魔法少女リリカルなのは Partiality   作:瑠和

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サブタイトルは十年前ですが、本編とそんな関係ないです。
感想、評価、投票、良かったらお願いします。


第十話 十年前

「明日お客さんが来る?」

 

ゲンヤがはじめにその話を聞いたのは、ギンガとスバルが寝静まった後の、晩酌の時だった。

 

「うん、明日お休みでしょう?前から私に会いたいって言う人が来るの」

 

ゲンヤはグラスを落とした。

 

「………そいつは…男か?」

 

「うん♪」

 

満面の笑みで答えたクイント。

 

ゲンヤは真っ白に燃え尽きる。予想以上の反応の見せたゲンヤに満足したクイントはクスクスと無邪気に笑った。

 

「もう、最後まで話を聞いて?確かに男だけどまだ7歳よ。ちょっと前に私が保護した」

 

「あ、あああ…そうか…良かった…」

 

「うふっ、あなたっていう素敵な旦那様がいるのに浮気なんてするわけないじゃない♪ほら、これ送られてきたメッセージ映像」

 

クイントはデバイスを弄り、一つのデータを開いた。そこには茶髪で保護された時より目つきが良くなり、清潔感が感じられる当時7歳のアキラがソファーに座っている。

 

『えっと………お久しぶりですクイントさん。覚えてますか?クイントさんに保護していただいた橘アキラです。クイントさんが見つけてくれた家と名前、気に入ってます。あの……お、俺、クイントさんに会いたいです!いつでもいいです!お休みの日に…少しでもいいですから!お……お願いします!』

 

「名前?クイント、保護したのは知ってるが名前って?」

 

ゲンヤが聞くとクイントは、困ったような表情でゲンヤにお酌してから答えた。

 

「あの子は…名前がなかったのよ。兵器Aって呼ばれてた。せっかく助けたから、そんな風に呼ばせたくなかったし……何よりあの子が私に懐いちゃったから…。それにその…あの子達の友達も…多い方がいいかなって…」

 

ゲンヤはすべて理解した顔で酒を飲んだ。

 

「ふぅ………まぁ確かにギンガはともかくスバルは引っ込み思案だからな。そのアキラってのがスバルにいい影響を与えてくれればいいんだがな…」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「ほら、お名前は?」

 

「………橘…アキラ……」

 

ナカジマ家の庭で、クイントの隣で茶髪の少年がもじもじしながら名前を言った。

 

「ほら、二人とも」

 

その少年の前には二人の少女がいる。

 

「えっと、ギンガ・ナカジマです。ほら、スバルも」

 

「……スバル」

 

ギンガの後ろに隠れたままスバルは名前を言った。クイントはしょうがないかと言うような表情を浮かべながら、アキラの視線に合わせてしゃがむ。

 

「アキラ君、私ね、このあと用事があるの」

 

「うん」

 

「夕方には戻るから、その間ギンガ達と遊んでてもらえない?」

 

アキラが頷くとクイントは笑って出かけていった。(実はゲンヤと隠れているだけだが)クイントが去り、取り残された三人は少し黙ってたが、ギンガが勇気を持ってアキラに話しかける。ちなみに、ギンガも仕掛け人だ。

 

「えっと…なにかしたいことある?」

 

「ない… 」

 

「じゃあ、ストライクアーツは出来る?」

 

アキラは頷いた。二人はストライクアーツで試合するのではなく、軽く技を出し合い、それを互いに返すというのを初める。要するに打ち合いってやつだ。スバルは誘われる前にベンチに座った。アキラはそれを一瞬気にかけたが、すぐにギンガの先制攻撃が来たため、試合に集中することにした。

 

「えいっ」

 

「よっと」

 

「……」

 

二人の打ち合いをスバルはただ見つめるだけで、アキラに接近しようともしない。

 

「とぉ!はっ!………お前はやらないのか?」

 

「えっ?」

 

唐突に話しかけられたスバルが驚いた。

 

「…………私は…誰かを傷つけたり、誰かに傷つけられたりするの嫌いだから…それに私達ちょっと特別でね。特に私はギン姉みたいに加減が上手くないから、壊したくなくても少し加減を間違えただけで、壊しちゃうから…誰にも近づきたくないし、私を怖がって誰も近づいてくれない」

 

まるでそのことが慣れた様な表情でスバルは言った。

 

「………スバル…俺にかかってこい」

 

アキラの意外な言葉にスバルは少し驚きながらも首を振る。

 

「ダメだよ……加減が効くか分からないし…」

 

「いいからほら」

 

