ダシマ式BanG!Dream「全バンド一貫! バンドリ学園!」   作:ダシマ

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第17話「勇気も奏で出すの」

 

 

 バンドリ学園ではテストが近づいていた。放課後の教室では友達とテスト勉強をする生徒もいる。

 そんなある日の事、飛鳥は昼食を食べる為に街を歩いていた。

 

飛鳥(何食べようかな…)

 

 飛鳥がどこで食べようか店を探していると、

 

「あっ!!」

飛鳥「?」

 飛鳥が横を見ると、ひとりの少年がいた。

 

飛鳥「えっと…」

「おまえ! ねーちゃんの彼氏だろ!!」

飛鳥「え?」

 飛鳥がふと少年の後ろにあったお店の名前に目がいった。やまぶきベーカリーと書いてあった。

 

(そういや確か…)

 

 飛鳥は顔合わせの事をした時の事を想いだした。Poppin Partyのドラム担当である山吹沙綾は実家がパン屋で、結構ファンが多い事に気づいた。

 

飛鳥(もしかしてこの子…山吹さんの姉弟かな…)

 

 飛鳥が少年を見ると、少年はずっと姉の彼氏ではないかと言い続けていた。

 

飛鳥「残念ですが違いますよ」

「えー」

 

 少年ががっかりしていたその時だった。

 

「コラー!!!」

 

 と、山吹沙綾が現れた。

 

「げっ!」

沙綾「違うって言ってるだろ!!/////」

「いてててててて!!!」

 

 沙綾が弟のほっぺたをつねっていて、それを見て飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「…こんにちは」

沙綾「あ! こ、こんにちは!! ごめんね!! 弟が変な事言って!!」

飛鳥「いえいえ。それでは…」

沙綾「あ! ちょっと待って!? パン丁度焼けたから!!!」

 

 沙綾の慌てた様子に飛鳥は困惑しつつも、パンを買っていく事にした。

 

沙綾「丁度1000円ね」

飛鳥「あ、はい」

 飛鳥が1000円札を出して、沙綾からパンを受け取った。

 

沙綾「あ、そういやもうすぐテストだけど、ちゃんと勉強やってる?」

飛鳥「あー。やってる事はやってますね…」

 飛鳥は苦笑いした。

沙綾「そう?」

飛鳥「ですが、勉強はあまり好きな方ではないですね…」

沙綾「まあ、うちの香澄も似たようなもんだけどさ。ちゃんと勉強しないと赤点だよ?」

飛鳥「ええ」

「ねーちゃんはいつも勉強勉強うるせーんだよ」

沙綾「こら!!」

 と、沙綾がまた弟にお仕置きすると飛鳥が苦笑いした。

 

 それから…

香澄「うわーん!! 勉強やだよー!!!(泣)」

はぐみ「いやー!!!(泣)」

有咲「ごちゃごちゃ言うな!!」

 

 香澄とはぐみが1組の教室で泣きわめいていた。

 

「か、香澄ちゃん…。僕が勉強教えてあげるよ…」

「はぐみちゃん…」

有咲「男は散れっ!!」

「もうやだこのクラス…」

 1組の男子たちは基本的に変態で、一般の女子生徒達はうんざりしていた。

 

香澄「こ、こうなったら飛鳥くんに…」

有咲「待て待て待て待て。何であいつが出てくるんだ」

美咲「そういやあの人、勉強できたっけ…?」

有咲「此間のテストで成績優秀者に名前が無かったぞ。そんな訳が…」

沙綾「……」

 沙綾が飛鳥の言葉を思い出していたが、皆と共にある事に気づいた。

 

(…もしかして、本当は頭良いの誤魔化してる?)

 

こころ「……」

イヴ「…どうしたの?」

こころ「あ! ううん!? 何でもないよ!?」

たえ「とにかく、今日からバンドの練習禁止ね」

美咲「そうね」

香澄・はぐみ「いや~~~~~~~~~~~~~!!!!!!(泣)」

 

 そしてまた事件が起きた。

 

バンドガールズたち「え゛」

 

『1位を取った生徒は好きな女の子とデートできる』

 という約束が発表された。

 

バンドガールズ「えええええええええ~~~~~~~~~~~!!!?」

 ちなみに対象は1年生のみである。

 

「えっと…中間の成績があまりにも悪かったので…賛成しちゃいました!!」

「先生―!!!!(激怒)」

 

香澄・はぐみ「……(汗)」

 ちなみに前回赤点ギリギリだった2人。

 

たえ「という訳でテスト前は勉強ね!」

香澄「あ~~~~~~ん!!!!」

有咲「でもこれマジで対策立てねぇと…」

 

 飛鳥もそのことを耳にしたが、全く気にせずその日はやり過ごした。

 

