記憶の箱庭 虚空の交差路   作:TAKAYA

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二冊目 【少年キ】 里のお仕事?

 貴方は休憩の為に一度本を閉じました。すると見計ったかのように目の前に先程の少女が降って来たではないですか。

 

「うーん?貴方も休憩?中継?自虐系?って誰が自虐キャラだ!テメーは私のハートを傷つけた!うー☆訴えてやる!倍返しだ!っえ?自分は何も言ってないだろう、って?そんな事知るか!不条理系だコノヤロー!」

 

 登場早々勝手に盛り上がる彼女に貴方はツッコミますがやはり聞く耳を持ってもらえません。

 

「まぁそんな事はどうでもいい♪アテナやアルテミスやイシュタルやアンドロメダや天照やベルダンディーやアダドやアリアンロッドやウマーやサラママや女媧やパラスやペネの様な女神達の如く優しい優しいこの私は哀れで惨めな貴方に飲み物を持ってきてあげたんだよ♡ハイどうぞ!どれがいい?」

 

 女神の名前多いな!それに知らない女神いるし!という貴方の二回目のツッコミも案の定無視され問答無用に彼女は貴方に三本のペットボトルを突き出してきました。

 突き出された物は“おー〇お茶”と“綾〇”と“伊〇衛門”でした。どれがいい?って全部同じお茶じゃないかと抗議する貴方に彼女は憤怒の表情で言い返してきました。

 

「“全部同じお茶”だって!バカヤロー!伊〇園と日本コ〇・コーラとサ〇トリーに謝れ!ペプシもコーラも一緒かあぁん!私は一緒だと思ってる!えっへん♪この分からず屋!裏飯屋!便利屋!質屋!メイの馬鹿!もう知らない!」

 

 彼女は一気にそう言い捨て本棚の森の奥へと走り去っていきました。嵐が去った後の様な気分を味わいながら貴方は再び本を開きます。

 

 

 

 

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 俺が休憩から仕事場である八百屋、店名『俺の八百屋』に帰って来た時店の陳列におかしな色の茸をせっせと並べている怪しい後姿があった。白いリボンが巻かれた黒く大きな三角帽を被っていてその下から金髪が覗いており、服は白のブラウスの上に黒のロングサロペットスカートを着ている。

 その怪しい人物、霧雨魔理沙が並べている茸は基本的に黄色く時折緑色に薄く発光している、どう見たってあれはヤべー物だ。

 俺は一気に魔理沙に近付くと問答無用で魔理沙の後頭部に手刀を落とす。何やら鈍い音が響き殴られた本人は短い悲鳴をあげ地面に突っ伏した。そしてゆっくりと此方を振り返り恨みがましそうな視線を俺に刺してくる。

 

「痛いんだぜ祭!乙女にいきなり何するんだ!」

 

「やかましい!何する、はこっちの台詞だ!勝手に訳の分からない物を店に並べてるんじゃねー!」

 

 魔理沙は起き上がり茸を一つ掴みながら、

 

「訳分からない物じゃないんだぜ!これは“死毘雷武(しびれだけ)”って言って「名前からして既にアウトじゃねーか!」

 

 叫ぶと同時にもう一発魔理沙の頭に手刀を落とす。

 

「アウトじゃないんだぜ?食べ過ぎるとちょっと身体が麻痺する位で「ヤべーよ!アウトだよ!」

 

「だから大丈夫だって!源時は美味い!美味い!って嬉しそうに食べてたんだぜ!」

 

「今朝あの人が医者送りになってたのはお前が原因か!」

 

 今朝俺が住む長屋は大騒動だったのだ、長屋の管理人である天森源時が泡吹いて倒れていたらしく里の診療所に担ぎ込んだり何が原因なのか?等の調査があったりして。そういえば虚空さんがやたら手馴れた手付きで応急処置をしてたな。ん?そういえば。

 

「なぁ魔理沙此処に店番してた虚空さんがいなかったか?あと八百屋の旦那も?」

 

 虚空さんが此処に来て早ひと月、俺と共にこの八百屋で働いたり里の彼方此方で手伝いをしたりしている為魔理沙や霊夢とも面識が出来ていた。

 

「ん?虚空だったら広場に連行されてたぜ?ちなみに連行してったのは八百屋のおっちゃん達だけどな!だからこうして私が代わりに店番をしてやってたんだぜ!そのついでに死毘雷武を売って儲けを貰おうとしてたんだぜ!」

 

 魔理沙の言った事が本当なら嫌な予感がする…。俺は店番を魔理沙に任せ(死毘雷武は全部没収した)広場へと全力で走るのだった。

 

 

 

 

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 はて?何でこんな状況になったんだっけ?僕は何時もより高い視点から眼下に集まっている集団を見ながら自問自答してみたが……うん、全く思い当たらない。

