雲一つ無い蒼穹の中を二つの光が光芒と共に空を切る…ヴァルキリーズ極東支部から打ち上げられたグレンバスターキャノン装備の金剛神キンタロウwithボルテックブースター、隣を併走するようにヴァルキリーズ第四小隊メンバーの戦機人…高々度でも活動可能なように新たに装備された飛翔ユニット《翔》装備が施された三機が内部に固定されている。そのコックピット内には宇宙用パイロットスーツ姿のノゾミ、サヨコ、アキラが加速Gに耐えていた
『ま、まだぬけないのかよ!』
『あと五分。もう一度作戦概要の確認するけど……皆わかっているわね?』
『はい、衛星軌道到達後にキンタロウがグレンバスターキャノンで落下コースを取る軌道エレベーター構造体を破壊』
『その時に破砕しきれなかった構造体をあたし等で一つも残らずぶっ壊す……だろ?』
『そうよ。今回からアキツキインダストリアルから超電導加速特殊マテリアル弾投射砲《ハイパーレールガン》が1、誘導ミサイル弾頭ガトリング砲、ミサイルガトリングが配備されてるわ……両武器には構造体の金属と反応し炸裂融解する弾頭が装備されているけど無駄玉は可能なかぎり撃たないこと』
『わかってるって』
『は、はい』
『そろそろ衛星軌道に到達するわ…聞こえる桃矢、アカネ、ミオ、アナタたちは予定通りに行動をなさい』
ーわかってる。後ろは任せたぜノゾミー
ー……了解、ノゾミ隊長ー
ーう、うん…!お姉ちゃ……隊長も気をつけてねー
桃矢、アカネ、ミオの声がそれぞれのコックピットに響く……通信が繋がらないはず。コレは一種の思念通話《テレパシー》だと源三から事前に説明を受けていたモノの慣れるものじゃないと内心思った時だ、カーゴ内の赤色灯が緑に変わり、シートに押しつけられていた身体が軽くなると同時にカーゴの上層が伸び周囲の隔壁が開き機体の拘束が解かれていく中、モニター越しに蒼、雲、そのしたに広がる大陸
コレから自分たちが護らなければならない世界があった
操縦幹を握る手が震える…ふとサブモニターをみるノゾミの目には耐熱アーマーをパージしたキンタロウがグレンをゆっくりと姿を構える姿……四年ぶりに再会し共に戦うようになってから何故か解らないが不安が消えた。今もこうして居るだけで力が湧き上がるのを感じた
『……コレより軌道エレベーター構造体破壊ミッションを開始します!!』
『『『『『『『おう!/了解/り、了解/まかせな!/了解!』』』』』』』
第十一話 消える炎、大いなる方舟(桃矢side)後編
同時刻、ヴァルキリーズ極東支部
同正面ゲート……普段ならば閑散としているがこの日は違った
「皆さん、指示に従ってゆっくりこちらに来てください!」
『第二小隊より本部へ、ヨコハマ、カマクラ、カワサキの避難民、第三分隊と共に第二陣到着しました』
「正面ゲートは現在混雑しているから第二ウェストゲートから誘導をお願いします」
『了解、ウェストゲートより入ります!』
軌道エレベーター構造体落下より市民たちを落着予想ポイントから避難させるべくリトスはヴァルキリーズ極東支部、その地下に設けられた超深度格納庫を避難場所とし、誘導していた為だった
衛星軌道からの構造体落着を知り市民たちは混乱し、暴動が起きるかと予想されていたのだがヴァルキリーズ第一小隊、第二小隊の説得と、さらには炎凰、真武
が現れた事。そして構造体破壊の為に第四小隊メンバー、キンタロウwithボルテックスが向かっていると知り落ち着きを取り戻した
何より最大の要因は鬼たちの襲来から守り続けてくれたヴァルキリーズ、そしてキンタロウ、炎凰、真武は希望になっていたのもあった
「リトス司令、現在市民たちの避難率は70%を切りました」
「そう、第二小隊、第三小隊は?」
「市民を超深度格納庫へ誘導次第に残りのエリアへ向かいます……それとキンタロ…桃矢クン達が目標ポイントに到達したと報告がありました」
「……ここからが正念場ね…飛鳥くんとユウジくんは?」
