魔法少女リリカルなのは Partiality   作:瑠和

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投稿遅れました。でもその分良くできたと思います。
評価、感想、投票等よろしくお願いします。


第八話 二人の夜

ある日の朝、ギンガは早起きして台所でなにかしていた。

 

「~♪」

 

「ふぁ~…ん?ギンガ、なにやってんだ?」

 

そこに珍しく早く起きたゲンヤがやって来てしまい、ギンガは慌てて何かを隠す。

 

「と、父さん!今朝は…早いのね…いつもは、もっと遅いのに…」

 

「ああ、なんか起きちまってな。で、なにしてんだ?」

 

ギンガはうまくごまかそうとしたが、ゲンヤにはごまかしきれなかった。渋々とギンガは隠していた物をゲンヤに見せる。

 

「弁当?何で急に」

 

「あ、私のじゃないの……」

 

反射的に返してしまったその返事をギンガは深く後悔した。何となくとか曖昧に答えればいいものを、ど正直に答えてしまい、思いっきり地雷を踏んでしまったのだ。

 

「じゃあ、誰のだ?俺か?」

 

「……君の…」

 

「ん?」

 

「橘君の…」

 

「は?何で弁当なんだ?食堂があるだろ?」

 

「なんでか知らないけど、橘君食堂にいてもコンビニとかで買ってきたパン食べてるから…食堂のご飯が嫌いなのかわからないけど、手作り弁当なら健康にもいいかなって…」

 

ギンガの話を全部聞くと、ゲンヤは深く頷く。

 

「やっぱよくわかんねぇなぁ、あいつは…まぁいいや。とりあえず一つ聞きたい」

 

「はい…」

 

「いつから付き合ってんだ?」

 

ギンガの予想を斜め上を行く質問にギンガは驚く。

 

「ち、違っ!!!違うよ!付き合ってるとかじゃなくて、いつものお礼とか…この間、橘君に嫌な思いさせちゃったから…」

 

「そうか、優しいな、お前は」

 

そう言ってゲンヤはギンガの頭を撫でたが、内心は複雑だった。いつギンガがアキラに持っていかれるか。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

―昼休み―

 

 

昼休みになるとアキラはいつも通り昼飯を買うべく、コンビニに向かおうとした。

 

隊舎から出たところでギンガに止められる。

 

「橘君、待って!」

 

「あ?」

 

「お昼買いにいくの?」

 

「そうだが?…ああ、安心しろ、発信器もあるしファングも見てる」

 

ギンガの肩にファングメモリが飛び乗った。

 

「あ、そうじゃなくて…その…これ…」

 

ギンガはアキラに丁寧に風呂敷で包んだお弁当を渡す。アキラはそのお弁当を物珍しげに見た。

 

「なんだこれ」

 

「なんだこれって、お弁当だよ。お弁当」

 

「弁当…どうして急に」

 

「ほら、橘君いつもパンとかばっかりだから…たまには、ちゃんとしたもの食べないと…ね?」

 

「…」

 

アキラが黙ってるのが、段々不安になって来たのかギンガは恐る恐るアキラに尋ねる。

 

「あの…ごめん、迷惑だったかな…嫌なら…」

 

ギンガが最後まで言い切る前に、アキラはギンガの頭をくしゃくしゃとなでてやった。アキラのお思いがけない行動にギンガは慌てる。

 

「あ、ちょっ…や、やめっ…髪がくしゃくしゃになっちゃうから〜!」

 

「ありがとうな」

 

「え?」

 

くしゃくしゃになってしまった髪を直しながら、アキラの顔を見ると、ギンガは驚いた表情を浮かべた。アキラは、若干だが微笑んでいる。

 

「こんな俺を心配してくれてよ…ありがとうな」

 

アキラはお弁当を持ち、近くのベンチに向かった。ギンガもついて行こうとしたが、アキラがさっきまで立っていた場所に何かの封筒が落ちてることに、気づいた。ギンガは誰のものだろうと思い、拾って中身を確認する。中身はセロハンテープで無理矢理繋げられ、二つ折りにされた紙が一枚。紙を開くとそこには「保護責任者契約書類 保護責任者 橘信造 保護受信者 橘アキラ」と書かれていた。

 

ギンガはアキラを管理局に誘った時の事を思い出す。

 

「ついでに保護者もいねぇから、管理局に入ろうとしても無理だ」アキラは確かにあの時そう言った筈。なのになぜアキラはこのような書類を持っているのか、ギンガが困惑しているとその書類を誰かが取り上げた。アキラだ。

