敏捷魔法使いはメイプルちゃんに勝ちたい   作:集う炎帝

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16.魔法使いと悪魔の代償

 サッキ―たちとギルドを立ち上げた俺は、ギルド名決めにいなかったフレンド達に勧誘のメッセージを送った。

 大抵の人は、他のギルドに入ってたりで断られたが、入ってくれた人もいる。

 

「チョコさん!」

「よ、よろしくお願いします!」

「おう、よろしくな!」

 

 チョコさんもその1人だ。

 メイプルたちのほうじゃなくていいのかとも思ったが、生産職トップのイズさんがメイプルのギルド、【楓の木】に入っていたそうだ。そして俺と同じく、同じギルドで高め合うよりも、別の場所からライバル視して頑張ることにしたそうだ。専属の生産職は【テュール戦闘団】にはいなかったので、俺たちとしても大歓迎である。

 

 クロムやカスミなんかも誘ったのだが、2人ともメイプルのギルドに入ったらしい。クロムには今度会ったら一言言ってやりたい。

 

 このギルドの大体の人は向上心の強いやつばかりだ。サッキ―がそういう人で同じ人種と仲がいいから自然とそうなっている、というのもあるのだが、第一回イベントの後にこのゲームを始めた人が多く、トップに追いつけ追い越せという雰囲気でギルド全体が燃えている。俺も、その燃やしてる側の1人なのだが。

 そんなギルドだからか、情報交換が盛んにおこなわれている。

 この前も、【毒竜】を手に入れようとソロで挑んだ人が、【絶対防御】というスキルを見つけたと話題になっていた。【絶対防御】はVITが2倍になる代わりに、STR、AGI、INTのステータスを上げるために必要なポイントが3倍になるという、壁役としては垂涎のスキルだ。ただし取得条件はダメージを食らわずに1時間攻撃を受け続けるという誰がそんなことをするんだというものだ。そんなものどうやって手に入れたのかと思ったら、【毒竜喰らい】での毒無効と、装備やスキルでVITを高めた結果【毒竜】からダメージを受けなくなったが、メイン武器が壊れ、仕方なく予備の雑魚装備で戦っていたら倒すまでに1時間以上かかったという結果らしい。

 ソロで挑むからそんな事故が起きるんだよ……と呆れたが、そのおかげで有用なスキルが広まったので、感謝しよう。

 これから大盾使いで集まって取得しにいくらしい。まあ、頑張ってほしい。

 

 そんな情報交換をしていく中、有用なスキルの情報を手に入れた。

 まさに俺の求めていたスキル。

 それを手に入れるために、俺は第二層の草原に設けられた街道を歩いていた。

 

 数分歩いていると、広いつばを持つ黒いとんがり帽子に黒いコートを纏った人物が歩いてくる。聞いた話だと、彼がNPCでクエストのキーとなっているそうだ。

 ぱっと見は普通のプレイヤーと変わらない見た目。だから以前すれ違った時は話しかけなかったのだが、よくよく考えたらここを通る度にすれ違っていた気がする。

 どの時間帯にもいるのは俺がそうだから気にならなかった。

 

「あー、そこの人ー」

 

 とにかく話しかければいいらしいので、適当に言葉を発する。

 彼は近づいてきたと思ったら。

 

「キミ……悪魔に憑かれてるね……?これをあげる。早く教会でみてもらえ」

 

 そういって差し出して来たのは、黒い玉が連なり輪を作り、先にくすんだ十字架の付いた、所謂ロザリオと呼ばれるものだった。

 

 同時にウインドウが出てきて選択肢が表示される。

 

クエスト【悪魔の代償】

受注しますか?

