敏捷魔法使いはメイプルちゃんに勝ちたい   作:集う炎帝

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17.魔法使いと第三回イベント

 数日前のアップデートで、【毛刈り】というスキルが追加され、それに伴い羊がポップするようになった。羊に対して【毛刈り】を使うことで羊毛が手に入るのだが、その羊毛がかなり優秀な素材なのだ。

 金属装備はVITが高いのだが、俺みたいなSTRを上げていないプレイヤーからすれば装備条件が満たせなかったりAGIが下がったりでかなり使いにくい。だが羊毛製の装備ならそんなデメリットもないので、俺は積極的に集めていた。

 

 他のプレイヤーも集めていてかなりの競争率ではあったが、リーベンが【巨大化】というスキルを覚え、俺を乗せて飛べるようになった。俺を上回るAGIと地上の障害物も無視できる機動性、そして【パラライズシャウト】を上回る射程で放たれる電撃による麻痺。それらのおかげで、かなり効率的に集めることができた。それでも、必要数集めるのに丸一日かかってしまったが。

 だが今後はかなり楽になる。【羊喰らい(シープイーター)】というスキルでは24時間に1度、羊毛を生やすことができる。1度で数匹分の羊毛が手に入るので、毎日毛刈りをすることで、自然と羊毛は貯まっていくだろう。

 

 そうして集めた素材をチョコさんに預け、王冠に似合う装備を作ってもらっている。そしてついさっき完成したという連絡が来た。

 どんな装備になっているのだろうか。

 

 

 

 

 

「おお~似合ってますよ!」

「そ、そうか?」

 

 ギルドハウスの工房、その中で、早速作ってもらった装備を装備したのだが……

 

 トップスは黒いインナーに濃い青を基調とし金色の肩章やボタンなどの装飾が施され、裾は下半身に垂れ下がったコート。装備枠に含まれない服飾品として、深紅のマントや白のタイ、金のベルトなどがついている。

 ボトムスは同じく濃い青でピッチリとしたシンプルなものだが、垂れ下がった裾とマントに隠れ茶色いブーツ共々ほとんど表には出ない。

 そして黒い手袋に包まれた両手で杖を構え、頭には王冠を載せる。

 

 想像以上の王子様風の恰好に顔が熱くなる。

 そりゃ、VRゲーな以上整った顔立ちのアバターにしているとはいえ、中の人はそうじゃないのだ。

 

 だが性能は申し分ない。

 

【アビサルプリンスコート・Ⅷ】

 

【INT+25】【VIT+10】【MP+20】

 

 

【アビサルプリンスレギンス・Ⅴ】

 

【INT+20】【VIT+5】【MP+15】

 

 今回は体と脚の装備だけだが、【強化】が奇跡的な幸運で8までついた。ギルド入ってからのチョコさんは生産三昧でスキルも育っているとはいえ、ここまで付くとは思ってなかった。

 だがそのおかげで、補正値もかなり高い。INTとMPの補正を優先してもらったが、VITも今までの装備を上回っている。

 

 素材の力もあるが、デザインや【強化】はチョコさんの力が大きい。見た目はまだ慣れないが、満足できる装備となった。

 

「おいっお前っ……くくくっ、ふーあっはっはー」

 

 一目見て大爆笑しやがったサッキ―は決闘でぶちのめしておいたが。

 

 

 

 それから数日が過ぎ、第三回イベントの開催のお知らせが来た。

 2週間後に開催されるそれは、期間限定のモンスターを倒しアイテムを集めるものだった。さらに、羊毛で作られた装備を使うことでドロップ数を上げることができる。

幸いにも、チョコさんに作ってもらった装備は、増加量が最大だったので、作り直してもらう必要はなかった。ひとまず羊毛をさらに集めて靴と頭、アクセサリーを用意しなければ。

 

 

 

 それからというもの、俺はひたすらに羊狩りをしていた。俺の装備もあるが、ギルドメンバーに多くの羊毛を供給するためだ。

 今回のイベントでは個人ランキングとギルドランキングがあるが、このイベントではどちらも上位を狙うつもりだ。そのためにも羊毛製の装備は必須で【テュール戦闘団】のメンバーは登録できる限界の8割ほどいて必要数は膨大。毎日の【羊喰らい】も合わせて集めていった。

 その甲斐あって最大値とはいかなかったが、全員が特効装備を纏うことができた。

 

 そして今日からイベントが始まる。

 開始時刻は土曜日の12時。俺のギルドも多くの人がログインしている。

 

 事前に狩場がバラけるよう話し合い、それぞれの場所で待機している。イベントが始まるのを今か今かと待っていると、サッキ―からメッセージが届いた。

 

『イベントの個人ランキング、どっちが上か勝負な!』

 

 ド直球な宣戦布告。サッキ―らしい。

 俺が返すのはたった一言。

 