 

「橘君…」

 

「悪い、俺のだ」

 

アキラはベンチに戻ろうとしたが、ギンガがアキラの腕を掴む。振りほどかれないように力強く。そして、アキラを問い詰める。

 

「どういうこと?橘君!」

 

「何がだ?」

 

「今の書類、橘君…保護者がいないって言ってたよね?なのに…どうして!?」

 

「…はぁ、座れよ。それと離してくれ」

 

手を離したギンガがベンチに座るとアキラも座り、お弁当を膝に乗せた。

 

「俺がセシルを殺してしまった日。その日の内に葬式は開かれた。葬式が終わってから俺は自殺でもしようと葬式場を出たら…セシルの両親に止められた。ああ、金持ちの一人娘を殺したから誰にも知られずにこの家に殺されるんだと思った。けど、そのセシルの両親はなんて言ったと思う?」

 

ギンガは首を振る。

 

「娘の…セシルの分まで生きてくれってさ…。正直、そんな気になれなかったが…俺が後追ったってセシルが喜ぶか…それを望むかって考えたらなんだか死にづらくなってな…。だったらせめて自分が置かれた状況を辛くしようと思った。俺がやってた傭兵会社の社長…いや、橘の家の義親父はそういう状況なら仕方ないって言って本当はクビになるところを助けてくれた。だが俺は辞表を出して傭兵を辞めて、橘の家と縁を切って一人で生きようとした。保護責任者契約書類を破り捨てて夜中に家を出ようとしたら義親父に止められて…これを渡された」

 

アキラは書類を折り畳んで封筒に入れ、管理局制服のポケットにしまった。

 

「捨てようとも思ったがどうにもな…」

 

「そうだったんだ…ご、ごめんね?疑っちゃって?」

 

「気にするな。なにも話さない俺が悪いんだ」

 

アキラはそう言ってお弁当を開く。ギンガはまた失敗してしまったと思った。辛い過去があるせいかアキラはギンガの前で一回も笑ったことがない。アキラが勝手に言ったとはいえ、守ってもらってるんだからせめて恩返しがしたいとギンガは思っていた。

 

そのことを忘れて変な質問をしたせいで、またアキラに暗い顔をさせてしまった事をギンガは後悔した。そして、考えた。今アキラに出来る最善のこと…。

 

「お弁当、美味しい?アキラ君」

 

アキラは目を丸くした。

 

「あんた、俺のこと名前で呼んだことあったか?」

 

「ダメだったかな?」

 

「いや、呼び方くらい好きにしていいが…なんで急に…」

 

「アキラ君は橘の家と縁を切ってるんでしょ?だから苗字で呼ぶより名前で呼んだ方が気が楽かなって」

 

ギンガが軽く微笑んで見せるとアキラは少し赤らめる。照れ隠しにアキラがお弁当をかき込んでいるとスタッグフォンが飛んできた。

 

「ん?」

 

アキラはスタッグフォンを掴み、メモリを抜く。するとスタッグフォンが変形し、携帯電話になった。

 

「すごい!どうなってるの?」

 

「あ?ああ、後で説明する。電話来てるんだ。もしもし?どうした?ジュリ。ん、あぁ、変更?何を?ネジのサイズか。5mmから?うん、4mmか。わかった。ドライバーはどうだ?もうすぐ完成?了解」

 

電話を切り、再び携帯電話にメモリを差し込む。

 

『スタッグ』

 

スタッグフォンはまた変形し、クワガタのような形になり、アキラの頭に引っ付く。

 

「こいつらメモリガジェットはこの「ギジメモリ」がさされてないと日常的に使う道具になる。スタッグフォンならケータイ。バットショットならカメラ。スパイダーショックなら…見た目通り腕時計だな。デンデンセンサーは暗視ゴーグル。いろんな物を調べるのにも使える。そしてフロッグポッドは音楽プレイヤーだな」

 

「この子は?」

 

ギンガが未だに肩に乗っているファングを撫でた。

 

「ファングはどちらかというとメモリガジェットじゃない。ギジメモリのオリジナルの…ガイアメモリだ」

 

アキラは懐からジョーカーメモリを出してギンガに見せる。

 

「ふぅーん…あ、アキラ君」

 

「ん?」

 

