Sword Art Online -Project Salvation-   作:青き勇者

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第二章 モディファイアー -Modifier- 11

「話っていうのはさっきのことか?」

「うん。もう話しておかないといけないと思ってね」

 

 こうやって三人だけで集まるのはなんだか久しぶりな気がする。最近は傍付きであるエルたちがいたからね。

 話すと決めた以上、はぐらかすことも濁すこともなしだ。話す順番や言葉には配慮しないといけないけど、内容は誤魔化さない。

 

「今回の件が大きな転換点となるんだ。見た未来ではユージオとキリトにとってね。

 

 いまさら僕の言うことを疑うつもりはないのか、ユージオとキリトは顔を見合わせて心構えをした。

 

「まず、キリトの言葉が引き金でロニエとティーゼは行動を起こすわけだ。それが『法で禁じられていなくてもしてはいけないこと』という言葉。だから僕は釘を刺した。勘違いしないで欲しいのは、キリトの意見に僕は反対しているわけじゃない……」

「むしろ賛成、か」

 

 僕の言葉を引き継いだキリトは既に理解していたのか、静かに頷いていた。

 

「どういうこと?」

「よく考えてみろよ、テオがここまで来た目的を」

「僕を死なせない……、いや、アリスを助けるため……、そうか……」

「そう、アリスを助けるためということは、つまり法に背くということ。それを今現在しようとしている僕があんなこと言ってもなんの説得力もないよね」

「うっ……」

 

 小さな声で「納得してしまった」と呟くユージオに苦笑すると、話を続ける。

 

「ただ、僕の言葉が嘘ってわけじゃない。この世界の法がみんなのために作られたものならさっきの言葉を僕は本心で言うだろう。でも、そうじゃないから、ひとりの都合にいいようにしか作られてない法だから、僕は背く」

「民主主義的だな」

「みん、なんだって?」

「みんなで考えて、みんなのために作る社会、そんなところかな」

「いいね、それ。それをやりたいよ。僕は……」

 

 それは理想論でしかないけれども、もし本当にこの人界で民主主義ができるのならそれは奇跡に近いだろうな。なんせ、この人界は住民の性質上、社会主義が向いてるからな。

 

「話がそれたね。でだ、キリトの言葉に感化されたロニエとティーゼはウンベールとライオスへと直談判に行くわけだ。自分の正義を、正しさを信じてね」

「それを、逆に利用された、ということか?」

 

 無言で僕が頷くとだいたいはどういう経緯でまずいことになるのか、想像はできたキリトがソファの背にもたれかかり、天井を仰いだ。一方のユージオもなんとなくわかったようで浮かない顔をしている。

 そんな二人をみて少し間を置いた方がいいと思った僕は、コップに水を入れて渡す。

 気分を落ち着かせるように冷たいコップを両手で握りしめたユージオは、ぐっと飲み干して机の上にコップを置いた。

 

「続き、聞かせて」

 

 ユージオの言葉に頷くと、こちらも覚悟を決めたのかキリトが頷いた。

 

「直談判の際に二人は侮辱ともとれる言葉を口にした。とはいえそれはあいつらウンベールとライオスにとってであって、間違ったことを言ったとは思えない。で、それを利用して貴族裁決権を行使。縄で縛り上げ、ベッドの上で、駆け付けたユージオの目の前で、凌辱しようとする」

 

 歯を食いしばって拳を握りしめてユージオは小さく許せないと呟いた。キリトも気持ちは同じようだ。

 

「そして、この件をきっかけにカセドラルに行くこととなる」

「具体的には?」

「それは言えない。僕は未来を見たから、悲惨な未来を変えようとして話はした。けれど、この先を話すことは……それは二人の行動を決定づけてしまうことでもあるから、二人は自分で選択してほしい。僕が言っていたから、という理由で決めると悩むことになると思うから」

 

