新・ギレンの野望(笑)   作:議連・座備

73 / 75
73話 UC0079年12月31日 蹂躙

宇宙空間に金色の閃光が走る。ノイエ・ジールの全身に搭載された無数のメガ粒子砲が、ニュータイプ部隊のジオングめがけて一斉に放たれたのだ。真空の闇を引き裂く光線は、まるで神々の怒りそのものを具現化したかのようだった。

 

高温のメガ粒子によって構成される光の帯が宇宙を切り裂いて、反乱軍のジオングへと降り注ぐ。しかし、ニュータイプ部隊の強化された反応速度によって大半は回避され、直撃を受けたのは僅か2機のみ。

 

それどころか残存する10機のジオングは、まるで集合意識に導かれるかのように、ノイエ・ジールの周囲へと展開し、搭載された全てのメガ粒子砲による反撃態勢を整えていく。

 

「甘いぞ、ギレン・ザビ!」

 

通信回線を震わせるマ・クベの声が響き渡る。その声には、勝利を確信した傲慢さが滲んでいた。

 

「宇宙での高速戦闘に特化した我がニュータイプ部隊を、たった一機のモビルアーマーで打ち破れると思ったか!全機、一斉射撃!」

 

その号令と共に、10機のジオングがたった一機のモビルアーマーめがけてメガ粒子砲を斉射する。四方から放たれた無数のメガ粒子は、巨大な蜘蛛の巣となって空間を覆い尽くし、その中心にあるノイエ・ジールを包み込んだ。真空の闇が一瞬にして光に満ちる。

 

だが——。

 

ノイエ・ジールの防御システムは、彼らの想定を遥かに超えていた。直撃したはずのメガ粒子砲は、展開されたIフィールドに触れた途端に虹色に輝きながら四散し、漆黒の装甲には、傷一つ残らない。

 

「馬鹿な!無傷だと?!」

 

想定外の事態に、マ・クベの声が裏返る。その焦燥が、通信回線越しにも痛いほど伝わってきた。

 

「だが、至近距離ならばバリアも無効化できる筈だ。全機、距離を詰めながら撃ち続けろ!諦めるな!」

 

その指示に応じ、ニュータイプ部隊の攻撃は激しさを増していく。各機はノイエ・ジールに向けて頭部のメガ粒子砲を乱射しながら両腕の有線制御式メガ粒子砲を切り離す。

 

宇宙空間に展開された合計20機もの有線砲は、まるで投網のように漆黒の機体を取り囲んでいく。

 

「なるほど、有線メガ粒子砲による近距離射撃か。」

 

ギレンの冷静な声が響く。その口元には、わずかな笑みが浮かんでいた。

 

「だが、その程度ではこのノイエ・ジールは止められんよ!」

 

漆黒の機体が稲妻のように宇宙空間を舞う。予測不可能な軌道で大半の攻撃をかわし、直撃を避けられない攻撃はIフィールドによる結界で弾く。その動きは、まるでパイロットとマシンが完全に一体化したかのような冴えを見せていた。

 

有線砲の包囲網さえも、まるで蝶が網をすり抜けるかのような優雅さで突破していく。

 

「総帥...」

 

後部座席のララァが静かな声で告げる。その声には、何か不穏なものを感じ取った戸惑いが混じっていた。

 

「この人達は、ニュータイプなのにハマーンさん達とは全く違います。彼らの精神が歪められているのです。まるで人としての感情を消し去って、ただ戦闘の為だけに存在しているみたい⋯。」

 

操縦席のギレンは無言でうなずく。その瞳には、何かを見通したような冷徹な光が宿っていた。

 

「その通りだな、ララァ。それこそがキシリアの過ちなのだ。」

 

「ハマーン!」

 

ギレンが通信回線を切り替えると、スクリーンにはピンク色の髪をした少女の姿が映し出される。

 

「はい、総帥」

 

「そちらの状況は?」

 

「問題ありません。既に所定の位置に展開を完了し、合図を待っています」

 

「よろしい。では、作戦開始だ。例のものを出せ!」

 

ギレンの指示と共に、戦闘宙域へ密かに接近していたハマーンとセイラのゲルググ・インペリアルから、「ビット」と呼ばれる兵装が切り離される。

 