ギンガはアキラにぐぐっと顔を近づけた。アキラは無表情を貫こうとするが、急なことだったので少し顔が赤くなっている。そして、アキラの頬を指でなぞった。

 

「ご飯粒ついてる♪」

 

ご飯粒をとり、くすくすと可憐に笑う少女を見てアキラはまた思う。セシルに似ていると。そしてギンガも気づく、アキラは自分を見ているんじゃない。自分を通して誰かを見ていると。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

その日の夜。アキラはギンガを家まで送った後に工具店に寄り道して家に帰った。アキラの家はとある森の中にひっそりと建っている。まるで山での遭難者駆け込み所のような感じだ。

 

山を少し登り、アキラは家に入る。

 

「ただいま~」

 

「おかえり~!!ネジは!?ネジは!?」

 

「この通り買ってきてやったよ。どうだ?ドライバーは」

 

「あとこのネジ絞めたらおしまい。造っとくからお夕飯早くね~」

 

「へいへい」

 

アキラを陽気に迎え入れた同い年くらいの少女、ジュリ。彼女がこの家の持ち主でアキラを居候させていて、昼に電話してきた人物だ。

 

「今日は魚だ…好きだろ?」

 

「うん〜。最近食べてなかったからね〜」

 

少女慣れた手つきで先ほどから話に上がる「ドライバー」と呼ばれる物を組み立てている。その少女の手首には「J」と焼印が押されている。

 

「どうする〜?」

 

「あん?」

 

「ドライバーが出来上がった後。私の「ジョーカー」まだ使う?」

 

「ドライバーは使うが…そんなに使わねぇかもな。魔力の訓練も必要だし。部隊の訓練でも変身はたぶんしない…俺がそれ使うのは魔力に限界が来たらだ。俺達は…魔力がねぇと死んじまうからな…」

 

「そうだね…」

 

二人にしかわからない会話をしていると、突然インターフォンが鳴らされた。

 

「誰だろ?」

 

「ちょっと出てくるわ」

 

料理の手を止め、エプロンを外したアキラは玄関に向かい、扉を開ける。そこにいたのは警官の格好をした男が三人ほど。しかしアキラは気づいた。その男達の手首に巻かれたブレスレットに。アキラがいた研究施設の人間がつけていたのと同じブレスレットだ。

 

アキラは急いで扉を閉め、リビングに飛び込むとすぐに電気を消した。

 

「なに!?どうしたの!?」

 

「奴らだ!俺らを造った研究所の!」

 

「ええ!?」

 

「逃げるぞ!」

 

ジュリを抱えて裏口に走るアキラの手に何か渡される。

 

「あ?」

 

「ドライバー。使い方は…試作品で練習したよね?」

 

「…ああ!」

 

アキラは一旦ジュリを下に降ろし、ドライバーを腰に着ける。ベルトが自動で巻かれ、ドライバーの装着が完了した。そして懐から、本来自分が使うべき、ガイアメモリを出す。赤いメモリに大きく書かれた「A」の文字。アキラの手首にも「A」と焼印が押されている。

 

アキラは何かを決心した表情でガイアメモリのスイッチを押した。

 

『アクセル!!』

 

「変……身っ!!!」

 

ガイアメモリをドライバーに挿入し、サイドについているバイクのハンドルを回す。するとアキラの身体は真っ赤に光り、赤い装甲に身体を包まれた。仮面ライダーアクセルの誕生の瞬間だった。

 

「これが俺の…新しい力…ギンガさんを守るための…」

 

「裏口にいたぞ!捕まえろぉ!!」

 

暗闇から叫び声がした。

 

「とりあえず逃げよう。まともに戦ったらあいつら全員死んじゃうし…アキラも立場上、人殺しはまずいでしょ」

 

アクセルは頷くと、ドライバーを腰から外して両手で持ち、ジャンプして空中で一回転。すると身体に着いていた様々なパーツが変形し、アクセルがバイクに変形した。

 

「乗れ!」

 

「うん!」

 

ジュリが乗ったのを確認し、発進したと同時に発砲音が静かな森に響く。弾丸が命中しないようにアクセルはジグザグ走行で走るが、アクセルに乗っているジュリから小さな悲鳴が聞こえた。

 

「うぐぅ!」

 

弾丸がジュリの肩に命中した様子。アクセルは走る速度を上げた。

 

「大丈夫か!?」

 

「うん…」

 

「くっ…すぐに振り切ってやるからな!耐えてくれ!」

 