 長い付き合いだからか、キリトは僕の言い方から話す気がないとわかるとすぐに引いてくれた。今まで、僕が二人の決定を後押しする形で未来の出来事を話すことはあった。だけど、今回はその瞬間にならないと本人の中に選択肢は生まれないから、今ここで話してしまえば正解を事前に教える、いわばカンニングになってしまう。

 そうなったとき、自分の意思でした選択なのか迷うことになるかもしれない。

 

「悲惨な未来には干渉したいけど、僕達の意思にまでは干渉したくないということかい?」

「干渉、というよりは、僕が決めつけることは避けたいんだ」

「わかったよ。テオの意思を尊重する。けど、一つ聞かせてほしいんだ。ロニエとティーゼは無事なんだよね」

「未遂で終わるよ。僕の見た未来ではね」

 

 ほっとしたようによかったと呟くユージオに僕は少し複雑な思いで水を口に含んだ。

 そんな僕たちをみて区切りがついたと判断したキリトは話を進める。

 

「事情はわかった。じゃあ、どうするかを決めないとな」

「僕たちが直接言いに行くしかないだろう?」

「言いに行っても変わらないさ。何せ、こっちは正義とか倫理とか曖昧なものでしか今のところ非難できなんだから……」

 

 僕の言葉に顔を曇らせたユージオはじゃあどうするのかと眼で訴えてくる。流石のユージオもじれてきたのかな。

 あまり僕自身、乗り気ではないが今のところ考えられる策というのもこれといってないのが現状。だから、さっき聞いた案をひとまず相談しようと口を開く。

 

「それで、相談があるんだ」

「……相談? なんだい?」

「エルとフレニーカ、傍付きを交代する」

「そ、それは!」

「おい、それはなんでも」

「エルが、提案してくれたんだ」

 

 言葉に力が入ってしまったのに気付いたユージオとキリトは、何も言わずに何もせずにただ座ってくれている。

 僕だって、よく知りもしない子と、傍付きであるエルなら、エルの方が大事だし大事にしたい。それでも、ずっとこの問題だけは先送りにしてきた僕が何か新しい案を出せるわけでもない。

 情けないことだけれど、後輩に頼むしかないんだ。

 

「分かった。俺は賛成だ」

「でも、僕は!」

「よせ、ユージオ。俺らが今すぐどうにかできることじゃないんだ。エルソンはその考える時間をくれる、そういうことだろう?」

 

 エルは優しくて面倒見のいい子だ。だけど、ユージオとは違って危なっかしさはない。きっと、いろいろ考えてこうするのが最善だと思ったのだろうし、それが単なる自己犠牲だとも思えない。

 キリトの問いに頷くと、俯いて話すだけで精一杯の僕は声が震えた。

 

「うん……、嫌だよ、僕だって。エルが傷つくってわかってるのに。でもさ、これをしないと……」

「……ごめん」

 

 謝るユージオに大丈夫だからと宥めると、明日にもエルとフレニーカを交代することをウンベールへ話しに行くと伝えて今日はお開きにした。

 キリトのいなくなった居間で、僕とユージオは何もしゃべらずに時間が流れるのをぼんやりと眺めていた。

 どれくらいたったかわからない頃に、就寝を告げる鐘が鳴って目を合わせるがすぐに逸らされる。

 

「一緒に寝てもいい?」

「うん」

「まくら持ってくる」

「うん」

「ユージオ……」

「うん」

 

 機械のように頷くユージオに心配になった僕が近づくと、こないでと呟いた気がした。気がしただけで言ってないかもしれないけど、距離は少し感じてしまう。

 

「情けないんだ。いっぱい鍛錬して強くなったと思っても、結局なんにもできない自分が情けないんだ。浅はかで、無力で。ねぇ、助けられるかな、僕にロニエとティーゼを。フレニーカとエルソンを……アリスをっ!」

「できるよ、ユージオなら。僕が保証する」

 

 言いたくはなかったけれど、ここまで自信を無くしたユージオを放っておくわけにもいかない。きっと、ユージオは守り抜くだろう。ただ、それが自分の意思による選択か僕の言葉による選択かは曖昧なものになってしまった。

