やあ…諸君。ギレン・ザビである。
おかしい、前にこうやって挨拶したのは12月のはずなのに何故か数年ぶりに挨拶したような感じがする。
まあ、きっと濃密な時間をすごしていたので時の流れを長く感じていたに違いない。
さて、冗談はともかく、連邦艦隊とキシリアの反乱軍を片付けてから少しの時間が過ぎた。勝利の余韻もまだ冷めやらぬ中、既に新たな課題が山積みとなっている。
その間にあった事を説明しようとすると、まずはキシリアの捕獲があげられるだろう。あの傲慢な女が、ついに膝を屈したのだ。
俺とシーマ率いる親衛隊がサイド7宙域に展開していたキシリアのモビルスーツ隊を壊滅させると、その後方に位置していたキシリアの艦隊は即座に逃走を開始した。
当初は主な拠点であったグラナダがドズルによって制圧されている状況で逃げてどうするんだよと思ったものだが、かつて暗礁宙域に隠れた後に武力蜂起して核テロ&コロニー落としをやらかしたハゲを知っている俺は追撃の手を緩めなかった。
といっても、ミノフスキー・ドライブを搭載したノイエ・ジールは宇宙艦艇からみれば最悪の天敵であり、その壊滅に大した時間はかからなかったのだが。
キシリアについてはメガカノンでグワジンごと消し飛ばしてやろうと迷ったものの、生け捕りにして裁判にかけた方が本人に入る累計ダメージが大きくなりそうなので捕虜にしておく事にした。時には、物理的な破壊より精神的な打撃の方が効果的な場合もあるのだ。
「俺が貴様を逃がすと思うなよ?キシリア」
その言葉を投げかけた時、彼女の目に浮かんだ絶望の色は、俺に何とも言えない満足感を与えてくれた。
さて、俺が次に行ったのは地球連邦政府との停戦交渉である。
地上の半分と連邦軍本部ジャブロー、宇宙艦隊の大半を失った地球連邦軍に最早勝機はなく、停戦交渉は終始ジオン公国の優位に進んだ。
ジオン公国とサイド共栄圏諸国の自治権要求については割とすぐに認められたものの、問題となったのはジオン公国による地球連邦政府への賠償金請求である。
戦争の最終的な引き金となったのが連邦軍によるギレン暗殺計画だった事もありジオン公国が連邦政府に賠償金を求めるのは当然の帰結であったが、戦争に伴う領土の荒廃と大量の難民、物価の高騰に悩まされている連邦政府にそれを支払う能力がないのは明白だった。
それどころか各地で勃発する暴動と戦争に伴う市民の不満が連邦政府の統治能力すら危うくしていた。
賠償請求は必要なものであるが、それが新たなる戦争の火種になるような事になってはならない。
しかし、ジオン側としても膨大な戦費を投じている以上簡単に引き下がるわけにもいかない。
そこで協議の末に採用されたのが賠償金を放棄する代わりとなる領土の割譲、借款という現実的な解決策であった。これならば連邦側も即座の支払いを迫られることなく、ジオン側も確実な見返りを得ることができる。
一週間に及ぶ激しい交渉の末、連邦最後の宇宙拠点であるルナツーと、地上で有数の穀倉地帯であるオーストラリア、豊富な鉱物資源を産出するコーカサス地方がジオン公国の版図に加わることになり、ジオンの占領下にあった北米大陸が宇宙世紀100年までの期限付きでジオン公国に貸与される事になった。
…⋯因みにゴップとの密約がなければ北米やヨーロッパもジオンの領土として接収しようと考えていたのは内緒である。
そんなこんなで連邦との戦いは終結したのだが、それは新たなる戦いのための序曲でしかなかった。
「バ…バカな、俺が知らないうちにアイナと結婚しているだと?!」
その知らせを受けた時の私の動揺は、戦時中のどんな危機的状況よりも大きかったかもしれない。
そう、戦時中である事を理由にうやむやにしていた女性関係が、終戦を契機として一気に噴出したのだ。
まあ、それも仕方がないだろう。戦時下の男性が女性に向ける感情というのは一種の動物的本能であり理性ではどうにもならない部分があるのだ。(ギレン談)
しかし、それが戦争という非常事態がなくなった今、一気に噴出するのは当然の帰結であった。
その結果がどうなったかについては…まあ、後に語るとしよう。
すったもんだの末に女性関係に一段落を着けた俺は、今度は戦後処理に伴走する事になる。
まず最初に俺が行ったのは、ザビ家内部における政治問題に対する決着である。
