新・ギレンの野望(笑)   作:議連・座備

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7話 UC0069年8月 マハラジャ・カーン

サイド3 ギレン邸

 

やあ……諸君。ギレン・ザビである。

 

今月は色々あったので、ひとつずつ振り返ってみようと思う。

 

ダイクンが心臓発作で倒れ、対立していたジンバ・ラルがサイド3から逃亡した後は、議会の大多数を掌握したザビ家がジオン共和国の実質的な支配者となっていた。

 

だが、父デギンはそれだけでは強大な連邦に対抗できないと判断し、UC0069年8月15日に共和制を撤廃、公王制(君主制)への移行を宣言する。

 

この宣言によりジオン公国初代公王に就任したデギンであるが、これに反発した一部のダイクン派は爆弾テロによるザビ家暗殺を計画する。

 

幸いこの暗殺計画はキシリア配下の治安部隊が事前に察知して未然に防いだものの、ただでさえ数が少なくなっていたダイクン派はこれにより更なる窮地に追い込まれる事になったのである。

 

このままだとキシリアがダイクン派を弾圧して後々禍根を残しそうだったため、穏健派のマハラジャに相談して今後の対策を決める事にした。(建前)

 

「マハラジャ・カーン入ります。」

 

「うむ、よくきたなマハラジャ。アイナ、少し席を外してくれ。」

 

飲み物を出し、静かに一礼して退室するアイナを見てマハラジャが口を開く。

 

「よく躾られている娘ですな。」

 

「ああ、よくやってくれている。しかしダイクン派の中にも同様に優れた者は数多くいるだろう。今日はそれらダイクン派の者への対応について相談したくてな。」

 

「何と……。」

 

「フフフ。私がダイクン派に配慮した話をすると、何故か皆同じような反応をするな。」

 

「これは失礼致しました。あまりに予想外のお言葉でしたので思わず……。」

 

「構わんよ。それよりもダイクン派の今後についてだ。

同じジオン国民同士の争いは避けたいところだが、このままではダイクン派の者とザビ家の支持者との衝突は避けられまい。

なので私としては貴様にダイクン派の人間をまとめてもらい、木星圏の開発に行って貰いたいと思っている。」

 

まあ本音はアステロイドベルトに派遣した艦隊からアクシズと思われる衛星の発見報告があったものの、開発に行ってくれそうな人材が見つからなかったからだが。 

 

「木星圏開発でありますか……?」

 

「そうだ。これを見ろ。」

 

そう言いながら部屋のスクリーンにデラーズから送られてきたアクシズの映像を映し出す。

 

「これは……。」

 

「先日アステロイドベルトに派遣した艦隊から送られてきた映像だ。派遣艦隊の旗艦から名をとってアクシズと名付けた。膨大な量の鉱物資源の存在が確認されている資源衛星で、今後のアステロイドベルト開発の拠点となるだろう。

ここを開発する人員にダイクン派の人間を使う事で、ザビ家の支持者と不要な衝突を避けられると思ってな。」

 

「確かにジオン本国とアステロイドベルト程の距離があれば衝突する事はないでしょうが……。」

 

理解を示しつつも、何か言いたげな顔をするマハラジャを見て、おそらくマハラジャが懸念しているであろう件について此方から切りだしてみた。

 

「貴様の懸念については予想できる。地球連邦が我等スペースノイドを宇宙に捨てたように、今度は我等ザビ家がダイクン派の者をアステロイドベルトに捨てようとしている。そう考えたのではないか?」

 

「……。はい。少なくともそう受けとる者が現れるのは間違いないかと思われます。」

 

「だろうな。故にアクシズ開発には明確な期限をもうける。早期にアクシズへ大型の核パルスエンジンを設置し、10年以内にアクシズごと地球圏へ帰還させる事を約束しよう。」

 

「成る程……。確かにそれだけの期間があればダイクン派とザビ家派の確執も収まっているでしょうな。」

 

まあ、本音は1年戦争開始までに地球圏にアクシズを移動させた方がジオンに有利になるからだが。 

 

「また、それとは別に私がお前を裏切れない個人的な保証もつけよう。」

 

「個人的な保証……?でありますか?」

 

「そうだ。」

 

そしてそれがマハラジャをアクシズ開発の責任者にしようとしている本当の理由だ。フハハハ……。マハラジャ、恨むなら貴様の次女と仲良くなりたい俺を恨むが良い。

 

「確か貴様には三人の娘がいたな。その中の……そうだな、次女のハマーンを私の側仕えとしておく。もし私が貴様らを裏切ったと思えば、その時はハマーンに私を殺すよう命じれば良い。その事を私が認めたと、公文書を作成して渡しておこう。」

 

「……。それは……。」

 

「貴様らが遥か木星圏までアステロイドベルト開発に行くリスクを抱えるのならば、私も木星圏開発の責任者としてその程度の覚悟は示そう。」

 

まあ本当のところは、ダイクン派を切り捨てる気などないので、どんな無茶な約束でも平気でできるだけなのだが。

 

「……。そこまでの覚悟を示して頂けるのであれば、最早私からは申すことはありません。家族と相談して、改めてお返事させて頂こうと思います。

 

「うむ。よく話し合って決めるが良い。」

 

「はっ。」

 

一礼して退席していくマハラジャを見送りながら、ダイクン派のもうひとつの問題について頭を悩ますのであった…。

 

一一一一一一一一一一一一

 

 

side マハラジャ・カーン

 

 

私はギレン閣下について思い違いをしていたのかも知れぬ。

 

デギン公王の側近として長らくザビ家の方々を見てきたつもりだったが、私はギレン閣下の事を沈着冷静ではあるものの非情かつ高慢な性格で、目的を果たす為なら手段を選ばない理想主義者だと思っていた。

 

それ故に今回のダイクン派への配慮は予想外のものだった。

以前ラル家の縁者から、ダイクン一家やジンバ・ラルがサイド3を脱出する際にギレン閣下の支援があったという話を聞いた時はそんな訳あるまいと一笑に付したものだったが、ひょっとしたら真実だったのやもしれぬ……。

 

しかし長女のマレーネならともかく、次女のハマーンをお召しになるとは……。

 

以前14の少女を側仕えにされた時、デギン公がギレンがロリコンになってしまったと嘆いておられたがどうやら間違いではなかったようだ……。

 

ハマーンには悪いが国の為、犠牲になって貰うしかないのだろうか……。

アイナ様に似合いそうな機体は?

  • アプサラス
  • ビグ・ラング
  • ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
  • アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)

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