敏捷魔法使いはメイプルちゃんに勝ちたい   作:集う炎帝

7 / 17
7.魔法使いと第二回イベント

 第二層開放から数週間が経ち、ついに第二回イベントの時がやってきた。

 

 2週間前のアップデートではスキルの調整が多くあり、俺の持っている【悪食】や【毒竜】などに弱体化を受けた。【悪食】は1日10回の回数制限、【毒竜】含むボス系スキルは効果時間の減少といった感じだ。追加されたスキルもあり、その代表的なのが貫通攻撃系スキルだ。武器毎に実装され、魔法攻撃では【貫通付与(エンチャントピアッサー)】というスキルだ。次に使う魔法に防御力貫通の効果を追加するスキルで、CTは1分ほど。消費もそれほど多くないので、かなり使いやすいスキルだ。

 これが第一回イベントの時あれば……

 

 そんなアップデートとともにこの第二回イベントの告知もあった。事前の告知で探索型イベントだと分かってからは、【潜水】や【水泳】、【クライミング】、【デザートウォーク】、【暗視】といった行動範囲を広げられるスキルを育ててきた。今の俺ならどんなマップも踏破できる自信はある!のだが、俺をパーティに入れるやつは誰もいなかった。

 

 その理由が第一回イベントで貰った記念品の金のメダル。今回のイベント終了後にこのメダルをスキル等と交換出来るのだが、これは奪うことも出来るそうだ。銀のメダルを10枚集めれば金のメダルが手に入るが、その数は少ない。

 サッキーは『お前と組んだらお前からメダル奪えねぇじゃねーか!』だそうだ。トキワはいつも通りサッキーと組み、他のフレンドもサッキ―と似たような感じ。俺と同じく10位入賞のクロムはリア友との先約があったらしく断られてしまった。

 俺のフレンドが好戦的過ぎるのか、俺に人望がないのか。

 

 そんな訳で、俺は1人でイベントに参加することになった。

 

 もちろん、不安はある。時間加速で7日間続くこのイベントでまともに寝られるのかとか、ソロでの戦闘を勝ち続けられるかとか。だが、そんなことも含めてワクワクしている自分がいる。

 

『それではカウントダウン!5、4、3、』

 

 カウントダウンが始まった。できる限りの準備はしてきた。アイテムも装備もスキルも。

 

『2、1!』

 

 第二回イベント、スタートだ!

 

 

 

 俺の転送された先は浜辺だった。目の前には広大な海が、背後には森林が広がっている。

 少し迷ったが、まず海中を探索することにした。

 

 海に限らず水中では活動が制限される。【潜水】や【水泳】といったスキルがないとまともに動けない上に、これらのスキルがあっても息が続くのは40分ほどが限界だ。

 こういう場所なら運営もメダルをそこそこ置いておくだろう。

 

 

 

 波打ち際から沖へと、泳いでいく。さすがゲームというか、とても透き通っていて綺麗な海だ。海面からでもかなりの深さまで見渡せる。だから簡単に分かるのだが、この浅い場所にメダルはなさそうだ。岩や海藻といったものはあるのだが、金属的な煌めきは見当たらない。

 やはり沖に出ないとだめか。

 

 しばらく泳ぐと海底に崖が現れた。一気に水深が深くなり、見通しも効かない。俺はメダルを求め海底へと潜り始める。

 

 

 

 まばらな魚群や揺らめくイソギンチャクを横目に潜っていく。

 リアルでのダイビング経験がない俺にとっては、全てが新鮮に感じる。この海にいるモンスターはほとんどがノンアクティブらしく、優雅な海底散歩も楽しめそうだ。こういった作りこみが凄いのもNWOのいいところだな。

 

 崖はまだまだ深くまで続いていて、深く潜れば潜るほど、光が弱まり生き物が姿を消していく。【暗視】がなければまともに探索できなくなるほど暗くなった時、ようやく底についた。すでに潜水を初めて10分ほど経っていた。

 

 

 海底を進んでいく。崖の上とは異なり船の残骸のような木材が沈んでいる。だが、メダルは見つからない。

 数分進むと、石でできた門のようなものを見つけた。これも沈んだものかと思ったが、最初からこの海底に造られたものに見える。

 

 門をくぐり裏面を見る。上部のレリーフにメダルがハマっていた。これが銀のメダルか。

 

