英語なんか誰も喋っていない   作:シューズ

1 / 26
プロローグ

 子供の頃、物心がつく前に一大国家の特殊機関に引き取られたそうだ。それから今まで常にその機関に所属していて、出世をし偉くなった。出世といっても、その原因は権力争いを制したとか年を取ったとかではない。功績を挙げた事もあったがそれもそこまで大きくはなく、出世の要因は、高潔でありまた善なるチカラを強く持つからだ。

 

 物心がついて暫くして、ある妄想に囚われ始めた。その妄想は、妄想の中の概念で言う所の、前世の記憶、というものだ。前世で私が触れた娯楽の1つに映画というものがあり、その映画の1つにスター・ウォーズというシリーズがあった。

 この映画と、私の生活とに、共通点が年を経るごとに出てきている。

 

 私が所属し続ける機関は、ジェダイ・オーダー…巨大国家は銀河共和国、善のチカラはフォース、こういう風に思えなくもない。

 そして私自身は、メイス・ウィンドゥ…。

 

 不安。私のライトセイバーの動力源のクリスタルが紫色だった事が、私の種族の寿命の数倍を生きた小さいグランドマスターの存在だけでははっきりしなかった不安を明確に、強くした。

 不安の感情は、私の所属機関では悪へと繋がると教えられる。善なるチカラの悪の側面へと変わる切っ掛けになり得る、と。

 不安を抑える為には、スター・ウォーズの妄想を否定し忘れる、という手段が思い付いた。妄想だと否定したい、という気持ちがきっとあった。青年になるまでは、この妄想を忘れようとしていた。

 

 

 善なるチカラが強い聖地の1つに、特別な武器の動力源が採れる洞窟がある。

 国の首都にある、機関の本部にて、私は物心がついてからある程度勉強や運動をしてそれから、宇宙船に乗ってその聖地がある惑星へと移動した。

 共に学んだ仲間にも、教師にも、前世の記憶は相談できなかった。人間という、今の自分と同じ種族が、その種族だけが、たった1つの惑星上で幾つも国を作って分かれている…差別的で野蛮な妄想だ。

 人間に似た、人型の知的種族が多くても、人間から姿が遠いほどに壁を作ってしまうことは、その…色々と問題だと自分でも思えた。この態度は前世の記憶と関連していただろう。こういう差別的態度を取る同種族かつ同じ機関所属の者も1人知っていて、彼は優秀だったが…彼を尊敬し切るのは、やめておいた。

 

 星に着いて、順番に洞窟に入っては青か緑の透き通った結晶を一方だけ1から3個ずつ持ち帰ってきていた。

 私の番になって、1人で洞窟に踏み入った。目を閉じて善なるチカラを感じていると、洞窟が眼前の岩肌に結晶を用意してくれた。フォースって可笑しなチカラだな、とその時思ったが、その思いは今でも持っている。

 

 ところで、手に入れた結晶は、紫色だった。変だった。緑か青じゃないのか?

 記録に残る他の色は橙、白、そして赤…悪のチカラを操る、今は滅んだ特別な敵が使った赤じゃない。それ以外には、紫の結晶が私に与えられた事への不安は誤魔化せなかった。

 紫の意味は何だろうか?

 洞窟から出ても、回答は得られなかった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。