アキラはスバルを無理やり立たせ、構えた。スバルは助けを求めてギンガを見る。しかしギンガは頑張れと言わんばかりの笑顔で見守っていた。

 

「ほら、こいよ」

 

「……………っ!えいっ」

 

やけくそにスバルはアキラに殴りかかったが、次の瞬間にはスバルの視界が一瞬暗くなり、次に目を開けた時に見えたのは青空だった。

 

「あれ……?」

 

「俺の勝ち!」

 

「え?」

 

「俺の勝ち!」

 

自分の勝利をアキラは必死でアピールする。何だかよくわからずスバルが頷いた。

 

それを確認するとアキラは笑顔になってスバルに手を差し出す。

 

「これで分かったろ?お前はそんなに強くない。だからお前は怖くない!」

 

「……でも」

 

「誰も近づいてくれないんじゃない。お前から近づこうとすればきっと近づいてくれる!」

 

「本当?」

 

スバルは不安そうな顔で尋ねた。アキラは強く頷く。それを見ていたギンガ、クイント、ゲンヤは驚いた。まだ小さいのにそこまで説得力があるとは思ってなかったのだ。アキラがここまでしたのには訳があったのだが、それはまた別のお話。

 

「本当だ!……信じられないなら俺について来い!」

 

アキラはスバルとギンガの手を掴んで引っ張る。

 

「え?ど、どこ行くの!?」

 

「公園!俺の………妹弟が遊んでる筈だ!だからついて来い!友達作ろうぜ!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「その子はそんな風にスバルの内気を治してくれた。それからはよく家に遊びに来たもんだ。その子の家にはお母さんがいなかったから、クイントをクイント母さんなんて呼んでたもんだ。だがしかし、その子はある日からパタリと来なくなったんだ。」

 

「ある日?」

 

「クイントの葬儀が行われた日からだ」

 

「母さんの……?」

 

ギンガが驚きを隠せない表情だったが、アキラはずっと同じ表情をキープしていた。ゲンヤは続ける。

 

「クイントの葬儀が行われた日、確かにその子は葬儀に来た。しかし………ずいぶん懐いてし、助けてもらって優しくしてもらったからか、その子はショックに耐えられずに倒れ、病院に運ばれた。目を覚ました少年からは驚くべき言葉が出てきた。ここ最近の記憶が全然ないってな」

 

「「え!?」」

 

アキラとギンガは同時に声を出す。どちらかと言うとより驚いたのは、アキラの方だったが。

 

「医者によると…ショックで倒れた時に、アキラの脳内でこれ以上精神、身体に負担をかけないように一番大切な記憶、つまりクイントに関する記憶を封印したらしい」

 

「だからか……」

 

「もしかして、アキラ君の保護責任者をあんなにあっさり受け付けたのって……」

 

「前から知ってたし……昔、アキラは俺たち家族を守るって言ってたからな…。もしかして思い出したから戻って来たんじゃないかと思ってな」

 

自分の過去に何があったか大体分かったアキラだが、疑問はもう一つあった。

 

「俺の記憶がなかったのはよく分かった。だがギンガの記憶がないのはどういうことだ?二年前にギンガに会った時にギンガがもし覚えてたらもっと何か言ったはずだ。それに……今の話もまるで初めて聞いた見たいだしな」

 

アキラがギンガを見るとギンガはその通りと言わんばかりの顔で頷く。そして二人で問い詰めるような瞳でゲンヤを見た。ゲンヤは少し困った顔を見せたが、また話始めた。

 

「ギンガは……いや、ギンガとスバルのアキラに関する記憶は消させてもらった。覚えてると辛いだろうって感じてな」

 

「……え?」

 

アキラは目を丸くし、ギンガは俯く。

 

「どういう……」

 

「……はぁ、実はギンガ……いや、ギンガとスバルは…」

 

そこまで言ったところでギンガがゲンヤの言葉を遮った。

 

「父さん!…………私が言う」

 

ギンガが出て来ると、ゲンヤは黙る。ギンガは俯きながらアキラの前に立つ。

 

「あの……ずっと秘密にしててごめんね?実は……私…戦闘機人なんだ……。驚いた…よね?嫌いになったよね?」

 

ギンガが言うと、アキラは立ち上がってなにか言おうとしたが、それを窓ガラスが割れる音が遮った。

 

「!?」

 

窓ガラスを割ったのはヘルメットを被った男だ。男は今に入ると、ゲンヤの腹を殴り気絶させ、今度はアキラとギンガを見る。

 

そして通信機でなにか話し始めた。

 

