに降りてこない事を勧められたため、不測の事態に備えて地上に降りる予定だったグワダンや一部の親衛隊の降下を中止して、現在宇宙で作戦の総指揮をとっていた。
「ギレン総帥、地上に降りた部隊からジャブロー内部への侵入経路の確保に成功したとの報告が入りました。」
「わかった。連邦軍の動きにおかしな部分がある。侵入部隊には慎重に進むように伝えろ。」
「は!了解しました。」
さて、これだけ派手に地上を攻撃すれば我が軍に降伏する理由には十分だろう。
少し早いが、極秘回線で降伏に向けた協議をはじめるとしよう。
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side マ・クベ
「ジオンによるジャブローへの降下作戦が始まったと言うのか?」
「はい。ソロモンに集結していた宇宙攻撃軍の主力がジャブローに向けて出撃した事が確認されています。地上でも南米に向けて移動する大規模な軍事行動が確認されており、ほぼ間違いないかと。」
「…よし。グラナダの同胞達に蜂起の合図を送れ。我が軍はこれよりジオン本国の奪取に挑む!」
「このタイミングでありますか?!」
「連邦との戦いに決着がついてからでは手遅れだからな。
我々にジオン本国を制圧するチャンスがあるとすれば、宇宙攻撃軍が連邦艦隊とジャブロー上空で潰しあって消耗する今しかないのだ。」
「…確かに閣下のおっしゃるとおりです。」
「マレットのグラナダ特戦隊を呼べ。サイド3に潜入させてキシリア様を救出させるのだ。残りの者は私と伴にグラナダ奪還に向かう。
時間との勝負になるぞ!急げ!」
アイナ様に似合いそうな機体は?
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アプサラス
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ビグ・ラング
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ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
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アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)