「さっそく彼の事を紹介しちゃおう!しちゃいましょう♪晒すぞコラ!この腐れヤローの名前は『大命上守 神明丸(だいごんじょうのかみ しんめいまる)』!略すとゾビ男さん♪仲良くしてあげてね♡」
「よろしくなんだなもし!御近づきの印にこの書類に判子が欲しいんだなもし!そう判子を押すだけでいいんだなもし!それで君も魔法ゾンビの仲間入りなんだなもし!」
「おおー!!つまり『魔法ゾンビ フレッシュゾビキュア♡』として日曜の朝のお茶の間を震撼させるんだね!子供達は卒倒するね♡悶絶するね♪愕然とするね!って卒倒してる時点で意識は無いってーの!決め台詞はもちろん『さぁ自然の摂理に逆らいし者達よ、土に還るがいい!』でしょ!こうでしょ♪今言わないで何時言うの?今でしょ♡」
うがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!とあなたの絶叫が広大な図書館に響き渡ります。
追いかけっこの末奇跡的に図書館の入り口に戻ってきたあなた。息も絶え絶えで最早逃げる体力も無くここまでか、と諦めて周囲を見渡すとあなたと同じ様に体力切れで倒れているゾンビがいました。
そんなあなたとゾンビを気にも留めない様子で都筑は入り口に置いてあるテーブルにティーセットを用意しお茶会の準備を始めていました。そしてあなたとゾンビをテーブルまで引きずり無理矢理椅子に座らせ、そして冒頭に続きます。
あなたは都筑に、さっきこのゾンビの事知らないって言ったよね!とか、こいつの名前をどう略せばゾビ男になるんだ!とか、フレッシュゾビキュアって何!新鮮な死体って言いたいの!とか、自然の摂理に反してるのはこいつだろ!とか、ああもう何処からツッコめばいいんだ!等と捲くし立てます。
そんな貴方を尻目に彼女とゾンビはティーカップに注がれている青汁を黙々と飲んでいました。
「いやーやっぱり青汁はいいね~♡心が青く染まる気分だよ♪液体は緑色だけどね~!」
「そうなんだなもし~!健康にもいいんだなもし~!今ならもう一袋付けちゃうんだなもし~!奥さんお買い得なんだなもし!」
あなたは、ゾンビが健康に気を使ってどうするんだ!と叫びますが案の定無視されました。こうしてあなたの図書館ライフに登場人物が一人?追加されました。
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「そこを動くな人間!」
「何の目的でこの山に侵入した!」
「下手な動きはしない方が身の為だぞ!」
木々が生い茂る森の中で僕は白い耳と尻尾を持つ白狼天狗四人に取り囲まれそんな言葉を吐かれている。
「ちょっとちょっと虚空!どうするのさ~!」
僕の隣に居るにとりが白狼天狗達にチラチラ視線を向けながら問いかけてきた。
「どうしようね?うんどうしようかな~」
僕は木々の隙間から見える空を仰ぎながらこの状況に至った経緯を思い返してみる。そうあれは……
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「七枷、すまないが少し用事を頼みたい」
朝早く祭君の長屋を尋ねてきた先代が唐突にそんな事を切り出してきた。祭君は今日は早くから八百屋の仕事があったらしく既に留守だった為部屋には僕と先代しかいない。
先代は僕がだしたお茶を一口飲むと息を一つ吐き本題を切り出してくる。
「少々危険ではあるのだが頼めそうなのがお前だけなのでな。用件と言うのは妖怪の山に居る秋の神に奉納品を収めてきてほしいのだ」
先代によれば幻想郷には季節毎の神がいるらしい。今里の中で猛威を振るっている(祭君や源時が扱き使われている)夏風ように季節になるとその季節の神が里に降りて来るのだとか。
それでその神に季節の作物の豊穣を願い季節が訪れる前に奉納品を納める習慣があるのだそうだ。特に夏と秋は重要なのだと。
本来なら博麗の巫女の仕事であったが今は先代がやっている為霊夢は面倒臭がって動かないのだそうな、仕事はしっかりしようよ霊夢。そして先代は別件で急用が出来てしまい急遽代理を探さないといけなくなり、白羽の矢を立てたのが僕だった、という理由だそうだ。
