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アキラ達が襲撃された日の翌日朝。ギンガはなにかいい匂いで起きた。
「んぅ?」
目覚めたギンガは目を擦りながら上半身を起こし、隣にいたアキラがいないことに気づく。
「アキラ君…?」
毛布を持ってリビングに行くとアキラが台所で味噌汁の味見をしていた。
「…なにしてるの?」
「ん…かくまってくれたからな、ささやかなお礼に朝飯作ってんだ」
アキラの意外な一面にギンガが驚いていると、後ろから声がする。
「こいつの作る飯は美味いから、安心していーよー」
たった今目覚めたばかりで、髪がはねまくってるジュリだ。ギンガはジュリの肩を掴み、回れ右させて洗面所に押していく。
「も〜、ジュリちゃん、髪ボサボサじゃない。女の子なんだから」
「ん〜」
ジュリを鏡の前に立たせ、くしで髪を梳かす。
「こんなに綺麗で長い髪を持ってるんだから大切にしなきゃ」
「あ〜?いいよ別に〜好きで伸ばしてる訳じゃないし〜切る暇ないだけだから〜頑張って手入れしてる訳でもないし〜」
「お手入れしてなくてこんなに綺麗な黒髪に保てるの?いいな〜。お母さんも黒髪なのかな?」
「…」
さっきまで眠そうにしていたジュリが急に暗い顔をして髪をいじる。
「お母さん…か。どうだろうね」
「え?」
「ううん、なんでもない」
そう言ってジュリが髪を後ろに回した時、ギンガはジュリの手首の焼印を見てしまった。
「この焼印…」
ジュリは慌てて手首を隠す。少しの間黙っていたが、一度ため息をつくと、今度はジュリ自らギンガに手首を見せた。
「これが気になるってことはあんたなんか知ってる?」
「アキラ君の手首にも同じやつがあったし…あなたもやっぱり…AtoZ計画の子?」
「ああ。だからあいつが言った私が妹ってのはあながち嘘じゃない。あいつがAで私がJ、アルファベットの順番的に遅い方が下ってこと。私達は…いろんな魔導師の優秀なDNAを使って造られてるから…親なんていないんだ」
「あっ…」
ギンガはさっきの自分の無神経な質問を反省する。彼女はAtoZに関わっていると感ずいていたはずなのにと。
そんな事を思っていると、洗面所の入り口で音がした。振り向くとそこには洗濯カゴを落とし、目を丸くしているアキラがいた。ギンガは頬に汗が流れたのを感じる。
「アキラ君…」
「いつ知った?」
ギンガはうつむきながら言う。
「一昨日…リイン曹長から」
「そうか…ゲンヤさんは?」
「一昨日八神部隊長から…」
「…」
アキラは頭を掻いて洗濯カゴを拾い、洗濯機の前に来た。ギンガは気まずそうな顔で頭を下げる。
「あのっ…ごめんなさい!知ってたの黙ってて…」
「別に…いいんだよ。昨日も言ったが何も言わない俺が悪いんだ。気にすんな」
いつも通りの無表情で洗濯機から洗濯物を引きずり出し、洗濯カゴに入れるアキラ。また失敗…そう思い、ギンガはため息をつきながらジュリの髪を梳かすのを再開した。アキラは未だに笑ってくれない。ギンガがそんなこと考えてると、鏡越しにアキラの顔が真っ赤になっているのに気づいた。
ギンガは何だろうと振り返る。アキラの手にはギンガの下着が握られていた。
「……………」
「キャアァァァァァァァ!!!!!」
ギンガも顔を真っ赤にしながらアキラに左ジャブを食らわせる。頭の中がこんがらがってたアキラは抵抗もできずに殴られ、洗面所から強制退室させられた。
ー朝食ー
食事中、ゲンヤがアキラに尋ねる。
「なぁ、お前さんなんで頬腫らしてんだ?」
「気にしないでくれ…」
