敏捷魔法使いはメイプルちゃんに勝ちたい   作:集う炎帝

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13.魔法使いとボス戦

 6日目の夕方から夜にかけてボス戦に向けての戦略を話し合っていたのだが、思わぬ来客があった。

 

「ん?また会ったな」

「こんなところで何してるの、カスミ?」

 

 和装に刀を帯びた女性、第一回イベント7位のカスミだ。

 

 夜も更けてきたから身を隠そうと、いい場所を探していたらこの洞窟にたどり着いたそうだ。

 サリーとメイプルと知り合いだったことに驚いたが、このイベント中に協力してダンジョンを攻略した仲らしい。俺はカスミを知ってはいたが、会ったことはなかった。そもそも初対面の相手はあまり得意ではない。

 協力したとはいえ、ここまで仲を深められていることに若干の羨望を覚える。メイプルはクロムとも知り合っていた。こういうコミュ力もメイプルの力になっているのだろうか。

 

 カスミも俺もいることに驚いていたようだったが、ボスのことを話すと「私も協力しよう」と申し出てくれた。そのかわり銀のメダルが今9枚らしく、3枚以上手に入ったら分けて欲しいという条件はあったが、俺はメダルをもう求めていないしメイプルたちも大丈夫とのことで、パーティーメンバーが1人増えた。

 

 

 こうして5人でボスに挑むことになり、再び戦略を話し合い、イベント6日目の夜も更けていった。

 

 翌日の朝、ついにイベントも最終日。

 洞窟を出て、ボスの居場所へと向かう。他のプレイヤーと会うこともなく、順調に道程をこなしていく。

 海岸につくと、【水泳】持ちが泳いでそれに【水泳】を持たない人が捕まる形で海上を移動していく。そうしてたどり着いた孤島。石碑の残骸の上に、魔力結晶を嵌めた石碑を置く。

 結晶が輝きだした。これで、弱体化ギミックは全てこなせたはずだ。

 

 チョコさんとメイプルがポーションを飲み、海に潜り始める。

 チョコさんやメイプルは【潜水】を持っていないため海中にある魔法陣にどう向かうかという問題があったが、チョコさんが【水中呼吸ポーション】というものを作っていた。数は10個とあまり多くないが1個で10分間水中で活動でき、10個で2人も他の【潜水】持ちと同じくらいは活動できるので、ボスへの移動もボス戦でも問題はなさそうだ。

 

 10分近く潜水を続け、魔法陣のある神殿へとたどり着いた。

 魔法陣のある部屋に入ると、黒ずんでいたはずの十字架が美しく輝きだしている。石碑を置いた影響だろうか。

 

「じゃあ、いくよ?」

 

 パーティーメンバーに問いかける。

 

「はい!」

「うん」

「よーし」

「ああ」

 

 それぞれが思い思いに声を発する。

 

 こうして魔法陣に足を踏み入れた。

 ワープした先は2度訪れた玉座の間。しかし、その様相は大きく変化していた。

 ドームを満たしていた水は消え、そこら中に玉座の王様を縛る鎖が張り巡らされている。AGIも減っておらず、鎖は足場として使えそうだ。

 【潜水】やポーションの時間を気にする必要もなく、かなり戦いやすくなった。

 

 

 

 戦闘はこれまで通り、王様がトライデントを掲げるところから始まった。

 トライデントを煌めき、電撃が放たれる。俺とサリー、カスミは回避し、メイプルがチョコさんを庇いながらサブの盾、【白雪】で受け止める。

 水がなくなって必中ではなくなった。だが、命中したメイプルからはダメージエフェクトが煌めいていた。

 

「メイプル!!」

「これ、貫通攻撃だ!」

 

 サリーが声を掛けるとメイプルはそう答えた。

 

「チョコさん回復!」

「はい!」

 

 回復しすぐに全快したが、この効果は予想外だった。俺はVITが低く、貫通攻撃の効果は薄い。水で満たされている時の必中に気を取られ、他の追加効果を考えもしなかった。気を付けないと。

 

 そんな後悔をする間も攻撃は襲い掛かる。部屋の中心に4つの水竜巻が現れる。

 その奥から撃たれる水のビーム。

 

「【サンドウォール】」

 

 当たりかけたものを砂壁で防ぐ。

 一瞬途切れた隙に、水竜巻の下をすり抜け俺とサリー、カスミが前にでる。

 メイプルとチョコさんもそれに続くが、AGIの差から俺たちの後に続く形になっている。

 

「【ダブルスラッシュ】!」

「【四ノ太刀・旋風】!」

「【ストーンバレット】」

 

 左右から襲う触手を切り払い、増え始めていた爆発する泡を遠くから打ち抜く。一部の魔法を外してしまったが、外れた先にはビームを撃つ魔法陣があった。すると魔法陣は消滅した。

