真剣で私に恋しなさい! MA~外伝~   作:x.i.o.n

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というわけで外伝始まります
どうぞ!


風間ファミリー(過去)編
第1話~俺が私になった日~


気が付くと私が目にしたのは自分の部屋の天井だった

 

他の従者から聞くところによると突然倒れたらしい

 

先ほど医者が来て私の容体を見てくれたが、もう手遅れらしい

 

「私も…ここまでか」

 

長らく紋様の専属執事として九鬼に仕えてきた

 

帝様や局様が逝き、揚羽様や英雄様も逝ってしまった

 

私の妻直江あずみも死んでしまった

 

「大和…」

 

「紋様」

 

いきなり部屋の扉が開き、入ってきたのは初老の女性だった

 

彼女こそが九鬼紋白

 

帝様の三女で政界へ進出した

 

私の主でもある

 

「すみません主よりも先に倒れてしまうとは…」

 

「良い…気にするな」

 

紋様に仕えることができて本当に良かった

 

こんな私にも変わらず気を掛けてくださる

 

「大和よ…我はそなたが専属で良かった。ありがとうな」

 

「もったいなき……お言葉です」

 

本当に…九鬼へ来て…良かった

 

何だろう…段々眠く…なって…きた

 

「大和? やま……!」

 

段々、耳も聞こえなくなってきた

 

あぁ、俺は…………死ぬのか

 

「紋……様」

 

「なんだ?」

 

「今まで……ありがとう、ございました」

 

「……あぁ……向こうで父上たちによろしく伝えておいてくれ。我も少ししたらそちらへ行く」

 

「はい、先に逝って……お待ちしております」

 

また……来世で……

 

そうして私の意識は闇の中へと溶けて行った

 

深い深い眠りの中で私は今までの事を思い返していた

 

学園生活や初めて九鬼へ来た時のこと…

 

紋様と局様との確執を改善したこと

 

あずみに恋したこと

 

あずみと結婚して子供を儲けたこと

 

娘が生まれたこと

 

新婚旅行の事や娘が九鬼へ入ったこと

 

娘が結婚したこと

 

孫の顔を見ることができたこと

 

そんなことが思い浮かんでは消えて行った

 

――何だろう、段々辺りが明るくなってきた

 

此処が天国という奴だろうか

 

あずみ……今お前の許に

 

「あぁ、ほら目をあけましたよご主人様!」

 

「そのようだな」

 

……可笑しい

 

既に死んでしまった私の父さんと母さんが目の前にいる

 

いや、天国だからいて当たり前なんだけど

 

どうして2人は私を見下ろすようにしているの

 

まるで赤ん坊を覗き込んでるような……

 

「あー! うー」

 

「喋りましたよ! ご主人様!」

 

「分かっている。少しは落ち着きなさい」

 

「すみません……」

 

「いや、私も嬉しいのだ。気にするな」

 

「はい////」

 

喋ろうとしてもあーとかうーとかしかしゃべれない上にそんなことを口に出しても喜ぶ両親

 

意を決して私は出来る限り辺りを見回して……

 

手が凄まじく小さい

 

いや、体もそうだ……

 

「あーー!(何なんだよこれはー!)」

 

「?? どうしたんだ」

 

「分かりません、何というか怒っているような様子ですけど…」

 

状況を理解した、完全に赤ん坊の姿になってしまっている

 

天国へ行ったら皆そうなんだろうか

 

そんなわけない、そんなこと言ったら帝様とかはどうなるというんだ

 

「ご飯が欲しいのでしょうか……ほら、お乳ですよー」

 

私を抱き上げた母さんは胸を肌蹴させて乳首を露出させて私の方へ持ってきた

 

まだお腹は空いてないんだけど

 

「違うみたいですね」

 

「あー、うー」

 

「どうしたんだ? 美哉」

 

いま父さんはなんて言った?

 

美哉? 大和じゃなくて?

 

まさかまさかまさかまさかまさか!!

 

私は……女になってしまったというのか

 

やけに股間に喪失感を覚えると思ったら

 

女? 私が?

 

確かに一人称は仕事の癖で私になってしまったけど…

 

……何ということだ

 

ありえん、ありえんぞ!

 

というかここは天国じゃない?