Yes

No

 

 迷わずYesを選び、ロザリオを受け取り、2層の町へと向かう。

 教会は街で見覚えもあったし、聞いた話と一致している。

 

 二層の石造りの街並みの中に、ひときわ目立つ巨大なステンドグラスと十字架。この教会が目的の場所だ。

 中に入ると、イスの立ち並ぶ礼拝堂。その奥に建てられている巨大な像を天井のガラスから差し込む太陽光が照らしていた。

 像の前に佇む豪華な装飾の施された杖を持つ人物。彼がこの教会の主の司教らしい。

 

「えーっと、悪魔祓いを頼みにきたんですけど……」

 

 といいながら彼にロザリオを見せると、慌てた様子で

 

「すぐに、浄化の準備を!」

 

 とシスターに命令を下した。

 ロザリオを半ば強引に奪い取った彼は、地面のカーペットを取り払い、描かれていた魔法陣の中心に置いた。

 

「このロザリオには悪魔が憑りついております。危険ですので決して近づかぬよう」

 

 魔法陣が輝きだし、結界がロザリオを覆う。

 

 そのまま少し待っていると、シスターさんが戻ってきた。

 

「司教様!最高ランクの結晶が足りません!」

「なんと……魔術師様、魔力結晶を取ってきていただいてくれませぬでしょうか。現在、儀式の直後で不足しており、採れる場所は危険地帯。すぐに依頼できる相手もおりませぬ。どうか、頼みます」

 

 司教さんは頭を下げて頼み込んでくる。シスターさんが場所とアイテムを示すが、既に探索済みで、目的のアイテムも当然持っていた。

 

 インベントリから出したアイテムを渡すと「ありがとうございます」と謝辞が述べられ、すぐに儀式が始まった。

 

 結晶に水をかけたり、祈りを捧げたりといろいろやっていると、ロザリオから黒い靄が溢れてくる。

 靄は直ぐに結界を埋め尽くし、ヒビを入れる。

 

「なんと……!ここまで強大とは……!!」

 

 そう驚愕する司教さんをよそに、靄はドンドン濃くなり、結界のヒビは広がっていく。

 そしてついに──パリンッと音を立てて結界が破れた。

 

「ありがとよ魔術師サン。これでこの司教のおっさんに復讐できるぜ!」

 

 中から出てきたのは典型的な悪魔。

 黒光りする肉体に山羊の角と蝙蝠の羽、尖った牙と尻尾。

 

「お主は……!」

「よくもまあ俺の食事を邪魔してくれたな。お前の魂を食べてやるぜ」

 

 なにやら2人には因縁がありそうだ。

 

 司教に向けられた腕の先には炎が灯る。

 

「【アースリフレクション】」

 

 発射された炎を岩壁で受け止める。

 

「【貫通付与】【属性付与:水】【アースクエイク】」

 

 悪魔を岩柱が貫き──光の塵へと変えた。

 

「畜生……!お前さえいなければァァ!!」

 

 怨嗟の声が響くが俺の興味は既に報酬に移っていた。聞いた話では、この悪魔を倒すことでクエストが完了し、【過詠唱】と【神聖魔法】というスキルのスキルスクロールとそこそこの性能の杖が教会から貰えるそうだ。

 【過詠唱】は魔法の発動時に5秒間のチャージすることで威力を1.5倍にできるスキル。【神聖魔法】は悪魔や死霊モンスターへのダメージが高いが他のモンスターに対してはダメージが他の魔法の10分の1以下になるというスキル。どちらも便利なスキルだ。

 だが、それらを渡してくる様子はなかった。

 

「あの悪魔は、昔師匠が封印したはずですが……魔術師様、このロザリオをどこで手に入れましたか?」

「旅の人から貰いました。こう、黒い帽子とコートを纏っていた……」

「なんとっ……!そのお方には心当たりがあります」

 

 そういうと、司教は紙に何かを書き、渡して来た。

 

「もし、また出会うことがあったらこの手紙を渡してはくれませぬか?」

 

 そういわれると同時にウインドウが現れる。

 

クエスト【悪魔の代償2】

 

 これは情報になかったクエストだ。なにか分岐条件があったのだろうか。分からないが、受けない理由はない。

 受注し、手紙を受け取ってあのコートの人と出会った場所へ向かう。

 

「おやキミは……どうやら悪魔は浄化出来なかったみたいだね」

 

 なにを言ってるんだ?

