全ての型を身に付けた、と言えるのではないか。型の指導を主な業務とするメンバーを第七の型【強猛】で攻めたてながら思う。全身にチカラが激しく絡みつき、不規則で激しく素早い、衝動的な動きを繰り返す、意識的に弱めに。本気でチカラに身を任せてこの型を遣うとこの相手では殺しそうだ。
「もういいでしょう、ありがとうございました」
構えを解き、声を掛ける。
「ええ、貴殿には、【強猛】を完全に、制御できています」
目前の相手は疲れが分かり易い。他種族でも知識はあるしチカラで探ればはっきりわかるけど、同じ人間だから呼吸の乱れから経験的に分かる。かなり疲れさせてしまった、もう少し早く切り上げるべきだったか。
「少し好戦的になっていたと思います」
「手加減、されていたでしょう。追い詰められた時に、悪の側面に、踏み込み過ぎてしまわないか、確認したかった、ですが」
追い詰められたら、か。死にそうになったらもっと強さを求めるかも。
「実戦ではこの型を使わないようにします」
「意思決定部のメンバーなら早々危険はないでしょうね」
記録でもこの型を使用して悪の側面に移ってしまった中位メンバーが昔多かったようだし、使用は控えよう。どうせ今は、単純な戦闘そのものは第四、五、六の型でも直ぐに終わらせられる。めんどくさいとは思わない。第七の型をもっと習熟するまでは然程差は出ないだろう。
機関メンバーとの手合わせの方は素早く終わらせたら相手の為にならないだろうし…高位に上がってから手間だ、いや同じ高位でも意思決定部にいる間はやや格下扱いか。最高位メンバーや元弟子をはじめとした数名相手だとそもそも素早く終わらせられはしないし、第七の型を身に付けても利点が無いな。
ああ、こんな考えは駄目だな。
…無心で善の側面のチカラに奉仕する、か。【強猛】で今までよりもよく窺えるチカラの危険性、悪の側面のマズさから自分を守る方法論だよなあ、機関の教えって。チカラによる先見の発展系の予言とかも混ざってるけど。
…安全に悪の側面のチカラを利用できないかな。
善の側面のチカラは安定しているけど、【強猛】で使うチカラは不安定ながらもより強い、悪の側面に近い。【強猛】の安全性を高められれば、習得の制限が緩和し、機関メンバーの殉職も減るんじゃないか。
ただ仕事をこなすだけでは怠慢かもしれない、せっかく意思決定部にいるから大きく機関全体に貢献できそうだし、【強猛】を研究して改善してみるか。元弟子と第七の型まで習得済みの高位メンバー達にも声を掛けて…
意思決定部にいると意外に殉職者が出る事に、死者の報告が来るたび今でも驚く。嫌な驚きだ。
機関メンバーは戦闘員として最上位の実力があり、外交官のように国で振る舞う、特権階級的な存在だ。各星の政府や有力者、大企業の有する戦力を超えているかもしれないが、やはり数が少ない。歴史的には最大級のメンバー数だけど、チカラの素養はやはり稀だし、素養があろうが機関に必ず所属するわけでもない。チカラの使用の訓練方法は機関が独占しているからチカラを悪用する者達でも高位メンバー数名がかりなら確実に抑えられる、それでもメンバーも殺されうる。時にはチカラが使えない相手にも。
まぁ、戦闘機とかに乗っている相手には神聖武器だけではほぼ抗えない。チカラを用いれば戦闘機の操縦も相当出来るが、戦闘機を常に乗り回しはしないし。平和を望む機関だし。
神聖武器は武器としては弱い部類だよなあ。型とか、銃を使うなら要らないし。別に機関で独占しなくても誰も実用品としては求めなさそう…