 どうやら魔法で壊せるらしい。

 

「ビームも防げる!トライデントに注意して!」

「「了解!」」

 

 情報を共有しつつ、2人を狙っていた魔法陣を撃ち抜く。

 

 斬った触手が回復するよりも先に、近接の2人が王様を間合いに入れた。

 

「【パワーアタック】!」

「【七ノ太刀・破砕】!」

 

 2人がそれぞれ強力な一撃を与える。

 

「【ウォーターアロー】」

 

 2人を狙う魔法陣を破壊しながらも余裕があれば本体へと攻撃をする。

 

 後ろを確認すると、メイプルとチョコさんも水竜巻を潜り抜けている。触手がチョコさんを狙うがメイプルの盾に阻まれ、動きを止めた瞬間俺の魔法で破壊した。

 

 味方の援護に集中し過ぎて前方の警戒がおざなりになり、ビームが軽く掠ってしまった。

 

「体力!B!3、2、1!」

 

 口頭でタイミングを合わせながら特定の場所へ向かうと背後からポーションが投げつけられ、HPが全快した。

 回復させたいもの、そして場所とタイミング。それを伝えるとチョコさんは完璧に合わせてくれる。

 

 近接火力のサリーとカスミ、中距離火力と支援の俺、後方支援のチョコさんと護衛のメイプル。

 

 そんなパーティープレイによって、1人で挑んでいた時と比較すると圧倒的に楽にHPを削れている。

 

 しかし、サリーはすごいな。今のところノーダメージだ。

 

 

 HPを4分の1ほど削った時、ビームを撃つ魔法陣がドームの全周を覆った。発射まで10秒近くあるとはいえ、普通にやっていては間に合わない。

 

「【蔓鹿】【エクスプロージョン】」

 

 多方向で巻き起こした爆発が、魔法陣を一掃していく。鹿の放った爆発は王様も巻き込んだが、想像よりもダメージが大きい。属性の相性か?

 取りこぼした魔法陣を小回りの利く魔法で壊していくが、全て破壊には至らなかった。

 

 数多の方向から降り注ぐビーム。俺は少しでも味方への被害を減らそうと、【サンドウォール】と【アースリフレクション】でビームを防ぎ、防ぎきれなかったものは回避する。

 回避を確信できたが、他の人は大丈夫だろうか。

 確認していく。

 

「【一ノ太刀・陽炎】」

 

 カスミはスキルでの移動で回避し、同時に攻撃も仕掛けていた。

 

「ふっ」

 

 サリーは体を捻じり最小限の動きで回避。

 

「【カバー】!」

 

 メイプルはスキルでチョコさんを庇いつつ、その防御力でノーダメージ。

 どうやら大丈夫なようだ。

 

 ビームの雨が止むと同時に放たれる電撃。近距離ゆえ、カスミが回避しきれなかった。

 

「すまん、体力、Cだ」

 

 カスミが回復に動くが、トライデントがカスミを狙って振るわれる。王様の振るうトライデントはその全てが遠距離に飛ぶ攻撃だ。間合いを抜けるには間に合わない可能性がある。

 

「【超加速】【サマーソルトキック】」

 

 間合いに飛び込み、勢いそのままでトライデントを蹴り上げ軌道を逸らす。

 魔法での攻撃をしながら攻撃を対処し続けるとカスミが無事回復を終え、再度ボスと斬り結ぶ。

 

 俺も距離を取り、援護メインに戻る。

 

 

 

 その後も順調にダメージを重ね、残りHPが半分となった。

 

 ──突如、何条もの電撃が襲い掛かる。

 

 近接の2人は一気に距離を取った。

 

「【蔓鹿】、この横に!」

 

 巨大な蔓の鹿を座り込ませ、電撃を防ぐ壁にする。限界はあるが、有利属性なら数十秒ほど耐えられるだろう。

 チョコさんが俺とカスミの回復をし、鹿が消えた後はメイプルの盾と俺の魔法でなんとか防ぎきる。貫通攻撃だけあってメイプルにもかなりのダメージが入ったが、回復はギリギリ追いついた。

 このドームが水で満たされていたら回避できないし、回復も追いつかずに死んでいただろうな。

 

 

 

 電撃は最終的に30秒続いた。

 電撃が止むと同時に、王様が玉座から浮かび上がった。

 鎖の拘束に逆らいながら強引に高度を上げ、高所から攻撃を降らせてくる。

 だが、拘束に逆らった影響か、HPが徐々に減少している。

 

 つまりこれは一定時間耐えろということか。

 

