敏捷魔法使いはメイプルちゃんに勝ちたい 作:集う炎帝
【
毒、麻痺を無効化する。
取得条件
毒竜をHPドレインで倒すこと。
【
毒竜の力を意のままに扱うことが出来る。
MPを消費して毒魔法を行使出来る。
取得条件
【毒無効】を取得した上で毒竜をHPドレインによって倒すこと。
「これは……強いな……」
思わずそんな言葉が溢れた。
【
だが【
……これは専用の対策をしないとまともに勝負できないな。
毒耐性も麻痺耐性も、無効まで成長させるには長い時間がかかる上、食らう時は毒竜のブレスやフォレストクインビーの毒針のようにダメージを伴う。しかも今実装されているマップだと、麻痺や毒を食らう機会は少ない。毒持ちのモンスターが多くいる【毒竜の迷宮】も十分な人数とポーションがあれば耐性なしで攻略できる。さらに火力の高まりで戦闘時間が短くなっており、毒の脅威は薄れ、わざわざ無効まで育てようというプレイヤーはほとんどいない。第1回イベント時点で無効となっていたのは極々少数だろう。
メイプルには、これに加えて異常な防御力と全てを喰らう盾がある。毒と麻痺の対策が十分で盾を避けて防御力を貫ける攻撃をできるのは、ほんの一握りだろう。そしてそれをメイプルの回復を超える速度で与え続けられるプレイヤーはさらに少なくなる。俺でさえ不可能だったのだ。イベント3位までポイントを重ねられるのも納得だな。
「だけど、足りない」
この【毒竜】というスキルは確かに強力だが、火力自体は俺の上位の魔法に劣る。攻撃時間が長いから、どちらが強いかはその時々によるが、【毒竜】ではメイプルの防御力を貫けない。
だが、俺の方が間違いなくこのスキルを使いこなせる。俺は魔法メインでMPが多いし、【遅延魔法】と組み合わせれば俺1人で数人分の手数で戦える。致命的なタイミングで毒を与えられる。
それに毒と麻痺が効かなくなった今なら、メイプルの攻撃はほとんど効かない。盾と【毒竜】以外は耐性で無視できる。
得られたスキル自体には肩透かし感が否めないが、HPドレインで取れるスキルがあると知れたし、十分な成果だろう。
……正直、他のモンスターをHPドレインで倒したらどうなるのか、そんなワクワクを感じている。
早く試すためにも、俺はダンジョンの入口へと戻る魔法陣に乗った。
「おっ、トートじゃねえか」
入口に帰還すると俺のフレンドで、大盾使いのクロムがいた。
初期からの付き合いで、俺が魔法をメインで使っていることもあってよくパーティーを組んでいる。
第1回イベントで10位の実力者でもある。
「ここにいるってことは、お前もスキル探してんのか?」
もちろん、話題はメイプルのスキルに関してだ。バトルロワイヤル以前は、装備の耐久が減らされやすいことから、この【毒竜の迷宮】に来る人は少数だった。
だが、今は俺以外にも出入りする人を見かける。あの強力なスキルが欲しいって思うのは、ゲーマーなら思う人も多い。どうやらクロムもその1人のようだ。
「クロム……実はな、もう見つけた!」
「マジかよ。どうやって……いや、マナー違反だったな。すまん」
「いや、全然教えてもいいぞ」
「本当か!?」
「元々公開する予定だったからな。それに──俺だけこんなスキル持ってたら不公平だろ?ここはVRMMOなんだし」
VRMMOは平等な世界だ。時間を掛ければ掛けただけレベルが上がり、装備やスキルが充実していく。もちろん、プレイスタイルによって差が出てくるし、
だが、知識の差は平等を崩す。効率的なレベリングスポット、強力な装備やスキル。どれを選ぶかは個人の自由だが、1人での独占は許せない。知ろうとしない奴を気に掛ける必要はないが、求める者が得られない状況はあってはならない。ここは
「あー確かにそうかもな」
「だから、後でカタッターとデスコにあげとくよ」
カタッターはゲーマーがよく利用するSNSだ。俺も普段から利用しゲームのプレイ状況等を載せている。最近はNWO関連だけだが。
デスコはチャットアプリで、同じNWO仲間とのグループもある。カタッターにはそこそこのフォロワーいるし、攻略仲間には直接回すから、それで十分広まるだろう。
その後話は移り変わり、メイプルの話となった。
「ところで、大盾使いから見てメイプルはどんな感じなんだ?」
以前から気になっていたことだ。クロムというトップクラスの大盾使いの目には、メイプルがどう映ったのか。
クロムは大盾使いの中でも正統派な存在だ。大盾で受け止め、短刀や時には大盾も使って確実にダメージを重ねていく。対してメイプルは大盾使いという枠組みから外れたような存在。盾以外を狙われようともほとんどダメージは受けず、大盾で受け止めたものは吸収し、広範囲攻撃を放つ。
この違いを、どう感じたのか。
「そうだなあ──やっぱあの防御力は少し羨ましいな。大盾が1番に倒れちゃ話にならないからな」
「それだけ?」
「ああ。それだけだな。……いや、やっぱあの鎧とか大盾は参考になったりもするな。いい加減地味だ地味だ言われるのもなんだし、あんな派手な装備もいいかもしれん」
どう考えても、クロムのほうが大盾使いとして劣っている。技術は優っていても、パーティの枠が限られている以上より防御力が高い方がいい、遠距離で支援できる方がいい、火力が高い方がいい、そのはずだ。自分より上で、しかも知り合い相手にそれだけで済むはずがない。少なくとも俺は無理だ。
「それで──お前はどう思ったんだ?」
クロムからの問いに俺は言葉を詰まらせる。この人に俺の感情を、醜い思いを吐露してもいいんだろうか。
……いや、そうだった。
逡巡の果てに口を開く。
「俺は──悔しかった。始めて数週間の人に、俺の積み上げたものが通じなくて俺の努力はなんだったんだって」
万感の思いを込めて、そう返す。
俺の八つ当たり染みた言葉にクロムは──
「そっか。じゃあ次は勝たないとな!」
そうだ。クロムはこんな人だった。お人好しで、誠実で、頼れる兄貴。他人を素直に認め、自分も真っ直ぐ努力できる、そんな人。
「ああ」
改めて決意が固まった。俺は今度こそ、メイプルに勝ってやる。
「結局、スキルの入手方法は何だったんだ?」
「毒竜を食べて倒す」
「え?」
「毒竜を食べて倒す」