 まだ1枚目で、報酬と交換するには後9枚必要だ。イベントの期間を考えると、今日中に後2枚は見つけておきたい。足りない分はPKで稼ぐことになるが、イベントが進めば進むほどメダルは強いプレイヤーに集約されていく。もちろん、俺は負けるつもりはないが、ペインやドレッドクラスのプレイヤーだと危険は大きい。理想は5日目までに10枚集めて残りはPVPを避ける。20枚はよっぽど集まりがよくない限りは狙わない、理想はこんな戦略になるだろう。

 

 門をくぐった先にも石でできた神殿の跡のような場所が続いていた。俺は探索を続けていく。

 暗い深海のはずだが、微かな光を感じた。

 俺は引き寄せられるようにその光へと向かっていく。

 

 光の発生源は魔法陣だった。周囲には石柱が立ち並び、壁や天井には細やかな装飾が施されている。そして魔法陣の上には黒ずんだ十字架が浮かんでいた。

 明らかに何かしらのイベントがある場所だな。まあ、俺ならなんとかなるだろう。

 

 俺は魔法陣の上に歩みをすすめる。

 

 視界が煌めき、見える景色が変化した。どこかに転移されたらしい。

 場所は水中のままだが、周囲が一気に広がった。床には真っ赤なカーペットが敷かれ、天井は巨大なドーム状になっている。少し前は数段高くなっており、その先には巨大な玉座が。

 玉座に座る者は、下半身が魚上半身は髭を蓄えた美丈夫で頭には王冠を携えていた。左手は玉座に鎖で結ばれているが、右手には金のトライデントを持っている。差し詰め、人魚の王様といったところか。

 こいつがここのボスか。

 

 王様が、トライデントを持ち上げた。

 攻撃がくる。

 

 その時、違和感を覚えた。体の動きがいつもよりも鈍い。水の抵抗が大きい?いや、AGIが減っている。この水が原因だろうか。これはめんどくさいな。

 

 

 トライデントが煌めいた。

 

 

 

 

 

 数秒後、俺は浜辺に戻っていた。

 何をされたかは理解できた。あの時、トライデントから放たれた電撃が一瞬で俺を捉え、回復魔法を唱えた間に赤い小魚の群れと、巨大な触手と、巨大な歯に囲まれていた。

 躱そうとするも、下げられたAGIでは躱しきれず、最後にはさらに外から迫っていた水の渦に飲み込まれた。

 

「さすがに無理じゃね?」

 

 思わずそんな言葉が漏れ出す。

 攻撃の密度が高すぎる。あの電撃も水中にいる限り必中のようだ。VITに振っていない俺だとあの電撃を数発喰らうだけで死んでしまう。他の攻撃もAGIが下げられる以上、躱しきるのは難しい。

 というか、大盾使いでもメイプル並みの防御力がないと耐えきれないだろう。

 

 ──なにかギミックがあるのか??

 

 いや、あるはずだ。流石に誰にも倒せないボスモンスターを用意するはずがない。

 俺はトップクラスの実力者なんだ。俺に倒せないなら、バランス調整ミスってる。

 

 

 

 スタート地点の浜辺から、再び沖に出る。

 記憶を頼りにあの神殿を目指す。今回は潜らず海面から行くと、丁度神殿の真上だろうか。孤島を見つけた。

 上陸してみると、島の真ん中には朽ちた石碑がおかれていた。文字も何も判別できなかったが、なにかしら重要なものだろう。

 

 

 

 島ののあった場所から潜り、あの神殿を探索する。だが、あの魔法陣以外にそれらしいものはなかった。

 装飾を改めて見ると、あの人魚の王様や巨大なイカ、赤い魚群、巨大なサメのようなものが描かれていた。中心が王様でその周りに他のモンスターが配置されている。差し詰め、あの王様がこいつらを従えてるって感じだな。

 

 魔法陣で飛んだ直後は王様だけだった。もし、王様が呼び出している感じなら、先に部下だけを倒せたりするかもしれない。

 他にもあのAGIが下がらなくする仕掛けがあるのかもしれない。

 

 実際にギミックがあるのか、あるとしてどんなギミックがあるのか、まだなにもわからないが、とにかくこのイベント中に必ずあの王様を倒してやる!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。