…私の方が分が悪い、だと…背後の彼女を狙う素振りも見せないのに押してきてる…なんだこの相手の型…下がるのはマズい_
【残忍】の型を使う。
私の素早さと膂力が増す。突きと肘を畳んだ小さい斬りつけを多用する。左右に動きながら攻撃するのに集中する。
悪の側面のチカラが私の中を通り抜けていく。善の側面のチカラで心は満たされている筈だが、強大な力を振るう高揚感が溢れてくる。
相手の動きは攻撃的なままだが、私は素早さにまかせて攻撃を続ける。攻撃に使った刄と逆側の刄を防御に利用してるのか、機関では誰も使っていない形の神聖武器だから対応しきれない。防御を超えられない、相手の攻撃が苛つく_
消耗が激しいが直ぐには戦闘を終わらせられそうもない。どうする_第六の型の方が【残忍】よりも得意と言えるかも、いや第三の型で防御を主体にして所々挟む反撃で相手を殺せるのを期待するか。
…【残忍】が最も強力な選択な局面だ。この動きを維持できなきゃ私の方が死ぬな。
もし、同条件で戦闘を始めていても私の方がやや分が悪い、のか。
後ろの彼女も重傷だし2人とも死にそう…
彼女を見習って相討ちを狙うか。全員死ねばいいってか_
全力でチカラで敵に直接干渉、押しのける_思った通りに全然距離取れてないけど、一瞬の余裕があればいいだけだ。
神聖武器から右手を離し、腰のベルトの留め金からもう一本の神聖武器の柄を外して掴む。
スイッチを入れてエネルギー体の緑の刄を出す。こっちの方が出力が高いが熱を抑えきれず使うと刄に近い部分が火傷するんだがもう死ぬんだし…痛いのも死んで消えるのも嫌だなあ…
熱い。暑い。右手が焼けるし汗で服の背中と両脇は濡れてるし、気持ち良く死ねないな。
相手が少し離れた所で止まってる。
薄暗いが相手の動きはチカラを通して明確に感じられる。
なら構えさせてもらう。
両腕を脱力して紫と緑の刄を両側斜め下に緩く広げる。【残忍】というより【合成】の派生か【強猛】に近い構えだけど、遣うのは【残忍】だ。
同時に十も二十も刺突と斬撃を繰り出す自分を想像する。私の行動をチカラで高精度で数瞬先まで予測できるに違いない相手だからこそ、この想像は実現可能だ。実際には同時には2回しか攻撃できないんだけど。
【残忍】の応用で、目の前の敵が発する激しいチカラを受け流すだけでなく、自身と神聖武器の強化に利用してみる。
…肉体的な全盛期は過ぎているけど、最新鋭の重武装した高速戦闘機を操縦した状態よりも今の方が強いかも。
即座に興奮の抑えが効かなくなってきた。
相手に向かって飛び込む_
赤い半実体の刄が両端から飛び出す柄が回され_
悪の側面のチカラが爆発した。
吹き飛ばされながら、赤い肌に黒い入れ墨といくつも小さい角がある相手の後頭部が見える_
両足で着地する。居ない。
チカラの強化を感覚に傾ける。感じ取れない。
逃げた、いや一時的に退いた、奇襲してくるつもりだろうか。
床も近くの建物も大きな罅が入っているし爆発があった建物の階は崩れてもおかしくはない、彼女を運んでさっさと離れるか。近辺に他に生命は感じないが…敵がまだ潜んで様子を窺っているかもしれないし。
記録にあったチカラによる高度な治癒ができればな…血管をチカラで押さえて出血は止められるが、治癒装置に直ぐに入れても彼女が助かるか微妙だな…
というか私も怪我してるし。本部に通信しないと。
乗ってきた高速機が壊されてないといいが、この女性は助かるだろうか…