猫と風   作:にゃんこぱん

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ロサガチャ報告。
五十連くらい回しました。
ロサさん来ました。
イベントシナリオ読みました。
ああああああああああああああああああああああああああああ
辛いいいいいいいいいいいいいいいいい
このイベントだけ過酷すぎへん? BGMすらない会話イベント怖すぎワロタwwwwww
ワロタ……


雲と灰色-4

発射音が聞こえて、走り出そうとした体が反射的に後ろを見る。

 

グレースロートが矢をつがえて、次の準備を──。

 

その表情は。

 

驚きのままに倒れたギノに目をやって、手にしたナイフを見て全て理解した。

 

「ブラスト、無事!?」

「グレースロート……これは、」

「そのナイフが見えないの!? 周囲の警戒、まだ潜んでる可能性がある!」

 

隊の連中が駆け寄ってくる。

 

「ギノさん……!? これは、ねえ小娘! これは一体どういうこと!?」

「そいつがブラストを殺そうとしていた。ブラストが気付いてなかった。だから私がやった。それだけ」

「うそ……。まさか、この村の人たちが襲ってきたとでも言いたい訳!?」

「そう言ってる。そいつのナイフ、見えてないの」

「そんな訳ない……そんな訳ある訳ないでしょう!? エスペランサはロドスが一から作り上げた感染者の希望の場所よッ! そんな訳が……ッ!」

「やめろ、イーナ……」

「隊長、でも、──……」

 

頭では理解してる。

 

つまり、ギノはロドスを裏切ったんだ。

 

「もう、十分だ。……グレースロート、すまない。君の手を汚しちゃったな……」

「いい。必要なことだった」

「……医療班、資材班へBlastより通達。クロだ。今すぐロドスへ帰れ」

『り、了解。でもBlastさんたちはどうするんですか?』

「僕たちは……真実を明らかにする」

『わかりました……。無事に、ロドスへ帰ってきてくださいね』

「分かってる。それじゃ。……みんな、行くよ。現時点より、敵の存在が確認された場合、各自の判断で戦闘し、必要があればこれを殺して構わない。全責任は僕が取る。いいな」

『了解ッ!』

「行くよ。カルゴとハンスは僕と先行、状況を探る。ジフ、レイとグレースロートを率いて狙撃ポイントを取れ。必要があればお前の判断で撃て。イーナはアイビスと組んで周囲を警戒、敵の主力がいた場合、僕らと一緒に叩くよ。ルイン、すぐに救護態勢を取れ。必要に応じて行動しろ。すぐに次の指示を出す。通信機は常にオンにしておけ。そして僕からの連絡がない場合はジフ、お前が指揮を取って撤退するんだ。いいね──各自行動開始!」

 

この部隊の先鋒はカルゴとハンス。いつもなら僕は彼らの報告を待って指示を出す。だけど──。

 

中央へ走る。

 

嘘であってくれ、と。心のどこかで思っていた。

 

村の中央にいたのは、四名ほどの武装した集団だった。前衛と重装の武装。村に狙撃兵、術士が潜んでいる可能性がある。要警戒。

 

「おお? 来やがったが……あの小僧。さてはしくじったな。役立たずが」

「お前らは……誰だ?」

「泣く子も黙るサルカズの傭兵団……なんつってな。ロドスアイランドねえ……弱そうな連中だ。これなら何も考える必要はなかったなぁ」

「……。何を企んでる」

「いや? 何やら感染者を助けてくれる組織みたいじゃねえか。俺らも助けてくれよ! ッハハハハハハ!」

 

男たちが呼応して笑った。

 

その顔が──癪に触る。

 

「ちょうど車両が一台欲しかったところだったんだよ。鴨がネギ背負って歩いてくるとはこのことだな。ついでに村までゲットできるとは……神様ってのは居るモンだな。ああ?」

 

ヒゲの生えたリーダー格の男は聞いてもないのにべらべら喋る。

 

「ああ、そういやお仲間を探してねえか? 俺たちが()()しておいたから安心しろよ。会いたいんなら会わせてやるよ」

 

仲間の一人が笑いながら聞いた。

 

「お前そりゃ、どこで会わせてやるつもりだよ?」

「そりゃ決まってる、あの世さ。ハハハハハハ!」

 

もう──……。

 

