「鷲は舞い降りた!これはスペースノイドにとって大きな飛翔なのである。
ジオン独立戦争開戦以降…我々は3度に渡り正義の剣を地球へと打ち込んだ。にもかかわらず、地球連邦の愚か者どもは未だに地上の半分を支配し惰眠を貪っている!
何故だ?!
それはこの戦いを指揮するジオン首脳部が無能であるからに他ならない!
故にこの私、キシリア・ザビは決断したのだ!
デギン公王の権威を傘に、愚かな戦いを続けるザビ家の男どもに、我が腕による正義の鉄槌を下すと!
真のスペースノイドの自由のため、我々は故郷であるムンゾの地へと舞い降りジオン国民の自由を約するものであると!
我が正統ジオン軍は、既にグラナダを制圧し、ジオン本国を解放するべく進軍しつつあり!」
「ギレン閣下に弓引く裏切り者めが。貴様の扇動に乗るムンゾの民など居るはずがないというのに、愚かな事をするものだ。ノリス、予想される敵軍の規模はどのくらいだ?」
「は、ギニアス様。グラナダ基地司令のルーゲンス大佐が送ってきた情報によれば、確認された艦はグワジン級が一隻、ムサイ級が十隻、それに補給艦が大小取り交ぜて十数隻との事です。」
「キシリア麾下の艦隊が勢揃いといったところだな。グラナダとの距離を考えれば、あと十数時間でこのサイド3が戦場になりうるという事か。
ノリス、地球軌道に展開している主力艦隊とはまだ連絡がとれないのか?」
「中継ステーションの大半が破壊された影響で未だ通信は途絶しております。
ですが、英明なギレン様の事です。既に此方の状況を推測され、手を打たれている事かと。」
「ウム。それについては私も同意見だ。だが、地球軌道からこのサイド3まではかなりの距離がある。味方が到着するまでの間、我々が持ちこたえられるかが問題だ。予想される敵モビルスーツの数は?」
「ムサイ級の搭載数は最大で6、補給艦は艦種によって異なりますが、一隻に8機程度と思われます。グワジンの搭載機も含めれば200前後かと。」
「200機か、かなりの数だな。地球軌道に展開している宇宙攻撃軍の主力がいればなんとでもなるのだが……。」
「はい。それに対して此方の戦力は、本国艦隊の生き残りのムサイが5隻に、首都防衛大隊を中心としたモビルスーツが50機ほど。
本国艦隊を襲撃した未知の機体の存在も考えますと、この戦力差は厳しいと言わざるをえません。」
「確かに戦力差は大きいな。だが、我が軍の戦力はもう少し増やせるぞ、ノリス。技術本部傘下の実験部隊と、本国で生産していた新型機の実戦配備を急がせている。少なくとも30機は増やせるだろう。
それに、総帥専用機の技術実証機として開発したノイエ・アプサラスを出す。」
「あの機体を…。しかし、あの機体は試作機であるが故にパイロットを選びます。今の本国にあれを操縦できるような者はいないと思われますが……まさか?!」
「お前の想像のとおりだ。実証実験でテストパイロットを務めたアイナが操縦する。
あの機体で様々なテストをおこなったアイナならば機体の性能を十分に引き出せるだろう。」
「アイナ様自ら前線に立たれるなど、危険すぎます!」
「そんな事はわかっている!だが、これはアイナ自ら言い出した事なのだ。
名目とはいえ、ザビ家の名を頂いた自分が前線に立てば、残された兵達の士気もあがるだろう、と。」
「それは…確かにそうですが……。」
「私も反対したのだが、いくら言っても聞かない以上、私にしてやれる事は少しでも多く戦力を整えてやる事くらいしかない。
ノリス、すまないがなんとかアイナを守ってやってくれ。こんな事は、親代わりのお前にしか頼めん。」
「自分が!?ギニアス様達の親?!……光栄であります。
人の生は何を成したかで決まります。ギニアス様はサハリン家の復興という夢を見事に成し遂げられました。ご立派です。
アイナ様の望みがサイド3を守る事なら、それを助けるのが軍人としての私の役目。
見事、守り抜いてご覧にいれる。」
みなさん、はじめまして。アイナ・ザビと申します。
今日は出撃に向けた最終調整が進むアプサラスのコックピットからご挨拶させて頂いています。
アイナ・ザビ……ウフフ。
この非常時に不謹慎なのはわかっているのですが、長年お慕いしてきた方の「妻」となれた事を考えると、思わず頬が緩んでしまいます。
「ジオン公国総帥」という立場と眉なしのお顔のせいで冷徹な印象を持たれがちなギレン様ですが、公務においてはともかく、私事においては優柔不断で優しい一人の男性にすぎません。
なので今回の件がなければメイちゃんやララァちゃん達の事を気遣ってなかなか結婚には至らなかったでしょう。
一般的に見ればとても褒められたものではありませんが、お慕いする方の負担になりたくないと思い、結婚という言葉を口にしなかった私にはギレン様を批難する事はできませんでした。
……まあ、一番の理由は一緒に暮らすうちに私もメイちゃん達の事を大好きになってしまったからなのですが…。
「ちょっと!アイナお姉ちゃん!ギレンさんと結婚して浮かれるのはわかるけど、今は最終調整に集中して!」
考えごとをしていた事に気づかれ、メイちゃんに怒られてしまいました。
本当はメイちゃんもデギン公と一緒に避難して欲しかったのですが、
「私はもうザビ家の人間じゃないから大丈夫!」と主張して譲らないメイちゃんを説得することができず、今はこうしてアプサラスの最終調整をしてくれています。
全く、頑固なところは誰に似たのでしよう?