 

「ほーら、寝るよ」

 

 ソファに深く腰掛けて俯くユージオの左腕を掴むと少し強引に引っ張って、ユージオの寝室へと移動する。

 

「あんまりにも暗い顔してると、襲うよ」

「お、襲うって……」

「冗談冗談。ほら、寝た寝た」

 

 渋々ベッドで横になるユージオは端に寄って僕が寝るスペースを開けてくれる。遠慮なく寝転ぶと向き合った状態で抱き着かれた。

 

「きっと、僕は助けられないんだね。でも、ありがとう」

 

 悲しそうに小さな声で呟いた言葉に、否定も肯定もできずユージオに抱きしめられたまま眠りについた。

 

 

 

 

 上級修剣士寮の最上階。ノックの音が廊下に響くと、尊大な声が扉の向こうから返ってくる。

 

「どなたですかな」

「テオ上級修剣士殿の傍付き、エルソン・セーツヴィル初等練士でございます」

「入りたまえ」

「失礼いたします」

 

 テオ先輩たちの部屋より一回りは大きい重厚な扉の取っ手に手をかけると押し開ける。甘ったるい芳香が漂ってきて内心では悪態を付きながらも丁寧に扉を閉めた。

 部屋の中央に置かれているソファにはジーゼック次席上級修剣士が腰かけ、何が面白いのか口角はわずかに上がっている。

 

「本日はお時間をいただきありがとうございます」

「して、何用かな」

「折り入ってご相談がございます。テオ上級修剣士殿の傍付きを辞退し、ジーゼック次席上級修剣士殿の傍付きにご拝命賜りたく」

 

 私の言葉に喜色の滲んだ顔へと変貌した彼は口角をさらに上げて、深く腰掛けていたソファから起きて前のめりになると、こちらを見定めるような視線を飛ばしてくる。

 

「ほう。ほうほう。いかがしてかな」

「私には耐えられませんでした。流石に無理があったのです。四等爵士である私と平民では」

 

 相当に愉快なのかご機嫌にも嗤いながら立ち上がると、勝手に私の心情や境遇を決めつけたのか、さも演者風に私を慮るような口調で大仰にも抑揚を付けながら語り始める。

 

「それはそれは、さぞ心苦しかったであろう。苦痛であったろう。ひと月もの苦労、計り知れないな。よかろう。私のもとに来るがよい。平民の下などに甘んじる必要なんてないのだからな。同じ四等爵士家の出として歓迎する」

「ありがとうございます」

「さて、その平民はこの件を了承しておるのか?」

「はい。一言、これ以上は耐えられないと伝えたところ、了承いただきました」

「くはは、平民のくせに傲慢にも貴族を、それも四等爵士家のものを指名などするからだ。自ら恥を塗り重ねるなど到底理解できんわ」

 

 まるで親を見ているようで吐き気がする。これだけで、どれだけテオ先輩のもとが恵まれていたのか痛感する。

 一頻り不愉快な演説を繰り広げると時間に余裕があるからと手続きを今すぐにでも済ますことを提案してきた。一日でも早い方がいいだろうと考えていたこちらとしては問題ないが、些かの不安がないわけではない。

 テオ先輩と合流して管理担当教官のもとへと向かう。一方のジーゼック次席はフレニーカと合流して来たようだ。

 

「セルゲン教官、急な訪問に応じていただきありがとうございます」

「いえ、問題ありません。それで、どのような用件で?」

「私とテオ上級修剣士殿の傍付きの交代をしたいのです」

「……双方の同意があるのならば異論はありません。どうなのですか?」

「私は異論ありません」

「私も異論はありません」

 

 事はあっという間に進んだ。交代することに関してその理由は全く質問せずに不干渉。ただ形式的な言葉が交わされただけ。

 しかし、今回は色々と聞かれるより都合はよかった。教官室の扉を閉め、それぞれが新しい指導生の傍へと付くと、ジーゼック次席は喜色を滲ませてテオ先輩を罵った。

 