「ハンス、カルゴ。隠れている敵がいるかもしれない。探し出せ」

「隊長、こいつらは──」

「僕一人で十分だ。行け」

 

指示に従い、二手に分かれて民家へ向かっていく。

 

これで状況は一対四。四方を家に囲まれているため、家の中からの狙撃に注意。そっちはハンスとカルゴに任せる。

 

「おいおいおい。俺たちも舐められたモンだな──? おい兄ちゃん、俺ら四人だぜ? こりゃ参ったな、弱いものいじめは好きじゃねえし……。そうだ、なら俺一人で相手にしてやるよ。それでどうだ?」

「バッカお前、それじゃ弱いものいじめになっちまうだろうが! ハハハハハッ!」

「ハハハ! そりゃそうだ! 悪い悪い──。ま、なるべく苦しませて殺してやるよ! そういやお前が隊長さんか!?」

「……だったら何だ?」

「そうか! いやー、面白かったぜ! 隊長、隊長っつってさ! 最後まで誰かの名前を言い続けてたよな! えーっと何だっけ、じ、ジフ……だとか、ルイン、だとか。仲間思いで結構だな、殺し甲斐があったってもんだ! せっかくだし同じ殺し方でやってやるよ! おいてめえら、囲め!」

「お前一人でやるんじゃなかったのかよ! ビビってんのか? ギャハハッ!」

「同じ殺し方でやることにした。まあどうせ死ぬんだ、結果は一緒だろ?」

「それもそうだな。せっかくなら遺言でも残してみろよ! あとでお前の仲間に伝えといてやるからよ!」

「──す」

 

イミンは、堅苦しい性格をしていたな。

 

何に対しても生真面目で、本当、真面目を絵に書いたようなヤツで──。

 

「ああ!? なんだって!?」

「殺す。もう、黙れよ」

「おいおい、強気なにいちゃんだな……。命乞いすれば、苦しまずに殺してやってもいいぜ?」

「……なるべく苦しめて、殺す。もう、」

「……。おい。このゴミ野郎をぶっ殺すぞ」

 

最初は、それほど優秀でもなかった。平凡な、だけど努力家で。

 

「……風よ、」

 

正面の男の首を飛ばした。風の剣が、可視できるリーチの外から掻き切った。

 

「は──? おい、リゲル……? く、クソが! 一斉に掛かるぞ!」

 

イミンは、その努力を持って、みんなに認められる副隊長にまでなった。

 

あいつの槍は、その堅実さを表したかのような硬い強さだった。

 

もっと──強くなれる。そのはずだった。

 

「ぐ、あああああ、腕、俺の腕が、ああああああああッ!」

「其は数多く、」

 

なんでかな。

 

「てめえ、タダで済むと──」

「堕ちて、」

 

本来の使い方は、こうじゃなかったような気がする。

 

もっと、この風というものはこんなに生やさしいものじゃなくて、

 

「クソ、なんで、何で──触ってもいねえのに、なんで攻撃が出来るんだよ!?」

「人を呪う」

 

もっと残酷で、容赦のない、

 

「が、げぼ、かはッ──、い、息が──」

「祝福であり、」

 

──こんな日が来るって分かってれば、ロドスには来てなかったのかな。

 

「やめ、やめろ、やめてくれっ、助けて、助けてくれ、──」

「あなたを作りあげたもの、」

 

最後の一人の両腕を切り飛ばした。

 

風がアキレス腱を切断して、男は膝をつく。

 

「お、俺たちが、俺たちが悪かった! もうこんなことはしない! お前らにももう関わらないっ! だから、がっ……げ、ぎ、……」

「また、あなたが作りあげた証に、」

 

二度と、イミンに会うことは出来ないのなら──。

 

「全て、幻のような呪いを……もう、十分だ。死ね」

「あ、──」

 

首が地面に転がった。

 

……。

 

イミン。これでいいか?

