外伝2話になります
それではどうぞ!
キャップと出会ってから数週間が経った
キャップは私と共に様々なところを散策している
小さい時も大きい時と大して変わらない性格だった
面白そうだという理由であっちへ行ったりこっちへ行ったり
そんな毎日が続いている
「なぁ、美哉! 今度はあっちへ行ってみようぜ!」
「分かったから! 引っ張らないで!」
グイグイと私の袖を引っ張っていくキャップには落ち着きという物が無い
思い立ったが吉日と言わんばかりの行動力だ
今日訪れたのは多摩川だった
此処には普段ホームレスや釣り人の方々が釣りをしていることがある
それは今日も例外ではなかったらしい
「あ、川神書店の店長だ!」
川神書店の店長の姿を見つけると一目散に駆け寄っていく
そして釣った魚が入っていると思われるバケツを覗き込んでいた
「何か釣れましたか?」
「おお、お前は直江のところのバッキャローじゃねぇか」
バッキャローはこの人の口癖でもある
誰彼構わずバッキャローと呼ぶため彼を良く知る人にとっては何でもないことだ
「今日は雷魚が釣れたぞバッキャロー」
「でっけー!!」
店長さんの言う通りバケツの中には雷魚が入っていた
この多摩川では最近になってから様々な種類の魚が釣れるようになったらしい
「から揚げにすると美味しそうですね」
「そうだ、雷魚はから揚げにして食うと美味い。良く知ってんじゃねぇか」
少々荒っぽく頭を撫でられる
何でか知らないけど体に魂が引っ張られているのかこうやって撫でられると嬉しいと感じてしまう自分がいた
「他には何が釣れたんだ?」
「おー、今日は他にも……」
何でも今日は珍しく大漁らしい
バケツの中には雷魚の他にも数種類の魚たちが泳いでいた
よく他の魚に食べられないな
「よーし今度はあっち行こうぜー!」
「じゃあ失礼します」
キャップはまたもやダッシュでその場を立ち去っていく
キャップを見失わないよう軽くお辞儀をして私はキャップを追うことにした
「…ホントに4歳とは思えねぇ礼儀正しさだなバッキャロー」
キャップに追いつくことは簡単だけど何処へ行くのかは全く予想できないから性質が悪い
気づいたらあらぬ方向へ駆けだすことなんてしょっちゅうだ
「さて次は……」
「ねぇ…」
次にどこへ行こうか決めようとしていたところに1人の女の子が声を掛けてきた
見るからに気が弱そうなこの少女…
名前は岡本一子、後の川神一子だ
つまるところ小さいころのワン子である
「なんだお前は?」
「わ、私は岡本一子っていうの」
「おか、お、おかも…」
「岡本一子、名前くらい直ぐに覚えようよ」
「うるせー、俺は美哉みたいに頭が良くないんだ!」
それでも名前くらいは覚えられます
キャップは単純に興味のないことには記憶しようと脳が働かないだけでしょ
「はぁ…私は直江美哉っていうの、よろしくね」
「う、うん! よろしく」
えへへ、と笑う幼いワン子は非常に可愛かった
もし、2週目じゃなかったらお持ち帰りしていた自信がある
あらかじめ知ってるって、偉大だね
「俺は風間翔一! 俺のことはキャップと呼べ」
「キャップ…?」
因みにキャップとい自分のことを呼ばせ始めたのは私と出会った時からだ
曰く「俺はヒーローでお前は考える役(要は参謀役)だからな!」とのこと
流石にヒーローと呼ぶのはいかがなものだった為、私がキャップでいいんじゃないの? と提案したところ気に入ったらしい
「キャプテンの俗称みたいなものだよ。キャプテンっていうのはみんなのリーダーのことね」
「へー」
その時のワン子の顔は何かすごい物を見ている時の目だった
そんなワン子の視線を感じたらしいキャップは上機嫌になっている
「そういえば何か用があったんじゃないの?」
「あ……あのね」
ワン子はしどろもどろといった様子で喋りはじめた
要約すると仲間に入れてほしいとのこと
「ほほぅ、俺達に目を付けるとは中々目の付け所がいいな」
「つまりどうなのキャップ?」
「いいぞ! 人数が多い方が楽しいしな!」
キャップはあっさり容認し、ワン子は嬉しそうにしていた
私? 当然オッケーに決まってるじゃん
「よし、今日からお前はワン子だ!」
「ワン子…?」
突然新しい自分の呼び名に戸惑いながら首を傾げるワン子
誰だって急に自分が呼ばれたことない名前で呼ばれた時は戸惑うものだ
ワン子だってそれは例外ではない
「お前、犬みたいだしな」
「それに一子の一は英語で"ワン"っていうしね」
流石に印象が犬みたいだけで呼ばれたらたまったものではないだろう
それにこの時のワン子は強気でもなんでもないただの普通の弱気な女の子だ
キャップの理由だけでは泣いてしまう
「ふぇー……うん、私は今日からワン子なのね!」
「おう、よろしくなワン子!」
「うん!」
仲間に入れたのがよっぽど嬉しかったらしい
ワン子は笑いながら泣いていた
「よーし、じゃあ行くぞ! お前ら!」
「うん!」
「あー、あんまり早く走っちゃだめだからねキャップ」
こうして私はワン子と出会うことが出来た
前の時とは全く違う出会いであったもののこれはこれでいいのかもしれない
――それから数週間が経った
ワン子が入ってまたしばらくして…
私達は空き地で遊んでいた
何のことはない鬼ごっこやかくれんぼなどの単純な遊びからユニークなものまで様々だ