僕としては特段やる事も無かったので二言返事で了承し、奉納品を受け取りすぐに妖怪の山へと向かった。そしてその入り口付近にあった大きな滝でこの世界のにとりと出会い、その秋の神様の住処を知っているという事だったので案内を頼んだのだ。そして今に至る……
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「よし回想終わり!」
「いきなりどうした!!」
いきなり叫んだ僕ににとりが驚きそんなツッコミをかけてくる。おっといけない声に出しちゃったよ。
「貴様……我々を舐めているのか!」
僕達のやり取りに周囲の白狼手天狗達が何か思い違いをして殺気を放ってくる。事態が悪化してしまった、どうしようかな。
「一応言っておきたいんだけど僕達は秋の神様に奉納品を納めに来ているだけだよ」
「ふん!貴様の様な怪しい輩の弁など聞かぬわ!」
……おかしい、何故僕はこんなにも怪しい奴呼ばわりされるんだろうか?心外だな~。
「どうするのさ虚空!」
隣りのにとりが僕の服の袖を引っ張りながらそう詰め寄るが、
「まぁ僕に任せてよ♪」
僕はにとりにそう言って笑いかけながら腰に差していた刀を抜き放つ。それを目にした白狼天狗達が警戒して武器を構え直すのを確認すると刀の刃を“にとり”の首筋に当てる。
「…ひゅい?」
にとりは間の抜けた声を上げるが僕はそれに構わず言い放つ。
「さぁこの子の命が惜しければ武器を捨て大人しく立ち去るがいい!はーははははははは!!」
すると周囲の音が死に静寂が訪れ微風で揺れる木の葉の擦れる音だけが流れる。そんな数十秒の沈黙があった後白狼天狗全員が叫び出した。
「こ、こいつ自分の連れを人質にしやがった!「こんな人でなし見たことねェェェェェ!「い、いや落ち着け!たかが河童の一人がどうなろうと我々の知った事ではない!「う、うむそうだな!危うく武器を捨てる所だった!」
「なんだって!君達はこんなにも可愛い子を見捨てるというのか!その決断は非道だよ!外道だよ!まさに人でなしな集団だな!……あぁ妖怪だから人でなしで合ってるんだっけ?ねぇにとり?」
ふとそんな疑問を抱き刀の刃を向けているにとりに声をかけると、
「人でなしはアンタだこのスットコドッコイ!!」
にとりがそう叫んぶのと同時に背負っている大きな緑のリュックから飛び出してきたマジックアームが僕を殴り飛ばす。
「あべしッ!?」
殴り飛ばされた先には白狼天狗の一人がおり、僕は飛ばされながら空中で身を捻り刀の峰で彼を打ち付ける。
首筋に一撃受けた白狼天狗は意識を失ったのかその場に倒れ突然の事で戸惑いもたついている残りの天狗に向け
「よし終了、いや~にとりイイ連係だッぶはァァ!」
にとりに声をかけようと視線を向けた瞬間僕は再びマジックアームの鉄拳を喰らう。
「…ねぇ虚空?何かいう事があるんじゃないかな?」
「すみませんでした、思い付いたものでつい」
「まぁ許すけどさ~これ大丈夫なのかな~」
にとりは倒れた天狗達を見ながら不安げな声を上げるが、
「大丈夫だよ上に目撃者もいるし、もし問題になっても責任は僕一人だよ」
僕は木々の隙間から見える空に視線を向けながらにとりにそう説明をする。
「とりあえず彼等が目を覚ます前にとっとと目的地に行こうか」
「そうだね」
そうして漸く僕達は目的地へと向かう事が出来た。
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随分と森の奥へと進むと僕達の耳に何やら妙な音が届くようになる。例えるならかな金槌で木材を叩く音みたいな、もしくは金属同士がぶつかり合う音みたいな、両方が混ざっているみたいな音だ。
にとりと首を傾げながら進むと音は徐々に大きくなり少し先に大きな木に何かを打ち付けている人物の姿が見える。そしてゆっくり近づくとその人物の呟きがはっきりと聞こえた。
「あー憎い!アイツが憎い!滅べ!朽ちろ!!あぁ心の奥底から湧き上がるこの気持ち!あぁ~~芽~~生~~~え~~~~!!」
(何やら取り込み中の様子だから迂回しようか)
(何言ってるのさあれが虚空の探してる秋の神 秋 穣子(あき みのりこ)だよ。ほら声かけなよ!)