 夕方

飛鳥「あの人たちも大変だな…」

 飛鳥が河川敷を歩いていると、沙綾の弟と妹がいたが、何か揉めていた。

 

飛鳥「!?」

 飛鳥が即座に弟と妹の所に向かった。

 

「あ、ねーちゃんの彼氏!」

飛鳥「どうしたの?」

 飛鳥がしゃがんで、弟と妹に目線を合わせた。

 

「紗南に自転車の乗り方教えてるんだけど、紗南が怖がって中々乗ろうとしないんだ」

「だって~…」

 弟の純が飛鳥に事情を説明すると、妹の紗南が涙目で飛鳥を見つめた。

 

飛鳥「…もしかして、苦手なのかい?」

紗南「うん…」

飛鳥「そうだよね。転んだら痛いし」

紗南「……」

純「けど、できるようになんなきゃ、ずっとバカにされたままなんだぞ!」

飛鳥「確かにそうだけどね、無理にやらせて出来るものじゃないんだよ。勉強だってそうさ。無理やりやらされて、勉強が出来ると思う?」

純「…思わない」

 純が俯いた。

 

飛鳥「紗南ちゃんだっけ」

紗南「…うん」

飛鳥「紗南ちゃんは自転車に乗れるようになりたいって思ってる?」

紗南「うん…」

 飛鳥が口角を上げる。

飛鳥「そっか。それだったら話が早いな」

「?」

 飛鳥が紗南を見つめた。

 

飛鳥「おじさん今度ね。学校のテストがあるんだ。勉強はあんまり好きじゃないけど、紗南ちゃんに勇気を持って欲しいから、頑張る事にするよ」

紗南「!」

純「にーちゃん…」

 飛鳥が笑みを浮かべた。

 

飛鳥「だからさ。『一緒に』頑張ろうよ」

 

 それからというもの、飛鳥は真面目に勉強した。というか元々頭が良かったので、勉強する必要は殆どなかったが、純と紗南との約束を守る為に奮闘した。約束を破る事は、最も教育に悪い事の一つだという事を、飛鳥は知っていたからだ。

 

たえ「…ゴメン。交代して」

有咲「ゴメン…」

香澄「あの、本当にゴメンなさい…」

 

 香澄たちも有咲の家に集まって勉強会をしていたが、香澄の物覚えが悪く、たえと有咲は頭を抱え、香澄は申し訳なさそうにしていた。

 

 そんな中、沙綾は浮かない顔をしていて、りみが気づいた。

 

りみ「どうしたの?」

沙綾「いや、最近妹が自転車に乗る練習をしてるんだよ…」

りみ「いい事じゃないですか」

沙綾「前までは自転車を怖がって練習しなかったのに、どうして乗る気になったんだろう…」

香澄「純くんからは聞いてないの?」

沙綾「聞いても、やる気になったんじゃねって」

有咲「お前は勉強!」

香澄「ひ~ん!!」

 

 そしてテストが行われて、皆それぞれ頑張った。マークシート方式のテストであり、100点満点である。

 

採点はテスト終了後にすぐに行われ、結果は翌日に出て、成績優秀者の張り紙は目立つ所に張り出されていた。

 

「!!?」

 テストの結果を見て、皆が驚いた。

 

『1. 一丈字飛鳥  1年3組』

 

 飛鳥は見事に1位を取っていて、陰から飛鳥が紙を見ていた。

飛鳥(まあ、これで無効にするだろう)

 と、飛鳥はその場を去っていった。男子生徒は「またあいつか!」とか「あいつ一体何者なんだよ!」という声が聞こえてきたが、飛鳥は全く気にしなかった。

 

 3組教室

 

「一丈字!! お前1位じゃん!!」

「一体どうなってんの!?」

 と、皆が飛鳥に詰め寄った。

 

「まさかとは思うけど、カンニングしたんじゃ…」

 飛鳥があるものを見せた。問題用紙であり、その中には解説などをびっしり書いていた。

 

飛鳥「そうおっしゃるなら、確認して貰えますか?」

 飛鳥がその生徒を見つめた。

「い、いや…そういうつもりじゃないんだ…ゴメン…」

飛鳥「ご理解いただけて助かります」

 その時だった。

 

香澄「飛鳥くん!!」

 香澄たちが現れた。

 

飛鳥「どうされたんです?」

香澄「どうされたんですじゃないよ!!」

有咲「お前1位じゃねーか!!」

はぐみ「仲間だと思ってたのにー!!」

美咲「そんな訳ないでしょ」

 美咲がはぐみの頭をチョップした。

 

飛鳥「ええ。ちょっと色々ありましてね…」

沙綾「一丈字くん」

 沙綾が飛鳥の前に現れた。

 

