賑やかな活気あふれる平城京から離れた場所にある荘園……豪族である河島一族が所領として治める地…豊かな実りに恵まれたこの地には奇妙なモノがある
巨大な柱のような岩が高くそびえたち、石舞台にも似た先端には五つの石が別れ伸びる石柱…豪族である河島一族の守り神である神体があった
しかし、荘園は巨大な鬼に荒らされ炎が村を焼く中、都から派遣された若き日の坂上田村麻呂と手練れである防人達が三体の鬼に果敢に挑んでいた…
「田村麻呂どの、手勢は我等だけになりました……」
「怯むな!我らが倒れればこの荘園を誰が守る。われらを信じ散った防人達にわらわれようぞ!!」
「……田村麻呂どの……」
しかし田村麻呂達の抵抗むなしく、やがて河島一族と生き残った荘園の村人がいる神体の場所へと追い込まれていく
田村麻呂に付き従う防人達が長い筒から出た光に焼かれ、槍に弾かれ、よじ登り一太刀浴びせようとするも太刀は真ん中より折れ振り落とされ、田村麻呂一人が残された
しかし瞳からは闘志は消えていない
「……鬼どもよ!我が名は坂上苅麻呂が誓子、坂上田村麻呂なり!我が太刀をうけよ!!」
半ば折れた太刀を構え走る田村麻呂…それに気づいた長い筒を構えた鬼が筒先をむけ光が走った…誰がみても死は確実だとわかる
「おおおお!」
だが、その時…石柱が震えだし光が溢れた
リトス・ミッターナハトが国連査察部、査問会に招聘された頃、オルガス皇国第二次テラン派遣艦隊旗艦《オーガスティア》艦橋、そこにある《拝謁の間》…艦隊旗艦司令アンジュ・オーガスティア、アレン・ニーティが金の刺繍が施された絨毯に膝をついている
中央にあるスフィアから光、形をなし現れたの鮮やかな花々に彩られた十二単に緑、紅の飾りがついた帝冠を頭にいだく美しい流れるような黒髪、額に二つの紅角を持つ寂しさの色を瞳に宿した女性へ深々と頭をたれた
『…黒翼将アンジュ、龍鬼将アレン…面をあげなさい』
「は、レイム皇陛下……我ら将に願いに応えいただいたこと、真にありがたきことにあらせます」
『世辞はよい。してアンジュ、枢密院を通さずライアルヌし伝えたき事とは何ぞ?』
「………先の戦いにおき龍鬼将アレン、蒼雷のライカ両将がスーシィジュウらしき紅の機械神を討ち果たし、蒼き龍の機械神を奪い取りました」
『スーシィジュウらしき紅の機械神撃破、蒼き龍の機械神奪取……それは真か』
「は、龍鬼将アレン。この場に居らぬ蒼雷のライカが紅の機械神を撃破し現在、我が艦にてディバイナーと共に拘束してあります。コレもすべて龍鬼将アレン、蒼雷のライカの功績になります」
『………重畳にして大儀………が先に問おう。ライアルヌを使った理由は他にもあるのであろう?もしや朱の機械神のディバイナーに関してであろうかな?』
鋭く冷たい眼差しを向けるレイム……奥の院に籠もりながらも政を怠る事なき完璧な為政者、皇の姿はこの場に無くとも本星で対峙した時と変わらぬ威圧感、肌へと突き刺さる。彼女の兄である《リヒト》前皇が亡くなるでは普通の少女、オルガス皇を継ぐ前の彼女を知るアンジュは身体が竦むのをこらえ顔を上げた
「………レイム皇陛下、そのディバイナーについて具申したき事があります…」
第二.五話 敵ーオニー
一時間後、旗艦オーガスティア《メディルキア師団専用区画》。ここはオルガス皇国が誇る最高峰の医療施設が置かれており例え重傷者であろうと数時間で完全治癒する程の医師団がココに居を構え家族と共に生活している…三日前、ライカの手により手傷を負い精神的にもダメージを受けた飛鳥が運び込まれた場所でもあった
「………典医長。彼の容態は?」
「ビィエタルには問題ないわね……ただ意識を回復しないのも気にかかるけど……まさかテラン人、メルディの患者を看れるなんて最高よね~」
「はい……でもいいんですか、じかに触ったりして?………」
