エノシマでの闘いから十八時間後
某所、対鬼殲滅部隊ファナティカーズ本部
同セントラル・コマンダー
「………ふふふ、くひ……」
「紫雲院広報特務三尉、守備はどうかね?」
「カーネル!守備は万全だよ。僕が作ったジャミングバードは完璧さ……あとはーーーーーーーを操作するだけ………くひひ」
「そうかい、そうかい………前はババアに邪魔されたが今度は私達の勝ちは間違いないね……リトスく~ん。君とは同じ同期のよしみで助けてあげようと思ったんだけどね…残念だよ」
「旧セイバーズのプロテクトなんかコーラを飲み終える前に終わるよ…………あとはパージ角度を……くひ、二年ぶりに楽しいゲームができる……くひひ」
「おい、ノゾミ・カワシマは生かして捕らえろよ。あの脳筋バカ…叶桃矢は殺してもいいからさ」
爽やかに髪を切りそろえた赤い軍服に身を包んだ青年《草加隼》は唇を歪に歪ませる彼の脳裏にはヴァルキリーズ第四分隊隊長《ノゾミ・カワシマ》の姿がうかばせる彼にむけホロスクリーンを無数に展開する薄暗い室内に置かれた椅子に座るトオミネ大佐がゆっくりと口を開いた
「ずいぶん、あの白い英雄君………叶桃矢にご執心だね~たしか同じ学校の出身だったね~
」
「ふん、トオミネ大佐俺はあいつが嫌いなんですよ……英雄なんかじゃない脳みそ筋肉でできたアイツはね………」
「ふむふむ~そうかい。草加特務一尉、キミの機体が本日11:30に新しく搬入されてくるそうだよ…君の要望通りに仕上げてある。アキツキのレスキュー擬きより優れた奴をね」
「……トオミネ大佐、草加集特務一尉コレより機体受領準備に向かいます!」
「ああ、いきたまえ」
「では失礼します」
カツと軍靴を鳴らし退室し格納庫へと向かう草加特務一尉…しばらくして作業を続ける紫雲院武史情報三尉に何も告げず部屋をあとにし歩き出した彼の顔は狂気に染まっている
「……………もうすぐだ……もうすぐ……………すべては………」
薄暗い長い通路に漏れた声は狂気に満ちている…やがて行き止まりになり足が止まると胸元からカードキーを取り出す。すると無機質など壁からリーダーが現れ迷わず差込引く
すると静かな音とともに壁が開く…真っ暗で何も見えない中へと、迷わず踏み入れると静かに壁が閉じるなかトオミネ大佐の唇かすかに動いた
「…………………………お待ちください。我が君よ………必ずやーーーーを…………………すべてはーーーーーーーーの為に!」
漏れた声は壁が閉じたかすかな音に完全にかきけされた
第十.五話 狂いし信仰者、《要たる龍》の御使
月(裏側)、オルガス皇国地球派遣艦隊
同旗艦《オーガスティア》
エノシマでの戦闘から十八時間後……月の裏側にある地球派遣艦隊、本州クラスの巨大さを誇る旗艦《オーガスティア》。その工廠ブロックは喧噪に包まれていた
「アルジェント・ノワール第一、第二最終装甲と四番脊髄ユニット交換、ゲラール・ブリッツェンのブラッディアを入れ替えとオルガクリスティアの励起をクォルティアに落として!」
「ミィ班長!最終装甲取り外したよ!!」
「なら修復漕に入れて、脊髄ユニットは取り外し次第分解漕に!」
「ラーサ!」
「オルガクリスティア、クォルティア(クォータードライブ)に移行、ブラッディア(エネルギー伝達流体)交換開始!!」
…拘束具に固定されたアルジェントノワール、ゲラールブリッツェン。装甲が外されさまざまケーブルが点滴のように接続、メルキュアス整備師団がせわしく動き回る中で唯一無傷の機体《フリーレン・ドラッヘン》を一人整備する少年の姿が見えた
「ア、アレン様!整備は私たちがしますからお休みください!!」
「ん、大丈夫だよ。整備師団《メルキュアス》のみんながアンジュとライカ様の機体に付きっきりで整備しているんだ。僕も少し手伝いたいんだルゥさん」
「ですが…御身も出撃されたのですよ?それに龍鬼将であらせられますから」
「ルゥさん達も働きづめじゃないか…それに身分なんて関係ないよ……」
「でも、これ以上されますと、そ、その…と、とにかく!私たちが整備をしますからアレン様はアンジュ様のお側におられてください!!」
「え、でも」
「ここはいいですから!」