「今、第一小隊と戻ってきました」
スクリーンには避難民を収容した極地環境対応装甲機関車《轟火》の真上を飛ぶ機神獸形態の炎凰、その後ろには深緑の装甲が目立つ背中から肩にせり出したキャノン砲二門を持つ機械神…真武《武人形態》が陸上をホバリングしながら追走している
『よし、ついたよ飛鳥坊や、ユウジ坊や、あとはあたし等に任せな』
『え、でも誘導ぐらいなら手伝います。ルディさん達も疲れてますよね?』
『それに轟火のメンテナンスは虎たちだけじゃ手が足りな……』
『ははは、甘く見るんじゃないよ。まだまだあたし等はへばってないさ。なあみんな?』
『そうそう、何せあたし等は無敵の第一分隊だしね。それより、この子たちの相手をしてくれない?』
『わ、わあああ!?本当にエンオウだ!!』
『ほんとだ!それにカメさんもいるよ』
『あ、あの触っていいですか?』
『お、おう。順番守るんだぞ』
『くす。ほら。おいで』
豪快に笑いルディ率いる第一分隊メンバーも笑顔で二人に駆け寄る子どもたちを見ている…司令部にいるメンバーもそのやりとりに少し緊張がほぐれる、リトスもつられて表情を緩める一方で別なことを考えていた
何故、鬼たちが動かないのか?と……最近の動きは統制が取れなおかつ将鬼を上回る機体群、ライトニング、ルシファー…《ロード》(ヴァルキリーズが名付けた新たなランク)が現れてから特に目立つ
(……私たちに対して有利な状況に関わらず動きを見せない。それにライトニングならば先陣を切って此方に来るはず…ナゼ動かない、何か理由がある?…それにルシファー、ドラグーンがいない………まさか!)
こうして自分たちを包囲しても動きを見せない、源三に意見を聞こうとしても今この場にはいない。現在、機械神らしい龍を象った石像が鳴動しはじめたと聞きヴァルキリーズ第三格納庫にいる。リトスの頭に浮かんだ様々な要因が浮かび上がってはきえ、バラバラのピースが一つにはまり導き出されたのは…言葉に出すよりも早くインカムに手をあてた
「……警備部、聞こえるかしら。すぐに源三博士の護衛に向かって、避難民以外の当該施設IDの無い人間がいないかを調べて。出来るだけ早く」
『了解、すぐに博士の護衛と近辺の不審人物捜査にあたります』
警備部主任との短い会話を終えインカムを切る……杞憂であればいいと願いながら衛星軌道で破壊ミッションにあたるキンタロウ、戦機人《翔》の認識マーカー、構造体を示すマーカーが点滅するサブスクリーンに目を向ける
しかし、数十分後…誰も予想が出来ない事態を目にするとはリトス以下のメンバーはまだ知る由もなかったのだ
『……アレか!軌道エレベーター構造体は!!アカネ、カンザキ、見えるか?』
ーう、うん……ミオちゃん!ー
ー構造体確認……規模として15キロメートル。接触まで五分ー
ー叶さん。構造体破壊には最大出力のグレンのビームを15分かけて当て続けて溶かして…あと破壊する順番は左側ブロック、右ブロック、最後に中央ブロックでお願いしますー
ー桃ちゃん、新田おじいちゃ…新田博士はグレンバスターキャノンは最大出力で三発しか撃てないって……だからー
『心配するなアカネ…カンザキ…必ずあのデカブツヲ破壊してやるからさ………もう二度とあんな想いはゴメンだから』
最後に小さく呟く桃矢の脳裏に二年前の悪夢が浮かぶも振り払い再び構造体をみる。すでに目視出来る距離、グレンバスターキャノンの砲口…バレルが解放されエネルギーが迸る
ーターゲット補正、エネルギー出力上昇……臨界まで3、2、1……いまだよ!桃ちゃん!!ー
『うおおお!一撃必殺!グレンバスターキャノン!!』
叫びと共に放たれた極太のビームは真っ直ぐ構造体の左側ブロックに命中、構造体外壁は瞬く間に溶解していく……しかし溶かしきれなかった構造体の一部が分離し飛散していく
『やっとあたし等の出番だな!新装微の力を見せてやるよ!!』
『アキラ、無駄口をたたく前に撃ち落としなさいったら!!』