「こちらアルファー。少し遅れたせいで他はいなくなったが、Aとタイプゼロファーストを発見。捕獲する」

 

「てめぇ!なにもんだ!」

 

アキラが威嚇しながら叫ぶと、男は腰にベルトを巻き、白いガイアメモリを出す。

 

「変身」

 

『エターナル!』

 

「ガイアメモリ!?」

 

男は腰に付けたベルトにメモリを挿入し、挿入した部分を斜めに傾けた。

 

『エターナル!』

 

軽快な音楽と共にベガイアメモリのエネルギーが開放され、男を包んだと思うと、男は白い仮面ライダー、エターナルに変身した。エターナルは銃を取り出し、アキラとギンガに向け、トリガーを引く。その瞬間、アキラはギンガの前に出た。

 

「うおわぁ!?」

 

銃から放たれたのは弾丸でなく、魔力エネルギーの捕獲用ネット。アキラ達は二人一緒に捕まってしまう。

 

「キャァァ!!」

 

「捕獲完了」

 

エターナルは二人の入ったネットを引きずり、庭に出る。ナカジマ家の上空にはヘリが待機しており、エターナルに向かってハシゴが降ろされた。エターナルがネットを持ったままハシゴに捕まると、ヘリは発信した。

 

「クソッ、スタッグフォン!」

 

『スタッグ』

 

ネットの中からスタッグフォンを飛ばし、魔力ネットを切る。

 

「なにっ!?」

 

「え?キャァァァァァ!!!」

 

「くっ!」

 

アキラとギンガは魔力ネットから解放されたが、空高くにヘリがいたので、もちろん落ちる。

 

落ちながらアキラは下を見た。二人の落下地点はずっと前に廃棄された廃工場。それを確認したアキラはドライバーを腰にセットした。

 

「変……身っ!!!!」

 

『アクセル!』

 

空中でアクセルに変身したアキラはギンガを抱えて廃工場に突っ込む。天井を貫き、地面に激突したがギンガには傷一つついてなかった。アクセルが身体を張って身代わりになったのだ。

 

「いってぇぇ…」

 

「アキラ君………なんで」

 

「あ?何度も言わせんな。俺はあんたを守ると決めたからだよ」

 

アクセルはヨロヨロと立ち上がる。それと同時にエターナルが天井を貫いて追いかけて来た。

 

「しつけぇやつだな…」

 

アクセルがギンガを守るように立ち塞がると、ギンガはアクセルの肩を掴む。

 

「どうして?私は…っ!戦闘機人なんだよ!?」

 

「…………だから…どうした?」

 

「え?」

 

「あんたが……ギンガさんがどんな身体だろうが関係ねぇ。俺は、俺がギンガさんを守りたいから守るんだ」

 

二人が向き合ってると、エターナルが突っ込んできたが、無人のバイクがエターナルを吹っ飛ばした。アキラがスタッグフォンを飛ばす前に呼んで置いたのだ。

 

「ぐおっ!」

 

「おっと、お前を忘れてたな。……ギンガさん、俺だって化物見たいなもんだ。あんたの気持ちも分かってるつもりだ。だから心配すんな。あんたを置いてどっかに消えたりなんかしないし、あんたが俺が嫌だって言わない限り俺が……あんたを守ってやる!これまでも、これからもな!」

 

アクセルはそれだけ言うと、バイクに仕込んでたエンジンブレードを引き抜き、エターナルを睨む。

 

「さぁ、振り切るぜ!」

 

「はぁ!」

 

エターナルは小剣を取り出し、アクセルに向かって行く。二人の戦闘を見ながら、ギンガは自分の気持ちに気づき、顔を赤らめていた。

 

(そっか、だからか…アキラ君のああいう優しいところが好きになったんだ…護衛でもなく、後輩でもない…恋愛対象としての…好きだったんだ………)

 

「おらぁ!」

 

「ぐあ!」

 

エターナルの方が、小回りが効くためアクセルは一気に二連続で斬られ、数歩下がった。反撃にエンジンブレードを振るが、かわされる。

 

「遅い!」

 

「がぁ!」

 

うまく懐に入られ、小剣で突かれ、吹っ飛ばされた。

 

「うぐ!はぁ、はぁ…」

 

ぼーっとしていたギンガがアキラのピンチに気づき、加勢しようとする。

 

「アキラ君、私も!」

 

「ダメだ!来るな!」

 

「なんで!?」

 

アクセルはエンジンブレードでエターナルを斬りつけ、そのまま壁に押し付けた。

 