ルゥの大きな声が響きメルキュアスの皆の手が止まる……はあはあと肩で息をする姿にたじたじになるアレンは何度も頷きながらその場を後にした……姿が見えなくなるとルゥはへたり込んだ
「ああ~なんて恐れ多いことを………アレン様に無礼を…メルキュアス副主任として失格です」
「ルルっち、ああでも言わないとアレン様はアタシ等の手伝いやるのが見えてたし」
「でもう………」
「それにアレン様は気にしてないよ……ボクらが出来ることは機体を完全に仕上げること。さあ、作戦がはじまるまでにね」
「リズ、エル……そうね。じゃあアルジェントノワール、ゲラールブリッツェン、フリーレンドラッヘンを完璧に仕上げるわよ!」
ツインテールに巻き角がめだつ少女《リズ》、額に真っ赤な角にセミロングの金髪をゆらす少女《エル》の言葉を聞き奮い立たせると床をけりふわりと浮かぶと整備へと戻っていく一方、アレンはというとオーガスティア居住エリア、鬼神将専用住居へと一メートルぐらいの円盤《ソーサリー》に乗っている
オーガスティアはその巨大さ故に移動には反重力式移送円盤《ソーサリー》が必要になる為だった…水色に龍鱗があしらわれた外套をはためかせるアレンを見て女性仕官たちが敬礼し、それを返すも表情は暗い
(……………スーシィジュウ、キインツァローは初代オルガス皇イバラ様より伝え聞いたどおり、力を取り戻しつつある。あと一体の姿は見えないということは幸いかな)
ソーサが止まり静かにおりたのは武家屋敷と寝殿造りの趣が見える屋敷…ゆっくりと歩きだす
(彼らの拠点は《やかひうま》…ライカ様のシュマーがおかれている近く………やっぱりこの《作戦》しかないかな)
門を開き入ると、そのまま外靴を脱ぎ並べ板張りの廊下を歩き出し、少しして色とりどりの襖を静かに開ける、室内には白い絹がふんだんに使われた布団から身体を起こし袿をかけた灰色かがった髪に水色の瞳、額から黒い角二つが目立つ少女がウィンドウを無数に展開、報告などに目を通していた
「ナニしてるのアンジュ?」
「ア、アレン?いつココにきたん?」
「今さっきだよ。それより今日は執務を一切しない約束だったよね?」
「こ、これはな…なんというか…セイジュの行方をな」
「…セイジュ様の探索は僕がやるから今はゆっくり休んで………ほら」
「子、子供扱いするでないわ……むう撫でるなあああ」
ウィンドウに軽くふれ閉じ、優しく寝かしつけながら頭を撫でる。プクッとほおを膨らませるも、いやがるそぶりも見せず気持ちよさそうにしている
エノシマでの戦いでアルジェントノワール、フリーレンドラッヘンは多大なダメージを受け、装鬼礼装を纏っていてもダメージが通っていたアンジュ、ライカは帰還後にすぐさま検査、そして休養をとるよう診断されたのだ……機械神を倒せなかった事もだが、セイジュの反応を捉え向かわせたガ・ナーからの連絡が途絶えたことが気がかりだったのだ
「アンジュ、ライカ様は?」
「ライカなら先に地上のシュマーへ降りたんや。まあ、おとなしくしてる思うけど」
「そ、そうなんだ…………お腹空いてないアンジュ。《ヅォオ》を作るけど」
「!………食べる!!」
「はいはい、じゃあできあがるまで大人しくしててね。表のフラナーからヤシャヌをとってくるから…………」
「うん」
襖を締めるアレン…背後から『ごはん、ごはん、アレンの作るごはんはオルガス皇国一や~~しあわせもんやウチは~~』…声が聞こえたのは気のせいだろう。フラナーにつくとヅォオに使うシャカネ、トゥリ、クヌウ(米)を手にしでようとした時、ナニカの気配を感じる
(ん?鳥かな………それに何か敵意はないみたいだし)
ゆっくりと振り返ると、小さく可愛らしくデフォルメされた蒼い鱗を持つ龍?が翼をパタパタさせジッとこちらをみながら飛び回り、ふわりと肩に乗った
『きゅ~きゅきゅ♪』
「子供のドラッヘン…もしかしてオルガス皇国をでるときに迷い込んだのかな……見た感じまだ子供だし……今度の作戦が終わるまで保護するしかないかな………キミ、僕と一緒に来るかい?」
『きゅきゅ~きゅき~ゅ♪』
その言葉に答えるようにドラッヘンの子供?が首を小さく動かすのを見て、集めたシャカネ、トゥリ、クヌウを手に炊事場へと歩き出した
第十.五話 狂いし信仰者、《要たる龍》の御使
了