少しすると発砲音は止んだが、すぐに車のエンジンを起動させる音が聞こえた。アクセルはなるべく人目のつく場所を走る。そうすれば相手もやたらと手を出せないと踏んだからだ。

 

(くっ…思ったよりしつこい…!だったら…どっかに逃げ込むのが最善だが…どこに逃げ込む⁉ジュリの治療もできて…かくまってくれるところ…)

 

そこまで条件を出すと、もはや行く場所は一箇所しかない。

 

ナカジマ家。

 

アキラはこの馬鹿馬鹿しい考えを振り払うために頭を振った。これは自分達の問題、誰かに頼る訳にはいかない。それにナカジマ家…というかギンガに危険が降りかかる恐れがあったからだ。

 

「ねぇアキラ、ギンガさんの家は?」

 

ジュリも同じことを考えていたようだ。

 

(止むを得ないか…!)

 

アクセルは路地に無理矢理入り、そのままナカジマ家に向かう。時刻はまだ8時。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ーナカジマ家ー

 

ナカジマ家に着いたアクセルは変身を解除し、アキラに戻った。そしてすぐにインターフォンを鳴らす。

 

『はい』

 

ゲンヤが出た。

 

「ゲンヤさん、俺だ!アキラだ!」

 

そういうと玄関が開き、ゲンヤが門まで来る。

 

「どうしたアキラ。こんな時間に…」

 

「ゲンヤさん、すまねぇ。こいつは……俺の妹なんだが少しかくまってくれないか?今変な奴らに追われてんだ」

 

「そいつは本当か!?」

 

「ああ、無理なら無理でいい。でもせめてこいつだけでも…怪我してんだ!治療だけでも…」

 

ジュリの怪我を見てからゲンヤは二人の手を掴み、敷地内に入れた。

 

「なんに追われてんだか知らないが、早く入れ!」

 

「ゲンヤさん…」

 

二人はゲンヤに手を引かれ、玄関まで来ると、アキラはデンデンセンサーを掴んでギジメモリを抜く。暗視ゴーグルモードになったデンデンセンサーを使って周囲を見渡たした。まだ敵に気づかれてないらしい。

 

「急げ!アキラ」

 

ゲンヤはジュリを玄関まで連れて来るとすぐにギンガを呼んだ。

 

「ギンガ!救急箱持ってすぐ来い!」

 

「えぇ!?どうしたの父さ…ってたちば…じゃない、アキラ君!?」

 

「ギンガさん、すまねぇ。事情は後で話すから早く救急箱を」

 

「う、うん!」

 

ギンガとゲンヤはアキラが連れてきた子に見覚えがあった。はやてとリインが見せてくれた生き残りのAtoZ計画の中でよく似た女の子がいた。当時全員六歳と聞いていたが、成長すればそんなものだろうというレベルでよく似ている。

 

「大丈夫か?」

 

「あはは、ありがとう…ちょっと肩を撃ち抜かれただけですから…」

 

「撃ち抜かれた!?おまっ病院いくか!?てかっ行かなきゃダメだろ!」

 

「ダメだ。これは俺たちの問題だ。誰かを巻き込みたくない。…とか言っといてあんたら巻き込んでんだけどな…すまねぇ」

 

アキラは頭を掻く。

 

「大丈夫だ。うちは管理局の人間しかいねぇから追ってる奴らも手を出しにくいだろ」

 

「怪我をしてるのはその子?」

 

ギンガが救急箱を持って玄関にきた。

 

「ああ。けどちょっと待ってくれ。ジュリ、手出せ」

 

「直挿し?」

 

ジュリの質問にアキラは小さく頷いた。ジュリはしぶしぶ手を出す。彼女の手のひらには変なタトゥーのようなものがあった「生体コネクタ」と呼ばれるものだ。さらにアキラはジョーカーメモリを取り出す。

 

「あんたらは…見ない方が…いや、見ないでくれ。少しでいい、後ろ向いててくれ」

 

「…わかった」

 

ゲンヤとギンガが後ろを向くのを確認するとアキラはジョーカーメモリをジュリのコネクタに挿す。するとジョーカーメモリはジュリの体内に入って行き、ジュリの身体は怪物になった。

 

アキラがジュリの手のひらに手をそえるとメモリは体外に排出され、ジュリの身体は元に戻る。ジュリは息を荒くしながらアキラに微笑んだ。アキラも微笑み返す。

 

