ティグリス邸
「はあ、どうしょう~」
蹲りながら唸る…今。あたしがいるのはお気に入りの場所…パパやママも知らない秘密の場所。白い猫の石像の前にいる。幾ら悩んでも答えは出ないし、啖呵切ったあたしも悪いし
何より“虎”に迷惑をかけてしまう。でもパパやママを納得させるには
ああ、どうしたら…
「にゃあ~~」
「え?猫?」
白いフワフワした毛並みの子猫が心配そうに観てた。抱き上げるとスゴく人慣れしてるし、野良猫には見えない…喉を撫でると気持ちよさそう
「にゃ?にゃゃ?」
なんか驚いたみたい。しきりに匂いを嗅ぐしぐさ…心なしかポケットに手を伸ばそうとして引っぱりだした。
『ほら、ふきなアリス』
今日、整備してるあたしに虎が、貸したハンカチが入ってたんだっけ…
「ごめんね猫ちゃん、これは遊び道具じゃなないの」
「にゃ?にゃ~?」
「ねえ、猫ちゃんはどこから来たの?」
「に、にゃ~?にゃ?」
ん~なんか変わった猫だなって想いながら沢山遊んでるうちに悩みが少しだけ軽くなった
(……お嬢様から感じた匂い……まさか!!)
数日前
ティグリス邸
「はあ、どうしょう~」
蹲りながら唸る…今。あたしがいるのはお気に入りの場所…パパやママも知らない秘密の場所。白い猫の石像の前にいる。幾ら悩んでも答えは出ないし、啖呵切ったあたしも悪いし
何より“虎”に迷惑をかけてしまう。でもパパやママを納得させるには
ああ、どうしたら…
「にゃあ~~」
「え?猫?」
白いフワフワした毛並みの子猫が心配そうに観てた。抱き上げるとスゴく人慣れしてるし、野良猫には見えない…喉を撫でると気持ちよさそう
「にゃ?にゃゃ?」
なんか驚いたみたい。しきりに匂いを嗅ぐしぐさ…心なしかポケットに手を伸ばそうとして引っぱりだした。
『ほら、ふきなアリス』
今日、整備してるあたしに虎が、貸したハンカチが入ってたんだっけ…
「ごめんね猫ちゃん、これは遊び道具じゃなないの」
「にゃ?にゃ~?」
「ねえ、猫ちゃんはどこから来たの?」
「に、にゃ~?にゃ?」
ん~なんか変わった猫だなって想いながら沢山遊んでるうちに悩みが少しだけ軽くなった
(……お嬢様から感じた匂い……まさか!!)
////////
/////
//
「…………」
「…………」
静寂な空間に鹿脅しが甲高く鳴り響く…畳の匂いと白い虎が今にも襲いかかろうとする瞬間を捉えた和襖が静かに開く。入ってきたのは濃紺のスーツにみを包み、綺麗に揃えられた髭、オールバックにした50代前半の男性、あとに続くように桃色の生地に花が刺繍されたチャイナドレスに似た衣装に、ふわりとカーブを描くような長い金髪を螺鈿細工の髪留めで結んだ女性
ゆっくりと黒檀の卓に座り反対に座り、ゆっくりと顔を向け静かに言葉を紡いだ
「……君が城田虎次朗くんかね。私はカズト・神山・ティグリスだ…」
「は、はい……城田虎次朗と言います。本日はアリスさんに招かれ参りました…こ、これを」
「……あらあらご丁寧にありがとうね…私はメイファ・神山・ティグリス。アリスの母親です。ねえねえアリスちゃんとはドコで知り合ったの?キスまで終わらせた?」
「マ、ママ!な、なにきいてんのよ!!」
「…………い、いや、まだキスは…(く、親父さんにらんでる!)」
かたや娘が初めて家へ連れてきた男を睨むように品定め、男っけのない娘が連れてきた彼氏に興味深い視線を浴びる虎次朗の背中に汗が落ちる…アリスの慌てた声を聞きながら、まさに針のむしろな状況下。なんでこんな事態になったのかを思い出していた
第三話 嵐纏う白虎”前編“
二日前、ヴァルキリーズ極東本部
同地下《超ド級大深度格納庫》
「らーい、らーい………よし、そこでゆっくりとすら~」
ヘルメットに虎柄のつなぎ姿の少年…現役高校生にして、ヴァルキリーズ極東本部、整備班《チーム虎》の主任チーフ、城田虎次朗の指示に従いクレーンから積み荷がゆっくりとおり、微かな地響きと共におかれ、ワイヤーを取り外していく
ココ、超ド級大深度格納庫では五日前、桃矢の意志に応えるように起動した発掘艦の調査が行われていた…解析の結果。メイン動力源に一部破損、経年劣化による外装損害と艦内制御システムはブラックボックス、稼働には補助動力源を搭載しなければ起動すら不可能だとチーム虎、源三博士らの手で判明し、内部構造調査および修復作業が行われていたのだ