「ガイアメモリは対魔力用に作られたんだ!力の使われてる状態じゃ、並の魔力は通らねぇ!」

 

アクセルは蹴られ、また二、三回斬られる。

 

「うぐぅ!」

 

「そんな…」

 

こんな時に何も出来ない自分を、ギンガは悔やんだ。

 

すると、ギンガの後ろから声が響く。

 

「アキラ!」

 

「アキラ!」

 

「ジュリ!トガワ!ヒヨリ!」

 

AtoZの三人が駆けつけのだ。

 

「なんで…ここが…」

 

アクセルが尋ねると、ジュリは得意げにギンガの背中についてた発信機を取った。

 

「自分で作った物の管理くらい出来なきゃね」

 

「確かにな…」

 

「はぁ!!」

 

エターナルが追い打ちをかけに突っ込んで来る。アキラはエンジンブレードで防ぎながらジュリ達に叫んだ。

 

「お前ら!ギンガさん連れて早く逃げろ!こいつの狙いは俺達AtoZとギンガだ!俺がこいつを引き受ける、だから早く!」

 

すると、ジュリはギンガの手を引いて物陰に隠れ、トガワとヒヨリは前に出た。そして二人は懐からなにかを出す。トガワが出したのは、変な形の銃、『トリガーマグナム』。そしてヒヨリは赤く、Hと書かれたガイアメモリ。二人は出した物をアクセルに投げた。

 

「!?」

 

「それ使ってとっとと終わらせてお昼ご飯を作れーーー!!」

 

ヒヨリは全力で叫び、トガワとギンガが隠れた物陰に入る。

 

アクセルはため息をつきながらエターナルを蹴り飛ばし、トリガーマグナムと赤いガイアメモリを拾った。

 

「一発で決めてやるよ」

 

『ヒート!!』

 

トリガーマグナムには銃口の下にメモリの挿入口があるので、アクセルはそこにヒヨリのヒートメモリを挿入する。

 

『ヒート!!マキシマムドライブ!! 』

 

挿入口を上に上げるとトリガーマグナムは普通の銃の形になった。アクセルがトリガーマグナムを向ける前にエターナルはマキシマムドライブを阻止しようとアクセルに突っ込む。

 

「はぁぁ!」

 

「それっ」

 

走るエターナルに向かってジュリはメモリガジェット達を投げた。メモリガジェットがエターナルの足止めをする。

 

「うおっ!?なんだこいつら!」

 

エターナルがガジェットに足止めされている間にマキシマムドライブのエネルギーが溜まり、アクセルはトリガーマグナムをエターナルに向けた。

 

「これで終わりだ…………トリガーエクスプロージョン!!」

 

銃口から高温の炎がビームの様にまっすぐ飛び、エターナルがいた場所で爆発が起きる。

 

「やったか?」

 

「……いや」

 

爆発した場所には変身した人物もメモリもなかった。ただ「バイバイまた今度ね♪はぁと」と書かれていた。

 

「……変身してたのはやっぱりEかな…」

 

「それはない。あの時やつは死んだんだ。…………………あれで生きてる筈がねぇ」

 

アキラは最後の言葉をボソッと言う。

 

「え?」

 

「いや………まぁ、逃げられたんならそれでいい。また潰すだけだ。帰んぞ、お前ら。あ、じゃあまたなギンガさん。かくまってくれて…ありがとうな」

 

「え…あ、うん!」

 

頭を掻きながら妹弟を連れて帰るアキラの背中をギンガは姿が見えなくなるまで見つめていた。ちょうどアキラがいなくなった時にゲンヤが廃工場に入って来る。

 

「ギンガ…大丈夫か?」

 

「うん!父さん、私お買い物いってきます!」

 

ギンガは満面の笑みで答え、工場の出口に走り始めた。

 

「え?買い物って、なんのだ!?ていうかアキラは!?」

 

「アキラ君は私を助けてくれたらもう帰ったよ。それから私は明日のアキラ君の、お弁当の材料買ってきます!」

 

「はぁ?」

 

ギンガは鼻歌を歌いながらスーパーに走る。これから、アキラにもっと好かれるための工夫を考えながら。

 

続く

 

 

 

 

ー次回予告ー

 

こんにちは、ギンガ・ナカジマです♪時空管理局地上、陸士108に務め、後輩だけど同僚の人に恋する17歳です!

 

アキラ君が私に振り向いてくれる様に色々している最中、ミッドチルダでは不可解な事件が……。

 

次回、魔法少女リリカルなのは Partiality「レリックと少女」リリカルマジカル頑張ります!

 

 

 

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