ボク達の征く暗殺教室   作:彼岸花 澪

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まずは、遅ばせながら新年の挨拶を。新年おめでとうございます。今年ものんびりにはなりますが、私の作品をよろしくお願いします。



しおりの時間

神崎side

 

私と茅野さん、秋月さんは祇園の奥で襲われた後腕ごとガムテープで拘束されて近くに停めてあった車に無理やり乗せられていた。奥田さんが居ないってことは多分、見つからなかったんだと思う。喧嘩になった瞬間すぐに物陰に入っててもらったけどそれが良かったみたい。でも、すぐに戦闘態勢に入って行動した赤羽君や秋月さんのような行動は私たちには出来ない。この車がどこに行くのかもよく分からない中、前にも後ろにも2人ずつ居て常に監視されてるしたとえ後ろのふたりをどうにかできたとしても、そこから逃げ出そうにも難しい。そのせいで私と茅野さんは秋月さんを挟むように前から二列目の座席で身を寄せあっていた。

 

「・・・・・」

 

だけど、秋月さんが未だに目が覚めない。私達とは違って赤羽君と共に攻撃をしたせいか腕だけじゃなくて足や口までも拘束されている。私が車に乗せられる前に見えたのは、私達が捕らえられたことで一瞬、動きを止めたところを狙われて気絶させられた秋月さん。そして、その秋月さんを見た事で隙の生まれた赤羽君を鉄パイプで殴ろうとする助手席で座ってる人。

 

「うひゃひゃひゃ!!チョロすぎんぞこいつら!!」

 

「言ったべ?普段計算ばっかしてるガキはよ、こういう力技にはまるっきり無力なのよ。まぁ一人そうじゃないやつもいたけどよ」

 

周りの人と顔を合わせないように俯きながら秋月さんを見ていた私とは対比するように茅野さんが何か言おうとして顔を上げた。

 

「・・・ッ、犯罪ですよねコレ。男子達あんな目に遭わせといて」

 

「人聞き悪ィな〜、修学旅行なんてお互い退屈だろ?楽しくしてやろうって心遣いじゃん」

 

「な、まずはカラオケ行こーぜカラオケ」

 

「なんで京都まで来てカラオケなのよ!!旅行の時間台無しじゃん!!」

 

「わかってねーな、その台無し感が良いじゃんか。そっちの彼女ならわかるだろ」

 

私に話を振ってきた・・・?まさか・・・

 

「どっかで見たことあったのよ。目ぼしい女は報告するようにいつも友達に言っててよ。去年の夏頃の東京のゲーセン。これおまえだろ?」

 

そう言ってリーダー格の男が携帯で見せてきたのは紛れもなく去年の夏頃のわたしの姿。ただし、普段の私じゃ絶対にしないような服装をしている。

本来の私は黒髪のストレートだけどその時は茶髪の巻いてあるウィッグをしてギャル風と言うべきような派手な服を着てアクセサリーをいくつもいくつも付けている、如何にも不良のような格好の写真。こっちを見てたからか写真が見えて茅野さんが驚いた表情で写真と私を何度も交互に見ている。無理もないよね、当時はバレないように、と私とは正反対な姿の変装してたんだし。

 

「さらおうと計画してたら逃がしちまった、ずいぶん入り浸ってたんだってなぁ。まさかあの椚ヶ丘の生徒とはね〜。でも、俺にはわかるぜ。毛並みの良い奴等ほどよ、どこかで台無しになりたがってんだ。恥ずかしがる事ァねーよ。楽しいぜ、台無しは。落ち方なら俺等全部知ってる」

 

この人達、新幹線の途中でぶつかってきた人たちだ。どこかで見覚えがあると思った。全部私がきっかけで起きたこと?