「?」
ー朝9時ー
朝食を済ませたあと、四人はこれからどうするかを話始めた。
「お前らこれからどうすんだ?しばらく家に泊まるか?」
「俺はともかくジュリが心配だ。こいつ頭はいいが戦闘能力はないんだ」
アキラはジュリの頭を撫でる。ジュリは照れながらアキラの手を引き剥がそうとするが、嫌がってるようには見えない。
「ん〜…今日はいいが平日だとなぁ…」
考えているゲンヤの頭の上をスタッグフォンが通り、ジュリの頭に引っ付いた。
「ん?どうしたの?メール?」
ジュリはスタッグフォンを取り、メモリを抜いてメールをチェックする。
「あ、大丈夫。これ以上世話にならなくて良さそう」
「あ?」
「姉弟のHとTが協力してくれるって」
「本当か!?」
「うん、しばらく暇だから私の護衛についてくれるって。スタッグ、ありがとう」
ジュリはスタッグにメモリをいれて飛ばそうとした時、 ナカジマ家のインターフォンがなった。場の空気が一瞬で凍りつく。
「みんな下がってろ、俺が出る。もし奴らならファングがここにこさせるからすぐジュリ連れて逃げろ」
「うん…」
アキラは刀を構えて玄関に行き、インターフォンに出る。しかしインターフォン越しに見る外の景色に人の姿はなかった。アキラは慌ててフロッグポッドを見たが反応はない。それはそうだ、フロッグポッドに連絡を入れるデンデンセンサーはアキラが昨日自分で持って使ったからだ。
自分の適当な性格を恨んだがもう遅い。そして、玄関のドアにノックの音が響く。普通の客だったら門の前にいてインターフォンの返事が来るまで待つはず、それを一分と待たず来るならもう間違いない、アキラはそう思った。
意を決し、刀を引き抜いて玄関のドアを開けて飛び出す。
「おおぉぉぉぉぉ!!!」
「お、ヤッホー!!久しぶりぃぃ!」
「のわ!?」
アキラが飛び出した先にいたのは手首に「H」と焼印が押されたアキラと同い年くらいの赤い髪の少女だった。赤い髪の少女は飛び出してきたアキラに抱きつく。
「おま、まさか…ヒヨリか!?」
「そだよ〜」
「よう、久しぶり。アキラ」
ヒヨリと名乗る少女の後ろにはもう一人同い年くらいの男が立っている。手首には「T」の焼印。
「お前は…えっと…」
「トガワ、トガワ・ヨウイチ」
苦笑いをしながらトガワ・ヨウイチと名乗った少年はアキラの肩を叩いた。
「そうだったな…なんでお前らここが…?」
アキラが驚きながら尋ねると、ヒヨリが笑いながら答える。
「アハハ♪実はナカジマさんのお宅とご近所さんだったり〜」
「え?お前らの家って…」
ヒヨリとトガワは同時に少し離れたマンションを指差す。その時、いつまで経ってもファングもアキラも戻らないことに疑問を感じたギンガが、居間から出てきた。
「アキラ君、なにしてるのかな…?」
「ああ、ギンガさん。大丈夫だ…味方だ」
「始めまして~!ヒヨリですっ!」
「始めまして、トガワです」
「はぁ…」
見たことがない人物が来てギンガがキョトンとしていると、二人の手首にそれぞれ別の焼印を押されてるのを見つける。
「もしかしてあなた達が護衛についてくれるっていう…」
「当たり~」
「でもなんでこんなに早く…ていうかなんで家の場所を…」
「そこら辺は俺が教える。とりあえずこいつら家に上げよう」
―居間―
居間でアキラはトガワとヒヨリについてナカジマ家に説明し、ジュリの事を安心させるとアキラ達は帰る準備を始めた。
「…ギンガ、顔赤いが大丈夫か?」
支度をしてたアキラがギンガに尋ねる。ギンガは慌てて両手を振りながら返答した。
「だ、大丈夫!何でもないよ!心配しないで…ね?」