原作からわかるように宇宙世紀とは戦いの歴史であり、戦争、平和、革命(だいたい失敗)の三つが終わらないワルツのように続いていく世界である。
俺はそんな世界の政治からはさっさとおさらばしようと考えており、戦争の終結を契機としてジオン公国総帥を引退し、家でゴロゴロする計画だった。
しかし、そんな俺の計画に待ったをかける存在が現れた。
それは、デギンと、サスロと、ガルマと、デラーズと、ギニアスと…etcと、数多くのジオン公国国民である。
俺は連邦との終戦と同時にジオン公国総帥の引退を発表したのだが、その翌日に公王である親父が相談もなしに公王の引退を表明、ジオン公国はジオン共和国と名前を変える事になる。
更にその翌日にはジオン共和国議会を開く為の選挙の開催がサスロによって発表された。
楽隠居する気だった俺は立候補する気などなかったのだが、ガルマから「私がザビ家の代表として初代首相になるので副首相として支えてください!」と言われ、渋々選挙に立候補する事になった。
正直、落選しても良かった俺は自分では何一つ選挙運動を行わなかったのだが、デラーズやギニアスといった側近連中が「応援」と称した非公式の選挙運動を展開、圧倒的な得票数により当選する事になる。
その後ジオン共和国議会でおこなわれた初代首相を選ぶ選挙においては、俺がザビ家の代表としてガルマを初代首相として推薦し投票したにもかかわらず、開票してみればガルマへの投票数は僅か一票で残りの票の大半はほぼ俺に入っていた。
おいガルマ、お前がザビ家の代表になるんじゃなかったのかよ?!
おのれ、謀ったな!ガルマ!
フフフ……ギレン兄さん、聞こえていたら実は貴方以外の全員がこうなる事を知っていた事実を呪ってください。
まあ、そんな経緯で渋々ジオン共和国議会初代首相になった俺が最初に着手したのは戦争で肥大化した軍部の縮小だった。
ただでさえ軍隊は金食い虫だと言うのに、地球連邦政府と全面戦争をできる規模の軍を平時に抱えておける筈もない。
しかし、単純な軍縮では新たな問題を生むだけだ。何しろ大量の退役軍人が発生するし、彼らの多くは若く、戦闘経験も豊富だ。不満を抱えたまま放置すれば、いずれ反乱の火種になりかねない。
というか、もしルーデルあたりがゲリラ化したらそれだけで国が滅びかねん。
という事で俺が打ち出したのが「軍備転用計画」である。
これはモビルスーツという兵器とそれを操る人材を資源開発や建設に転用するという政策である。
例えば、ザクであれば装甲と戦闘用OSを外した上で作業用バックパックに換装し民間へ格安で貸し出すのだ。その際、パイロットと整備員についても出向させ、本人が希望すればそのまま転職する事も可能というシステムだ。
こうすれば中小企業でもモビルスーツという高額な装備を低コストで利用できるし、リースにしておけばもし戦争になったら回収して再軍備化も容易となる。
この制度は、戦争によって産まれたスペースデブリ回収という産業や「地球」という新たな領域に挑戦する企業によって大人気となった。
またそれと並行して進めているのがミノフスキー・ドライブを活用した太陽系探索である。
戦争は技術を進化させるというが、それはこの1年に及んだ戦争もそれは同樣であり、その中でも特に異質とも呼べるのがミノフスキー・ドライブである。
本来宇宙世紀120年代になってやっと実用化されるこの技術は、太陽系を探索する上で最も大きな障害となる「距離」という問題に対して絶大な効果を発揮した。
何しろ圧倒的な速力により本来数カ月かかるハズの地球⇔火星間を僅か一週間程度で航行可能とするとんでも技術である。
このミノフスキー・ドライブを惑星間航行船として開発されたグワダンに搭載する事で戦前とは比較にならない速度で宇宙開発が進んでいる。
「諸君、我々の戦いはまだ終わっていない。今度の敵は、人類の活動範囲を制限する距離という『壁』だ。」
議会で私がそう演説した時、将校たちの目が輝きを取り戻した気がした。
そう、人は常に何かと戦う必要があるのだ。ただし、それが必ずしも人と人との戦いである必要はない。
...もっとも、こんな理想論を語っている最中も、俺の周りでは女性問題が継続中なのだが。
side アイナ・サハリン
キシリア・ザビ率いる反乱軍が撃退され数日が経ちました。