 話す内容に疑問を抱くも、そういえば結局悪魔が憑いていたのはロザリオだったなと思い返し、そういう嘘つきなのだと認識した。

 戯言を無視し、手紙を渡す。

 

「ふむ……アイツはもうこんな実力を身に着けているのか。喜ばしいな」

 

 手紙を一瞥し、そう話すもその表情は憂いに満ちている。

 

「これを司教に届けてくれ。まあ、あんなヤツどうでもいいが」

 

 コートの人から手紙を受け取り、再び教会に向かう。

 なにやら複雑な設定がありそうだ。

 

「手紙を渡してくれたのか。ありがとう」

「これが返事みたいです」

 

 司教に手紙を渡し、手紙を眺める司教の反応を待つ。

 

「うぅ……お師匠……未熟者ですまない……」

 

 嗚咽とともに、司教から涙が溢れた。

 しばらく泣き続けた彼は、涙を拭き、話し始めた。

 

「そのお方は……私の師匠なのです。あのロザリオは師匠が悪魔を封印したもの。その封印が解けかけており、私に対処をお願いしたそうですが……ご存じのとおり、魔術師様のお手を煩わす結果に……」

「なんで師匠さんが自分で対処しなかったの?」

「師匠は昔、ある事件でその身を悪魔に侵され、悪魔に有効な【神聖魔法】を使うことができなくなりました。そこで仕方なく私に頼んだのです。私にもっと力があれば……」

 

 再び涙が零れる。

 その後も事情を聞いていくと、どうやら嘘を付くのも悪魔に侵された体が原因のようだ。

 

「悪魔は嘘を付けませぬ。だから嘘を付くことが悪魔の浸食を抑えることに繋がるのです」

「へえー」

 

 つまりお師匠さんは司教を気に掛けていたし、実力を見誤ったことも後悔していたのかな?面倒くさい設定だな。

 

「魔術師様、あなたほどのお力があれば師匠を救えるかもしれません!どうか、師匠に巣食う悪魔を退治してはいただけませぬか……?」

 

 そうして現れるウインドウ。

 

クエスト【悪魔の代償3】

 

 俺は迷わず受注する。

 

「ありがとうございます。よければこちらをお使いください。きっと、お役に立ちます」

 

 そういうと司教はシスターにスキルスクロールを2つ、そして師匠さんの悪魔を祓うための特別な魔法が込められたという宝玉を渡してきた。

 スキルスクロールから覚えられたのは【過詠唱】と【神聖魔法】。このルートではここで貰えるのか。

 

 【神聖魔法】の使い心地を確認しながら街道へと向かう。

 最初に使える魔法は【ホーリーカッター】で光の刃が飛んでいくようなものだ。適当なモンスターで試すと、ダメージは聞いてた通り低かった。威力が10分の1以下になっていることを考えても、悪魔相手だと他の魔法の方が効きそうではある。まあ弱点ではあるだろうから実際の戦闘だともうちょっと活躍できるのかな?

 

 暫く歩いていると、目的の人物と出会った。

 

「どうしたんだい?キミの悪魔はもう祓えてるよ?」

 

 俺は無視して宝玉を使う。

 体がコートの人の中に吸い込まれていく。

 

「そうか……キミには期待してないから。頑張らないでほしいな」

 

 そう話すコートの人は微笑んでいた。

 

 

 

 吸い込まれた先は禍々しい世界。

 どす黒い雲に覆われた空。草1つ生えぬ大地。目の前にそびえ立つ白い塔には、黒い触手が纏わりついていた。

 