「いい?アイナお姉ちゃん。このノイエ・アプサラスは二重のIフィールドとガンダニュウム製の装甲でほとんどの攻撃を受け付けないけど、格闘戦には向いてないから気をつけて!
それにエネルギー消費も激しいから予定の時間になったら必ず後退してね。
補給の間はあそこにある新型機の子達が時間を稼ぐから、見慣れない機体だけど間違って攻撃したりしないでね。」
メイちゃんに言われ、初めて見るデザインの黒い機体の姿をしっかりと覚えます。
ガンダニュウムの装甲と低出力ながらIフィールドを備えた機体らしく、装備したビー厶キャノンの威力もあって射撃戦では無類の強さを持つそうです。
「アイナ様!キシリアの艦隊がサイド3宙域に入りました!」
その直後、ノリスから敵艦隊接近の報告が入り、ただでさえ慌ただしかった格納庫が更に慌ただしくなります。
「これで…よし!調整終わり!
あと、これは未確認情報なんだけど、月の辺りで多数の爆発が観測されたの!ひょっとしたらギレンさんがもう月まで来ているかもしれないからアイナお姉ちゃんも頑張ってね!」
最後にそんな言葉を残して、調整を完了させたメイちゃんが機体から離れていきました。
ギレン様が月まで来ているかもしれない!
あまり期待しすぎてはいけないのはわかっているのですが、希望に胸が高鳴るのを抑えられません!
あの人が帰るところは私が守ってみせる…!
「アイナ・ザビ、ノイエ・アプサラスでます!」
一一一一一一一一一一一一
side3 周辺宙域
戦いは、月を背に展開したキシリア・ザビ麾下の艦隊によるメガ粒子砲の一斉射撃から始まった。
何十という数のビーム光が宇宙の闇を切り裂き、コロニーの前面に展開する本国艦隊へと降り注ぐ。
防衛側が事前に展開していたビーム攪乱幕によって艦隊やコロニーへの損害はなかったものの、コロニーへの被害を辞さないその攻撃は、追い詰められたキシリアの狂気を感じさせるものであった。
そんなキシリアの狂気にあてられたのかのように、牙の生えた巨大な顔をもつモビルアーマーが戦場へと姿を現す。
小型宇宙艇にカマキリのような1対の腕を付けたような機体は、ムサイから射出された紫に塗装されたアクト・ザクを背中に乗せると、サイド3めがけ突撃を開始した。
「キシリア様の為に!キシリア様の為に!キシリア様の為に!」
狂ったようにキシリアの名前を称えながら進む部隊の前に立ち塞がったのは、インド神話における水の精の名前を冠する巨大モビルアーマーだった。
ギニアス・サハリンによって開発された、Iフィールドや偏向メガ粒子砲等の新兵器をテストをするために開発された本機は、試作機でありながら、機体に装備した無数のビーム砲とIフィールドによる鉄壁の防御、ガンダニュウムβの装甲によって移動要塞的な運用を可能とする怪物機であった。
「下がりなさい!死にたいのですか!」
そんな台詞とともに、ノイエ・アプサラスが機体中央に備えた巨大な砲口から、戦艦の主砲さえ凌駕する膨大なメガ粒子の塊が虚空へと放たれる。
放たれた巨大な閃光は、射線上に展開していたモビルスーツ隊の第一波を薙ぎ払うと、そのまま後方に展開していたムサイをも薙ぎ払った。
運悪く船体の真ん中を薙ぎ払われたムサイは中央から真っ二つに割れると、船体の後部が隣を航行していたムサイへと突っ込み、その艦を巻き添えにして爆発四散した。
開戦直後に出鼻をくじかれる形になったキシリア艦隊だったが、その程度の損害で引き下がるような狂信者達ではなかった。
即座に後続の艦からモビルスーツ隊の第ニ波が射出され、光の洗礼を浴びせかけたモビルアーマーへと襲いかかる。
横隊を組んだザクレロがアプサラスへと狙いを定め、口のような部位に仕込まれた拡散ビーム砲を一斉に発射する。
十機のザクレロから放たれた亜光速の散弾は、回避する事など不可能な密度であったが、アプサラスの2基の大型ジェネレーターが生み出すIフィールドの結界の前には何の意味も持たなかった。
「これが私の戦争です! 」
逆に次の瞬間、お返しとばかりにアプサラスの各部から無数の偏向メガ粒子砲が放たれる。
虚空を引き裂いて飛来した高温のメガ粒子の雨は、人の顔を持つモビルアーマーの群れへと降り注ぎ、その姿を次々と火球にかえていった。
あっけない終わりを迎えたザクレロ達であったが、彼等はアクト・ザクを戦場に送り届けるという最後の役割を果たしていた。
ザクレロを囮にする事でメガ粒子砲による洗礼を潜り抜けたザクの改良型達は、遠距離での撃ち合いが不利と判断するや、腰に備えたヒートホークを抜き放ちアプサラスへと襲いかかった。だが、
「愚か者どもめ、アイナ様をやらせはせんぞ!」