 

「これから夜まで台無しの先生が何から何まで教えてやるよ」

 

 

 

 

 

葵side

 

「───楽しもうぜ、台無しをよ」

 

誰かが何か言ってるのが聞こえる。それに、ソファー?に体を預けてるのもわかる。感覚が戻ると共に閉じた瞼の裏に眩しい光を感じ目を開く。

 

「・・・・・・秋月さん、起きたんだね・・・」

 

「......」

 

声を出そうとしてもガムテープを貼られて喋れないため頷いて返事をする。できることなら早く外して欲しい。そう思いながら周りを見渡す。ボロボロになったタイルに埃の溜まった椅子が見える。元々ここはバー?拉致ったあとの場所としては正解かもね。

 

「おっ、最後の一人もお目覚めかぁ」

 

言葉と共に顔を覗き込まれる。キモいし僅かな抵抗として睨みつける。が、対して効果はなさそう。いや、口のガムテープを外すのが少し雑な感じがしたし無意味ではなさそう?

 

「・・・神崎さん、そういえばちょっと意外。さっきの写真。真面目な神崎さんもああいう時期あったんだね」

 

さっきの写真?何か、神崎ちゃんに対して脅しになるような写真でもあったのかな?

 

「・・・・・・うん、うちは父親が厳しくてね。良い学歴。いい職業。良い肩書きばかり求めてくるの。そんな、肩書き生活から離れたくて名門の制服を脱ぎたくて知ってる人がいない場所で格好も変えて遊んでたの。・・・バカだよね、遊んだ結果得た肩書きは「エンドのE組」。もう自分の居場所がわからないよ」

 

「俺等と同類になりゃいーんだよ、俺らもよ肩書とか死ね!って主義でさ。エリートぶってる奴等を台無しにしてよ・・・・・・なんてーか、自然体に戻してやる?みたいな。良いスーツきてるサラリーマンには・・・女使って痴漢の罪着せてやったし、勝ち組みてーな強そうな女には・・・こんな風にさらってよ、心と体に二度と消えない傷を刻んだり、俺等そういう教育沢山してきたからよ。台無しの伝道師って呼んでくれよ」

 

...何を言ってるのかな。君たちが神崎ちゃんと同類になれる?そんな訳ないじゃん。君たちみたいな周りの足を引っ張るだけの存在と神崎ちゃんみたいに自分の状況を理解し、前向きに何かを取り組む人が同列になるわけないだろう。

 

「...頭、が悪い......」

 

あまりの低能さ、つい言葉が出てしまった。ボスの男がボクの方に向かって、目の前に立ちイラついたような表情と共に殴ってきた。タイミングを合わせて動いたから当たったように見えるけど、そんなにダメージはないようにしたけど完璧に殺しきれなかった。うぅ...すこし、痛い。男はそのまま、ボクの首を絞めてきた。

 

「何エリート気取りで見下してンだ。あァ!?おまえもすぐに同じレベルまで堕としてやンよ」

 

「けほっ...気取り.......エリート...事実......」

 

「今から10人ちょいを夜まで相手してもらうがな、宿舎に戻ったら涼しい顔でこう言え「楽しくカラオケしてただけです」ってな。そうすりゃだ〜れも傷つかねぇ。東京に戻ったらまた皆で遊ぼうぜ。楽しい旅行の記念写真でも見ながら・・・なァ。だが、お前だけは今からヤってやるよ!連れて行け!」

 

「...っ」

 

胸ぐらの当たりを掴まれて扉の着いてない奥の部屋に連れて行かれる。流石にこれは抵抗できない。見えなかったけど扉が開く音と数人の足音、茅野ちゃんが誰かに慌て何かを伝えようとしてるのが聞こえる。ここじゃ、壁が死角になって茅野ちゃんや神崎ちゃんがどうなってるかが見えない。そんな所で、数人に囲まれる。男たちの中から1人がボクのカーディガンごとカッターシャツを力づくで引き裂いてくる。ボロボロになったカッターシャツとカーディガンで下着を隠そうにも手が使えないから隠せずにいやらしい目で全身をじろじろと見てくる。

 

「へへっ、イイ身体してんじゃねぇか」

 

「...っ......犯罪者...」

 

減らず口だと分かってたとしても言うしかない。煽れば、危険が増すのはわかってるけどもカルマたちが来るまで可能な限り時間を稼がないと。あぁ、でも少しやりすぎたかも、いよいよ隠すことすらしなくなった。明らかに汚れた欲望を見せつけてきた。穢されたボクでもカルマは好きなままでいてくれるかなぁ。

