私の弟子は様々な知識を手に入れた。但し知識に溺れて彼女自身の性質が顕れてこない。私に見えていないだけかもしれないけど…自分の神聖武器を手に入れる前の同期の機関所属者の中でも、特に優秀だと評価されているが私にはよくわからないし。
私と共に携わった仕事も、難易度が低いものが多かったけど彼女はやり切った。危険度はどれも変わらない、銃に撃たれて死ぬかもしれない仕事ばかりだったが、国の内外に普及している安価な銃でさえも命は奪われかねないのだから、機関に所属していなくても潜在的な危険度は大差ないだろう。機関の意思決定部が危険度や難易度をどう判断しているかは知らないけど、私の弟子は高めの評価を取っているのではないだろうか。師匠の私としては彼女の性格が能力よりも気になっている。
とにかく、私の弟子は機関メンバーの基本装備である神聖武器を自作する事を無事に許された。課されたとも言える。それで彼女が神聖武器の動力源である特殊な宝石をチカラを用いて採取したりする間私は暇になる筈だったが、彼女が自力で神聖武器を作り上げるまで私の生まれ故郷に顔を出してくるよう意思決定部直々に命じられた。
物心がつく前に離れた星だから故郷についての記憶はなかった。本部の記録庫から知識は得ていたのであまり行きたい星でもなかったのだが、私が機関に引き取られた事情を鑑みると中位メンバーとなり弟子もとった私自身が挨拶に行くのは必然だろう。
私の出身の一族は全員がチカラを操れるらしく、一族の生活様式などの他の特殊性も調査しに赴いた機関の研究者達が、機関に幼児を任せて機関メンバーとして教育させてもらえないか頼んだらしい。
私が生まれた惑星は金属などを腐食させる微生物が昔から原生している環境のようで、この星が国に参加する前から住んでいた人間のグループは今でも機械文明の恩恵にさほど浸っていないようだ。この点だけでも私の出身の一族はやや珍しいと言えるだろう。チカラを用いて火山と森の中で狩猟生活を続けているらしい。これは極めて稀な特徴だ。宇宙を飛び回ってきても見た事がなかったし、記録庫でも同じ…少なくとも私は知らない。国の他の星からの移民達とその子孫の方は、腐食対策を施して宇宙港を整備し金属製の進んだ機械も使用している私の馴染み深い生活様式みたいだが。
特殊な一族から機関に差し出された唯一の者が私だ。憶えていないが。孤児なので厳しい一族の生活に耐えられないだろうから機関へと渡されたようだ。機関側も平和の維持の為といった題目を示したらしいし、機関自体の国内の評判も権力も高い。嫌われるのも仕事を通して多く経験しているけど。
私は、出身の一族に対してそれほど関心がなかったが、幼い孤児がいるなら機関で引き取るのは可能だなと考
えが浮かんだ。機関に所属したい、させたいと思うだろうか。1人ならさせてもいいと思った事はあるようだが。
意思決定部は私を見せる事で一族の幼子を誘致したいのだろうか。
1人乗りの小型宇宙船で帰郷し星の地上にある宇宙港に入る。あまり栄えてはいないが、瓦礫さえも囲って港全体に壁が張り巡らされてあり、それから出ているエネルギー反応が船の計器で分かる。腐食対策の1つだ、外からの宇宙船にはこの星の環境に合わせた護りがない。強い力場を張って船体を覆えば腐食しない筈だけど、エネルギー消費が重いから長くは続けないものだ。港以外に宇宙船を下ろすのは難しい星だ。
機関所属者は国内で優遇を受けるので、身分を隠す仕事で来ている訳ではない今回は簡単に物事が進む。
少なくとも宇宙港内では進んだ。荷物検査は受けず、検疫も私が優先的に受けられた。神聖武器の腐食対策に表面にジェルを塗って外気と遮断してあるし、他の機械は乗ってきた宇宙船内に置き去りだ。呼吸器や通信機器が無いのは拙いかもしれないが…電子通貨の現金化もしてあるしこの星の物を買うことはできる。
私の出身一族とはこの星と一族の生活様式上通信出来ないので、事前の約束なく会いに行かないといけない。港の周りの街を歩き出す。
ここが私の故郷らしい。
先住民と移植民との間に差別意識がある。どちらも子孫に過ぎないから原因の当事者ではなさそうだ。原因があるならば。
私の出身一族の子供達を街で見つけ、虐めを受けていればチカラで虐めている側の心に働きかけて説得し、乞食をしていれば目を向けず通り過ぎる。助けた後しつこくついてくる中から望む者を案内人として森に踏み込んで行く。森は恐ろしいらしく街から出たのは3人だけだった。
森の中の野生生物達はチカラを用いても感知しづらかったが、神聖武器の刄やチカラの干渉は効いた。それでも子供3人を一族の大人達に出会うまで護り切るのは大変だったが。【合成】の型の対応出来る状況の広範さに救われた…
生活の糧を森の恵みから得る先住民と、森を切り拓いていく移民との対立だと一族との交流で分かった。国が優遇しているのは移民だ。切った木を消費して薬などの製品を作り通商を行っているのは移民だから。…私には解決出来そうもない。
ただ…チカラを機関の蓄積した知識なく使うこの一族には悪の側面に傾いていく危険性が機関メンバーよりも高いと思うが、今のところ高い能力で差別に屈さず、暴発もしていない。このまま本部に帰ってもいいだろう。現状を報告しないと。問題解決に送ってこられるだろう機関メンバー達には、客観性を保つ為に私は選ばれないだろうな…
楽はできるが気まずいな。