猫と風   作:にゃんこぱん

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なんとか書けたんで投稿します
見切り列車です
先に言っておきます
ヒ ロ イ ン の 出 番 が ま る で あ り ま せ ん
ごめんね








僕はウルサスで生まれた。

感染者になったのは、家業がきっかけだったと思う。

製造業だったんだ。小さな自営業の、小さな町工場とも付かない場所。とても真っ当な場所ではなかった。だがそれほど悪くもなかった。

源石を扱っていたのは、需要があったからだ。鉱石病のリスクを冒すことで、需要というリターンを得る。

そしてリスクを被ったのは両親ではなく僕だった。

あの時両親に抱いた感情は、とてもよく覚えている。

──。

もう、何十年も前の話。


1−3 白昼夢
夢に霞/花に嵐-1


 

 

ロドスの最下層には、石碑がある。

 

ぼんやりと、それを眺めていた。

 

何十と連なった名前の、一番新しいところ。

 

Logos。

Whitesmith。

 

それだけだ。

 

僕は、あの人たちの本名も知らない。

 

Logosさんは切断術に長けた前衛だった。ブレイズのチェーンソーはLogosさんからのアイデアだった。Logosさんから教わった切断術がブレイズの大きな強さとなった。

 

WhiteSmithさんは神経質なアーツ術師だった。人嫌いな皮肉屋だった。だが、人を嫌うのと同じくらい人を助けたいと思っていた、奇妙な人だった。

 

僕は、彼らに一体どれだけのことを教わって、どれだけ彼らに感謝を伝えられたのだろうか?

 

Logosさんとは何度模擬戦に付き合ってもらったかどうか分からないほど戦った。Aceさんの部隊の、生意気な新入りに付き合って何回も僕をボコボコにしてくれた。その隣でブレイズも伸されていた。

 

Whitesmithさんにもお世話になった。僕は武器開発系がさっぱりで、何一つ分かってはいなかった。だから全部教えてもらった。頭のいい人だった。よく僕の頭の悪さを皮肉られていたのだが、最後は僕の作り上げたアーツユニットを褒めてくれた。

 

僕は、あの人たちの本名も知らない。

 

僕たちは自らで決めたコードネームを名乗る。もちろんコードネームでなく、本名でもいい。だがこれは、ロドスで戦うための決意表明の様なものだ。

 

そして、本名ではなくコードネームで呼び合う。仲間として。

 

Blastもコードネームだ。風のようにしなやかで、そしてこの世界に常に吹き続けている。そんな人になりたい。誰かを助けたい。そんな思いだったような気がする。

 

そしてお前(Blast)は、その名にふさわしいオペレーターになれたか?

 

お前は彼らの命にふさわしいのか?

 

今も考えている。

 

考え続けている。

 

後ろの扉が開いた。

 

足音が近づいてくる。

 

「Blastさん」

「……アーミヤ。どうしたの、こんな場所まで来て」

「こんな場所、ではありませんよ」

「……そうだったね、悪い。失言だった」

 

遺体さえ持って帰れないことがある。

 

遺体は親族に引き渡すことが大半だから、ロドスに彼らが生きていた証はこの石碑に刻まれたコードネームしか存在しない。後ドックタグくらいか。

 

「本当に、悲しいです。いつも思います。私たちは彼らの死に報いることができるのかって」

「……そうだね。僕も思うよ。そして、僕らは前に進むしかないってことをいつも思い知る」

「はい。その通りです。私たちはいつまでも、歩みを止めるわけにはいきません」

「うん。それで、僕に何か用かな。探してたんでしょ?」

「はい。ここだろうってブレイズさんがおっしゃっていました。正解でしたね」

「正式にあの任務が?」

「……はい。出発は明日です」

「──あの二人が死んだ原因の調査と、成し遂げられなかった難民救助任務。出撃まで一ヶ月もかかるとは思わなかったけど」

「情報収集なしでの任務は危険すぎます。Blastさんがすぐにでも出発したかったのは分かります。でも……」

「分かってるさ。十分準備はした」

 

LogosさんとWhitesmithさんは紛争地域での、民間人の救助任務に当たっていた。そして、紛争に巻き込まれて死んだ。

 

だが、あの二人と、あの二人が率いる部隊がそんな簡単に死ぬはずがない。エリートオペレーターはそんな軽い存在じゃないんだ。

 

何かがあるはずだ。

 

「今更いうのもなんだけど……こういうのはScoutさんにでも任せた方が良かったかもしれないよ」

「いいえ。Blastさん。自分ではあまり自覚してないと思いますが、Blastさんの評価は非常に素晴らしいものなんですよ。単独の戦闘力、及び率いる行動隊B2はロドスでもトップレベルの部隊に成長しました。その原因がなんであれ、です」

「そう。あんまり……嬉しくないね」

「そう、ですか。昔のBlastさんなら大喜びでもしていたと思います」

「そうだね。僕もそう思う。そうやってブレイズにでもマウントを取りに行ってたかな。そしたらまた喧嘩だ」

 

ありありと想像できる。廊下でも訓練室でもお構いなしだ。

 

ブレイズとの喧嘩は武器なし素手のみ、相手を地面に叩きつければ勝ちだ。

 

下らない想像を掻き消すように、アーミヤの返事が冷たい空間に反響した。

 

「はい」

「またAceさんが仲裁しにくるだろうね。Scoutさんは野次馬根性があるからニヤニヤしながら見てるかな。Logosさんはきっと通りかかって、呆れていると思う。Whitesmithさんは普段から部屋に閉じこもっているから、そもそも見ないと思うけど──でも」