 どうしていきなり広場に連行されたのか?どうして三メートル程の柱に縛り付けられているのか?本当にどうしてだろう?考えても分からないので僕は事の首謀者に直接疑問を投げかける。

 

「旦那さん、どうして僕はこんな目に遭っているのかな?」

 

 僕がそう聞くと麦わら帽子を被り白髪混じりの短髪に顎鬚、黄緑の着物に青い半被に灰色のステテコを穿いた八百屋の旦那さんが大仰な感じで腕を振り声高々に言い放つ。

 

「違う!今此処に立っているのは八百屋の旦那では無い!今の俺は『慧音先生に個人授業して貰いたい』通称“K・K・S・隊”の総隊長だ!」

 

 旦那さんがそう叫ぶとその後ろに整列して控えている十数人の男達がまくし立てるように、

 

「総隊長!「イカスぜ!「我らK・K・S・隊!「図が高いぞ!「慧音センセー!「ウッホ!ウッホ!ウキー!・・・

 

 図が高いって柱の上の方で縛られているんだから仕方が無いよね、というか猿が紛れ込んでなかった?まぁいいや。

 

「で、総隊長どういう事なの?」

 

「「「「「 順応早いな!もう少し戸惑うとか何かないか!!! 」」」」」

 

 一斉にツッコミをかける男達を手で制しながら旦那さん、いや総長は何というか風格を纏いながら口を開く。

 

「虚空君、君は大罪を犯してしまったんだよ!それは赦されざるべきものだ!故に我等は君を断罪せねばならない!」

 

「……ごめんね、全然分からないや」

 

「君が先程慧音先生と話していた事だ!」

 

 慧音先生とは人里で寺小屋の先生をしている「上白沢 慧音(かみしらさわ けいね)」の事で腰まである青いメッシュが入った銀髪のストレート、胸元が開いた青色の上下一体型のロングスカートを身に着けており頭に六面体と三角錐を合わせた様な青い帽子を被っている。

 此処に来てから何回か寺小屋の仕事を手伝ったりしているから顔見知りであり、先程八百屋の前で会った時に昨日のお礼を言われただけの筈なんだけど……。

 

「忘れたとは言わせんぞ!あんな!あんな事が!・・・・

 

 

 

慧音「こ、虚空♡き、昨日は凄かったな♡」

虚空「ふっ、気にするなよ、あんな事何時でもしてやるぜ!」

慧音「あんなに色々…私…どうすればいいのか…♡」

虚空「お前の望むままでいいのさ!なんならまた教室で!」

慧音「一度に教わっても憶えられるか分からない♡時間をかけてゆっくりと♡」

虚空「恥ずかしがり屋め!そこがお前の魅力さ!」

慧音「バカッ!私もう行くから!じゃぁね…マイダーリン♡」

 

 

 

赦せるかーーーーーー!!!絶対に赦さーーーーーーん!俺達の慧音先生に何を教えたんだ(調教)貴様!!教室プレイだと!!慧音先生があーんな事やこーんな事を!!……う、いかん鼻血が!」

 

 総隊長の発言から何やら卑猥な想像をしたのだろう総隊長は鼻を押さえ男達も鼻血を出したり前屈みになったりと大忙しだ。というか話の内容を曲解し過ぎだよね。実際は、

 

慧音「やぁ虚空、昨日は子供達が世話になったな」

虚空「気にする事じゃないよ、あんな事なら何時でも言ってよ」

慧音「お前は本当に色々出来るんだな、私ではあんな竹細工どうすればいいのか全然わからん」

虚空「まぁ僕の少ない取り柄だよ、良ければ個人的に教えてあげるよ」

慧音「まぁそんなにすぐは憶えられんからな、ゆっくりでいいだろう。その時は頼む」

虚空「うん了解、その時は言ってね。」

慧音「仕事の邪魔をしてしまって悪かった、ではまたな」

 

 だったのに。どうしてあぁなった?

 

「我等には慧音先生を守るという使命が在る!よって貴様の様な害悪を排除せねばならないのだ!」

 

「いやいや君達はただ慧音に個人授業をしてもらいたい人達の集まりだよね?」

 

 力強く叫んだ総隊長に僕がそう言い返すと総隊長を始め他の連中も視線を泳がせた。だが気を取り直したのか総隊長は僕を指差しながら、

 

「屁理屈をこねるんじゃなーーーい!!もはや問答無用だ!皆の者準備はいいか?」

 

「「「「「 おお!!!! 」」」」

 

 なんだか逆ギレに近い感じで叫びながらこっちににじり寄ってくるが僕は縛られているのでどうしようもない。だがその時広場に声が響き渡った。

 