そんな時、空き地に2人の子供がやってきた
1人は少し内気な少年でもう1人はそれとは対照的な少年だった
「やいやいテメェら、今からここは俺達が使うことになった! 今すぐ此処から出ていけ!」
「やーだね、ここは俺達が最初に使ってるんだ! お前たちが出ていけ!」
「何だと!?」
「やんのか!」
キャップと少年はそこから肉体言語を用いて語り始めた
いわゆる一つの取っ組み合いという奴ですよ
青春だねー
「や、ごめんね僕の連れが」
「いや、こちらこそ。私達の連れが手を出しちゃってごめん」
此方へやってきた内気な少年が素直に謝ってくれた
元々あまり乗り気ではなかったみたい
「僕は師岡卓也、よろしくね」
「私は直江美哉、こっちは岡本一子…私達はワン子って呼んでる」
「よろしくね!」
「うん」
何というかこっちとあっちとでかなり温度差がある
こっちは和やかなのに向こうは妙に殺伐としていて、何というか笑えてくる
「別にどっちかが出て行かなくても一緒に遊ぶとかって考えにはならないんだろうか」
「僕も言ってたんだけどねぇ」
喧嘩っ早いガクトのことだからねぇ
口より先に手を出す方だったっけこのころは
「さて、そろそろ止めましょうか」
「え、危ないよ? 言っちゃなんだけどガクトは結構喧嘩強いし」
「ん? 大丈夫、止めるって言っても…」
――手を出すわけじゃないからね
ガクト達が取っ組み合っている場所へ近寄っていき2人に声を掛ける
「ほら、そろそろ止めない?」
「うっせー引っ込んでろ!」
「そうだぞ! これは俺達の問題だ!」
いつの間にか争っている理由がすり替わってない君たち?
まぁいいや、とりあえず
「黙れ」
「っ」
「はい」
ガクトはどうしてか顔を青くさせていた
既にキャップはガクトとの取っ組み合いを即座に中止して正座している
「ねぇキャップ、私はいつも言ってるよね? 手を出す前になるべく穏便に済ませなさいって」
「い、言ってました」
「どうして私の言うことはあんまり聞き入れてくれないのかなぁ?」
「そ、そんなことないぞ! ちゃんと穏便に済ませようとしてるさ!」
「これが?」
「うっ…」
どう見ても穏便に済ませようなんて気はなかったよね?
確かに貴方の行動力は目を見張るものがあるけど、時には慎重になることも必要になってくる
それがまるで分かってない
「次やったら……磔の刑に処すからね?」
「わ、分かりました!」
ビッと右手で私に敬礼するキャップ
これは誰かが手綱を握っておかないと何をしでかすか分かったもんじゃない
で……
「そこの少年」
「お、おおおう!」
「君も何でも暴力で物事を解決しようとしない」
「…何でだ」
「君は女の子は好き?」
「大好きだ!」
「なら、余計にやめた方が良い。女の子はそういう野蛮な事を嫌う傾向があるからね」
「傾向?」
「あぁ……女の子はあんまり野蛮な解決方法は望まないって言ってんの」
しかし、ガクトはあまり納得していないといった顔をしていた
自分の力に絶対の自信を持っているのかもしれない
「力強いところを女の子達に見せつければ女は俺に寄ってくるんじゃねぇのか?」
「それは時と場合によるよ。毎回毎回暴力で解決じゃ女の子は寄ってこない。ここぞという場面じゃなきゃ」
例えば普段から暴力を使う男と自分がピンチの時や誰かが困っている時に力強い男、どちらの方が印象が良いと思う?
普通に後者の方だと思うけど?
「言われてみれば確かに…」
「これからは力だけじゃなく、別の手段で物事に取り組んでみたら?」
「お、おう!」
「もし、口より先に手を出すことの方が多かった場合は…」
どうしようか、磔? いやいや市中引き回しの刑も面白そうだ
あぁ、考えるだけでゾクゾクする!
「ねぇ、何だか美哉から黒いモノが出てるんだけど」
「いつものことよ。気にしない方がいいわ」
「……いろんな意味で恐ろしい人だね」
聞こえてるよーモロ
あんまり余計なこと言うとモロも説教タイムのHA☆JI☆MA☆RI☆DA!
「あ、地雷踏んだっぽい」
「南無南無」
この後、モロとついでに拝んでたワン子も説教タイムに突入した
え? 横暴?
九鬼じゃそんなことはしょっちゅうあったよ
「ひどい目にあったよ……」
「とばっちりだわ…」
あー、スッキリしたぁ
人を拝んだり恐ろしいって言うからそうなるんだよ
口は災いのもとって知ってた?
「ちっ、有耶無耶になっちまったがお前中々骨のある奴だったな」
「お前こそ」
「名前はなんて言うんだ? 俺は島津岳人」
「俺は風間翔一ってんだ、よろしくなガクト」
「おう!」
キャップとガクトは互いに拳を突き出して打ち付けた
拳で芽生える友情もあるんだねー
漫画の中だけだって思ってたけど
前の世界と同じで気が合ったのかそれからはほぼ毎日遊びに加わっていた
そんな感じで既にガクトとモロは風間ファミリーの一員となっていた
そんなある日、通っていた学校内部でとある噂が流れ始めた
『椎名京には近づくな』
そんなふざけた内容の噂は瞬く間に広まっていくのだった
to be continued....
どうでしたでしょうか?
次回は京と百代の話に移っていきたいです
あー、でも下手をすると京だけで終わってしまいそうだw
それではまた次回お会いしましょう
ではでは!