落下していく無数の構造体の破片にミサイルが蜘蛛の子みたいに広がり着弾、しかし爆発しない…深々と突き刺さると外装が開きコアが超高熱化、構造体の素材が瞬く間に泡立つように溶解し跡形もなく消え去る
『ひゅ~いっちょ上がり、さあもっと来い』
『アキラ!調子に乗らないの!……まだまだ来たわよ!!』
『はいはい、わかりました~サヨコ、あんまし怒るとしわ増えるぞ~……くらいなガトリングミサイル!!…オラオラオラオラ!!』
『し、皺なんか無いわよ!まだ私は二十代よ!!』
……言い争いながらも確実に構造体の破片めがけミサイルを撃ち込んでいく戦機人《翔》…その手に握られている巨大なガトリング砲《ミサイルガトリング》は秋月インダストリアルと新田源三博士が共同開発した装備。内部に撃ち込まれたミサイルのコアに閉じ込められた《超高熱波動》により溶解し跡形もなく消し去る。コレは大気圏より隕石を初めとする落下物を破壊するため開発された、対象の組成および材質データをコアに入力でき特殊災害に対応出来ると期待されている新装備だ
『二人とも無駄話は止めて、作業に集中しなさい!!』
『『は、はい!』』
腰から延びたアタッチメントに接続されたハイパーレールガンの開放型バレルからミサイルのコアと同じ弾頭を破片に撃ち続ける戦機人・改《翔》…ノゾミからの通信に慌てて作業に集中するアキラ、サヨコに軽くため息をつきながら新しいカートリッジを装填、バーニアをふかし制動をかけながらライフルを構えた
ーノゾミ隊長、左側ブロック破壊完了。続いて右側にグレンバスターキャノンを撃ち込みますー
『いいわよ。アキラ、サヨコ、次が来る前に残弾確認と破片落下予測範囲算出後、予想ポイントへ向かいなさい』
『わあってる、わあってる。モテるのは辛いね~どっかの誰かさんはなかなか出会い無いみたいだけど』
『アキラ、それってあたしのことよね!絶対そうでしょ!!』
口喧嘩するも予想ポイントへ機体を傾け飛ぶのを苦笑しながらノゾミも予想ポイントへと戦機人改《翔》を向けた時、熱源反応と共に一条の閃光が横を通り抜け真っ直ぐ右側へグレンバスターキャノンを撃とうと構えるキンタロウに着弾、爆発に包まれた
『ぐあ!?』
ーい、いまのナニ!?ー
ー………後方からのビームによる精密射撃…未確認の飛翔体確認……ライブリー該当確認、ファナティカーズ所属オートマチックマニューバ《デストロイ・レイ》ー
慌てふためくアカネに答えるよう淡々と告げるミオ…それを聞き桃矢、キンタロウが見たのは二機の双発型ロケットバーニアを背負いビーム砲を構える戦機人にも似た機体…デストロイ・レイが瞳を怪しく輝かせ再びビーム砲を撃ってくる
『くっ!コイツなにしやがる!!』
ビームをかわしながら叫ぶ答えもしない。接近するや否や腰に懸架していたライフルを構え撃ってきた…キンタロウ本体に無数の跳弾の光が見えやがて火線は脚部ボルテックブースタに集中していく
ー叶さん、避けて!デストロイレイの目的はー
『わかってる!くそなんっう腕してやがるんだ!かわしきれねえぞ!!』
グレンバスターキャノンを庇うように背部増設バーニアと脚部ボルテックブースターを動かし回避行動を取るキンタロウをあざ笑うように旋回しながら再び銃弾の雨を降らし、ビーム砲で狙い撃ってくる
『いい加減にしろ!だんまり決め込んでんじゃねえ!聞こえてんだろうが答えろよ!!』
『………………あいかわらずだね叶桃矢……いや白い英雄…』
『その声は………お前!草加かっ!!』
『勝手に名前呼ばないでくれよ気持ち悪い……二年前の《あの街で生き残った》だけはあるね』
『……っ!……アレはおまえたち、ファナティカーズが!』
『…だとしても守りきれなかったじゃないか?のうのうと生きているお前がソレを操るのは相応しくないんだよ。ファナティカーズなら鬼を完膚無きまで完璧な作戦で倒せるからさ…さっさと渡せよ、白い英雄《偽ヒーロー》。』