デギン公王にギレン様との結婚をお認め頂く事でアイナ・ザビとなった私は、試作モビルアーマー、ノイエ・アプサラスに搭乗して反乱軍の撃退にあたりました。
ノリスの鬼神のような活躍や首都防衛大隊の人達の活躍もありなんとか時間を稼いでいましたが、反乱軍の切り札であるニュータイプ部隊の出現によって私達が壊滅寸前となった時、あの方は現れました。
「アイナを、我が半身を、貴様らごときが倒せると思うか!」
普段の仏頂面を何処かに投げ捨てたかのようなギレンの怒声が通信回線から響き渡ります。
その言葉を聞いた私は、ジオングの放ったメガ粒子砲がアプサラスに突き刺さろうとしていたにも関わらず嬉しくて仕方ありませんでした。
その後、ギレン様の操る漆黒の機体があっと言う間にニュータイプ部隊を駆逐してしまい、そのまま反乱軍の掃討に向かわれてしまったので私にはお礼を言う事さえできていませんでした。
その後も、ギレン様は残敵掃討に連邦との停戦交渉と忙しくされており、私にできる事はいつギレン様がお戻りになっても大丈夫なようにサイド3のお屋敷を綺麗にする事だけでした。
そんな中、ハマーンさんからギレン様がサイド3へと帰還され、屋敷に向かっているとの連絡を受けた私は緊張した面持ちでギレン様を待ちます。
暫くすると、屋敷の前に車が止まり、ハマーンさんを伴ったギレン様が降りてこられました。
「ギレン様!」
「アイナか、今戻った。」
私は思わず駆け寄ってしまいましたが、ギレン様はそれを咎める事無く微笑んでくださいました。
全く、この笑顔を見て悪人が悪巧みをしているみたいなんて言うメイちゃん達は見る目がありません。
私はギレン様が無事にお戻りになられた事に安堵しながらも、独断で行った入籍について謝罪しなければならないと考えていました。
「ギレン様、私の独断で婚姻届を提出し、ザビ家の名を利用したこと、誠に申し訳ございません。」
私がそう言いながら深く頭を下げると、ギレン様はしばらく沈黙された後に、静かな声でこうおっしゃりました。
「愚かなことをしたな、アイナ。非常時とはいえ貴様は私の許可なく妻となり、ザビ家の名前を利用したのだ。本来ならば、このような行為は許されるものではない。」
その言葉に、私は息を飲みました。やはりお優しいギレン様であっても勝手に入籍された事に怒っておられるのかもしれません。
しかし次の瞬間には、総帥の口元に微かに笑みが浮かびました。
「だが、貴様の行動には覚悟があった。ザビ家の存続という重要性を理解し、真に最適な行動を取ったのだ。その行動力は評価に値する。」
その言葉に、私は驚きのあまり思わず顔を上げてしまいます。
「しかし、私はギレン様の許可も得ずに妻となったのです。もしご迷惑であれば、離縁して頂いても⋯⋯。」
後悔はないものの、「結婚」という重大な行為を本人の許可なく行った事に後ろめたい気持ちがあった私は、自分の思いをギレン様に伝えました。
するとギレン様は冷たい表情で私を見つめ、低い声でおっしゃいました。
「離縁だと?馬鹿なことを言うな。お前が我が妻であることを私が迷惑に思うとでも思っているのか?アイナ、貴様は己の価値を見誤っている。」
私はギレン様の鋭い眼差しから目が離せません。
「アイナ・サハリン。私はお前に命じる。」
一瞬の沈黙の後、ギレン様の声が続いた。
「我が妻となれ。これは、ジオン公国総帥としてではなく、ギレン・ザビという1人の男としての願いだ。」
その言葉に、私は胸はどうしようもないほど高鳴り、目頭が熱くなるのを感じました。
「はい、喜んで」
私は笑顔で答えたつもりでしたが、涙が頬を伝うのを自分でも感じていました。
私の返事を聞いたギレン様が満足げな微笑みを浮かべられます。
「よろしい。それでこそ、私の選んだ女だ」
私は、そんなギレン様にそっと寄り添うと、その胸に顔を埋めるのでした。
長らくお待たせして申し訳ありませんでした。
この話をもちまして本編の最終話とさせて頂きます。
ハマーンをはじめとしたその他女性陣とについて等はエピローグで書かせて頂きたいと思います。
現状書きたい人が100人近くいるのである程度書けましたら小分けして出させて頂きます。よろしければもう少しお付き合いください。
エピローグを読みたいのは次の中どれ?
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