敏捷魔法使いはメイプルちゃんに勝ちたい 作:集う炎帝
【
気絶を無効化する。
取得条件
蔓鹿をHPドレインで倒すこと。
【
蔓鹿の力を意のままに扱うことができる。
MPを消費して樹木魔法を使用できる。
取得条件
【気絶無効】を取得した上で蔓鹿をHPドレインで倒すこと。
あの後、ダンジョンを10周ほどして、【気絶無効】に上げて【蔓鹿】を取得したり、ボスの行動を調べたりした俺達は、ようやく第二層へと足を踏み入れた。
「やっぱ火が弱点じゃん!トートももっと【火魔法】使っとけよ!」
「装備的に土魔法のが火力でるんだよ。鹿も結局延焼入らなかったら土のが火力でたじゃん」
「でも蔓焼けてたら楽だったろ?」
「HP半減時の爆発攻撃の時も蔓の攻撃も続きますし、やっぱり火魔法で蔓の密度を減らすのが楽だと思いますよ」
「ほら、トキワもこう言ってるし!」
「わかった悪かったよ、弱点見抜けなくてさ」
だが話題は変わらず戦闘での反省だ。こんなものいくらでも出てくる。だからといって無限に続くことはない。この第二層には、新要素が溢れているのだから。
「おっ、街が見えてきたな」
その街は、自然と調和していた第一層の街とは異なり、石造りの家が立ち並ぶ、どこか遺跡を思わせる街並みだった。
……激しいじゃんけんの結果、第二層は街から探索していくことになっている。もちろん興味がないことはないが、ダンジョンとかフィールドのモンスターとかのほうが、俺は興味があった。
街を歩きながら店の商品を見たり、クエストを探したりしていく。
「あっ、このスキル一層の店ではなかったやつですよ!」
「本当だ。【抜刀術】に【投擲】、【裁縫】に……【水蜘蛛】?」
「忍者だ!忍者!私【水蜘蛛】買っとこ〜!」
「お?【魔法射程増加】か。トートはこれ持ってたっけ?」
「いや初めて見る。買っとこ」
「なんかさ秘境とかの店ならレアなの買えそうじゃねえか!?」
「一層にもあったしな。後で探そうぜ」
一通り買い物を終え、街を散策していく。
裏通りに行ったときクエストが発生してクリアしたが、大したものは手に入らなかった。
最後に二層のダンジョンを攻略したのだが、ここで問題が発生した。
いつも通りボスを喰らって倒した時に手に入った【〜喰らい】系スキルの効果が拘束無効だったのだ。
今までの法則からすると、【〜喰らい】系スキルで得られる耐性のスキルを進化させることで、ボスの力を扱うスキルが得られるのだが、【拘束無効】は既に進化させて【巨像】になっている。進化させたスキルはお金を払うことで元のスキルに戻すこともできるが、どちらにせよ、同じ耐性スキルから進化したスキルは1種類ずつしか持てない。
もっとも、俺は土魔法に補正が入る装備を使ってるし、【巨像】にも適用されるから、【拘束無効】はこのまま【巨像】にしておくことにしよう。
そんな新事実もあったダンジョン攻略が終わり、二層探索パーティーは解散した。
その後も、俺は個人で二層を探索していた。一層よりも得られる経験値も多いし、まだ行けてない場所もある。特にレアなスキルやアイテムはほとんどが見つかりにくい場所だったり、アイテムや一定のステータスが必要な隠しクエストで手に入るから、他のプレイヤーよりも先にそれらを見つけるためにも探索は欠かせない。
これでも、第一回イベント6位入賞だし。
そんな訳で二層を探索していると、木々に囲まれた湖のほとりに小屋を見つけた。古ぼけたログハウスの煙突からは紫の煙が立ち上り、周囲に植物が生い茂り家にも蔓が巻き付いている。いかにもなにかありそうな雰囲気だ。
警戒しながらドアに近づくと、ドアが軋む音を立てながら開いた。
中からはボサボサの銀髪に丸メガネ、そして白衣を纏ったいかにも研究者ですといった風貌の男が出てきた。
「厶?ムムム?キミ、魔術師ですよね!?ワ、ワタシはリチャードといいマス!ワタシの研究を手伝ってくだサイ!」
どこか片言な話し方だなと考えてると、目の前にウインドウが現れた。
クエスト【粘の探求者】
受注しますか?