『…鬼を完膚無きまでに叩き潰せる完璧な作戦……ふざけるな…そのせいで何人、関係の無い人達が死んだと思ってやがる!!』
『なに!?』
ボルテックブースターのバーニアが完全解放され、超絶的加速で旋回軌道をとるデストロイレイに迫るやいなや、ビーム砲を掴みメキメキ音を鳴らしながら握りつぶした。それを見て息をのむ草加にさらに続けた
『俺は忘れない……あの日、《あの街》でお前たちがやったことを、そして今やろうとしていることを!ファナティカーズ、俺はお前たちを叩き潰す!それを率いるトオミネにも伝えろ!首を洗って待ってろってな!』
握りつぶした砲身ごとデストロイレイを反対方向…正確には地球に向け投げすてた
『ま、まさかメッセンジャーにしたのか……叶桃矢、オレからノゾミを、アカネを奪ったように……認めない、おまえなんか絶対に認めない!!偽善者があああああ!!』
警告表示で赤く染まり激しい振動に包まれるコックピット内で叫ぶ草加はデストロイレイの身体を立て直しそのまま回収ポイントへと降下していくのを見届け桃矢…キンタロウは再びグレンバスターキャノンを構え解放式バレルが開く
『………(なんで草加がファナティカーズに?いや、今は!)……アカネ、カンザキ、エネルギーチャージは?』
ーえ?う、うんチャージは終わってるよ…ー
ー叶さん、残り時間があまりない……あと32分で阻止限界点を越えてしまうー
『わかってる……グレンバスターキャノン第二射いくぞっ!!』
バレル中心部に収束されたエネルギーが放たれる。左側の構造体を呑み込み、外壁がめくれ上がり溶解、蒸発していく。破壊しきれず飛散した構造体一部を予想降下ポイントに待機していたノゾミ機、アキラ機、サヨコ機からの攻撃で破壊されていく…左側が完全に消え残すは中心部となった、同時にチャージが完了する
『アカネ、カンザキ、残りすべてのエネルギーを撃ち込むぞ!!』
ーうん!桃ちゃん、やっちゃえ!!ー
ー………了解……全エネルギー解放……ノゾミ隊長、アキラ、サヨコ、フォローお願いー
『さっさと終わらせて安心させないとな』
『そうね。飛鳥くん、ユウジくんのところにもどらないとね……』
『みんな、最後まで油断しないで……最後の一撃、桃矢、あなたに預けるわ』
『ああ……いくぞ!みんな!!……グレンバスターキャノン・ファイナルシュート!!』
皆の声と地球を背に力強くグレンバスターキャノンを構え今まさに最後の一撃が放たれた…今まで以上に強力な光が残された中心部ブロックを飲み込む……しかし何かの影が割り込み防ぐと、暗く怪しい紫色の光ががグレンバスターキャノンの極太のビームとぶつかり、せめぎ合いながら弾き返した
『な、なに!グレンバスターキャノンが!』
ーう、ウソ…ー
ー撃ち返した?……ー
『な、なにが』
『あ、なんだよ…あれ』
『………あれは?なんなの!?』
グレンバスターキャノンの極太ビームが霧散し消えた先にある影…いや機械的かつ生物的特徴を持つ巨大な翼竜が顔をこちらに向け瞳を妖しく歪ませ見ている…大気圏を超える破壊力を持つグレンバスターキャノンを防いだ存在に身体を強ばらせる、しかし桃矢だけは違った
(なんだコイツ……いや俺はコイツを知っている?どこで?……いや、一つだけ確実なのは…この翼竜、プテラ野郎は)
なぜかわからないが敵だと身体の奥深くから訴えかける感覚に拳を握りしめ翼竜?を見据えるも、瞬く間に翼を広げると無数の光の軌跡を残し消え去ったと同時に声が耳に届く
『桃矢!構造体がもう阻止限界点に近づいてるわ!!』
『くそ!なんなのよ……このままじゃ、みんなが』
『ノゾミ隊長!極東支部に連絡を!!』
『極東支部!至急応答してください!極東支部!?………ダメ、通信が何者かに阻害されている……別回線を経由して…ダメつながらない
!!』
