原作既読者がいく実力至上主義の教室   作:三色

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8話

 

 映画や小説では未来予知ができる超能力者が出てくることがあるが、その中で問題になるのが予知した未来は変えることができるのかということだ。もちろんどちらになるのかは作品やその能力の詳細によって変わるものだが、その中でよくあるのが運命によって定まっているから未来を変えることができないという設定だ。

 

 例えば、朝学校に行く途中で信号無視をしたトラックによって友人が死ぬ未来を見たとする。

 当然その未来を変えようとするのだが、トラックに轢かれる未来を回避しても今度は通り魔に刺されたり、恋人に階段から突き落とされたり、とにかく死の運命からは逃れることができない。

 物語であればその運命から逃れるために奮闘するというのがメインストーリーになる。

 

 私の『完全前世』による未来知識に関しては、元が小説というのもあってそういった運命論的なものとは無縁と思っていた。実際、私が入学したことによって、一人はじき出された人がいるはずだし。

 

 ただ、休み時間ごとに須藤達が堀北のところに集まって授業の復習をし始めたのを見ると、どちらが正しいかわからなくなってきた。

 

 早い。早くない?

 原作では、平田の勉強会に須藤達が参加しないのを見た堀北が独自の勉強会を主催、櫛田の協力により翌日には開催されたそれは一度喧嘩別れに終わった。

 その後、次の策として行われたのがこの休み時間勉強会だ。

 原作だと、どれだけ詰めたスケジュールでも開催の日時は、平田の勉強会がおこなわれた二日後の午後の授業からになる。

 

 そして今がその二日後の午後である。

 

 原作通りといえばまあその通りではあるのだが、事はそう簡単ではない。

 一度目の勉強会が失敗に終わった後、堀北は須藤達三人を一度見捨てている。考えが変わったのは、その日の夜に兄と密会した後で綾小路に説得されたからだ。

 兄妹の密会がどちらの意思で行われたものかは描写がないから分からないが、勉強会と同じになる必然性はない。更に言えば、綾小路がそれに鉢合わせたのも偶然だ。これがなければ勉強会が行われた翌日の堀北が考えを変えることはない。最終的に綾小路が考えを変えさせるにしてももう少し時間がかかったはずだ。

 

 まあ、実際には何が原因かは分からない。運命が須藤を退学させないようになっているのかもしれないし、もしかしたら、たまたま今日の朝エレベーターで堀北と鉢合わせた綾小路がその場で彼女を説得した可能性もある。

 ともかく、これで須藤達は大丈夫だろう。

 須藤に関しては、部活動という分かりやすい人質があったので、彼に嫌われることを覚悟すれば、勉強させることは簡単だったが、他二人については正直難しかったので、原作通りに話が進んでくれて何よりである。

 

 さて、須藤達の問題も解決したことだし、クラスの一員として、平田の要請に応えるとしよう。

 実は小テストで普通に高得点を取っていたので、平田に勉強会を教師役を頼まれていたが、須藤達のほうに動けるように一度断っていたのだ。さすがに複数の人にまとめて教える自信はないので、最初の勉強会には参加できたのにその後ほったらかされた沖谷あたりを引き受けてマンツーマン指導でもするとしよう。

 

 

 

 Dクラス最大の懸念が解消された後は特に詳しく語ることはない。

 予定通り試験範囲の変更は綾小路達が他のクラスに教えてもらうまで判明することはなかったし、櫛田は試験前日に過去問を配っていた。

 綾小路にも狐火商会の手紙を送っていたのだが、金額を伝えた後は考えると返してきてそのままだった。原作通り、上級生より直接購入したのだろう。さすがにDクラスに4万ポイントは厳しかったらしい。まあ、こちらも他で値引きしないと言った以上、4万ポイント以外で売る選択肢はなかったので勘弁してほしい。

 ちなみにAクラスは葛城に送って購入、Bクラスも神崎に送って購入してくれたので、狐火商会の収支は7万ポイントのプラスで終わった。

 

 テストについては念のため、全教科で60点以下にしておいた。私が100点を取ったことで上がった赤点ラインで、退学者が出たら予定が崩れる。まあ、これについては結果を見る限り無駄な気遣いだったが。

 

 さて、次は須藤の暴力騒ぎだ。


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