「ダレダ、ワガ食事ヲジャマスルモノヨ」

 

 脳内に声が響き、悪魔がその姿を現す。

 教会で倒した悪魔をより動物的に、より凶悪にしたような禍々しい姿。数十メートルはあろうかという巨体で塔に巻き付く触手を操り、俺を狙ってくる。

 俺は先んじて魔法を放つ。

 

「【ロックキャノン】」

 

 触手に岩の弾丸が命中するが、そのダメージは想定以上に少ない。

 十分削っていけるレベルではあるが、なかなかに面倒くさいな。

 

 悪魔はその手に黒炎を灯し、地面に叩きつける。

 炎が波となって襲い掛かる。

 

「【跳躍】【ホーリーカッター】」

 

 ジャンプで攻撃を躱し、試しに【神聖魔法】を使ってみる。

 光の刃が悪魔を切り裂き、HPが1割減った。

 

 悪魔へのダメージ増加だけでは説明出来ないダメージ量。【神聖魔法】が弱点かつ、他の魔法への耐性があったとかなのか?

 とにかく、このダメージ量はありがたい。攻撃もそこまで激しくないし、【神聖魔法】でダメージを積み重ねていけば余裕ではある。だが、CTもあるし、1種類の攻撃だけで削りきるのは面倒だ。

 そこで、1つ試してみる。

 

「【貫通付与】【属性付与:神聖】【メテオインパクト】」

 

 【属性付与】で付与できる属性は、自分が取得している魔法に左右される。今までは、弱点を突くよりも【沼地の杖】での補正が上回っていたから使ってなかったが、これほど差がでるのなら、有効に使えるはず。

 そんな意図での攻撃は──悪魔に致命打を与える結果となった。

 

 神聖な光を纏った隕石は、1撃でそのHPを削り取った。

 

 

 

 雲が消え、青々とした空が広がる。

 白い塔の入口には、あのコートの人、司教の師匠が立っていた。

 

「俺を開放してくれてありがとう」

「もう、嘘はつかないんだ……」

「悪魔は消えた。もう、そうする必要はない」

 

 思わず漏れ出た独り言にも返してくれる。

 

「キミにはお世話になったね。よければ、これを使うといい」

 

 そう言って渡して来たのは【極大魔法】のスキルスクロール。

 これが今回の報酬なのかな。

 

「ボクはこれからも旅を続けて、悪魔を祓うよ。また会ったら、その時はよろしくね」

 

 師匠さんがそういうと、俺は元居た街道に戻っていた。

 その後、教会に寄ったりもしたが、特に続きのようなものはなかった。

 

 

 

「え~っ!そんな続きがあったんや~!」

 

 そう驚愕するのは、【テュール戦闘団】の一員のレニール。俺と同じ魔法使いの女性で、第二回イベントでサッキ―と共に俺を襲った人の1人である。

 

「多分、司教を生存させるのが条件じゃない?レニールの時は1戦目の悪魔で死んじゃってたんだし」

「そうかもな~今度再受注しとくわ」

 

 このゲームは、一部クエストがマルチエンドになっている。それぞれで報酬が変わる場合があるがお金を払ってもう一度受けることができる。

 彼女はそのシステムで、【極大魔法】の取得を狙うようだ。

 

 この【極大魔法】は強力なスキルだった。追加でMPを消費することで、魔法の威力を最大3倍にできる。しかも【過詠唱】とは異なり、チャージ時間も必要としない。

 ただし、消費MPの増加はかなり大きく、威力を1.5倍で消費2倍、2倍なら消費4倍、2.5倍なら消費8倍、最大の3倍となると消費も16倍になってしまう。

 この増え方だと精々2倍が限界だ。それ以上だと消費に威力が見合わない、というか、MPが足りなくなる。

 

 このスキルを生かすにはMPが足りない。メイプルに負けてからはINT偏重で装備やステータスを整えてきたが、考え直す必要があるな。

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