 

───ギィィ

 

「お、来た来た。うちの撮影スタッフのご到着だぜ・・・なっ!?」

 

「修学旅行のしおり、1243ページ班員が何者にか拉致られた時の対処法。犯人の手がかりが無い場合、まず会話の内容や訛りなどから、地元の者かそうでないか判断しましょう。地元民ではなくさらに学生服を着ていた場合、1244ページ。考えられるのは相手も修学旅行生で旅先でオイタする輩です。」

 

「皆!」

 

「なっ・・・てめぇら、なんでココがわかった・・・!?」

 

渚ちゃんの声がする。それに、茅野ちゃんが言ったことからしてカルマとかも居るのかな?

 

「土地勘のないその手の輩は拉致した後、遠くへは逃げない。近場で人目につかない場所を探すでしょう。その場合は付録134へ。先生がマッハ20で下見した・・・拉致実行犯潜伏対策マップが役立つでしょう」

 

ちゃんと読んでなかったけど、そんなのまでフォローしてるの凄い。普通はないもんなぁ。見えないけどあの人たちかなり驚いてると思う。

 

「凄いなこの修学旅行のしおり!完璧な拉致対策だ!!いやー、やっぱ修学旅行のしおりは持っとくべきだわ・・・で、どーすんの?お兄さん等。こんだけの事してくれたんだ。あんた等の修学旅行はこのあと全部入院だよ。それに、葵を何処にやった?」

 

や、やば、カルマキレてる...この姿見せたらほんとにやばそう.....お願いだからボクの方に当たってこないでね?カルマの事だからお仕置きと言うか命令してきそう。ここまでいった原因の大半はボクだし。

 

「カルマ君!奥に連れて行かれた!そんなに時間はたってない!」

 

───ギィィ

 

「・・・・・・・・・フン、中学生がイキがんな。呼んどいた友達共だ、これでこっちは10人。お前らみたいな良い子ちゃんはな、見たことない不良共だ。それに、あの女は先にお楽しみ中だよ!」

 

男たちがボクのスカートに手をかけて下ろし始めてる。拘束されたせいで足を動かして抵抗することも出来ない。ここに来て、今まで感じてなかった恐怖が一気に襲ってきた。怖い。抵抗出来ないだけでここまで怖くなるとは。恐怖で涙が出てくる。目の前がちゃんと見えなくなってきた。お願いカルマ助けて...!

 

「ひっ.......」

 

 

カルマside

 

「渚君・・・任せた・・・」

 

後ろの扉から音が鳴ったけど、確認もせずに渚君の返事も聞かずに茅野ちゃんから教えて貰った奥の部屋に急いで行く。本当に増援が来てるなら本来は任せるなんて悪手だけど多分、どうにかなる。なんとなくだけど、あの音は俺らの増援だと思ったから。

いくら喧嘩慣れしてるとは言え葵は体力がない事が問題。体力が切れた瞬間葵はまともな抵抗すら出来なくなる。それに、あの男の言うことが正しいなら葵はかなり危ないし、まだ時間が経ってないからって危険な状態なのは変わりない。間に合え・・・!間に合えっ!

 

「ひっ......」

 

「葵ッ!!!!」

 

葵の状態を認識した瞬間に完全にキレた。恐怖で目には涙が浮かんでいたし、顔も青白くなっていた。葵を安心させたいけどまずは周りの男どもを潰していく。最後の一人を落として、葵の方をもう一度見てみるとカッターシャツも俺があげたカーディガンもボロボロに引き裂かれているし、腕は手首の所と肘のあたりを、脚も鉄パイプ蹴り上げてたからかガムテープで拘束された状態でスカートが下げられて下着が顕になっている。それに首にも締められたような跡が残っている。今は、とりあえず葵を落ち着かせないと、そう思い葵と目を合わせるように膝を着く。

 

「葵・・・」

 

「......」

 

返事がない。多分、まだ錯乱のような状態にあると思う。だけど、その状態のままにすることは出来ないから俺が着ていたカーディガンを葵に羽織らせてその上から優しく、ゆっくりと抱きしめる。・・・・・・声は出なかったけど、葵の体に僅かばかりだけど力が入った。俺はただ優しく背中を擦り続けた。今声をかけても葵の負担にしかならないと思ったから。少ししてから葵から震えが止まった。ゆっくりだけど俺を認識し始めて、声を出し始めた。