 

「各員へ。前衛四人を処理した。敵部隊はまだ残っている可能性が高い。敵を見つけたら報告しろ」

『狙撃班、敵部隊を確認したっす。連中、幸いなことにあんま警戒してないみたいっすよ。気づかれてないっす。数は六、装備から判断して、先鋒っすね』

『術師班、同じく敵を確認しています。いつでも行けます』

「これより掃討戦を展開する。村中央へ追い込むよ。そこで一網打尽にする。また、この作戦中において敵の状態は生死不問(デッドオアアライブ)だ。……これ以上、誰も死ぬな。作戦開始」

 

これでいい。

 

これが復讐になってることは、とっくに自覚してる。

 

誰の命であれ、殺人は殺人だ。罪は罪。

 

でも──。

 

「人の血を流すものは、人によって血を流す……か。なら、いつかは僕も──」

「隊長、民家に敵は確認できませんでした」

「ああ、了解。作戦通り、この四方の道で挟み撃ちにするよ。それでお終いだ」

「……了解してます。隊長、イミンのやつは……いえ。後にしましょう」

 

村の左右から戦闘音が響く。

 

「二人とも、狙撃班の援護に向かえ」

「了解。隊長は」

「僕は術師の方に行く」

 

頭がかつてないほど冷えて、視界がクリアだ。

 

雲が空に掛かり、気温が急激に低下していく──。

 

雨が降るだろう。

 

追い詰められた術師たちがこちらへ逃げてくる。

 

僕はそいつらの首を風でねじ切った。

 

追撃に走ってくるイーナを見つけた。

 

「隊長、それ──」

「……ああ。うん」

 

その表情が、あまりにも酷かったから、僕は虚しく笑った。顔だけで笑った。

 

「……本当は、こういう使い方が一番いいんだ。楽だし──、簡単に殺せる」

「隊長、もういいです。いいです……ッ! もう大丈夫ですから、もういいですからぁッ!」

「まだ作戦は終わってない──……。まだ、気を抜くわけには──」

「大丈夫です、大丈夫ですから──あ」

 

口で気を抜いてないなどと言いながら、気を抜いていた。

 

イーナの心臓を、一本の矢が貫いた。

 

背後からこっちに向かって、一本の矢が、貫いて────。

 

背後に一人、迷彩狙撃兵が隠れていた。笑った表情が──、

 

すぐに近くにいたアイビスが、怒りを抑えきれずに叫んで狙撃兵を撃ち抜いた。叫び声が風に紛れてよく響いていた。それが聞こえていた。

 

──現実を受け止めきれない。

 

こんな、こんな……。

 

一切の前振りもなく、こんな突然……。

 

僕はその日が来るかもしれないって覚悟したことはあった。戦いの中に部隊長として生きるんなら、その日が来るかもしれないって──でも。

 

こんな気持ちになるぐらいなら──、こんな、こんな──!

 

また、僕は失うのか?

 

イーナが苦し紛れに微笑んだ──。

体を預けてきて、僕は呆然としながら受け止めて、

 

「あはは……。嫌だなあ、まさか、私がドジるなんて……。まだ居た、なんて」

「僕は、お前を失うのか……? イミンに続いて、お前まで──」

 

ルインを呼んで、治療を──させて、どうにかなるのか?

 

心臓を貫かれて、……。

 

「隊長。私の最後のお願いです」

 

雨が降り始めた。

 

すぐに暴風を伴って、イーナの体温を奪って行く雨粒が、

 

冷たい雨の中で、頬に暖かい感触がした。

 

「隊長。私、あなたのことが好きです。……あはは、やっと言えた──……」

「なん、で──」

「本当は唇でチューしたかったんですけど、それはブレイズさんに譲ります。あ、返事は別にいりません。ここで私が死ねば、私は永遠に隊長の部下なんで。ちょっとズルいですけどね、えへへ」

「お前も……僕を、置いてくつもりなのか」

「……嘘ですよ。でも隊長、あなたは私の人生の中で、ただ一つ輝く光でした。あなたがいてくれたら、きっとこの世界が変わると今でも信じてます」

「僕に……やれっていうつもりなのか……? 僕は、僕はお前らを失ってまで世界を変えたいわけじゃ……ッ!」

「いいえ、隊長なら出来ます。感染者を取り巻く困難な状況を変えられます。私の知ってる隊長は、そんな人です。この世界を救ってください」

「違う、違う僕はそんなすごい人間じゃないッ! 僕は──ただの、」

「後のことは、お願いします。そうだ、みんなに──先に行ってるって、伝えて、おいて──」

 

雨が降っていた。

 

亡骸をアイビスに預けて、僕は背を向けて歩く。

 

