東方紅恋記   作:秋鶏

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第二話、吹き飛んで行った店の壁

 外の世界への憧れが大きくなったのはついこの前の事が原因だろう。

 あの日、異変を解決するために紅魔館へ乗り込んできた二人の人間達。彼女達が過ごしている外の世界に、ふと興味が湧いた。その時は精々暇つぶしに外の世界を知ってみたいと思っていただけだった。

 姉の友人に頼んだところ、それくらいなら、と心良く外の世界に関する本を貸してくれた。

 美しい花の色や空の色、調べれば調べるほどに、外の世界を見てみたいという欲求は私の心を揺さぶった。

 見てみたい、触ってみたい。外の世界へ行ってみたい。

 少しの間ならきっと自分を抑えられる、大丈夫なはずだ。

 そう自分を無理やり納得させながら、私は右手を握りしめた。

 

 

*

 

 

 

 三人は協力して吹き飛んだ壁の破片を集め始めた。大きな破片、小さな破片、それらを一箇所に集めていく。

 

 

「あだっ!?くっそー、木の棘が刺さった……」

「蒼、大丈夫?」

「まったく蒼は注意散漫なんだから……少しはこの私を見習って痛いっ!?」

「にとりも刺さったのか……二人とも大丈夫?」

 

 木の部分の破片を拾おうとし、木の棘が刺さる蒼とにとり。

 二人で痛がる蒼とにとりをを呆れながらも心配する霖之助。

 

「あー、痛かった……おし、これくらいでほとんど集まったよな」

「たぶん全部集まってると思うよ」

「さっさと直しちゃおうよ、早く早く!」

「了解了解、じゃあやるぞ」

 

 霖之助が言うんならだいたい集まってるんだろうし、にとりがうるさいから早くやってしまおう、そう思いながら蒼は壁の残骸に向かって能力を使い始める。

 彼の能力は、「創造する程度の能力」イメージした物を作れるとても便利な能力……と名前だけでは思われがちだが、実際はそんなに便利な能力ではない。作れるのはいいが、その原料の妖力が足りないのだ。

 この能力は妖力によって無から有を作り出す。つまり、妖力を物質に変換して出現させる能力なので、何かを作るにはとてつもない量の妖力が要る。半人半妖の蒼の持つ妖力はそこまで多いわけでも無いので、彼のすべての妖力を使ったとしても、飴玉一つ作り出すのが精いっぱいだろう。

 そんな使い勝手の悪い能力だが、今回の場合は飛び散った壁の欠片を合わせるだけなので、破片と破片を繋ぐようにして、しっかりと元の形をイメージすれば、修理することができる。

 彼の能力によって少しずつ合わさり、元の形を取り戻していく香霖堂の壁。

 途中集中力が乱れたせいで、表面が若干歪な形になったのはご愛嬌。

 

「……こんな、感じで、いいか」

 

 妖力を使った事による疲労で、肩で息をしながら蒼は言う。

 

「お疲れ様、時間も時間だし、そろそろお開きにしようか」

「あーもう、疲れちゃったよ、私ももう少ししたら家に帰ろうっと」

「お前ら……もう少し、俺を労わってくれても、いいんじゃねーの?」

「はいはい、蒼、お疲れ様でしたー……これでいいでしょ?」

「お前な……悪い霖之助、俺もしばらく休んでから帰るわ」

「ん、ゆっくりしていきなよ」

「あ、そーだ、霖之助、この前拾ってたあの道具についてなんだけどね―――」

 

 空の色もだんだん暗くなってきた事に気づき、霖之助はお開きを宣言する。

 にとりと疲れ切った蒼に飲み物を差し出し、霖之助は三人と椅子に座る。三人で話を続けているうちに会話がヒートアップ、結局三人が香霖堂を出るのは空が黒く染まった後だった。

 

 

 

*

 

 

 

「えっと、これはこっち、あれはあっち、これはここを手入れして……と」

 

 蒼とにとりが帰った後、霖之助は日課の商品の手入れをしていた。いつもの通りなら手入れが終わった後、眠りにつくのだが……

 

「えっと、これはこっち、あれはあっち、これはここを手入れして……と、そして次に……おや、珍しいな、マジックアイテムに反応がある」

 

 たぶん霊夢か魔理沙あたりだろう、蒼とにとりはまだ家についてないと思うし、そう見当をつけながら霖之助はマジックアイテムに応答する。

 

「お、やっと出た、香霖だよな?」

「どうしたんだい魔理沙?君がマジックアイテムで連絡を取ってくるなんて珍しい、いつも用があったら家に突っ込んでくるのに……」

「ああ、ちょっと緊急なんだ」

「何があったんだい?」

 

 彼の見当通り、マジックアイテムに通話を掛けてきたのは魔理沙だった。

 声がいつもに比べて心なしか焦っているように聞こえるのは気のせいではないだろう、一体何があったんだろうか、そう思いながら霖之助は魔理沙に続きを促す。

 

「蒼はまだいるか?」

「いや……蒼ならにとりと一緒に結構前に帰っちゃったけど……どうかしたの?」

「異変だぜ、場所は紅魔館から霧の湖付近」

「……それは危険性のある異変かい?妖精が暴れているとかそんな異変なら安心なんだけど」

 

 魔理沙があわてて連絡を取ろうとしている時点でかなり危険な異変なのだろう、そう思いつつも、その予想が外れることを祈りながら霖之助は魔理沙に問いを重ねる。

 

「残念だがかなり危険な異変だぜ……無事だといいんだけどな……」

「詳細を教えてくれないか?事情があるなら言わなくてもいいんだけど……」

「事情なんかはないから安心してくれ」

 

 魔理沙は一旦言葉を切り、今回の事件の詳細を告げる。

 

「今回の異変についてだが――フランドールが逃げ出した」

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