「ならいいんだが…」
ギンガは今更になって恥ずかしくなっていた。緊急事態とはいえアキラが家に泊まることになったこと、気が動転してたとはいえアキラの隣で寝かせてもらい、その上…「アキラ君と一緒にいるとなんだか安心するなぁ…アキラ君の匂いがして…これなら安心して眠れそう」なんて言ったこと。これじゃまるで恋人じゃない!などと脳内で穴を掘りながら叫んでいる。
「…結構広い庭だな…」
「え!?あ、うん…」
早く準備を終わらせたアキラはいつのまにか庭をながめていた。
「ここからじゃ見にくいけどあそこにベンチもあるんだよ?」
「ベンチか…ベンチ…」
アキラの脳内で急にフラッシュバックが起きた。
(ほら、ご挨拶)
(橘アキラ…)
(えっと、ギン▽・ナ◇%〒です。ほら、ス⌘ルも)
(ス⌘ル…)
そこでフラッシュバックは終わる。
「ない…」
「え?」
「ない!ない!ない!ない!!!!」
アキラは頭を抱えて騒ぎだし、窓を開けて靴も履かずに庭に飛び出した。そして辺りを探す。
「ない…ない!どこだ!?どこにあるんだよぉ!!」
「落ち着いて!アキラ君!何がないの!?」
追いかけてきたギンガがアキラの肩を掴み、なだめるように尋ねた。
しかしアキラはギンガの言葉に耳を傾けず、辺りを見渡す。ギンガの手を振り払って近くを行ったり来たりしたと思うと、庭のベンチの前でようやく止まった。
「アキラ君…なにがないの?」
「記憶が…記憶が………」
「記憶?」
そしてアキラははっと思い出す。
「クイントさ…」
その続きを言おうとしたのだろうが、精神が耐えられず、アキラは卒倒した。
「アキラ君!」
「アキラ!」
ギンガとゲンヤ、ジュリ達がアキラに駆け寄った。
◆◆◆◆◆◆◆
覚えているのは、誰かの悲鳴。
覚えているのは、血だまりと元々は人間だった肉片。
覚えているのは、差し伸ばされた手。
覚えているのは…
「…………………て……………君……………かりして………ラ君!………………しっかりして!アキラ君!」
「っ!うおっ眩し!!」
目を覚ますと最初に飛び込んで来たのは、電気の光と心配そうな顔のギンガさんとジュリ。
顔を軽く起こすとみんなもいた。俺は…寝てたんだろうか、なにか夢を見ていたような気がするが…。
「何だよ、別に寝てただけじゃねぇか。なんで全員揃って俺を起こすんだよ」
「え?」
俺が言うとギンガさんは驚いた。
「さっきの…寝てたの?」
「は?いや…よく覚えてねぇけど…ん?」
その瞬間、俺の頭の中でまたフラッシュバックが起きた。ひどい頭痛と耳鳴りが俺を襲う。
「うぐっあぁぁぁl!!」
視界を闇が包み、俺は再び気を失った。そして、俺は記憶の嵐に飲み込まれた。今まで封印されていた記憶に。
ーアキラの精神世界ー
「何だよ…ここは…」
アキラがそこらを見渡すとそこにはアキラが今まで見てきた映像が嵐のようにアキラを囲んでいた。上も、下も。
「俺の…記憶!?」
その嵐の中から何枚かの記憶のワンシーンがアキラの前に出現した。一枚目は、血だまりの景色。次は明るい庭園。最後は…葬式。しかしアキラにはその事を鮮明に思い出せなかった。そこにあるのは確かにアキラの記憶の筈だがどうにもそのことを思い出そうとすると、奇妙な頭痛がアキラを襲ったのだった。
しかし、今なら思い出せるかもしれないと思い、アキラは記憶の欠片に触れる。
触れた瞬間アキラの頭に記憶が一気に流れ込んできた。まるで、そこに外れてたパズルのピースがはまったように。
「はぁ…はぁ…たくっ、思い出したくないもんまで思い出させてくれるじゃねぇか」