「もういいぜ」

 

「うん、早く治療…え?傷が…」

 

銃で撃たれたはずのジュリの肩は血は出ているもののさっきよりずっと良くなっていた。ギンガは驚きながらも応急処置を始める。

 

「これって…」

 

「事情は秘密だ」

 

ギンガはきっとAtoZ計画に関係があるんだろうと思いながら何も言わなかった。

 

「はい終わり」

 

「立てるか?ジュリ」

 

「うん…」

 

「よし、いくぞ」

 

応急処置が終わるとアキラはジュリを支えながら帰ろうとする。しかしそれをギンガとゲンヤが止めた。

 

「待って、アキラ君」

 

「ん?」

 

「危険なんだろ?泊まってけよ」

 

ゲンヤの言葉にアキラはとても驚く。

 

「…いいのか?」

 

「うん♪」

 

「ああ」

 

二人は微笑んだ。その笑顔を見てどうしようかと悩んだが、二人を(どちらかというとギンガを)危険に巻き込みたくないことを思い出し、首を振った。

 

「あんたらの気持ちは嬉しいけどよ、俺は…」

 

「アキラ君が最近ずっと近くにいるから、私今日くらい一つ屋根の下にいてくれないと不安だな〜」

 

ギンガは棒読みでいきなり変な話を始める。

 

「は?」

 

「そうだな〜義父親としても夜中に外をうろうろするのは認め難いな〜。確かに明日は休みだけどな〜」

 

「は?」

 

「あん?忘れたのか?お前は俺が保護責任者なんだぞ?保護責任者ってことは親同然。親の言うことは…聞くもんだろ?」

 

「…」

 

軽い演技越しにとはいえ、自分たちを心配してくれた事に、アキラは柄にもなく泣きそうになった。

 

涙を無理矢理戻して、アキラは二人に頭をさげる。

 

「ギンガさん…ゲンヤさん…ありがとう」

 

とりあえずジュリはギンガの部屋に泊まらせ、アキラは玄関で待機し、緊急事態に備えることにした。こんな状況で自分たちをかくまってくれたゲンヤに感謝し、これ以上巻き込まないためにジュリを連れて夜中にこの家を出ようと考えた。

 

しかしその日の夜中に、ひょんなことからアキラの考えは失敗する事になる。

 

 

ー深夜ー

 

 

「…そろそろか」

 

アキラはジュリを連れてそろそろナカジマ家から出ようとしていた。

 

「アキラ君…」

 

「ん?」

 

気づくとアキラの後ろにギンガが立っている。なんだか怯えた目をしているなとアキラが思っていると、ギンガがいきなりアキラの胸の中に飛び込んできた。アキラが顔を赤くして慌てていると、ギンガが怯えた声でアキラに言った。

 

「アキラ君…ごめんね…子供みたいだけど…怖い夢見たの…」

 

「怖い夢?どんな」

 

「わからない…なんか三人くらいの女の人に倒されて…改造されて…スバルやアキラ君を………こ…」

 

震えながらギンガは、夢の内容を話しているが、だんだん涙混じりの声になっていく。

 

「もういい、もういい!」

 

アキラはギンガを勢いで抱きしめる。一旦は離そうかと思ったが、恥じらいを捨て、より強く抱きしめた。

 

「ギンガ?」

 

「なに…」

 

「大丈夫だ、俺があんたを守る。もし夢の中でも怖いことがあったら俺を呼べ、俺は必ず…必ず、すぐにあんたのとこに駆けつける。夢の中でもあんたのそばにいるから」

 

「アキラ君…じゃあ、隣で寝ていい?」

 

アキラは頷く。ギンガが部屋から持ってきた毛布を二人で羽織った。ギンガはアキラの肩に頭を預け、安心した顔で目を瞑る。

 

「アキラ君と一緒にいるとなんだか安心するなぁ…アキラ君の匂いがして…これなら安心して眠れそう…すぅ…すぅ…」

 

「早いな…」

 

 

ー翌朝ー

 

 

「ふあぁぁ…ん?」

 

翌朝、ゲンヤが目覚めて玄関にいくと、毛布にくるまれた二人を見つけ、微笑む。

 

「たくっ、幸せそうな顔で寝やがって」

 

深夜にアキラはギンガの顔を見ながら、いつのまにか寝てしまっていた。普段は険しい顔をしているアキラだったが、この時だけは幸せそうな寝顔だった。

 

 

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