「行方不明、ですか」
意外、とまではいかないな。
「そうじゃ。『クワイ=ガン』にも伝える」
消えた証人、下位メンバー、高位メンバーを見付けておきたい…優先は下位メンバーか。彼女の師は無事で恐らく共にいる彼女も無事だろうが、証人は罪人な上に無事は期待できない、か。
最高位メンバーは彼の弟子に捜索を任せる心積もりか。あの青年は下位メンバーの彼女と同じ世代・種族・階級だから面識はある筈。適任だ。
「良い考えかと。意思決定部には諮らないのですか」
「問題にはしたくないでの」
「しかし、彼女の師も本部で見付からない、弟子のもとに向かうなどの干渉しただろうということは、彼女はやや重要な証人を失ったのでしょう。どちらにせよ機関から外すことになります」
中位になるまでは正式な機関所属者とは言い切れない扱いだ。
「師の方は心配せんのかね」
なに…
「まさか、場所がスラムとはいえ遅れをとったということですか。高位メンバーの中でも戦闘に長けた者の筈ですが」
小柄な眼前の彼の目を見ようとしたが瞑目している。
「分からぬ。感じ取りにくいのじゃ」
チカラの広範な感覚と知識は最高位メンバーには誰も及ばない…高位メンバーでも危険な状況の可能性もあるなら_
「私が行きましょう」
「国からの要請もある。既に1名の高位メンバーが本部から離れてしまっておるぞ」
機関は国から半ば独立した振る舞いをするのに機関の最高位がそう言うのか。
「国中に散らばる高位メンバー全ては呼び戻せるはずもなかったでしょう、おかしな要請でした」
「…そうかのう。ふむ。お主に任せよう」
「直ぐ戻ります」
軽武装した高速機に乗って行こう。希望込みで4名乗り…機械弄りの広間から持っていくか。
スラムの下層まで降りてきてこれか…証人の体の一部。証人の死…事故に近いな。近くに治安維持機関の監視装置はあるだろうか。中位でもこの過去をチカラで感じ取って下位メンバーの彼女を追うのは難しいだろう、私が来て良かったのかな。分かった事実は全く良いものではないけども。
証人の隠れ家には行かなくていいな。あの犯罪組織の追及は別の方法が必要になった。
驚いたな…高位メンバーがまた死んだ。…いや殺されたのか…微妙だな。下位メンバーの彼女が乗って来た軽車両の爆発が原因…近くに悪の側面のチカラも感じるが。過去が読み取りにくい。
スラムの更に下まで彼女は降りて行ったのか。誰かを連れて、誰かに追われた状態で。徒歩で移動しているようだからそろそろ追いつくだろう。…携帯端末はどうしたのだろう。高位メンバーであった師の方は危機に直前まで気付かなかったとして、彼女の方は失ったのだろう。強奪されたか、破壊されたか。…単に落とした、それはないか。
彼女が連れているのは…人間の男…強いチカラは感じない上に、そもそもの目的だった証人とはまるで違うし彼女もそれは分かる筈だ。
追っているのはチカラの悪の側面を扱っている。危険過ぎて彼女は足手まといを置いて逃げられないのか、現地で協力者を得たのか。さっきの爆発事故現場(事故ではなかった可能性が高くなってきたが)から既に連れていたようだが…
車両では通れない場所を通っていったか。もっと小型車両を持ってくればよかったかな。応援は_いいや急いで追い付かないと拙いだろうな。私が急ぐしかないか。
チカラに身を任せて先回りを試すか。彼女は本部に向かいたいだろう、最低でも通信を望む。やはりどこかで上がってくる。その地点にチカラが導いてくれれば、危険な追跡者より前に合流できるはずだ。
不安定なチカラ、チカラ同士が衝突してる_チカラとの繋がりを隠し悪の側面の使い手から感知されないようにする。
間に合わなかったのか。まだ間に合うか_
気付かれたか。
チカラを用いた強化がないから分からないが、高速機でチカラを感じた建物の真上まで一直線に飛ぶ。
ここの建物の中だろうな_高速機を空中に停車し、飛び降りる。チカラと再び繋がる_
扉を高速で通過する_
赤いエネルギー体の刄が彼女の腹を貫いた/下位メンバーの彼女の罠だ、部屋の壁の導管に通る燃料を起爆してあの敵との道連れを狙っている。
チカラで彼女に直接干渉して、罠に気付いて飛び退いた敵に続いて彼女を連れて飛び出していた。
体が痛む、爆風と破片の影響を多少受けたか_
紫の半実体の刄を出して_
赤い刃を柄の両端から出した相手と切りつけ合った。
意識を失った彼女を床に横たえて扱えるチカラを私の全身に巡らせる_