『もちろん』

 

 

 

 時計を見て、時間を確認すると時間は11時58分。

 運営からアナウンスがなされた。

 

 再度のルール説明が行われ、それからはカウントダウン。

 

『3、2、1。第三回イベント、スタートドラ~』

 

 俺がいるのは山岳地帯の中腹。

 木の生えない岩肌の露出した地帯で周囲を見渡すも、狩る対象である赤い牛は数百メートル先にいる3匹の群れくらいしか見えなかった。

 

「リーベン【巨大化】だ!」

「キーッ!」

 

 リーベンが一鳴きし、大きくなった体に飛び乗る。

 俺は飛び立つリーベンに掴まり、上空から近づく。

 

「【ファイヤーアロー】」

 

 低い威力の魔法で様子見をすると、炎の矢は倒すのに3本必要らしい。計5本放たれたそれは、2本命中したモンスターを倒せていない。

 事前のお知らせ通り、このマップのモンスターと同程度の強さになっているようだ。

 レベルの高い場所のモンスターの方が得られるポイントは大きいが、俺の場合はこのあたりが丁度いい。大抵の魔法で瞬殺だからCTを気にする必要が薄く、MPの管理もしやすい。そして何より、山岳地帯という起伏のあるマップでは、俺が一番機動力がある。

 【糸使い】とリーベン、【スタントブーツ】。特にリーベンは今のところイベント限定で手に入るもので鳥型は俺以外に飼っている人は聞いたことがない。アクセサリー枠を1つ使う分ゲットできる量は少ないくなるが、それを補えるだけの機動力が手に入る。

 上空から索敵し、魔法で攻撃する。これができる俺は、このマップで一番効率的に狩れるプレイヤーだろう。

 

 

 

 こうして、イベント期間の7日間、狩り続けた。睡眠を削り、食事を削り、ひたすら山を回り、魔法を撃ち、ポーションでMPを回復し。

 だがその結果は──ギルド3位、個人7位という結果だった。

 

 第一回イベントのバトルロワイヤルから順位を落とす結果。

 原因は狩場のレベルの差だろう。

 7日間狩り続ける上で、俺は継戦能力を考えこのマップを選んだが、ペインらこのイベント上位はほとんどが物理攻撃を持っている。俺はMPの管理に気を遣う必要があるが、物理勢はそれをほとんど気にすることなく狩り続けられる。

 その分は機動力と狩場の人気の少なさで数を狩り、補うつもりだったが、見込みが甘かった。

 

 もう一段上の狩場なら……いや、それだとCTとMPの管理をミスると効率が落ちる、ギャンブルになっていた。純粋に、俺のレベルが足りなかった。それだけだ。そのはずだ。

 

 それはともかく、ギルドとしては最高に近い結果だ。上位にいるのは【集う聖剣】と【炎帝ノ国】のみ。しかも、その2ギルドはフルメンバー。【テュール戦闘団】から最高レベルのフィールドで狩っていたのは5人程度と他よりも少ないが、その分を時間と分担で補えた。

 人数をそろえればこのギルドはまだ、上に行ける余地がある。

 

 だが俺は……どうなんだ……?

 今回のイベントでの個人報酬でINT強化やMP消費軽減のスキルが手に入ったが、それは他も同じ。

 前回よりも順位を落とした7位という結果。この差を詰めるためにやることは──っ!

 

 少し、思いついた。

 結局のところ、ギリギリを攻めることが出来ればいいんだ。MP管理にしろ、直接戦闘にしろ、上を目指すなら安定とか言ってる余裕はない。まだ削れる部分はあるはずだ。それを普段から考えていく、経験していく。そんな場が必要だ。

 俺はギルドハウスで、サッキ―にある提案をする。

 

「決闘ランキング?」

「ああ。ギルド内でランキングをつける」

 

 俺が思いついたことは今までギルド内で個々人が行っていた決闘を、ギルド全体でまとめること。

 

 そもそも、俺の対人戦経験は大半が別ゲーのものでNWOではレベリングがメインだった。このゲームでの対人戦の勘を普段から養うためにも、ギルド内での決闘を活発化させる。

 より人を選ぶギルドにはなるが、入ってるメンバーにも合っているだろう。そんな考えからの提案だが。

 

「面白れぇな!それ」

「だろ?」

「ああ!だがもういくつか欲しいな……よし!」

 

 あっさりと受け入れられた末、別の協議でもランキングが作られることになった。

 

 その内容はTA(タイムアタック)。ダンジョン攻略のタイムを競う。時間という指標ができ、よりギリギリを攻める練習にもなりそうではある。

 

「決闘にTA!もっと楽しくなるぞこれは!」

「うん……もっと、頑張る」

 

 俺もワクワクを抑えながらそう呟いた。

 

 とりあえず、両方ギルド内1位を狙おう。

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