 

ひょっとして来世ってやつ?

 

いや、来世ならおかしいか

 

両親がいるし

 

つまり……2週目?

 

いわゆる逆行したってことか

 

でも、普通逆行とかしたら性別は変わらないだろう

 

生まれ変わった…と言った方が正しいかもしれない

 

あぁ…神様、これからどうすればいいんだ

 

そうして直江大和は直江美哉となり俺が私になってしまった

 

 

――4年後

 

 

漸く自分で歩けるようになってある程度喋ることもできるようになった

 

自分で動けるようになってまず調べたのは近辺の情報だった

 

まだ両親が日本にいた時と全く同じ場所に住んでいることは直ぐに分かった

 

そういった自分の身の回りの情報を仕入れた後は自分の身体の事について調べた

 

まず性別は完全に女になってしまっている

 

これに関してはどうすることもできない為放置

 

次に身体能力について

 

願わくば健全な4歳程度の身体能力があればいいと思っていた

 

ところが驚いたことに私がまだ大和だったころの全盛期の状態の身体能力だった

 

分かった当時はまるで意味が分からずしばし呆然としていた

 

次に知識や記憶について

 

まず記憶はかなりはっきりしている

 

私が死ぬ寸前やそれ以前の記憶などほとんど完璧に残っていた

 

これは知識も同様で今まで吸収していた知識全てが鮮麗に思い出せた

 

どういうことなのかまるで分からない

 

どうして自分だけが……

 

どうして、どうして、と何日も自分に問いかけ続けた

 

そうして私は気付いてしまう

 

いまこの世界には"私"の知る人物は1人としていないことを

 

いまこの世界に"私"は1人ぼっちであることを

 

私が大和だったことを誰に話そうとも信じてなんてくれないし下手をすると精神科に連れて行かれる可能性だってある

 

迂闊にそんなことは言えなかった

 

私の世界を誰も共有することなんてできない

 

私はこの世界で1人だ

 

それに気づいてしまってからは言い知れぬ不安感と孤独が私を終始襲っていた

 

私は知っているのに他の人は私の事を知らない

 

その事実がどれほど耐え難いものであることか

 

あまりのことにどうにかなってしまいそうだった

 

そんなあるとき、1つの出会いが訪れた

 

風間翔一…つまりキャップである

 

彼の奔放な性格から外に出ていることが多かった

 

そんな彼と偶然出くわしてしまった

 

それからというもののキャップは私に付き纏うようになった

 

何を気に入ったのか私には分からない

 

私は彼に何もしてないし彼は私に何もしてない

 

ただ町で1度出くわしただけ

 

その程度の仲だというのに彼は私に付き纏っていた

 

あまりのしつこさに観念してどうして付きまとうのか聞いてみることにした

 

「そんなの…お前が面白そうだからに決まってんだろ!」

 

――そうだったね

 

貴方の行動原理は面白いかそうでないか

 

それだけだったね

 

だというのに……変わらないあなたを見て私の眼からは涙が止まらなかった

 

キャップはいきなりのことで戸惑っていたけど…

 

嬉しかったのかもしれない

 

私の知っているキャップが目の前にいることが

 

私が大和だったことを証明してくれる貴方の行動が

 

「ねぇ…」

 

「何だよ」

 

「あなた…私と――」

 

友達にならない?

 

それからというものの私はキャップと一緒によく遊んだ

 

彼と一緒にいることでこの孤独や不安感を紛らわすことが出来るかもしれなかったから

 

ねえ――あずみ

 

お前の許へ行くのはもう少しだけ待ってほしい

 

必ず貴女の許へ帰るから

 

それまで少しだけ寄り道しても…いいかな?

 

目を閉じるとあずみの少し不貞腐れた顔が浮かんでしょうがねーなと言っているような

 

そんな気がしていた

 

まだ、不安なことが一杯ある

 

でも、私はこの世界で生きて行かなくちゃいけないみたいだ

 

だから…精一杯生きて行こうと思う

 

誰かがくれた、この第2の人生を

 

to be continued....




はい、というわけで外伝第1話でした
あんまり美哉の孤独感というのが書けた気がしないのは私だけでしょうか?

こちらはまったりやっていきたいので更新は気長にお待ちください
ではでは!
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