 

「ぁ......カル、マ...?」

 

「うん・・・」

 

「....王子様...」

 

やっと、会話らしい会話ができた。王子なんて言って揶揄うようなことをいってくるけど、声からして葵は今必死に恐怖と戦ってるのがわかる。葵のことをより強く抱きしめて葵の顔を胸に埋める。困惑してる葵の耳元で優しく言う。

 

「怖かったよね・・・もう、大丈夫・・・誰も見てないから・・・」

 

「ぁ、カルマ...カルマ......!怖かった...!こわかったよぉ...!」

 

葵の事だから、きっと神崎さんたちに意識が向かないようにヘイトを集めてたんだと思う。じゃなければ首に締められた跡はつかないから。だけど、やり過ぎたんだと思う。それで、それまで認識してなかった恐怖をスカート下ろされてどうしようもないことをわかっちゃった時に認識しちゃったから一瞬で動けなくなった。1人で抱えるな、なんて言わないけどもう少し自分のことを大切にして欲しい。俺らは比翼連理。片羽をもがれた鳥は飛べないんだから。

 

しばらく抱きしめていると葵も落ち着いてきた。そろそろ渚くん達の方に助力すべきかな?とか思ってたら何か鈍器のようなもので殴打する音が聞こえてきたのを機に戻ろうとした。多分、あっちも片付いたから。葵の手足の拘束をとき、着させたカーディガンの前を閉めて葵に背に乗るように言いながら膝を曲げる。今の葵を誰かに見せるなんてできないし。葵も頷きながら素直に背中に乗ってきた。俺は渚くんたちの方に向かって歩き出した。

 

葵side

 

カルマの背中に乗りながら神崎ちゃんたちの場所に戻ってきた。班員は落ち着いてきたのか普通に会話をしていた。これではなんかボク達がおくれたような感じがしなくもない。茅野ちゃんが最初にボク達に気がついて声をかけてきた

 

「葵ちゃん!大丈夫だった!?」

 

「秋月さん・・・怖かったよね、ごめんね」

 

「大丈夫...」

 

所で、なんで神崎ちゃんはスッキリしたというか迷いが吹っ切れたような表情してるのかな?ボクが言うのもなんだけど拉致られたならもっと混乱しててもおかしくないのに。ボクが疑問に思ったことを言おうと思ったら殺せんせーも同じことを考えていたのか神崎ちゃんに声をかけていた。

 

「何かありましたか、神崎さん?」

 

「え・・・?」

 

「ひどい災難に遭ったので混乱しててもおかしくないのに、何か逆に・・・迷いが吹っ切れた顔をしています」

 

「・・・特に何も、殺せんせー。ありがとうございました。」

 

「いえいえ。ヌルフフフ、それでは旅を続けますかねぇ。あ、秋月さんは後ででいいので怪我の確認しますからね?」

 

む、何かあったか聞かれたらめんどくさいからパスしたいけど、カルマがガッチリとボクを押さえてるから逃れられない気がする。と言うかカルマ自分から押し付けさせるように仕向けるなんて、やっぱり男の子なんだなぁ。そっとカルマの耳元でつぶやく。

 

「....カルマ.......男の子....」

 

「はっ!?葵!」

 

やっぱりこうじゃなくちゃね?ボク達には似合わない。




「ねー、葵。」

「な、何....?」

「確かにね、葵の方にヘイト向けるようにしたからあの二人は無事だったかもしれないけど葵はそうじゃないでしょ?」

「ぅ...ごめん......」

「アイツらのことは普通にイラつく。守れなかった自分にもイラつくし、あそこで自分にヘイトを向けようと考えた葵にも少しイラッときた。どうして自分を大切にしないんだって。だから・・・葵、帰ったら覚悟してね」

「ん...っ!?」



普段は原作1話をこっちの1話としてるのですが、今回は原作1.5話で書いたんで文字数が普段の2倍とかになってて驚きましたね

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