敏捷魔法使いはメイプルちゃんに勝ちたい 作:集う炎帝
第二回イベントの終了の翌日、アップデートがあり、新たに【光虫】というモンスターがスポーンするようになった。【光虫】から確率でドロップする【光虫の証】を使うことで、ギルドを結成できるようになったのだ。
当然、俺も狩りまくって最高ランクのものを手に入れたのだが、俺はその扱いに迷っていた。
数人から、勧誘を受けていたからだ。
トッププレイヤーのペインやミィ、サリー、そしてサッキ―。
どのギルドも間違いなく実力者が集まるギルドになるだろうが、どのギルドに入るのがいいだろうか。
ミィのギルドには第一回イベントの入賞者3人が既に参加を表明しているが、ここは少し遠慮しておきたいという気持ちがある。単純に交流の深い相手がいないこともあるが、軍隊的な雰囲気は少し苦手だ。
ペインのギルドも、既にドレッドやドラグ、フレデリカといった実力者が加わると表明している。ペインの実力も考えると、ギルド対抗イベント等で勝ちたいならここに所属するのが効率的ではある。
そしてサリー。ギルド自体の結成はまだだが、まず間違いなくメイプルも参加するのだろう。メイプルには不思議な引力がある。サリーとメイプルが所属するだけで十分強力な存在になるのは間違いないのだから、成長力に関していうと一番未知数といえる。
サッキーのところは、多分1番好き勝手できるギルドではあるだろう。だが、他と比べるとレベル自体は一段落ちる。
非常に悩ましい。メイプルを越えるためにメイプルの入るギルドに入るというのも選択肢としては全然ありだ。だが、ギルド対抗戦とかで戦えなくなるのはどうなんだろう。
そんなことを考えながら街を歩いていると、ある人物に出会った。
白い金属に青い装飾が施された鎧を纏った、金髪青目の男性。このNWOにおけるトッププレイヤー。
「ペイン……」
「君は……トートか。メッセージは見てくれたか?」
「あ、ああ」
「それで、どうだろう。俺たちのギルド、【集う聖剣】に入らないか?」
ペインとは、直接戦った経験はない。だが、パーティーを組んだことはあり、その実力も目にしている。
これほどの実力者がつくるギルドなら、入りたいという人も多くいるだろう。だが……俺は、第一回イベントで、こいつに負けているんだよな。
そんな相手の下について、それでいいのだろうか……?
「ペイン……俺と、決闘してくれ!」
決闘フィールドへと転移し、カウントダウンが始まる。開始までの時間は30秒。この緊張感を味わうのも久しぶりだ。
ペインはいつも通り、剣と盾を構え、俺を見据えている。
ペインの強さはその万能性。速く、力強く、堅牢でそれを適切な技術をもって振るってくる。だが当然、メイプルよりは柔らかい。
火力を生かして距離を保つ。結局、これが一番だろう。
だがAGIはほぼ同等か、少し下くらいだろう。装備をAGI重視にしてはいるが、どれだけの差があるのか。
『5、4、3、』
カウントダウンは残り僅か。
始まった瞬間、【超加速】を使う。じゃないと、速攻で距離を詰められて負けてしまう。
『2、1、fight!』
「「【超加速】」」
始まった瞬間、俺は後ろへ、ペインは俺めがけて跳び出した。
「【貫通付与】【海皇の威光】【ロックキャノン】」
俺の背後に魔法陣が現れる。ビームの発射までは若干のタイムラグがあるが、その隙は他の魔法で埋める。この距離なら、距離を詰められる前に攻撃できる。
「【レーザーブレード】【猪突猛進】」
だが、ペインの剣に光が迸り、さらに加速する。
「なっ!」
想像を超える圧倒的な速度。
これは、スキルによる加速だけじゃない。素のAGIの時点でかなりの差があったのか!?
【レーザーブレード】は一定時間剣に光属性と火属性を付与する。【猪突猛進】中は新たにスキルを発動できないが、その前に発動した効果は残る。
この火力は耐えられない。
「【サンドウォール】【アースリフレクション】」
俺とペインの間に、2枚の壁が隆起する。
だが、次の瞬間には壊され、目の前に迫るペイン。剣が振り上げられ、数瞬後には振るわれる、そんな瞬間にペインに襲い掛かる5条の青いビーム。
ようやく、【海皇の威光】が発動した。
これで倒せたとは思わない。だが、少し隙ができたはず。距離を取ろうと、思いっきり地面を踏みしめる──体を通り抜ける刃の感触。ビームの消えた視界には、ダメージを受けながらも一切崩れぬペインの姿。
ああ、負けたのか。
視界が光に包まれ、元の場所へと転移された。
「どうだい、答えはだせただろうか」
「うん……決めた」
ペインと戦って、手も足も出なかった。今の俺では、どうやっても勝てないだろう。だからこそ、越えたいと感じた。だから。
「俺は、【集う聖剣】には入れない」
「そうか。催促したみたいですまないな」
「いや、大丈夫。これからもライバルとして、よろしく」
「ああ!」
握手を交わし、俺たちは別れた。
俺は連絡を取り、待ち合わせ場所へと向かう。
「よっ!イベントでバトった時以来だな!」
そこにいたのはサッキ―。俺は、こいつのギルドに入ることにした。
越えたい相手を見据え、自分を鍛えていく。そのために、ペインやミィ、メイプルと同じギルドには入らない。これが俺の選択だ。そう伝えると、サッキーは喜色に溢れた表情で、肩を組んできた。
「じゃあ、私も手伝ってやる!これからよろしくな!」
「ああ」
「よし、じゃあこれから【ギルドホーム】選びにいくか!」
「あれ?まだ決めてなかったのか」
「いや私のもってる【光虫の証】は低ランクでよ。お前が持ってるのを使わせてもらえね?」
「まあ、いいよ。俺も入るギルドだし」
「ありがとな!」
そうして選んだ【ギルドホーム】は、5階建てのビルだった。最高ランクの【光虫の証】ということもあり、一階一階もかなりの広さを誇る。
「じゃあ、他の面子も呼んで、ギルド名決めるか!」
そう言ってサッキーが集めたメンバーと共にギルド名を話し合っていく。その中には、俺のフレンドや第二回イベントでサッキーと共に俺を襲った奴らも混ざっていた。上位と比べると劣ってはいるが、彼らもなかなかの実力者。このメンバーなら、ギルド対抗イベントも楽しみだな。
そんなメンバーであーだこーだ言い合って、最終的には出し合った案からくじで決まった。その名前は。
【テュール戦闘団】
軍神を掲げ戦う、そんな名前。
俺もこの名に恥じないよう、そしてこのギルドが強くなるように、頑張っていこう。