沙綾「妹の自転車の事…。もしかしてあなたが関わってる!?」

 飛鳥が口を閉じると、沙綾は確信した。

 

沙綾「やっぱり…」

飛鳥「その質問に答える前に、一つお伺いしたい事がございます」

「!?」

飛鳥「あの副賞の件はどうなりました?」

「副賞…」

飛鳥「1位になった方は皆さんのどなたかとデートできる権利を得られるとありましたが」

有咲「それならもう無効になったよ。女子全員で抗議して。残念だったな」

飛鳥「いえ、寧ろ感謝してますよ」

「!?」

 飛鳥が安心したように笑った。

 

飛鳥「そんな理由でデートなんかしても楽しくないでしょう。あれ、皆さんご自身の意思じゃないんですよね?」

 飛鳥が沙綾を見た。

 

飛鳥「さて、それならもう隠す必要はございませんね。紗南さんは自転車に乗れるようになりましたか?」

沙綾「う、うん…」

飛鳥「そうですか」

 飛鳥が笑みを浮かべた。

 

飛鳥「あ、今日は純くんと紗南さん。二人ともいますか?」

沙綾「い、いる…」

飛鳥「分かりました。デートの件は辞退しますが、少しだけおうちに伺わせて頂きます。約束していたことがあるので」

「!!」

 

 そして放課後、やまぶきベーカリーを訪ねた飛鳥。

 

純「あ!! にーちゃん!」

紗南「!」

 店番をしていた二人が反応した。

 

飛鳥「こんにちは。自転車乗れるようになったんだって?」

純「うん!」

紗南「……!」

 

 そして外で紗南は自転車に乗ったが、ちゃんと漕げるようになっていた。

 

飛鳥「ちゃんと乗れるようになったんだねぇ」

純「にーちゃんのお陰だよ」

飛鳥「いやいや」

 

 そして紗南が飛鳥と純の所にやってきて、飛鳥がしゃがんで紗南に目線を合わせた。

 

飛鳥「よく頑張ったね」

紗南「…うん」

 飛鳥がしゃがんで目線を合わせた。

 

純「あ、それはそうとにーちゃんはテストどうだったんだよ!」

飛鳥「ちょっと待ってね」

 飛鳥がテストの記録表を見せた。

 

飛鳥「何位だと思う?」

純「1位!」

飛鳥「正解! 1位取ったよ。しかも100点の教科もあるよ」

純「すげー!!!」

紗南「……!」

 純と紗南が驚いた。

 

純「ねーちゃんと全然違う!!」

飛鳥「…それは間違ってもお姉さんには言わないようにね」

 と、その時だった。

 

「全然違くて悪かったな!!」

純「イタイイタイイタイイタイ!!!」

 と、後ろから沙綾が純をつねった。

 

飛鳥「山吹さん」

沙綾「急いで追いかけて来たよ…!!」

 沙綾が飛鳥を見ると、立ち上がって視線を沙綾に合わせた。

 

沙綾「…それはそうと、弟と妹が世話になったね。ありがと」

飛鳥「いやいや。久しぶりに勉強してみたけど、楽しかったですね。純くんと紗南ちゃんのお陰かな?」

沙綾「ちょっとやめてよ。少なくとも純はすぐ調子に乗るから」

純「ねーちゃんもだろ!」

沙綾「あんたと一緒にするな!」

 と、姉弟げんかが始まった。

 

飛鳥「まあ、仲が良くて何よりです」

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「それでは、私はこれで失礼しますね」

純「え!? もう帰っちゃうの!?」

飛鳥「うん。残念だけどもう時間だ。紗南ちゃんが自転車に乗れるのを見届けられて本当に良かった」

紗南「……!」

 

飛鳥「お姉ちゃんと仲良くね。それじゃ、また!」

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

沙綾「あ、えっと…ありがとねー!!」

純「また来いよー!!」

沙綾「敬語使え!!」

 と、沙綾と純が手を振ると、紗南がボロボロ泣いていた。

 

沙綾「あ、ほら紗南もおにーちゃんにバイバイ…って、めっちゃ泣いてる!!(汗)」

純「あー…。多分もう会えないと思ってるんじゃね?」

沙綾「えぇぇぇ…」

 

 紗南の懐きぶりに沙綾は困った顔をした。

 

 そして後日

 

沙綾「ゴメン…また店に来てくれないかな。妹が寂しがっちゃって…」

飛鳥「……(汗)」

 

 3組の教室で、沙綾は申し訳なさそうに両手を合わせると、飛鳥は苦笑いしながら承諾するのだった。

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル17
宇田川巴

Afterglowのドラム担当。
サバサバとした性格。ラーメンが好物で一番好きな味は豚骨醤油。
和太鼓も演奏でき、町内会の祭で披露したりもする。
でもお化けが苦手だったりと、可愛い所もある。

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