「欠片」の名を持つそれは、ニュータイプの感応波によってミノフスキー粒子散布下での無線誘導を可能とした小型ビーム砲台だった。

 

2機のゲルググから分離した12機のビットは、まるで意志を持つかのようにノイエ・ジールの側まで移動すると、その周囲を護衛するかの様に展開した。

 

「ララァ、奴らの精神波を読め。お前とこの機体のサイコミュならば連中の動きが見える筈だ。機体の制御は私が担当する」

 

「はい、総帥。刻が...見えます」

 

ララァの声が静かに響き、それに導かれるように12機のビットが一斉に攻撃を開始する。その瞬間、戦場の様相は一変した。

 

それは、戦いというよりも最早一方的な蹂躙だった。

 

高速で機動するノイエ・ジールからのメガ粒子砲とジオングの死角へと入り込んだビットからのビーム射撃が交錯し、ニュータイプ部隊のジオングが次々と撃墜されていく。

 

強化人間達の意識を読み取るララァの前では、いかに優れた反応速度を持っていようが意味はなく、本来なら圧倒的な推力を誇るはずのジオングも、まるで蜘蛛の巣に捕らわれた蝶のように、ビットが創り上げる包囲網の中でもがくばかりだった。

 

10機のジオングは瞬く間に半数が失われ、残った5機もビットの攻撃に対応するので精一杯となっていた。

 

「おのれ、なんと無様な!」

 

ニュータイプ部隊のジオングが次々と撃墜されるのを目の当たりにした、マ・クベの表情が焦燥と憤怒に歪む。

 

「だが、このギャン・エーオースはキシリア様に開発していただいた私専用の特別なモビルスーツなのだ!このマ・クベ、キシリア様のためならば最後まで存分に働いてみせよう!」

 

ギャンのコックピットで警告音が鳴り響く中、禁断の赤いスイッチが押し込まれていく。

 

「NEO EXAM...起動!」

 

刹那、マ・クベのギャンのモノアイから異様な赤い輝きが放たれる。その瞬間、機体の動きは一変した。もはや通常のモビルスーツの領域を超え、制御系統を焼き切るような異常出力に、機体が軋むような悲鳴を上げる。

 

「この人は危険過ぎる...!」

 

ララァの声が緊迫する。彼女の精神感応が、マ・クベの狂気じみた決意を捉えていた。

 

閃光と共に、ギャンがノイエジールに肉薄する。その速度は、ビットの追尾すら許さないものだった。真空に描かれる残像が、血の軌跡のように赤く輝いていく。

 

「お前は間違っているのだ、ギレン・ザビ!」

 

マ・クベが通信回線越しに叫ぶ。その声には、追い詰められた者特有の狂気が溢れ出ていた。

 

ギャンの持つ長銃から赤いビーム・ベイオネットが展開され、宇宙の闇を切り裂く。それを見たギレンもまた、クローアームから長大なビームサーベルを展開し、緑色に光るメガ粒子の刃を創り上げた。

 

二機の機体が交差する。赤と緑、二本の巨大なビームサーベルが激突し、その接触点から放射される光条が、周囲の宇宙空間を七色に彩っていく。

 

「地球連邦との融和だと?笑わせるな!我らジオンが目指すべきは、キシリア様主導による地球の完全なる聖地化だ。この道こそ、人類の未来の為にジオンが進むべき道なのだ!」

 

マ・クベの叫びが、通信回線を震わせる。その声には、もはや狂信的とも言える確信が込められていた。

 

その言葉に、ギレンの瞳が鋭く光る。

 

「愚かな男め。キシリア程度の器で、ダイクンの遺志を継げるとでも思っているのか?」

 

ギレンの声は冷酷なまでに冷静だった。

 

「ダイクンの理想は宇宙移民の自立と、人類のニュータイプ化による争いのない社会の実現だ。地球環境の保護などその一部でしかない。キシリアは、それを自分の野心のために利用しているにすぎん!」

 

次の瞬間、ノイエ・ジールの全身に装備された六基のメガ粒子砲がギャンに向けて一斉に解き放たれる。高温のメガ粒子で造られた六本の光の槍が、まるで槍衾のようにギャンへと迫る。

 