「源三博士、アキツキから送られてきたプラズマリアクター配置をこうしたいんだけどさ」
「む~プラズマリアクターを補助エンジン兼スラスターにするのか……たしかにコレならば必要な揚力を生み出せるの…幸いスペースはあるから問題いないじゃろ」
「だろ、んでメイン動力源に火を入れるためのバイパスなんだけどさ…何ヶ所かボトルネックを設けて安全確保できるように…いや、ここに…」
いくつものウィンドウを浮かばせ考え込む虎…様々な数値、バイパス回路構造を打ち込み終え、シュミレートプログラムを流し、少し遅めの休憩を取ろうとした時だった
「虎!少しいい?」
「どうしたアリス?。こんな所に来て……もしかして戦機人の整備に不具合がでたのか?」
「せ、整備に不具合は無いというか…その、あの…と、とにかく少し来て!大事な話があるの!!とにかく来なさい!!」
「お、おい!ちょ……そ、そんなに引っぱるなって…わ、ワリぃ源三博士、みんな!あと任せるわ?!」
ぐいぐい引きずらるようにアリスと虎は、共にエレベーターへと乗り込むのを見てチーム虎の面々は
「ねえ。アリス小隊長、遂に告白するのかしら?」
「虎主任、鈍いからしびれを切らしたのかも?」
「それか、アリス小隊長が主任を両親に紹介したりして。「あたしの彼氏よ!」って感じで」
「ありえるよね~」
「………若いのう……」
いろんな憶測を口にするチーム虎、アリスが主任である虎次朗へ好意を向けていることを知っているからだ(アリス本人は隠しているつもりだが、周囲の皆にはバレバレ)。作業を止めずに盛り上がる年頃の女性たちに驚きながら源三ら言葉を漏らし解析作業を続けた
「どうしたんだアリス?いきなり」
「え、えと……と、虎、じつは……お願いがあるの……で、でも迷惑……」
大深度超ド級格納庫からエレベーターをいくつも経由して地上部へと出た俺とアリスがいるのは敷地内にある森林区画。もともとは鎮守の森であったらしくて、建設するときは手を入れずにそのまま残して竣工したって、じいさんから聞いた
「そ、その…」
芝生に座って俺を見ながら指をもじもじして、チラチラと歯切れ悪そうになんか呟いてる。お願いが…迷惑なんたらって聞こえたけど。なんか悩んでるみたいな…
「あ、あの虎!
「お、おう」
「え、えと………わ、私の彼氏にになって!!」
「・・・か、か、彼氏!?彼氏って?あの彼氏!?っ、つうか?俺まだ学生だし!?アリスとは歳が………」
「歳は別にいいじゃない!!」
「…あ、わ、悪かった…でもさ何でいきなり彼氏になってって……なんかあったのか?」
「じ、じつは……その…パパが…」
昨日………ティグリス邸
「アリス。そろそろ結婚を考える時じゃないか?見合いをしたいと話があるんだが」
「パパ、アタシは今は鬼から皆の住む街を守りたいの。見合いなんかしないわよ(それに、虎と離れたくないし…)」
「しかしだな、いずれお前はティグリス財団を継ぐのだぞ…我らヨコハマ華僑の長として…」
「わたしは継がないし見合いなんてお断りよ!だって彼氏いるし!!」
アリスの言葉に真っ白に固まる。跡を継がないより後から出た彼氏がいる発言に呆然となるカズト、その脳裏に浮かぶのは…
ーメイファ、この子の名前はアリスだ……はい、パパだよー
ーねえねえパパ~抱っこして~ー
ーほら、はい……アリスは可愛いなあー
生まれて幼稚園に上がり甘えん坊真っ盛りなアリスを抱っこした
ーパパ、はい誕生日おめでとう♪ー
ーありがとうアリス、大事にするよ…ー
ーあなた、泣かないの。スマイル、スマイル♪ー
小等部に無事上がり、四年生の時にネクタイピンをもらった…今でも大事に使っている
ーパパ、わたしを士官学校にいくわ!!ー
ーアリス、考え直すんだ…なぜ士官学校に……ー
ーアタシはセイバーズに入りたいの…市民を護るセイバーズの軍人にー
ーダメだ、ダメだ!まだ中等部卒業すらしていない!!お前には無理だ!!ー
ーあなた!その言葉はいっちゃダメ!!?ー
ーパパの………パパのバカ~!!ー
中等部卒業前、初めてアリスとケンカをした……結局、わたしが折れ士官学校へ入学を許した……しばらく口をきいてくれなかった
無事に士官学校を卒業して軍へ入ってセイバーズに配属になった時は嬉しい反面、不安もあった…軍の内情を知る華僑出身の高官から不穏な動きがあると聞いていたからだ。だが四年前に鬼が現れ防衛戦を経て数カ月後にセイバーズが解散、そして軍を辞め帰って来たときは明らかな失意を漂わせていた。軍の内情を知り傷ついたのだろうと思いソッとするしか出来なかった