Yes
No
どうやら当たりだったようだ。俺は迷わずyesを選ぶ。
「あっ、ありがとうございマス。こちらに来てくだサイ」
リチャードと名乗った男は俺の腕を掴み、小屋の中へと足を進めた。
小屋には地下への階段があり、その階段を冷たい足音を立てながら折りていく。
「ワ、ワタシはスライムを研究していマース」
5メートルほど降りたところだろうか。扉があり、中には不思議な装置とガラス張りの四角い水槽のようなものがあった。
「魔術師サンがいらっしゃるのならワタシの研究も大きく進められマス。この装置は魔力を合成する装置!魔力生命体のスライムを入れれバ、複数の特徴を兼ね備えたスライムになるのデス!」
そういいながら、地下室にある棚を漁っている。だが何かが見つからず焦っているようだ。
「……オゥッ!そうでしタ!スライムを切らしているのデシタ……魔術師サン、捕まえてきてもらえマスカ?」
「うん……いいよ」
リチャードの胡散臭さに困惑しつつも了承する。
「ありがとうございマス!」
クエストの情報が更新された。まずは納品らしい。
捕獲用の水槽を渡され、6種類のスライムを3匹ずつ捕まえて来ればいいそうだ。
生息場所はマップに示されている。探索にもなるし、丁度いいクエストかもな。
まずは【レッドスライム】の確保のため、火山地帯に向かった。
2層の山の頂上付近、火口が近づくにつれ、気温が上昇してきた。
生息するモンスターもほとんどが火属性となっている。つまり、新しいスキルをゲットし放題ってことだ!
出会うモンスターを喰らい、喰らって、喰らいつくしていく。
『スキル【
『スキル【
『スキル【
『スキル【
属性に関係ないスキルもあったが、やはり火属性のモンスターを喰らうと、火属性のスキルが手に入るようだ。特に【火妖精喰らい】は、火属性魔法の威力を上げ、【赤粘喰らい】では火ダメージの威力を下げてくれる。他の属性でもあるだろうし、この系統のスキルは狙っていきたい。
【蜥蜴人喰らい】ではVITが上がった。【炎喰らい】では炎を纏えるが、ほとんど宴会芸レベルだ。射程と威力が足りない。
クエストで求められた【レッドスライム】も3匹集めたので、他のスライムを探しに山を下っていく。
数時間かけ、マップを巡りながらスライムを全種集めきった。その過程で様々なスキルが手に入り、ほくほく気分であの小屋に戻ってきた。
「ワオ!ありがとうございマス!これで実験を続けられマス!」
捕まえてきたスライムを渡すと、リチャードは機械に投入し始めた。
「私の理論が正しけれバ、最強のスライムが生まれるはずデース」
彼がスイッチを押すと、稼働音が響き始めた。
「スライムはモンスターの中でも属性が強く表れるのデス。だから、【レッドスライム】には火属性は効きまセン。他の種類も同じデス」
内部でなにかが終わったのか、稼働音が一瞬止まった。再び鳴り始めると、水槽の中にスライムが現れ始めた。
「じゃあ、色んな属性を混ぜ合わせたラ?すべての属性を無効化する最強のスライムになるのデース!!これが、最強の、【マジックグラトニースライム】デース!!!」
水槽の中に落とされたスライムは、常に色が変化する不思議なスライムだった。赤から黄へ、黄から緑へ、緑から青へ、青から黒へ、黒から白へ。
ミラーボールのような、美しさと妖しさを兼ね備えた雰囲気に感じた。
「理論上は全属性が効かないのデスが、理論は理論デス。魔術師サン、魔法を撃ってもらえますカ?」
リチャードに促され、俺は水槽の上部を開き、スライムに魔法を撃つ。
「【サンドカッター】」
砂の刃がスライムに当たると、魔法は消え、スライムは一回り大きくなった。心なしか、黄色くなる時間が増え気がする。
……嫌な予感がするな。いや、これはお約束か。
「その調子デス!さあさあどんどん魔法を撃っちゃってくだサイ!」
クエストだからしかたなく魔法を撃ち続ける。属性を変え、種類を変え、スライムはその全てを吸収していった。
「ありがとうございマス!これでこのスライムの強さが実証されました!!あとはこの娘をテイムして、発表するために……」
リチャードが話している間も、スライムは増大を続けていたが、急にその動きを止め、震え始めた。
「魔術師サンには感謝しかありまセン!こちらはお礼のお金です!」
そこそこの金額を受け取ったその瞬間、水槽が割れた。ガラスの割れる音とともに、スライムが這い出て来る。
想像通りの、お約束展開だ。
「まっ、まさカ!この水槽は閉じ込める結界も張っていたノニ!ワタシでは手がつけられまセン……魔術師サン、捕まえるのを手伝って下サイ!」