即座にアプサラスの陰に控えていた青き騎士によって撃ち滅ぼされる事になった。
「宇宙用高機動型グフ」
一週間戦争の際にグフのパイロットをしていた某エースの要望により、グフが宇宙でも戦える機体である事を証明するため開発された機体である。
「グフで100機以上の連邦モビルスーツを撃破した場合、その功績を称えて宇宙対応型のグフを開発しよう。励み給え。」
初めて連邦モビルスーツを撃破した功績によるジオン十字勲章の授与式の際、総帥が冗談のつもりで言った条件を某エースが達成する事によって開発が始まった本機は、推進系をロケットエンジンに変更し、コックピットを宇宙仕様に改修する事で見事に空間戦闘に対応していた。
それどころか、最新型の試作ジェネレーターを搭載する事で、グフがベースであるにもかかわらず、ビーム兵器の運用さえ可能となっていたのである。
「指揮官機1、高機動ザク4、モビルアーマーもどきが3……指揮官機はバズーカ装備か!」
鋼鉄の騎士が、左手に持った巨大なビームバズーカを指揮官機を中心に解き放つ。
アプサラスの技術を応用して造られたその巨大なビーム兵器は、基礎となった兵器と同様に複数目標への同時射撃を可能としており、砲口から放たれた複数のビーム光はたった一度の射撃で2機のアクト・ザクと3機のザクレロを火球へと変えた。
不意打ちによる一撃で指揮官と半数の仲間を落とされたアクト・ザク達は、混乱しながらも目標をノリス機に変え突撃を再開した。
「愚かな…そんな動きでは訓練用の的にしかならんぞ!」
そんな侮蔑の言葉とともにフィンガーバルカンによる弾幕が、ヒートホークを手に襲いかかるアクト・ザクを迎え撃つ。
グフの左手から放たれた無数の弾丸は、先頭にいたアクト・ザクを穴だらけにすると同時に、それに続くモビルスーツの足を一瞬止める。
「これが避けられるか!」
その隙をエースであるノリスが見逃すはずもなく、グフの右の手首から飛び出したヒートロッドがアクト・ザクに絡みつき、そこを流れる高圧電流が機体の精密機器を破壊し、動きを止めた。
最後に残ったアクト・ザクは、全ての僚機を失った事に怯えながらも、手に握ったヒート・ホークをグフへと必死に振り下ろす。
しかし、敵に怯え、竦んだ状態でモビルスーツの性能を活かせるはずもなく、たった一度のバーニア噴射で攻撃を回避したグフは、すれ違いざまにヒートソードを抜き放ち、背後からの一撃によって機体を両断したのだった。
大変に遅くなり申し訳ありません…。
ネコアレルギー(レベル5)が発覚したり、野良のルシファーを可愛がってくれる里親さんを探したり、ルシファーを里子に出したショックで鬱になりかけたり、猫との相性によってはアレルギーでも飼えるケースがある事を知って色々やっているうちに遅くなってしまいました…。
まあ、戦闘シーンを書くのが苦手なのが一番大きいのですが…
実は気分転換に書いていた最終戦後のエピローグはほぼ完成していたりします。というか、どんどん量が増えてます。
次の話は40%位の完成度で、また少しお時間をいただくと思いますが、必ず最後まで書きますのでお待ち頂けると嬉しいです。
感想を頂けるとモチベになるので多少はやくなるかも?
挿絵について
ビルゴっぽい機体
私のオリジナルです。個人的に一番好きな量産機なので無理に出しました。宇宙世紀外から出した点は申し訳ありません。多分ちょい役でしかないので、多めに見て頂けると嬉しいです。
ノイエ・アプサラス
Twitter「まこりん 異世界模型亭」様の作品を許可を頂いて使わせて頂きました。正に移動要塞といった迫力あるデザインも凄いのですが、なんとこれメガ粒子砲の砲門が稼働したり発光したりします。
宇宙用高機動型グフ
Twitter「ル・クルーゼ@ソレスタルビーイング祭り」様の作品を許可を頂いて使わせて頂きました。本来はランバ・ラル用に開発された宇宙戦用のグフになります。
作者がネタを入れないと落ち着かないのでちょっと設定が変わりました。
ル・クルーゼ様は素晴らしいクオリティの作品を大量に作られているので是非一度ご覧になる事をオススメしますが、今後のネタバレになる部分がありますので、ネタに気が付かれた方は口チャックでお願いします。
ただ、それを押してもハサウェイ・ノア専用「νガンダム type クスィーアーマー」、ギギ・アンダルシア専用「ナイチンゲール type α・アジール」は一見の価値があると思います。
ではまた次の話で。
エピローグを読みたいのは次の中どれ?
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