だが、NEO EXAMシステムによって強化されたギャンの動きは、それが当たることを許さなかった。異常なまでの機動力でメガ粒子による嵐をかいくぐると、次の突撃に向けてノイエ・ジールから一旦距離をとった。

 

「さて、では そろそろ幕引きといこう」

 

ギレンの声には、もはや勝利を確信した余裕が滲んでいた。

 

「――ララァ・スン少尉、ミノフスキー・ドライブの使用を許可する」

 

その言葉は、ノイエ・ジールに秘められた最後の切り札を解放することを意味していた。

 

「はい、ギレン総帥。ミノフスキー・ドライブの展開を開始します」

 

ララァの声が応える。その声には、未来を見通したかのような静かな確信が宿っていた。

 

 

次の瞬間、ノイエジールの背部から紅い光が溢れ出す。それは次第に翼の形を成し、左右に広がっていく。宇宙空間そのものを赤く染め上げんばかりの輝きを放つその光の翼は、まるで伝説の生物・フェニックスの羽ばたきのようだった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「な...何だと!?いったいこれは何だというのだ?!」

 

マ・クベの驚愕の声が響く。その声には、理解を超えた現象を目にした事による本能的な恐怖が滲んでいた。

 

ミノフスキー・ドライブ。本来なら宇宙世紀0120年代に開発される推進技術の名称である。

 

ミノフスキー粒子をIフィールドで高密度に圧縮し、特定の方向に噴射することで光の翼を形成し圧倒的な推進力を実現する。

 

その推進力は絶大であり、モビルスーツ単体による大気圏離脱さえ可能としていた。

 

当然宇宙世紀0079にある筈もない技術であるが、「ギレンの専用機を大気圏内でも飛行可能な機体にする。」という目標を達成するためだけに鬼才ギニアス・サハリンとミノフスキー博士によって開発されノイエ・ジールに搭載された一種のオーパーツである。

 

無論、エネルギー変換効率や機体重量などの問題でその機動力はV2などの機体と比べれば遥かに劣るものの、それでも宇宙世紀0079の機体が相手ではもはや勝負にさえならなかった。

 

「見せてやろう、この機体の真の力を!」

 

ギレンの叫び声と共に、漆黒の機体が赤い光の翼を羽ばたかせて宇宙を駆ける。

 

その速度は圧倒的であり、EXAMシステムを発動したギャンでさえ反応することができない領域に達していた。

 

光の翼が描く光の軌跡が、まるで運命の赤い糸かのように宇宙を切り裂いていく。

 

その赤い光の奔流とビットの群によって追い立てられたニュータイプ部隊が交差した瞬間、その機体が両断され、宇宙の闇へと消えていく。

 

「ば⋯馬鹿な!キシリア様よりお預かりしたニュータイプ部隊が!こんなことがあって良いハズがない!キシリア様、申し訳ありません。マ・クベの力不足です。ですが、私の忠誠だけは最後まで貴女へ⋯⋯!」

 

マ・クベの絶叫が通信回線を通して響き渡り、それに呼応するかのように、ギャン・エーオースのモノアイが最後の輝きを放つ。

 

手にした長銃からビームを乱射すると、その先端からビーム・ベイオネットを展開してノイエ・ジールへと迫る。だが、それはギレンにとって何の脅威にもなり得なかった。

 

一瞬の閃光と共にギャンは四肢を切断されると、さらに頭部までもが光の翼によって切断され、まるで糸の切れた人形のように宇宙を漂うだけの鉄塊と化した。

 

「これが進化した人類、ニュータイプの真なる力なのか⋯。」

 

機体の限界を告げる警告音の中、マ・クベの声が震える。その声には、敗北を認めた者の諦念が滲んでいた。

 

戦場に残されたのは、光の翼を纏うノイエジールと、その周囲で静かに舞い続けるビットの群。そして、この光景を見守る2機のゲルググの姿だけだった。




本編としては次が最終話でその後エピローグとなります。

エピローグを読みたいのは次の中どれ?

  • イグルー
  • ジオニックフロント
  • MS08小隊
  • 戦慄のブルー
  • ミッシングリンク
  • ガンダム戦記
  • ポケットの中の戦争
  • 0083
  • Zガンダム
  • ユニコーン
  • サンダーボルト
  • ルーデル閣下
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。