「いいのよ!私たちにはメルディなんて高嶺の花なんだし……他の艦のメルディはもう手付きだし………行き遅れの私たちにだって潤いがほしいのよ~!!」
黒髪を揺らし叫ぶ典医長(28シイ、独身)に、白銀のショートボブがめだつ副典医長(24シイ、彼氏なし)はまたかと頭を抑えみるのは包帯が所々目立つ病院着姿で眠る飛鳥の姿
確かに潤いは欲しい、副典医長も病院着から覗く肌と寝顔をこっそりと脳内に焼き付けてる…思わずゴクリと喉を鳴らす…アウルニィアの儀はまだ受けていないも二、三周期過ぎればよいメルディになると感じながらよだれをふき落ち着きを取り戻した(!?)典医長と診察をすすめ異常が無いことを確認したとき、自動扉が開くと石のように固まる。何故なら数少ないメルディにしてオルガス皇国最強の鬼神将の一人アレン・ニーティ、そして艦隊司令アンジュ・オーガスティアの姿
「典医長、彼の容態は」
「は、は!アレン様!!身体の治療は終わりましたが、意識がまだ……」
「そうか…目ぇさめてからこの子を…」
「典医長、彼が!!」
と、アンジュが口にした時、飛鳥の瞳がかすかに震え開くと起きあがろうとするも右腕が固定されている為想うように動けない事に気づくと怒りの火を瞳に宿し睨みつけたのをみて一瞬、アンジュの表情が陰るも消えた
「…………」
「目をさましたようやなテラン人…朱のスーシィジュウのディバイナー……オルガス皇国テラン遠征艦隊旗艦オーガスティアへようこそや」
「……………っ!?」
その言葉にハッとなりあたりを見る…見たことの無い機器と清潔感溢れ何処からか暖かな光が照らす室内をみて自分の置かれている状況を知った…白髪に黒い角を額に生やす女性の言葉通りならば自分は敵の本拠地に居るとわかるも無言で睨んでいる先に弟、新田蓮の姿を捉えた
「蓮!……おまえ!!」
「……あの、何度もいいますけど、僕はレンって人じゃ無いです……アレン・ニーティ・オーガステアですけど」
「違う!お前は…新田蓮だ!オレの弟なんだ!!………まさか、鬼になにかされたんだな!くそ返よ、弟を返せよ!!」
怒りの眼差しを向け叫ぶ飛鳥…アンジュは飛鳥を静かに目を向けると信じられない言葉を口にした
「………………それだけ元気があるなら大丈夫やな…典医長、この子は今から我らが預かる、せやから退院させてかまわんよな?」
「は、アンジュ司令!」
「アレンはゲルティアをよこしや……さあ、来て貰うで……ニーティ・ア……アスカ」
「く、離せよ……」
暴れるも手首に光の輪が展開、拘束された飛鳥を伴いメルディキア専用区画にあるカプセル型の車両へ乗せられ扉が閉じゆっくりと動き出す…左右に武官と想われる女性に挟まれながらも飛鳥はアレン、アンジュと向き合うように座り無言で睨んでいる、それを一身に受けながら真っ直ぐみた
「………ニーティ・ア・アスカ…ウチらはあんたをフリョアにつもりはない」
「アンジュ、彼は僕たちの言葉…一部言語が通じてないみたいだ……翻訳機能を最新に変えて」
「……ん、………あ、あ……ニッタアスカ、ウチらはあんたを捕虜にするつもりはない……」
「!………」
「だんまりか………まあ、おかれてる状況が状況やから迂闊に喋れば殺されると思うてるのか?我らオルガスは無粋な真似、卑怯な行いはせぇへん………ついたようやな」
静かにカプセル型の何かが止まり扉が開き、外に出た飛鳥の前には森や湖を中心に草原が広がる中に寝殿造りにも似た屋敷がある…一瞬、ライカと最後に言葉を交わした公園と情景がかぶる
「護衛はココまででええ。ココに待機しぃや」
武官にそれだけ言うとアンジュ、アレンに誘われ屋敷へはいり和室に通された漆塗り?の卓へ座った。真新しい畳と木の香りに懐かしさを感じた気がゆるんだのを見計らってか、アンジュとアレンが正面に座りお茶?を差し出した
「…安心しいや毒なんか入ってない……それとも拷問される思うたかな?憎い敵から出されたモノは特にイヤやのか?」