その言葉とともにウインドウが浮かび上がる
クエスト 【粘の探求者2】
俺は即座に受注し、杖を構える。スライムは、俺と同じくらいの大きさになっていて、水槽の残骸の上に佇んていた。
「ありがとうございマース!やっちゃって下サイ!」
ダメージを与える方法はなんとなく予想がついている。簡単に言うと目押しだろう。さっきから吸収した魔法によって、色の変わり方が変化していた。つまり、吸収した属性と、体の色が対応しているのだろう。
そして、魔法を受けてもノーダメージという訳ではなかった。少し体積が削られ、その後魔法で回復といったプロセスを経ていた。
ならば、体の色の弱点となる色を当てていけば吸収する魔法よりもダメージの方が大きくなるはずだ。
そうやって、スライムの体積を削り、捕獲用の水槽に納める。これがこのクエストの目標だ。
「【ウォーターキャノン】」
赤くなったタイミングで水魔法を当てる。想像通り体積が削れた。
スライムが触手を伸ばし、拘束してきた。拘束は効かないので、直ぐに振りほどき攻撃を続ける。
触手を振り回して攻撃してくるが、その動きは遅く、この狭い地下室でも簡単に回避できる。
目押しには若干気を使うが、この感じなら余裕だな。
ダメージを与え続けて、スライムの体積が半分くらいになった時、スライムが分裂した。
俺の膝下くらいの大きさになり、捕獲用水槽に入るサイズだと思った次の瞬間、巨大な岩の砲弾と水の砲弾が飛んできた。
「うわっ、【アースリフレクション】!」
天井まで覆う岩壁が隆起し、魔法を防ぐ。
壁の横から頭を出し様子を確認すると、分裂したスライムがさらに小さくなっていた。
自分の体を削って魔法を撃ってくるのか。2発とも食らっていたら危なかった。
触手を避けつつスライムに近づき、1匹を水槽で捕獲する。魔法は立て続けには撃てないらしい。
捕獲用水槽は1つしか受け取ってないので、もう1匹はどうしようかと考えるとリチャードから声がかかる。
「魔術師サン!いいこと思いつきマシタ!こっちに来てくだサイ!」
スライムを作った機械の下に呼んできた。
話を聞くと、このスライムを生み出した機械で魔法を合成すればあのスライムも倒せる魔法を撃てるだろうとのことだった。
これでこのクエストも終わりかあ、と思ったが、ふと思い付いた。分裂させれば、無限に素材取れるのでは?と。 このスライムは初めて見るモンスターだ。なにかレアな素材やアイテムを落とすかもしれない。
分裂した時は俺の半分くらいの体積だった。そのサイズを目指し、俺は魔法を喰わせ始める。
「【エアブラスト】【ファイヤーボール】【フルフレイム】!」
スライムは魔法を吸収し、その体積を増大させていく。そして目指していたサイズに達した時、スライムが再び分裂した。
「よし、リチャードさん!」
声をかけ、魔法の合成を始める。納品したスライムを入れた場所に魔法を撃ち込み、稼働音とともに魔法が合成されていく。
スライムが触手を振り回してくるが、壁を作って防ぎ、杖で払い、時間を稼ぐ。
機械の稼働音が止まった。どうやら準備が終わったらしい。
「いっきますヨ〜!Fire!!」
リチャードの声とともに、白い閃光が地下室を満たした。光が止むと、スライムは1匹消し飛び、壁には大穴が開いていた。
ドロップアイテムを確認すると、【マジックグラトニースライムの粘液】と【【
どちらも聞いたことがないアイテムだ。スライムの粘液は、ポーションや装備の素材に使われたりしているが、この種類だとどんな効果がつくのだろうか。
これはできる限り集めなければ……!
その後、スライムを分裂させ続けてドロップアイテムを稼ぎまくった。スクロールは初回以外は落ちなかったが、粘液は100ちょっと集まったので、まあ十分だろう。
最後に分裂させずに【悪食】で喰らって、クエストを完了した。残念ながら新しいスキルは手に入らなかった。
「ワオ!ありがとうございマス!魔術師サンのお陰で、課題も見つかりマシタ!これで、ワタシの研究もより進みマス!」
さて報酬は何かな?スクロールのドロップもあったからあまりいいものではなさそうだが。
「お礼ニ、魔術師サンにはワタシの研究で出来た物ヲ分けてあげマス!今回以降は有料デスケド、いい物ありますヨ〜?」
そう言って、渡されたものがこれだ。
【マジックグラトニースライムの粘液】×10
……買える物も確認してみる。
【マジックグラトニースライムの粘液】2万ゴールド
──この値段なら、わざわざ集めなくて良かったな……