しかし
ーパパ。アタシ、ヴァルキリーズにスカウトされたからー
いきなりカズト、メイファに告げヴァルキリーズに入ったアリス…前までの失意が消えていた…立ち直ってくれたのはいいし、それにヴァルキリーズは鬼から街と市民を守る組織だ。娘にとって再スタートを切るのに相応しい
ウチに帰り過ごせる時間は少ないが活気に満ちていた…そろそろ結婚を考え、有力華僑出身者との見合い話を勧めたカズトの耳に入ってきた「彼氏が出来た」との言葉にたいして僅かに逡巡し静かに口を開いた
「……ならば今度連れてきなさい……メイファもいいな?」
「え?あのパパ?」
「あらあら~じゃ早速用意しなきゃね~」
ーーーーーーーー
「って感じで…パパ、ママが会いたいって聞かないの…だからお願い虎、彼氏のフリをして!」
……そう言う理由か、まあ顔も見たことないヤツと見合いさせられるのはイヤにきまってる。何よりアリスの意志を無視してやがるのは気に入らねえ
「わかった、引き受けてやるよ」
「ホント!ありがとう虎、じゃいくわよ」
「え?行くってドコに?」
「まずは服を選ばなきゃパパとママに会うし、スーツをそろえなきゃ、あと美容院に予約と……」
「ア、アリス?会うだけだから服とかは……」
「ダメよ!ちゃんとした格好でいかないとパパに疑われちゃうから!ほら、さっさといくわよ」
「あ、おい…まだ整備が……」
「大丈夫よ、さっきチーム虎の子達が『整備は私たちがやるから、アリス隊長の為にがんばってね~』っていってたから」
な、い、いつの間にアイツら~………んで、そのままアリスに引き摺られて服屋、美容院、etc.etc…あんまり揃えた事のない髪をビシッと切り揃えられて、スーツの採寸から着付けまで、シャツ、ベルト、靴もアリスがテキパキと指示していく。そして……
「なんかおかしくないかアリス?あれ、どうした?お~い?アリスさ~ん」
「な、なんでもない……かわりすぎよバカ」
プイッて視線を逸らされて凹んだ…んで、今にいたんだけど。アリスの親父さんの目が滅茶苦茶怖い。目で人を殺せるんじゃないかってぐらいに
「あ、あのつまらないモノですが…どうぞお父さ…”」
「あ”あ“?だれがお義父さんだ?……娘は…グハ!?」
中華街で買った諂心(黒ゴマ餡タップリのごま団子)を渡そうとしたら身を乗り出してきた…けど鈍い音と同じに糸が切れたように座椅子にへたり込んだ…隣にいるアリスのお母さんがニコニコ笑ってる
「あらあら~季節外れの蚊がいたわ……最近多くてね。カズトさんは蚊が苦手なのよ」
「あ、あのアリスのお母さん?アリスのお父さんは、なんかヤバいことなってないですか?」
「大丈夫よ~最近、ふぁなって人が言いがかりつけてきて疲れたのよ……あと虎ちゃん、私の事はメイファお義母さんってよんでいいわよ。将来的には義息子になるんだし~」
「マ、マ、マ、ママ!?」
イタズラっぽく笑いかけるメイファさんにアリスはあたふたしてチラチラ見るし顔なんかスゴく赤い…いや、んな事よりいきなり義息子認定されてるんですけど!?今日はニ〇コイならぬ偽恋人で来たのに!?
「あ、あのメイファさ「お義母さん」……だからメイフ「お・義・母・さ・ん♪《……》」………メイファお義母さん、あのオレはアリスさんと」
「あら、式の段取り?じゃあ神前式、教会式、それとも~あ、でも純白のウェディングドレスは外せないわね」
だ、ダメだ……もうメイファさんの中じゃ結婚式挙げる段取りが現在進行形で組み立てられてるよ!ど、どうするウソだとハッキリ言わいと取り返しが…あ?
「ん、ん~~ママのバカああああ─────」
顔をこれでもかってくらいに真っ赤にし立ち上がる叫んだアリスが開け放たれた庭へ飛び出し泣きながら走り去ってく…
「アリス!?」
「あらあら~やり過ぎちゃった♪」
「やりすぎッすよ!…ってやり過ぎちゃったって?」
「……あの子って意地っ張りだから~それに虎ちゃん、貴方と話してみたかったかしらね……ねえ、本当はアリスちゃんと付き合ってないんでしょ?」
すうっと目を細める…う。なんかスゴく怖いんですけど!?
第三話 嵐纏う白虎“前編”
了
次回 第三話 嵐纏う白虎“後編”