少し悩んでからアキラは記憶の欠片をすべて自分に取り込んだ。なぜ自分がナカジマ家の記憶があるのか知りたかったからだ。
「うぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
アキラの頭の中で、それぞれの記憶がごちゃごちゃになり、頭痛と耳鳴りを引き起こす。そして、様々な記憶の中から自分が言った言葉、誰かがいった言葉が途切れ途切れで再生された。
「君、大丈夫……」
「お名前は…」
「ない…」
「ギンガ・ナカジマ…」
「橘アキラで…」
「スバル…」
「ギンガもクイント母さんもスバルもゲンヤさんも俺が守る!!」
そこでようやく頭の中で記憶が整理され、アキラは目覚める。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
アキラの周りには驚いた顔をして硬直したギンガ達。
「…………ジュリ」
「な、なに?ていうか大丈夫?」
「大丈夫だ。だからトガワとヒヨリ連れて先帰ってろ。俺は二人に話がある」
「うん…わかった。でも、なるべく早く帰って来てね?お夕飯作れるのあんたしかいないんだし」
「わかってる」
ジュリ達が帰ったのを確認するとアキラはゲンヤと向き合う形で座った。ギンガはアキラの隣に座る。
「で、話ってなんだ?」
ゲンヤが聞くと、アキラは睨むような顔でゲンヤを見た。そしてため息をついて頭を掻く。この行動はアキラがなにか面倒くさがった時や大切な事を相手に伝えたりする時の行動だ。
「ゲンヤさん、あんた俺のこと知ってたんじゃないのか?」
「…………それはどういう意味だ」
「どうもこうもねぇよ!そのまんまだ!俺のこと知ってたかって聞いてんだ!」
アキラはいきなり机を両手で叩いて立ち上がる。ギンガは驚いたがゲンヤは変わらない表情でアキラを見ている。
「俺は今思い出したんだ…まだなんか曖昧だけど…俺は確かに昔ここに来てる」
「…………………そうか、思い出したか…」
「父さん……本当なの?」
ゲンヤはため息をついて立ち上がり、棚に置いてあったクイントの写真が入ってる写真立てを持って戻って来た。そして写真立ての裏からもう一枚写真を出す。
それをギンガとアキラの前に置いた。
「これ…」
「…………………」
その写真にはクイント、ゲンヤ、七歳くらいのギンガ、五歳くらいのスバル、そしてギンガと同い年くらいの茶髪の少年が写っている。ギンガはその写真を手に取り、よく見た。
「まさか…これがアキラ君?」
「そうだろうな…」
「アキラ、お前はクイントの事を覚えてるか?」
「何となく」
「クイントに助けられたのは覚えてるか?」
「ああ、研究施設で事故が起きた日に………………俺はクイントさんに助けられた」
ゲンヤはクイントの写真を見つめながら話始めた。
「……お前の言うとおり俺はお前の事を知ってる。今から…大体10年前だな。ギンガはともかく、スバルがまた人見知りで…友達が出来なくてな。それを見るに見兼ねたクイントが過去に自分が保護した子を連れてきた。その子もクイントに会いたがってたからちょうど良かったらしい」
ー次回予告ー
俺とギンガさんは10年前に出会っていた。しかし…なぜその記憶だけ今までなかったのか、その事実がゲンヤさんの口から明かされる。そして、俺たちに忍び寄る敵の正体とは。次回、魔法少女リリカルなのは Partiality 「10年前」さぁ、お前の罪を数えろ!
新作小説予告。
「魔法少女リリカルなのは Partiality innocent」
「ひぐらしのなく頃に 明」
お楽しみに!