(え~嫌だよ何か恐いし)
(何情けない事言ってんのさ!)
そんな感じで小声で騒いでいた僕達に作業に没頭していた秋穣子が気付きゆっくりと振り返る。
顎辺りでカールしている金色のショートボブ、赤い目をしており頭にはつば広帽子をかぶりその帽子には蔓付きの葡萄が飾られている。
袖元が広がった黄色い長袖の上着に黒のロングスカート、そして裾がフリルになっているオレンジ色のエプロンを身に纏っていた。
そしてその手には五寸釘と金槌が握られ五寸釘の先端には何かの人形が胸を貫かれている。
「見~~~~た~~~~~な~~~~~~!!」
「あ、ごめんね牛の刻参りの途中だったんだね、邪魔しちゃって本当にごめん。っていうかまだ牛の刻(前1時から午前3時頃)じゃないよね?」
「何でそんなに冷静なのさ!」
にとりのそんなツッコミが森に響き渡るのだった。
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「あははごめんね~ちょーっと気が立ってたのよ!」
穣子は笑いながら僕等に謝罪の言葉をかける。
「それでその人形は誰を模しているんだい?」
「えっこれ?これはね私達の因縁の相手である夏の神 夏風よ!!ああ!名前を口にするだけでこう心の奥底から憎悪が湯水の如く溢れてくるわ!!あぁ~憎い!奴が憎い!」
そう叫ぶ穣子ににとりは若干、いやかなり引いており微妙な顔で沈黙を貫いていた。
「あれ~穣子ちゃんお客さん?」
そんな声と共に木々の間から穣子に似た女性が姿を見せる。
ウェーブのかかった金髪のボブに金色の瞳、ボタン付きの燕尾色の長袖の上着とロングスカートを身に付けている。
「あ!姉さん!お客っていうか人里から奉納品を持ってきたんだって。名前は虚空、で隣に居るのが河童のにとり」
「そうなの何時もだったら博麗の先代さんなのにね。とりあえずありがとうお疲れ様!あぁそういえば名乗ってなかったわね、私はこの子の姉で秋 静葉(あき しずは)よ」
彼女は微笑みながらそう名乗りそして、
「そういえば人里にはまだあのクソアマ…じゃなかった夏風は居るのよね。帰ったら伝えてくれるかしら『今年こそ大人しく消えろボケナス、熱いだけしか能の無い
「………っえ?今の言葉を僕の口から伝えろと?」
いくら僕が周りから馬鹿アホ天然間抜け、なんて呼ばれていてもあんな言葉を直接言うのは憚られるんだけど。
「お願いね虚空♡私達はこれから秋に向けて牙を研ぐ…じゃなかった豊穣の祈りをしないといけないの」
「そうね姉さん!あの腐れ西瓜頭を今回こそかち割ってやりましょう!」
そして二人は黒い笑顔を浮かべ黒いオーラを放ちながら森の中へと消えていった。
「……何か大変な事頼まれたみたいだけど…がんばってね?」
にとりに励まされながら僕はどうしようか困り果てるしかなかった。
ちなみに里に戻り勇気を出して夏風に伝言を伝えた所やっぱり僕が殴り飛ばされたのは秘密だ。