敏捷魔法使いはメイプルちゃんに勝ちたい   作:集う炎帝

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2.魔法使いと毒竜

 毒竜(ヒドラ)が光になって消えていく。

 それを見届けるが、アナウンスは一向にならない。

 

「取得できないな……」

 

 メイプルに負けないと決めた俺は、とにかく火力を高めていくことにした。メイプルの防御を抜けなければ勝つことはできない、そのことをイベントで痛感した。

 メイプルは今後さらに硬くなっていくだろう。それを打ち破るにはステータス以外でのアプローチが必要になってくる。【沼地の杖】のように威力に補正のある装備やスキル、そして高火力なスキル。その高火力のスキルの1つとして、メイプルの持っていた毒竜を召喚するスキルを探しに、この【毒竜の迷宮】にやって来た。本当はメイプルの持っていた盾みたいなスキルが欲しかったが、あまりにも手がかりがなさすぎる。もしかしたらあの盾限定かもしれないし。そういったこともあって、演出からこのダンジョンが関わっているであろうスキルを探しにきた。

 

 特別なクエストがあるのかと探してみたが見つからず、一定の回数か、何か条件を満たした上での討伐かと当たりを付けて試行錯誤しながら100周ほどしてみたが、取得はできなかった。

 試行錯誤の最中に【毒耐性】と【麻痺耐性】がどちらも無効になったのはありがたいが。

 

 メイプルはどうやって取得したんだ?

 改めて条件を考えていく。

 少なくとも、初心者でも達成できる条件なのは間違いない。情報が間違っていなければメイプルはイベントの時始めてから数週間らしいから、そのくらいでも取得できる条件のはずだ。

 メイプルの攻撃手段は麻痺と毒と吸収する盾、あと短刀。特別な倒し方だとしてもその4種類で達成できるものに限定される。だが、毒と麻痺は毒竜には効かないし、短刀なら取得者がもっとたくさんいるはず。となると吸収っぽいけど、吸収に類するスキルは聞き覚えがない。

 ……やっぱ回数か?マップ全部埋めて100回くらい倒せば【迷宮の支配者】みたいな感じで取れるかもというのは最初から考えていた。コンシューマーゲームでそんな隠しスキルがあったし、毒で装備の耐久が削られることもあってこの【毒竜の迷宮】を周回している者は少ない。だがダンジョンの全長は短く、AGI低い極振り勢なら周回場所に選ぶこともあり得なくはない気がする。これならギリギリありえなくもない、が始めて数週間で満たせる条件なら100周が限度ではないか?もうその回数は超えてしまっている。

 

 結論はつかないが、再度周回に戻る。止まって考えてもしかたがない。動きながら考えよう。

 

 

 

 ここ10周くらいから、全裸の方が効率的に周回できる気がしている。道中の敵は立体的に動けば無視できるし、ボスの攻撃は毒ブレスと麻痺咆哮と噛みつき。

スキルで状態異常が効かない以上、わざわざ装備の耐久を減らす危険を犯す必要はないだろう。噛みつきは躱せるし。

 

 そんなこと考えながらボスの毒竜戦をこなしていると、やってしまった……

 死角からの噛みつきを躱しきれずに左手に食らってしまった。

 左手のあった場所を見ると、肘から先が光の塵となっている。HPバーを確認すると、〈出血〉と〈欠損:左手〉の表示が。〈欠損:左手〉は感覚としては普段と同じなのだが、左手に装備できなくなってしまう。両手武器も装備できなくなるのがなかなかに痛い。

 ポーションを使い、状態異常を治し魔法でHPを回復していく。毒竜は咆哮してるのでその隙に回復できた。

 

 しかし、〈欠損〉とは珍しい。一部の攻撃でしか受けないし、俺は基本攻撃は躱す派だ。ボスにも部位破壊というシステムがあるのだが、魔法ではあまり狙えない。大体は大剣使いの役割だな。

 

 

 ──それにしても噛みつきで欠損か。俺も狙えるのだろうか。

 

 いやまあ、普通の行動で取得できるスキルじゃないんだし、たまにはこれくらい変なこともしてみないと、だから。

 

 誰に言い訳しているのか分からないがとにかくやってみよう。

 

「【ロックバインド】」

 

 地面から噴き出した土砂が毒竜に纏わり付き、動きを止める。

 相手のSTRで効果時間が変わるが、杖の補正も合わせて5秒は持つ。その間に俺は毒竜の背中に飛び乗り、嚙み千切った。

 

「うえ、まっず」

 

 苦味とえぐみが口の中に襲い掛かる。調理次第ではなんとかなりそうな味だが、明らかにこれ単体で食べるものではない。だが

 

「HP減ってるな……」

 

 ほんの少し、1mmに満たないくらいだが、確かにHPバーが減少した。

 もしかしたら、これが盾の吸収の代わりになるのでは?試してみる価値はあるだろう。

 流石に、噛みつきだけで倒すのは厳しいので、HPを減らしてから、噛みついて止めを刺すことにした。

 

 毒竜の残りHPは4割ほど。これを慎重に削っていかなくてはならない。

 

 

 

 毒竜の拘束が解けた。

 振り落としを食らわないように先んじて飛び降りる。

 

 

 毒竜に向き直ると真ん中の首が噛みつき、左右の首がブレスを放とうとしている。

 

「【フルフレイム】」

 

 巨大な炎が毒竜の胴体を捉える。噛みついてきた首に飛び乗り、毒竜の背中に駆けてブレスを躱す。

 

「【エアバレット】【アースクエイク】」

 

 5つの空気の弾丸が左右の首に命中し、軽くのけぞらせた。毒竜の側面に飛び降りると隆起した地面が毒竜の腹を襲う。

 残りHPはおよそ1割。

 

 毒竜がこちらを向き終わらないうちに、魔法で追撃していく。

 

「【エアブラスト】【ファイヤーボール】」

 

 空気の砲弾と炎の玉が相次いで命中した。

 HPはミリ残り。

 

「【ロックバインド】」

 

 拘束魔法を使って、毒竜に噛みついていく。

 

 

 十数回繰り返した末──毒竜のHPを削り取った。

 

 

 

 

『スキル【毒竜喰らい(ヒドライーター)】を取得しました。これにより【毒無効】が【毒竜(ヒドラ)】に進化しました』

 

 

 俺はようやくこのスキルを手に入れた。

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