「……そうだよ、お前たち鬼なんか出されたモノなんか……」
「やっと口を聞いてくれたなあ。まあ飲みや……」
「!?」
軽く手をあげると光の輪がはじけ消えた…やや警戒しながらも黒茶碗を手に取り口を付け飲む、お茶特有の香りとほんのりとした甘味が広がり一気に飲み干した
「……オルガスのワビィシャを気に入ってもらえたようやな……さてとココからが本題入ろうか、今日からニッタアスカはここに住んでもらう。アンタにはウチらオルガス皇国の事を知り、学んでほしい思うとる……」
「鬼のことを知る?学ぶ?…………ざけんな!お前たち鬼がオレたちの地球にナニした?街を滅茶苦茶にしてたくさんの人を苦しめて、オレの父さんと母さんを……そして蓮を!鬼なんかのことなんか知りたくもないよ!!」
「……ナニいうとる、最初にやったのはアンタ等やないか?四年前、《約束》やぶってウチラから大事な人、凍てつく地でリヒト皇を殺……」
「アンジュ!」
「四年前?約束?…………何だよそれ?」
「………っ……話は終わりや最初にいっておく、ココからは逃げよう考えんことや…たちまち武官が襲いかかるからな。外に出たいときはこの屋敷におる住み込みの《護衛》と共に行きや……アレン、もどろ」
アレンの声にあわてて言葉を飲み込むと立ち上がり和室をあとにし飛鳥だけが残る…頭には先のアンジュが口にした《大事な人、四年前、約束、凍てつく地、リヒト皇》の言葉と微かな怒りが籠もった瞳が浮かぶ
「なんなんだよ……いったい………何とかしてココから抜け出して帰らなきゃ…」
常に側にいた炎凰の分身たるDが居ない、ココが艦であるならば艦内構造をする必要が出てくるが、知るための術が無くどう脱出すればと考えるも頭に浮かばない…どうすればと考えた時、襖が静かに開く音が耳に入り何気なく振り返りみた飛鳥は固まる
「あ…あの……」
水色の髪をサイドテールにし、ミニ和服姿の少女…飛鳥を撃墜し捕らわれる原因を作り互いに好意を寄せていたライカ・ヴァッサー・フェルミが顔を俯かせ立つ姿…
「……き、今日からボクが……アスカの護衛官につくか……」
「………と…」
「え?」
「………オレをずっと騙してた鬼が気安く名前を呼ぶな!……っく……っ」
怒りや悲しみ、色々な感情がないまぜになり込められた声が屋敷中に響き渡り、水を浴びせられたようにライカもびくりと身体を震わす…真っ赤な瞳から大粒の涙が畳に落ちた
「…………っ……な、何かあったら呼んでね………」
顔を見せず、ただそれだけつげライカは振り返ることなく和室をでて襖を閉じ歩く。しばらくして板張りの廊下にへたり込んだ
「う、ひっく……アスカ……」
そうつぶやき声を押し殺し泣き出した…なんでこんな事になったんだろうと…しかし目元を拭いふらふらと立ち上がった
ココにくる前に、ライカはレイム皇と謁見を終えたアンジュとアレンから聞かされた言葉があったからだ
ーアスカをボクたちの側に引き入れる?…無理だよ…だってボク…アスカにー
ー…レイム皇陛下は今回のウチらの戦果の褒美として認めてくれたんや。でも『味方に引き込めるならば命は取らない。しかし恭順の意を示さない場合はテラン人の前で見せしめに処刑する』言うてる…ー
ーえ?う、嘘だよね……なんでレイム皇陛下がアスカを…ー
ーおそらく前皇リヒト様の事が端を発しているんだ………でも先の戦果を踏まえて今の妥協案になった。彼をオルガス皇国の一員として迎えることで生かし守ることに繋がる、なにより成功したら先の議会での決議を覆せるんだ……ー
……アレン、アンジュから告げられたレイム皇からの命を聞いたライカは決意した。たとえ拒絶されても言葉の暴力を浴びせられても嫌われてもいい…ライカが望むのはたった一つの純粋なモノ
「…………」
小さくつぶやいた声は風に消され、ライカは立ち上がると割り当てられた自室へと歩き出した
第ニ.五話 敵ーオニー
了
次回は本編です