リリルカ・アーデは裏切らない   作:ザック。

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リリルカ・アーデは認めない
第五話


 ダンジョン第7階層、『ルーム』にて群がるモンスターに対して少女は疾走する。

 

 毒の鱗粉をまき散らす、パープル・モスに鏃を放つ。鍛え上げられた器用と新調した《リトル・バリスタ改》により、狙い過たず突き刺さり、一息にその身を散らしていく。そして、ギチギチと歯を鳴らし襲い掛かるキラーアントに対して、背にする武器、身の丈以上の大きさの戦槌(ウォーハンマー)を引き抜き、勢いのままに叩きつける、遠心力を最大限に活かした一撃は、その固い甲殻で守られた頭をあっさりと打ち砕きいた。

 

 勢いをそのままに、自分をはるかに超えた重量をした戦槌を起点に方向を変える。ぶん、ぶんとコマのように回転し、威力を増した戦槌は群がるキラーアントの甲殻で覆われた体を砕いていく、その様はまるで旋風のようだ。しかし、モンスターもさるものながら、その鋭い鉤爪を地面に突き刺し、数体が折り重なることで戦槌を強引に食い止める。大きくたたらを踏み、止まったその背中を、残った集団はその凶爪で引き裂いてしまうだろ。

 

 ――彼女が、一人ならば。

 

()()()()()

 

 その声に応えるように、キラーアントたちの身体は両断されていく。そして、戦槌をキラーアントの身体から引き抜いた彼女――リリ――は再び、モンスターを蹂躙する回転を再開する。今度の風は、ルームに存在するモンスターが全滅するまで途切れることはなかった。

 

 

 

 

 

■ ■ ■ ■

 

 

 

 

 

「お疲れ様です、ミス・リリルカ。その武器の扱いも様になってきましたね」

 

「ええ、レット様の指導の賜物です」

 

 モンスターの沸きも落ち着き、一息をつくとレットはリリを褒めたてる。ゴブリンの異端児(ゼノス)であるレット、彼は小人族(パルゥム)と同様の体格をしている。そのために、リリは自身の戦い方の指導をお願いしたのだ。

 

 彼の指導の下で、いくつかの武器を試し、自身に適した武器としてスキル(縁下力持)を生かした大型武器を選択した。《縁下力持》は荷重による能力補正を行う、普段のリリはそれを未来のように巨大なバックパックを背負い、持ち帰る戦利品を出来る限り増やすということに使っていた。それを戦うための力として武器による荷重を行うことで、低いステイタスを補うものとしてピタリとハマり9階層までなら通用する程度の力を得ることとなった。

 

「ですが、まだまだ未熟な面も多い。彼らが戦槌を食い止めた時、横に振り払うのではなく掬い上げる様に打ち上げれば、あのような事態には陥ることはなかったはずです。それを見越して私のカバーが間に合う距離にいた判断は素晴らしいですが。まずは、自分のみで打倒できるという自信を身につけなければ」

 

「自信ですか、リリには少し難しい話です」

 

 未来でLV.2になった時は、軽々と倒していたモンスターを倒すのも一苦労に逆戻りしたのだ。築き上げた自信もステイタスと共にリセットされてしまった。

 

「オ疲れさまでス、リリさん」

 

 リリに代わって、バックパックを運んでくれている、レイがポーションを取り出して、()()()労ってくれる。

 

 ダンジョンは下層に行くほど、広大になっていく。異形である彼らは、本来は人目から隠れるために、狭く行動する冒険者数も多い上層域を行動することは避け、中層以降を活動の拠点としている。そんな、彼らが非常に浅い層である、7階層で行動できる理由は、リリがフェルズから提供された魔導書(グリモア)により習得した新たな魔法の力だ。

 

 他者変身魔法【キャロッス・スィトルイユ】、それは【シンダー・エラ】と同様な効果を、他者に発揮でき、これにより人に近い体格の異端児(ゼノス)であるならば、人間に化けることが可能になったのだ。習得した、初めの内は少しの間しかリリの精神力(マインド)が持たなかったが、あの決意の日から1年近くたち、日常生活から、諜報活動まで酷使され鍛え上げられた魔力は、評価Eまで到達し、今では2人に1日程度なら持続するほどとなっていた。さすがに地上には神の眼をごまかすのは至難であるために出ることは出来ないが、ダンジョン内では、彼らと自由に行動できるようになった。

 

 そうして、彼らは折を見て、リリと合流し経験値稼ぎ(レベリング)の手伝いをしてくれるのだ。

 

「レイ様、レット様、リリの手伝いをしてくださり、本当にありがとうございます」

 

 栗毛のヒューマンに変身したレイと、紳士然とした小人族(パルゥム)に変身したレットに礼を言うと彼らは。

 

「いえいえ、ミス・リリルカの力により、この上層で生まれた同胞も見つけやすくなった、我々の方こそ礼をするべきですよ」

 

「ハい、感謝するノは私たチの方です、何よりモ……」

 

 レイは、感慨深げに言葉を切り、リリの小さな体を包み込むように抱きしめる。

 

「貴方ハ、絶対二叶わぬ悲願(ゆめ)を、誰かを抱きしメたイという私ノ願いを叶えてくれました」

 

「レイ様……」

 