必死に極東支部へ呼びかけるノゾミ、アキラ、サヨコ…戦機人《翔》に迫る構造体…三機がいる場所が阻止限界エリア。それを見て桃矢は決意しキンタロウ・ボルテックブースターで一気に加速、すり抜けざまグレンバスターキャノンを分離し三人の前に優しく投げ、瞬く間もなく構造体中心部先端に到達するや否や押し止めるように立ちはだかりボルテックブースター最大出力でバーニアノズルから光が溢れ出した
『う、うおおおおおお!と、止まれええええ!!』
『な、なにやってるの!桃矢!!』
『決まってんだろうが……このデカブツを押し出すんだよ!宇宙にな!!』
『む、むちゃくちゃよアンタ!いくら何でもキンタロウじゃ』
『そうだ!いくら何でもアンタ一人じゃ…』
『………いや、大丈夫だ……それより極東支部に連絡を取れ………それに機械神は…………キンタロウ・ボルテックブースターは伊達じゃない!こんなモン押し返してやる!!』
『桃ちゃん!やめて!!』
『叶さん……やっぱりアナタは…』
グレンバスターキャノンから通常形態に戻ったグレンのコックピットから見ることしか出来ないミオ、アカネ…やがて先端部分が赤熱化し始めキンタロウも赤くなり始める
『ぬ、ぐぐぐぐ!』
ボルテックブースターのバーニアノズルの光が激しさを増す…必死に押し返そうと全力を振り絞るキンタロウ…その操神空間にいる桃矢に肌を焦がすほどの熱さと衝撃が襲いかかるも必死に耐える。しかしキンタロウの重力制御をもってしても落下スピードは落ちない
『ぐ、と、止まれ、止まれよ……キンタロウ、ふんばれ!』
あまりにも無謀な行為…しかし桃矢をこうして無謀な行為に突き動かすのは《あの街》のこと…もう二度と繰り返してはいけない。だからこそ自身の命の危険を省みない戦いを続けてきた
しかし、ボルテックブースターから小さな爆発が連鎖的に広がり爆発し飛散していく…すでに阻止限界エリアは超えてしまった。それでも押し返そうと力を込めようとした時だった
ー……………なぜこんな事をする?ー
ー誰だ!ー
真っ白な空間に浮かぶ桃矢の前に影、静かに話しかけてきた
ーそんなことはどうでもいい……こたえろ。こんな事になんの意味がある?おまえには何一つ得にはならないはずだ?ー
ーゴチャゴチャうるせぇよ!得とかそんなの関係ねえ!ー
ー……言い方を変えよう。何のためにこのようなことをする?ー
ーんなの決まってんだろうが。守りたいんだよ……俺の背中、いや下にいる皆をー
ーそこにはお前の敵……鬼がいてもか?それでも守ると?ー
ー……………ー
ーどうした?こたえられないのか?ー
ーんなのわかんねえ……でもソコには明日、未来に向かって生きてる奴らがいるんだ……だから俺はムチャだのバカだの言われても……今だけは鬼なんて関係ねぇ…未来を守りたいんだ!!ー
ー………………未来か……ならば切り開いて見ろ、新たな未来を!ー
ノイズ混じりの光が晴れ、黒くトゲトゲしい髪を靡かせたボロボロの装神装甲を纏う青年が桃矢に手を翳した。同じ頃、極東支部の大深度超弩級格納庫にある市民たちの避難所から離れた巨大なドッグにある色褪せた巨大な何かが微かに揺れやがて脈打つようにふるえ始めた
その内部に設けられた格納庫らしき場所に先に収容され未だに内部修復が不十分なキジット、ゴクウ、シロの姿…しかし内壁から光が漏れだし格納庫内に満ち、光の帯状の何かが伸び三体を包むと瞬く間に内部修復が完了し、キジットを中心にゴクウ、シロがまるでジャンボのエンジン部分に似た形態へ変形、そのまま装着され巨大な飛行機?へ変わると巨大な何かの中心部が開きカタパルトが展開、暖かな光が満ち浮遊する船?に避難所にいた市民たちが驚く中、三機が合体した飛行機がリフトアップする
「あ、あれってモモタロウのお供だよ!!」
「もしかして、エンオウにいちゃんとシンブにいちゃんがいっていたよね。お空の上で戦うキンタロウさんを助けにいくのかな?」
「そうだよ。ぜったい、まちがいないよ………」
「お供さん、キンタロウさんを助けてあげて!!」
子供たちの声に答えるように、巨大な船は消え次の瞬間、巨大な魔法陣が極東支部の直上に現れ中心から現れた