「やいやいやいやい!無抵抗の奴に寄って集って見苦しいぜ!そんな悪行この俺、天森源時が許さねぇぜ!!」 

 

「「「「「 出やがったな!あの朴念仁!! 」」」」

 

 天森源時、茶色の短髪に赤いバンダナを巻き赤色の長袍(チャンパオ)と黒のカンフーパンツを身に着けている変態紳士(祭談)。女性への悪戯が趣味らしいのだが本当に嫌がる事は女性にはしないという変わり者でそのぎゃっぷもえ?とかで意外にも里の数人の女性が惚れているらしい。祭君曰く『非モテの敵』だとかなんとか。

 割と正義感が強く里の中で起こった揉め事に仲裁を入れたりしており、ある意味郷の守人だ。今回も騒ぎを聞きつけて駆けつけたのだろう。でもあの子今朝方医者送りになったはずだよね?

 僕達の視線が源時が叫び声を上げてであろう広場の入り口に向けられた。そこには蒼白い顔で目の下には隈を作り一,五メートル程の杖に両手でしがみ付き膝をガクガクと震わせている源時がいた。

 

「さぁ覚悟しやがれ!」

 

「「「「「 既に満身創痍じゃねーかッ!!! 」」」」」

 

 源時の有様に流石に同情の声が上がる。

 

「でもこれはチャンスだ!「あの様なら流石に負けんだろう!「今こそ復讐の時!「覚悟しやがれリア充!「非モテの怒りを思い知れ!・・・

 

 しかし日頃の恨みでもあるのか所々から殺ったるぜ!みたいな声が上がり始め源時に襲い掛かろうとしている。彼を見捨てるのも可哀想だしね、どうしようか?と思っていた時ある人物を視界に捉え、僕は目の前に居た総隊長に声をかける。

 

「ねぇ総隊長、貴方にとって慧音って何かな?」

 

 唐突にそんな事を聞かれ総隊長は少し困惑した表情をするがすぐにキリッとした顔をすると、

 

「そうだな、言うなれば俺の全て!そう人生其のものだ!」

 

「なるほど、と言う事はあたしはあんたの人生にとっては味噌っかすって事かい」

 

 総隊長の背後に近付いていた女性がそう言葉を投げかけると総隊長は笑顔のまま凍り付き顔を真っ青にしていた。他の連中もその人物を見て一気に気勢を失っていく。総隊長はぎこちなく振り返りその人物に向け言葉を搾り出した。

 

「か、かーちゃん…ち、違うんだ…ご、誤解と言うか…」

 

 その人物、総隊長、いや八百屋の旦那の奥さんは優しく微笑みながらゆっくりと旦那の頭に右手を伸ばし、そしてその手が旦那の頭を鷲掴みにした瞬間、

 

「アアアアアアアアアアああああ!!!!!!!!!!!!!」

 

 旦那さんの凄まじい絶叫が広場にこだました。恐らく万力の様な力で締められているんだろうな。その光景を見ていた他の連中は身体を震わせ怯えている。

 

「さぁあんた…覚悟はいいかい?」

「か、かーちゃん!ゆ、ゆるしっげ!!!」

 

 奥さんは旦那の返答も聞かずに問答無用で目にも留まらぬ速さで拳撃を叩き込んでいく。僕の目の前で予想したよりも酷い私刑が敢行されてしまったが、まぁいいか。僕の質問にあんな答えを言っちゃったのは旦那さんだもんね。とりあえずこの縄解かないとね。

 

 

 

 

 ✣ ✣ ✣ ✣ ✣ ✣ ✣ ✣ ✣ ✣

 

 

 

 

 なんだろうなこれは?今俺は広場の入り口から異様な光景を見ていた。まず少し先に痙攣しながら倒れている源時のお兄さん、何かに怯え震えているK・K・S・隊の連中、その連中を怯えさせているのが八百屋の旦那を折檻している奥さんだった。

 

「うおすげー!エリアルレイブだと!15hitはいったぞ!しかも着地と同時に拾ってまた空中に!奥さんすげー!神奈子様と諏訪子様の喧嘩みたいだ!…旦那が一方的にやられてるだけだけど」

 

「うん?祭君どうしたの?店は?」

 

 恐らく事の発端だと思われる人物がのほほんとしながら現れた。

 

「俺は虚空さんが旦那達に連行されたって聞いて追っかけてきたんですよ」

 

「あっそうだったんだ、ごめんね心配させて。僕はとりあえず源時を医者の所まで運ぶつもりだけど祭君はどうする?」

 

「俺は店に戻りますよ、魔理沙に任せっきりじゃ不安なんで」

 

 俺達がそんな話をしている最中も旦那の悲痛な叫び声が響き渡っていた。

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