絹村裕也はどこにでもいるただのサラリーマンだった、たいして実績を出すこともできずそのため出世もできなかった。
裕也はいつものように仕事に行くために町を歩いているとある男と体が接触した、次の瞬間今まで感じたことのない痛みが腹部を襲った、裕也は自分の胴体に目を向けると銀色に輝く物体が腹部から生えていた。裕也は自分に刃物を突きたてた男性を見た、男は自分の知らない男性だった、仮に何回か会っていたとしてもすれ違ったぐらいで会話などした覚えがなかった。
男は目の焦点の合ってないようであきらかに様子がおかしかった、それなのにずっとひきつった笑いで自分を見ていた。
睨み合っていたらそのうち痛みとともに感覚も薄くなり意識を失うというところで男が動き出した、さっきまでのひきつった笑いではなく完全に狂っていると確信できる笑顔で奇声を発しながら裕也に刺さっているナイフを引き抜いた。
薄れていた痛みが再燃するように戻ってきたため悲鳴を上げることができず、痛みをこらえることしかできなかった。男はその様子に満足したのか、肺と肺の間、心臓にナイフを間髪いれずに突き刺した。
裕也は自分が死んで行くのを感じながら、死ぬのは嫌だ、と死ぬその瞬間までそう思い続けた。
「その願いかなえてやろう」
次の瞬間、真っ白な空間に立っていた。裕也は混乱していた。
さっきまで感じていた痛みが消えているのだ、夢だと信じたいが夢にしてはあまりにもはっきりしすぎているのだ。自分の身に何が起きたか考えていると前方から声が聞こえてきた
「喜べ、おまえの願いは私がかなえてやる」
目の前に人型の物体が立っていた、その物体は人間というにはあまりにも異質だった。
顔には目、鼻、口、耳といった部品がない、しかも体がここにいる空間と同じぐらい真っ白なのにその存在が確認できるのだ。
とりあえずそのことは置いといて前にいる人型に質問した。
「願いをかなえてくれるって…?」
「そうだ、死にたくないのだろう?しかしお前は死んでしまった、だからお前に第二の人生を与えてやる」
この人型の言っていることがわからなかった、ただでさえ混乱しているのにいきかえらせてやると言われて茫然自失になっていると。
「私は人間でいう神に位置する存在だ。最近、やることがなくて退屈だったんだが久しぶりに生に執着しているものが死んだから暇つぶしに生き返らせてやろうというわけだ」
「善意で助けてくれるわけではないんですか?」
「善意で動くものは少ない、英雄であろうと神であろうと表では善意の行動でもその裏では欲にまみれているのはよくあることだ、これをお前のいう善意でいうと表はお前に第二の人生を与えてやろう、裏では第二の人生で俺の暇つぶしになってくれ、といったところか」
嘲笑交じりに言われた、だが裕也はこんなことも言われたにもかかわらず
「それでもお願いします、俺に第二の人生をください」
人型の様子はあまりよくわからないが少し驚いたようで
「それでも生を望むか、お前の第二の人生は云わば俺の暇つぶしだ、お前がその世界を本物だと思っていてもそれはお前だけの世界だ。お前以外はすべて本物をもとにしたまがいものだ、いや今話しているお前ですら本物を元にしたまがいものかもしれない、いつの間にか自分の信じていた世界がいとも簡単に崩れるかもしれないんだぞ?」
「それでもです」
裕也の返事に満足したのか、人型は
「よくいった!これでお前が反対したら有無も言わさず私がつくった世界に放り込むところだった。だがお前は反対どころか自分から進んで言った、そこでお前にひとつ願い事をかなえてやろう」
裕也は考えた自分は何がほしいかもちろん生きる力だ、そういえば自分はどういった人間に殺された?確証はないが精神に異常をきたした人間だ、なら自分の願うものは一つ。
「精神異常者から身を守る力をください」
「そんなものでいいのか?まあお前にはそれがお似合いだな、わかった、じゃあそこのドアから出てっくれ。そこから出たらお前の住む家の中だ、生活必需品はもう用意されてある。それとお前の言った精神異常者から身を守る力の使い方はドアをくぐった時に脳にインプットされる安心して第二の人生を歩んでくれ」
いつの間にかそこにあった扉に裕也は戸惑ったがその人型に礼を言ったあとドアをくぐった。
裕也がドアをくぐったあと人型は
「精神異常者から身を守る力なんて一つぐらいしかないじゃないか、でもあれだけじゃ危ないからもうちょっと能力を付け足しとくか…」
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