「リトス司令!基地直上に巨大な物体が………リトス司令?」
「あ、あれは………ダイアーク?」
「巨大物体から何かが出てきます……」
いきなり現れた事に中央司令室の面々が驚く中、戦闘機?は光り輝く道が指し示す方向へ勢いよく飛び出した頃、本州より南下しキュウシュウから下にあるオキナワ…《ニライカナイ》伝説が残る海から光の柱が空へ伸び、三つの何かが泳いでいくのを漁師たち、島民が目撃し老人たちは光を見て拝んでいた、二つの光は瞬く間に必死に押し返そうとするキンタロウを包み込んだ
『う、う、うおおお……超・機神合体!!』
叫び、いや雄叫びが響き渡り、やがて光がはじけ消え現れたのは赤、蒼、金に輝く装甲、背中にテラン文字が組み合わさった光り輝く翼、神々しいまでの威厳あふれる機械神。その拳を振りかぶり自身より巨大な構造体を殴り飛ばし、翼を広げた
『……∧∨∠!≯≫∂∀∆∅∨∧∌∋√∝∞!!』
ゆっくりと手をかざすとオニキリが形成、それ以上に長く幅広い両刃刀身を形成、各部のパーツ…猿、犬、キジ、熊、猪、鹿…海の生物にも似たパーツが合体、やがて巨大な剣に変わり大きく構え真っ直ぐ袈裟切りするように振り抜く。
『¢£€∑∅∨ζξνννν!∂∀≯≫∧∠∆∀∆∌∋!!』
雄叫びと共に放たれた斬撃による衝撃波は、中心部ブロックを切り裂き、さらに背後を切り裂く!不可思議な空間がひろがり、砕けた構造体は跡形もなく吸い込まれると乾いた音と共に消え去った
『な、なによ……モモタロウ?いえキンタロウなの?』
『空間を切り裂くなんて……あり得なさすぎるぞアレ!!』
『モモタロウのパーツとキンタロウのパーツ、あと知らないパーツが合体してる……エネルギーも計測出来ない』
サヨコをはじめとしたメンバーは、その圧倒的な力を見て呆然とする中、コックピット内に緊急通信を知らせる電子アラートが鳴り響く。いち早く我にかえったノゾミはすぐさま通信をつなぐ。サブモニターにはリトスの顔が映し出されたことに安堵した
「リトス司令、軌道エレベーター構造体破壊ミッション終わりま…」
『ノゾミ・カワシマ隊長、桃矢くんは近くにいるかしら?なら、すぐに極東支部に向かうように言って!、飛鳥くんが……ブレイズ・フェニックスが……』
「………………え?そ、それは本当ですか!?なんで…」
リトスから伝えられたのは驚きの内容…それは
『う、分離が……な、何をする!はなせ!!』
『おとなしくしてください。ミィさん拘束結界を……』
『はい、アレン様………拘束結界展開。強度はオーガロード級に…』
『じゃあ、この赤いのはボクが連れて行くね……どんなテラン人が乗ってるか気になるしね。じゃ先イくね』
将鬼の口から展開された不可視の鎖に身体を拘束されるのは機械神《ブレイズフェニックス》…その両腕、両脚は切り落とされ、強固な装甲には亀裂が走っている…炎凰の瞳に映るのは氷のように冷たい翼を広げ、しっぽを揺らし、蒼く輝く龍を纏うオーガロード…やがてフワリと浮かび上がり転移陣を展開、死神を模したオーガロードに引きずられるように通り抜けていく
『飛鳥くん!アイギス!!』
《すまぬ、この氷を砕くのは時間がかかる…》
『く、な、なんでこんな事に………なんで…』
歯ぎしりするユウジ…しかし真武の身体は氷に包まれ身動きすら出来ない…なぜこんな事にと思うも後の祭りだった
『なんで、機械神《氷龍》が鬼についたんだ!?』
蒼く輝く龍…機械神《氷龍》とよばれたオーガロードの姿が消え、ユウジの声は倒壊したビルに木霊した
第十一話 消える炎、大いなる方舟(桃矢side)後編
了
桃矢達がキンタロウ・ボルテックブースターと軌道エレベーター構造体破壊ミッションを行う最中、飛鳥はユウジ、第一分隊と共に避難民を誘導作戦を開始していた
しかし、飛鳥は望まぬ再会と新たな機械神覚醒を目にする
第十一話 消える炎、大いなる方舟(飛鳥side)
氷の龍の目覚め……コレも機械神に選ばれた者の運命なのか?