「滑稽なことだな、自ら指名した傍付きに拒絶されるなど。五等爵士家のフレニーカですら君には重荷だろうから、傍付きは平民から選ぶことをお勧めしておくぞ」

「……」

「くははっ」

 

 一瞬、睨みつけるとすぐに背を向けてフレニーカとともに離れていった。今更ながらに少しだけあそこにいたいという欲が出てきてしまう。

 

「さあ、行こうか」

「はい」

 

 ここまではうまくいった。あとはこれから私がどれだけうまくやれるかにかかっている。

 

 

 

 

 カツカツという自分の靴音がいつもより大きいことに苛立ちながら廊下を歩き続けると、上級修剣士寮の近くまで来ていたことに気づいて止まる。

 そして、遅れて止まった足音にハッとして後ろを振り返る。

 

「ごめん、ちょっと急だったよね」

「い、いえ。その、ありがとうございます」

「礼ならエルに言ってよ。僕は何もしてない」

 

 投げやりな言葉遣いにまた苛立ちを感じて舌が動く。自分の動作ひとつひとつが明確に認識できてしまい、それが苛立ちからくる動作であることを意識してさらに苛立つ。

 ただ何もできなかった自分に対する鈍い激情だけが取り残されている。当たり散らすわけにもいかず、少し落ち着く時間が必要だ。

 

「今日は疲れただろう。帰っていいよ。明日から頼むよ」

「きょ、今日からでも私は……」

「明日からよろしくね。フレニーカ」

「は、はい……」

 

 他人のことを考えられる余裕のない僕が向かったのは修練場だった。誰もいないこの場所でひとりになりたいと思い扉を閉める。

 壁に掛けられた木剣を取ろうとして手が止まる。自分の木剣のすぐ下にはエルの木剣がかけられていた。柄は握りしめる部分が少し変色し、木の質感がほんの少し変わっている。この一か月間のエルがした努力の証だった。

 新調したばかりの自分の木剣を取ると、ただひたすらに剣を振り始める。無心になれるように、忘れてしまえるように、ただひたすらに剣を振り上げ、振り下ろす。体に馴染んだ動作はほぼ無意識のなかで繰り返されていく。

 

「テオ」

 

 いつの間に来ていたのか、ユージオの呼びかけに木剣を振る腕が止まる。それを見て僕から木剣を取り上げると、おもちゃを取り上げられた子どものような心境で問いかけた。

 

「どうして」

「三十分前にティーゼから聞いてここに来た」

「木剣かえして」

「ダメ。自分を痛めつけてもどうにもならないことくらいわかっているでしょ」

「練習してただけだ。返せ」

「……いやだ」

 

 意志の固いユージオに苛立ちが湧いてくるも、八つ当たりするわけにもいかずドカッと大きな音を立てて座る。胡坐をかいて貧乏ゆすりまで始める僕は子どもじみていて、きっと呆れられているだろう。

 ひとりになりたいという意思をこんなことでしか表せない僕の少し斜め後ろにゆっくりとユージオは腰を下ろした。慎重に言葉を選んでいるのか間が少し開いた後に服の擦れる音がした。

 

「弱音をはいてよ」

 

 励まされるんだろうなとか、怒られるんだろうなとかありきたりな言葉を想像していた僕は、弱い声色で発された「弱音をはいてよ」という言葉にドキリとした。

 それからは何も言うことなくただ時間だけが過ぎていき、日の角度も随分と変わっている。

 

「ユージオ、帰ろう」

「いやだ」

 

 立ち上がりながら勝手にほとぼりの冷めた僕はユージオの方へ向いた。

 

「どうしてだよ、もう時間も……」

「いやだって、言ってる!」

 

 立ち上がっている途中。それも不安定な姿勢の僕へ、同じく不安定なユージオが掴みかかってきて僕たちは床へと倒れこんだ。

 ユージオが絶対にすることがないであろう行動を目の前で起こされたことに思考が追い付かずにいると、頬に涙が触れて馬乗りとなったユージオと目が合った。

 