 そう言葉を漏らす、レイの瞳にはとても美しい涙が浮かんでいた。

 

「フェルズも神の目を誤魔化す装備を制作すると、意気込んでいます。あなたのおかげで、我らの地上に出るという悲願(ゆめ)も確実に近づいています」

 

「あはは、またフェルズ様のお仕事を増やしてしまいましたね」

 

 ただでさえ、1年後に備えての準備をしているのに。そこにリリが手に入れた情報を信頼できるファミリアに受け渡し後処理に、神の目を誤魔化すような逸品を作成しようというのだ。彼の肉体に疲れは蓄積しないだろうが、精神面ではそうではない。

 

「今度、何かフェルズ様でも楽しめる贈り物でも用意しましょうか」

 

「そノ時は、ぜヒ私も手伝ワせて、くダさいネ」

 

 笑いあう二人はともすれば、姉妹のようで。相容れぬ、人と怪物(モンスター)の確かなる友愛(フィリア)を感じさせるものだった。

 

「さて、レイ、ミス・リリルカ。そろそろ移動しましょうか、まだまだ時間はありますからね」

 

「ええ、頑張っていきます!」

 

そういって、ルームを出て通路を進みだした、リリ達だが、次の獲物(モンスター)を見つけられないでいた。

 

「おかしいですね、いくら上層の沸きが少ないとはいえ。ここまで遭遇しないのは異常です」

 

「何らカの、異常事態(イレギュラー)ガ発生シたのでしょウか」

 

「そうですね、ミス・リリルカどうしますか?判断はおまかせします」

 

 リリは少し考えこみ。

 

「そうですね、お二人のお力があればこの階層では大きな危険はないでしょうし、念のため探ってみましょうか」

 

 そう結論をだし、ダンジョンの探索を開始する。

 

 

 

 

 

■ ■ ■ ■

 

 

 

 

 

 

 ダンジョンを小さな影が疾駆する。その影が過ぎ去った場所では、モンスターがことごとく引き潰され、魔石毎その体を叩き切られ灰となっていく。さながら迷宮に現出した嵐のごとく、モンスターを薙ぎ払うのは一人の少女だ。軽鎧《小人族(パルゥム)のアーマードレス》と《鋼の短剣》という駆け出しに毛が生えた程度の装備をした彼女は、その程度ではありえざる力でモンスターを屠り続ける。その少女の名は、ロキ・ファミリア所属アイズ・ヴァレンシュタインと言う。

 

 彼女は、本来ならダンジョンにはファミリアの護衛がいなければ入ることを禁じられている。だが、彼女はその約束を破って今ここにいる。

 

(強く、強くならないと。もっと、もっと、もっと)

 

 なのに、フィンとリヴェリア、ガレスもどうしてわかってくれないの。

 

 自分の身体を大事にしろ、思い上がるな、ちゃんと休めと口うるさい!

 

 私には、そんなことをしている時間はない!余分はない!どれだけ願っても英雄は現れない!だから、だから強くならないと、私が燃え尽きる前にあの漆黒を打ち滅ぼすために。

 

 熱に侵されるままに、刃を振るいモンスターを薙ぎ払っていく。その二振りの(武器と自分)の悲鳴から耳を逸らして。少女がどれだけ強かろうと、己から目を逸らす愚か者を生かすほど、ダンジョンは甘くない。やがては耐えきれなくなった鋼の短剣は砕け散る。それでも、彼女は素手で交戦を再開するが、酷使された体は意思に追い付かず、一撃を食らい意識を飛ばす。

 

 その時、襲い掛かるモンスターを矢弾が襲う、鞏固な外殻は矢を防ぐが、括り付けられた煙球により彼らは感覚を失う。その隙に、小さな影がアイズを背負い、猛烈な勢いで逃走を開始する。

 

「ああ、もう。なんで、あなたがこんなところで死にかけているんですか!剣姫様!!」

 

 

 

 




リリルカ・アーデ
LV.1
力:I22→H162
耐久:I5→I96
器用:I42→F246
敏捷:I51→G189
魔力:I58→E312
《魔法》
《魔法》
【シンダー・エラ】
・変身魔法
・変身像は詠唱時のイメージ依存。具体性の欠如の際は失敗(ファンブル)
・模倣推奨
・詠唱式【貴方の刻印(きず)は私のもの。私の刻印(きず)は私のもの】
・解呪式【響く十二時のお告げ】
【キャロッス・スィトルイユ】
・他者変身魔法
・変身像は詠唱時のイメージ依存。具体性の欠如の際は失敗(ファンブル)
・模倣推奨
・詠唱式【魔法をかけたカボチャの馬車で。さあ、灰被り、死出の穴の輩と(未来)の宴に向かいなさい。12時の鐘が鳴る前に王子様と踊りましょう】
・解呪式【私の刻印(きず)は貴方のもの。貴方の刻印(きず)は貴方のもの】
《スキル》
縁下力持(アーテル・アシスト)
・一定以上の装備過重時における能力補正。
・能力補正は重量に比例。
指揮想呼(コマンド・コール)
・一定以上の叫喚(きょうかん)時における伝播(でんぱ)機能拡張。
・乱戦時のみ、拡張補正は戦闘規模に比例。
・同恩恵を持つ者のみ、遠隔感応可能。最大範囲はレベルに比例。
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