「隊長、どこに」

「後の奴らを片付ける」

「……一つだけ、聞かせてください。私たちは、間違ってましたか……ッ!?」

「……。分からない」

「私たちのやっていることに、間違いがなかったのなら……! イミンとイーナの死が正しいってことじゃないですかッ!? そんなの、そんなの……」

 

アイビスの叫びが嵐の中で聞こえた。その呟きさえ──。

 

「あんまりじゃないですか……」

 

分かってる。

 

分かってるよ。

 

分かってるけどさ。

 

残りの傭兵は、すぐに片付いた。

 

……イミンの死体は、村の一角で見つかった。

 

「イミン……ッ! くそ、くそ、くそくそくそくそくそ! なんで! なんでっすか! なんでイミンとイーナがこんな目に遭わなきゃいけなかったんすかッ!? なんで、なんで……」

「……二人をロドスに連れて帰る。撤収するよ、風邪を引く」

「隊長ッ! でも──ッ!」

 

ジフの涙が雨に紛れて見えなくなった。

 

「僕たちがここに残って出来ることはもうない。ロドスへ帰るよ。帰るんだ」

「ちくしょう……うあああああああああああああッ!」

 

叫び散らすジフを放って、レイがイミンの亡骸を抱き上げた。

 

「くそ、ちくしょう、くそ、くそ! イーナ、イミン、なんで……オレ達を、置いていくなよ……寂しいじゃないっすか……」

 

僕も、イーナを抱き抱えて、車両へ──。

 

車両へ二人を乗せる。

 

雨が滴った。

 

ジフを除いて、みんなもう車両の後ろに乗り込んでいた。

 

あとは──。

 

「グレースロート。君も乗れ。帰るよ」

「分かった……」

 

 

 

 

帰りの嵐の中を運転していく。

 

大人数を運搬するための車両だ、前の座席と、後ろの大人数用のスペースは区切られていて、会話用のハッチを開けないと前と後ろでは会話ができない。

 

沈黙と、フロントガラスを叩く雨の音。

 

「私ね」

 

グレースロートが徐に話し出した。

 

「昨日、村の人と話をした」

 

僕は黙ってそれを聞いていた。

 

「なんでこの村に住んでるのか聞いたら、行く宛がなかったからだって言ってた。いろんな場所を追いやられて、ロドスに拾われて、あの村を用意されたんだって。あの村は、少なくとも感染者だっていう理由で差別されたり、食べ物を食べられないってことはない。だから、あの場所にたどり着けてよかったって。ブラスト、あの人たちはどうなるのかな」

「……山へ避難したってギノは言ってたけど、嘘だろうね。十中八九、あの傭兵達とグルだ。傭兵に襲われたっていう嘘をつきたいなら、もっとちゃんと家を荒らしたりする。村の状態が綺麗すぎたし……山へなんか避難できるはずがない。山は脆弱化カルカロイの産出地だ、危険すぎる。村の住人がそれを分かってないはずがない。おそらく、傭兵団が用意した場所へ一時的に逃れているんだろう。あわよくば、僕らを山のほうに誘導したかったのかもね」

 

結局その辺りが妥当なのだろう。

 

あの村全体が、ロドスを裏切った。

 

その事実が──。

 

「このままじゃいられない。一度裏切れば、もう二度目なんかない。ケルシー先生はそこまで甘くない……。最悪、あの村の住人を全員消したって構わない。どうせ感染者だ、いなくなっても誰も困らないし、はは……感謝までされちゃうかもね」

「ブラスト。それは、ブラストが絶対言っちゃダメな言葉。取り消して」

「……そうだね。僕がこんなこと言っちゃいけないよね。僕はエリートオペレーターで、感染者を救うのが仕事なんだから」

「……なんで、あの人たちはロドスを切って、傭兵団に付いたの」

「推論はいくらでも立てられるよ。まず、そもそも傭兵団が脅威だったから。あの傭兵団は随分粗暴そうだったから、彼らの要求を断れなかったのかもしれない」

「でも、ロドスに連絡する手段はあった。違う?」

「……残念ながら、違わない。彼らはそれを選ばなかった。感染者の安住の地と言っても、実態はそれほどよくなかったのも事実だ。娯楽が少ないし、都市の食べ物とかも手に入らない。かなり原始的な生活だったと思う。その上、カルカロイの採取ノルマがあったからね。彼らにとっては監獄だった……のかも知れない」