「どうしてなの! いっつもひとりで背負って、ひとりで解決しようとして、誰かの手を借りたと思ったら勝手に負い目を感じて! 僕は友達じゃないんだよ! 恋人だっていってくれたじゃないか……どうして辛いことを教えてくれないの、どうして何も言ってくれないのさ。ずるいんだよ! 僕にだけ言わせて、お前は黙ったままなんて!」

 

 ティーゼが失敗して慰めるユージオでも、キリトがいたずらして諫めるユージオでも、困っている誰かを助ける優しいユージオでもない、こんなユージオをみるのは初めてだった。そうまでさせてしまうのはなんなんだろうか、いや……そうまでなってくれるのは僕たちが恋人だから、なんだよね。

「ごめん」っていったらもっと泣くよね。なにも言わなかったら愛想を尽かすよね。僕も今のユージオみたいに気持ちをさらけ出さないといけないよね。

 

「怖いんだ……全部知っていることが、知らない道を進むことが」

「……知っているっていうのは辛いんだね。でも、だからこそ知らないことが怖くなるんだね」

 

 僕が頷いてみせると、ユージオはそっと離れて僕の隣へと座る。ちょっとだけ乱暴に涙を袖で拭うと僕の目を見た。

 

「どう、言ったらいいのかな……テオは本当に自分の願う結末に向かって進めているのかな。知っていることに縛られて、最後の結末だけ変えようとして、その道中は同じ道を辿っていないのかな」

 

 ユージオの言葉に少し思うところがあって目を瞑ると思考の海に浸る。確かに僕は最後だけ変えることに躍起になって、途中を変えようとはしなかった。いや、途中を変えることで最後がどうなるのかわからなくなるのが怖かった。

 

「ユージオはさ、何にも分からないこの先へ生きていくことが怖くないの?」

「怖くないよ。僕は何にも知らないからね。でも、テオは怖いんだから、無理しなくてもいいと思うよ」

「そっか。ありがとう、なんか吹っ切れた気がするよ」

「えっ? いまので? 僕にはなにがなんだか」

 

 本当にわからないのかユージオは首をかしげて不思議そうにこっちを見ている。でも、今の言葉で一歩だけ前に進めた気がするよ。

 

「帰ろうか」

「うん」

「ありがとう」

 

 僕のお礼への答えなのか手を差し出すユージオ。手を握って茜差す修練場を後にすると、寮までの帰り道でつまらない話でもしようと口を開く。

 

「生まれ変わったら何になりたい?」

「そうだね、鳥になって空を飛んでみたいかな。テオは?」

「僕は生まれ変わってもユージオの恋人」

「もう、そんな恥ずかしいことを平気で」

 

 照れ隠しなのか視線を逸らして消え入りそうな声で言った。ほんと、どうしてこんなにも愛おしいのか。

 

「僕が全くの別人へと生まれ変わってしまったとしても、愛してくれる?」

「愛するよって言いたいところだけど、全くの別人だったらそれはテオなの?」

「それもそうか。じゃあちょっと変えるよ。僕がユージオを忘れてしまったら?」

「愛する、かな。テオがどうなっても愛するよ。テオというひとりの人間であることに変わりがないのなら。別人だったら浮気になっちゃうからね」

「それはヤダな」

「でしょう?」

 

 渋い顔で答えるとユージオは少し笑って僕の答えはどうなのか聞いてくる。

 

「もちろん、愛するよ」

 

 ユージオが愛してくれるならきっと僕はユージオを愛することができるだろう。

 すっかり夕食の時間となり仄暗くなった世界を寮から漏れ出る明かりがぽつぽつと照らし始めた。

 

「今日のご飯はなに?」

「テオの好きなスープと、キリトが好きなお肉だよ」

 

 僕たちの好みと献立を完璧に把握しているユージオは淀みなく答えた。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
これで第二章は終わりとなります。

第三章は現在執筆中ですので、今しばらくお待ちください。
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