さあ、原作の始まりだ。
まず、原作通り、この設問より始めよう。
問、人間は平等であるか否か
そして私はこう答えよう。
答、私のような特殊能力を持っている人間がいる時点で平等はあり得ない。
3話
入学の日。
私こと仲保義明は、東京都高度育成高等学校に向かうバスに揺られていた。
結局入学までの時間は自分の能力把握と強化に費やすことにした。あまり大きく介入すると原作の流れが変わってしまいかねない。一応小さな布石として、原作キャラの一人に接触したが、大きな影響は出ていないだろう。
今までは『完全前世』による下駄を履かせて勉強や運動等の基礎能力の向上に努めていたので、『完全前世』そのものに対する訓練などは行っていなかった。あくまでも記憶を思い出すだけの能力だと思っていたので、応用などはできないと思い込んでいたのだ。
だが改めて向き合ってみると思った以上に質の悪い使い方のできる能力であることが分かった。
バスの中を見回したが分かる顔はいない。どうやら原作の高円寺・綾小路・堀北・櫛田の四人が乗ったものとは違う便だったようだ。まあ、かなり早めのバスに乗ったし当然であろう。
というのも、入学案内の資料によると、新入生は全員入学式の日に敷地内に初めて入りそのまま寮生活に突入することになっている。新入生の数は40人×4クラスで160人でその全員が集合時間に間に合うように登校してくるのだ。
で、ここが分からないところなのだが、新入生用の臨時バスが出ていない。
入り口は最寄りの駅からも少し距離があり、歩くのに不自由がある坂柳あたりは車で送迎してもらうだろうがそれ以外の生徒はほぼ間違いなく、バスを使うことになる。
原作の描写からして、もともとそこまで混む路線でではないのかもしれないが、時間によっては満員電車並みになる可能性もあったのでできるだけ早く行くことにしたのである。
その甲斐あってか無事に座ることもできた。同じ制服を着ているのは数えるほどしかいない。上級生が外に出ていることはあり得ないので、100%同学年の生徒だが、誰だか分からないということは原作で触れられていないモブの方々だということだ。
バスに揺られながら入学案内の書類をもう一度読み返す。
注視するのはその中に書かれた配属クラスの部分だ。
Dクラス。
そう、私は晴れてDクラスに配属されることとなった。
おそらく協調性の無さが原因だろう。
優秀なものからAクラスに配属されるこの高校においてDクラスはまさしく不良品の証、といっても入学時の割り振りは欠点のない優等生が優先される傾向があった。逆にいうと一部の能力が突出していても他の能力が低ければ下位クラスに配属されることになる。特にこの年はその傾向が顕著だ。協調性の無さでDクラスに回された堀北や高円寺、天性の身体能力があるが学力が致命的な須藤、定量的なステータスが高くても過去に問題を起こしたことでDクラスになった平田や櫛田、と欠点だけを見れば致命的だが、逆に長所だけでぶつかれればAクラスとも戦えるカードがそろっている。
なお主人公たる綾小路は試験ではわざと成績を落としてDクラスにいるので、学校から認識されずにDクラスは強い札を一枚手に入れたことになる。
総評すると当たれば強いが外れると目も当てられないような結果になるギャンブル性の高いクラスということだ。
まあ、正直に言ってしまうとクラスについてはどこでもよかった。
Aクラスの特典である希望する進路・就職先にはあまり魅力を感じていなかったからだ。
だってそうだろう? 身の丈に合わないところに行っても後で辛くなるのは自分だ。特に私は『完全前世』がある関係上、実力が不足しているのにAクラスに行けてしまう可能性がある。Aクラスで卒業して、就職して、それから挫折するなんて馬鹿げている話だ。
そもそも私自身があまり高い進路を希望していない。前世と同じように自分の実力で無理のない大学に行き、無理のない就職をして、趣味の方に力を注ぎたい。特に前世ではできなかったイラストなどの生産活動に耽溺したいと考えている。
ではなぜ東京都高度育成高等学校に行くことにしたのか。
端的に言ってしまえばお金である。
まずこの学校は生活費が全部タダである。この時点でメリットしかないが、さらに生徒にポイントという疑似通貨まで支給してくれる。このポイントは1ポイント=1円の価値があり、特別試験の結果いかんでは、個人で大量のポイントを手にすることもできるのだ。原作中に出てきた最高額、なんと100万ポイント。
金持ちの道楽にしか思えないが、残念ながらこの学校は国営、つまり狂っているのはこの国である。
全部政治が悪いというやつですねきっと。
まあ、私としては、全力で稼ぎにいってできる限りのポイントを現金化して外に持ち出したいと思う。
とりあえず社会勉強の名目で株やら先物をポイントで買えないかの確認から始めよう。
もしくは金。どうにかして金を買ってそのまま持ち帰れないだろうか。