「でもそれを選んだのは彼ら自身じゃないの?」

「そう。確かに彼らは、彼ら自身が望んだんだ。でも──。思っていたものとは違ったのかもね。傭兵団につけば、感染者になる前のような豊かな暮らしができると勘違いしても不思議じゃない……のかも知れない」

 

全て、恩を仇で返された形になる。

 

彼らに同情の余地は、推論の上では存在した。

 

「彼らに罪はあると思う?」

「……その質問には答えられない。君に悪い影響を与えるかも知れない」

「私が子供だから、答えないつもりでいるつもり? 聞かせて、ブラストの答え。私は知りたい」

「そう。……罪があるかどうか。もしイミンとイーナが死んでなかったら、僕は罪はないと答えていた。傭兵団が全部悪いって考えて、許していたかも知れない」

「でも、それは仮定の話だよね」

「そうさ。仮定の話だよ。……全部、もう──終わったことだ」

 

これ以上は答えるつもりはなかった。

 

「グレースロート。殺したのはギノだけか?」

「うん」

「気分はどう?」

「不思議と落ち着いてる。実感がないっていうか」

「……僕はね、君にあんなことをさせたくなかった。ごめん。君に一生消えない罪を背負わせた」

「ブラストがそんなこと言わないで。私があいつを殺せずに、ブラストが死んでいたら、私はずっと後悔してたと思う。あれしか方法がなかったから、ブラストが気に病むことじゃない」

 

これは一生消えない僕の罪だ。

 

この子にこんな言葉を言わせてしまった。こんな子供に──。

 

「感染者が理解できなかった。なんであんなことするのかなって。でも、なんとなく分かった」

 

その答えは違う。違うんだよグレースロート。

 

「感染者とか、感染者じゃないとか、そういうのじゃなくて──人間は、ああいう生き物なんだ。平気な顔をして人を騙せるし、殺せる。きっと、感染者はそういう風になりやすいってだけで──。ブラスト、私はこれからどうすればいい?」

「グレースロート。君は、君の望むままに生きろ。その考えは危険だ」

「ブラストの言う通りに私は生きる。それが私の望みだから」

「ダメだ。それはダメなんだよ……。グレースロート、考えることを止めるな。考え続けるんだ」

「……怖い。考えるのが──。だってもう、私の手は汚れてる」

 

そうだ。これは僕の罪だ。

 

「耳を塞いじゃいけないんだよ。僕たちは……生きなきゃいけないんだから」

「生きてて何かいいことがあるの。また裏切られて、身近な人が死ぬかもしれないでしょ」

「そうだ。でも──僕は託されたんだよ。僕は……イーナに託されたんだ。僕たちは生きなきゃいけない。彼女達を背負って生きなきゃいけない」

「どうして?」

「どうしてもさ。僕たちは……生きなければ」

 

生きなければならない。

 

どんなことがあっても、生きなきゃいけない。

 

生きろ。考えることをやめてはいけない。

 

「なら、私はブラストと一緒がいい」

「……なら、そうしよう。君の望みならね。でも僕らは……明日も生きていかなきゃいけない」

 

グレースロートが運転をする僕に寄り掛かった。

 

「あんたは……いなくならないで」

「僕は死なないさ。僕はあいつらの分まで生きていかないといけないから」

「そう。ならいいけど」

 

──なんて。

 

笑えるよね、イーナ。

 

どの口で、僕は死なないだって? あいつらの分まで?

 

ふざけるな。

 

お前はその罪を背負って生きるべきだ。お前が殺したも同然だ。全てお前の責任だ。

 

お前が、お前が──……。

 

僕がいなければ、あいつらは生きてたのかな。

 

考えることはやめられなかった。

 

雨は止まなかった。

 




・グレースロート
依 存 し た
正直ここまで過酷になるとは思ってませんでした

・イーナ
フラグを回収したのち、Blastに一つ呪いを残した

・サルカズ傭兵団
死亡確認!
絵に描いたような悪役になりました
安心感があります

・Blast
精神ゴリゴリ削られるマン
つおい。チートやチート!
詠唱は私の趣味です
特に意味はないと思います

・行動隊B2
仲間ゴリゴリ削られるメンズ
グレースロート含めて9人→7人へ

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