 上からの攻撃は壁で防げない。ビームと触手と泡は攻撃で相殺できるが、電撃とトライデントがキツい。

 電撃は予備動作から攻撃に移るまでがかなり速く、トライデントは投げる動きが加わり、その攻撃範囲も水を纏い増大している。

 

 正直、長時間耐え続けるのは面倒だ。

 

「【悪食】使うから援護お願い!」

 

「「オッケー」」

「了解」

「わかりました!」

 

 鎖は未だ王様と繋がっている。

 足場としていけば近づくこともでき、ダメージを増やせる。

 

 【悪食】は回数制限のある奥の手。事前に使うタイミングはアドリブだと伝えていた。軽く攻め方を指示し、俺たちは攻勢へと出た。

 

 前衛の2人と俺が、別方向から鎖を伝い、ボスへと迫っていく。

 

 王様がトライデントを掲げる度に放たれる電撃は鎖を伝い俺たちに襲い掛かる。さらに現れる魔法陣と泡、そして触手。

 この狭い鎖の上では躱しにくい。だが

 

「【毒竜】!」

 

 下から撃たれる毒のブレスが魔法陣と泡、そして触手を一掃する。

 あと数秒で【悪食】の間合いに入る時、王様がトライデントを構え、俺めがけて横薙ぎに振るった。

 

「【ジェットブースト】【左手:糸】【伸縮糸】」

 

 加速と糸で王様の上から背後に回る。 

 王様は首を回し、俺を見ると振り切ったトライデントを突き刺してくる。水を纏い、攻撃範囲の広い攻撃。だが

 

「【七ノ太刀・破砕】」

 

 王様の下へたどり着いたカスミが、大上段から振り下ろした刀に、トライデントがはじかれた。

 

 王様に巻き付く鎖のすき間を練って、王様に噛みつく。【悪食】の効果でその身を大きく抉り取った。再度噛みこうとするも腕で振り払われトライデントが投げられた。その攻撃は確実に躱せない速度で、正確さで投げられ俺に襲い掛かり──空を切った。

 

「【蜃気楼】、さすがだ」

 

 思わずそう言葉が零れる。

 サリーの持つ幻影を見せるスキル。上手く決まるとここまで効果的なのか。

 

 王様を斬りつけるサリー達を横目に、もう1度、2度、3度と噛みついていく。

 

 王様の手元にトライデントが戻ったのを確認すると、俺は王様から離れる。なにか行動が変化したように見えた。

 

「一度撤退で!!」

 

 カスミとサリーに声を掛けながら離れ際に【メテオインパクト】を食らわせる。相手の残りHPは2割ちょっと。

 

 王様の動きを注視していると、王様は水竜巻を纏い、徐々に高度を下げていった。

 

 俺たちは鎖から降り、数秒後、王様も地面へと降り立った。

 

 

 

 重厚な破壊音が響き、水竜巻が霧散する。

 中から現れた王様からは、巻き付いていた鎖が消えていた。

 

 尾ひれで地面にどっしりと構えHPの減少は止まった王様は、俺たちの数倍はあろうかという長大なトライデントを構え、俺たちを見据える。

 

 これが、最終形態か。

 

 

 

 いざ、尋常に。

 

「【ロックキャノン】」

 

 俺の魔法で、決戦の火蓋を切った。

 

 トライデントが振り下ろされ、魔法はあっさりと撃ち落される。同時に衝撃波が放たれるが、俺は横に避け距離を詰める。

 背後には後衛の2人がいるが、

 

「ふん!」

 

 メイプルの防御力の前に防がれる。

 

 そして振り下ろしという大きな動きを見逃す前衛ではない。

 

「【一ノ太刀・陽炎】【四ノ太刀・旋風】!」

「【超加速】【ダブルスラッシュ】!」

 

 瞬時に距離を詰めた2人は鋭い連撃を食らわせる。

 王様はトライデントを手元に戻そうとするが、

 

「【ロックバインド】【ホールドンゴーレム】」

 

 土砂に、土の腕に拘束され、その動きを止める。

 

「【パワーアタック】【猪突猛進】!!」

「【終ワリノ太刀・朧月】!」

 

 前衛2人の目にもとまらぬ連続攻撃がHPをゴリゴリと削る。あと一息。

 

「【カバームーブ】!はああ!!」

「【ジェットブースト】」

 

 ボスの目の前に移動したメイプルが、黒い盾を叩きつけると同時に、俺もボスに噛みつく。2人の【悪食】が同時に発動し、王様は満身創痍。だが、トライデントを振り回し、その命を未だ灯している。

 

「【貫通付与】【属性付与:風】【アースクエイク】」

 

 隆起した石柱が、王様を貫く。

 王様は断末魔を上げ、怨嗟に満ちた瞳で俺たちを見つめ──光の塵と化した。




次回で第二回イベント編終わらせる予定です。
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