「もう、LogosさんとWhitesmithさんは居ません」

「ああ、居ない。任務、了解した。予定通り行動隊B2で出撃する」

「はい。了解しました。……Blastさん。どうか、死なないでください」

「安心しなよ。僕はまだ死なない。そんなことしたらブレイズに噛みつかれるからね」

「ふふ、そうですね。では、幸運を祈っています」

「ああ、任せてくれ」

 

そこで見極めることにしよう。

 

僕が彼らの死に報いることができるかどうか。

 

そして、この世界が彼らの一生に報いるのかどうかを。

 

 

 

 

 

夢に霞 /花に嵐

 

 

 

 

 

行動隊B2の欠員は補充しなかった。

 

僕たち全員の総意だ。

 

車両が部隊を乗せて走る。

 

軍用のゴツい車両の後ろにて、硬い地面の揺れを無視しながら口を開いた。

 

「それじゃ、確認から入るよ。僕らが向かってるのはエクソリア共和国。赤道に近くて湿度が高い国だ。ロドスと違って気温がすごい高いから各員気をつけるように。今回の任務の本筋は難民救助だ。エクソリア共和国で紛争が起きているのはみんな知っている通りだと思う」

 

エクソリア共和国はまだ発展してない緑の国だ。ジャングルも確認でき、資源が豊富。そして内紛状態にあり、緊張が高まっている。

隣国との戦争は秒読みとされており、かなり危機的な状況にあることは間違いない。そして内紛に金と労力と命を費やした結果国内は非常に貧しく、首都であっても犯罪が横行している。

 

「僕らが行うのは出来る限りの人命救助だ。紛争に巻き込まれて手足を失った人たちのサポートや物資の配給が主な任務だよ。そして最も重要な点だけど、この国の内紛そのものには関わるな」

「つっても隊長。オレらだって襲われる可能性があるんじゃないっすか?」

「そうだね。もしそうなったとしたら遠慮なく反撃すればいいけど──ロドスは戦争そのものに直接関与することはできない。理由はわかるね」

「はい。エクソリアとの直接的な関係がないロドスは、内紛にも関わる理由がないからですよね」

「その通りだ。まあはっきり言うと、僕らが内紛に巻き込まれないためであり、内紛をややこしくしないためだ。人命救助はしても、戦争をしにきた訳じゃない。それを忘れるなよ」

 

危険な状況にもかかわらずロドスが国境を跨ぐことを許可されているのは、あくまで人命救助が目的だからだ。

 

ロドスは国際的な平和基金からの援助を得てこの救助活動を行えている。危険な任務を、援助を受け取ることでロドスが代行しているとも表現できる。

 

つまりこれは、ロドスだけの問題ではない。より大きな世界平和という名目が絡んでいるのだ。

 

……どうでもいいな、そんな上っ面のことは。

 

「僕たちがやるのは助け出せる命を可能な限り助け出すこと。これが第一目標。そして第二目標は……分かってるね」

「はい。行動隊C1、B5およびその隊長であるLogosさん、Whitesmithさんの死亡の原因を調べることですよね。でも、紛争に巻き込まれただけなんじゃ」

「確かに、そうだろうね。だとしたら相手は北か南か……でも、いずれにしても相当悪い状況に追い込まれないでもしない限り、あの二人が死ぬはずない。エリートオペレーターはそう簡単に死ぬはずがないんだよ。何か、あるはずだ。絶対に」

「隊長、でもオレらは紛争に関わっちゃダメっすよ。平和基金からの援助が出てんすから、その金で戦争したら相当マズいことになるっすよ」

「分かってるさ。別に復讐なんて考えちゃいないよ。ただ……真実が知りたい。それだけさ」

 

本当に巻き込まれただけか?

 

そしてそうであったのなら──僕は何を思うのだろうか。

 

僕たちは、まだ人を助け続けるのか──いや。今考えても仕方がないことだ。

 

「とにかく、もうすぐエクソリア共和国の国境だ。そこから先はどこにいても気を抜けない状況になるかもしれない。ロドスが救助活動にあたっていることは通達済みだ。僕らを攻撃することは国際法に違反する……けど。法は矢を放つことを禁止するけど、放たれた矢まで防いでくれるわけじゃない。お前らの命が最優先だ。分かってるとは思うけど」

「で、結局攻撃を受けた時どれくらい反撃していいんすか?」

「各自に任せる。正当防衛が成立してれば、言い訳の余地も残るからね。ただ、やられる前にやるってのができないだけだ」

「了解っす」

 

僕らはエクソリア共和国へ入国した。

 

暑い国だ。湿度が高いし、太陽の光が強い。

 

植物の高さも全然違う。茶色の土と、手の入ってない生い茂った緑。ジャングルも見える。川の色、広さ、流れまで、全て異なる。

 

「……暑いですね」

「ああ。紛争地域まで一時間かかる予定だ」

 

暑い。じめっとした汗が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

紛争地域は酷いものだった。

 

すぐさま現地の病院を訪ね、物資を届ける。

 

僕らは一ヶ月間医療訓練を積んだ。

 

ロドス医療部から人員を出す案もあったが、却下された。危険すぎるためだ。医療部はロドスの最重要部、戦死する可能性の高いこの紛争状態にある国に出撃するには危険すぎる。

 

苦肉の策だった。

 

何もしないという選択肢は、ロドスにもあった。すでに行動隊の二部隊を失っていたからだ。だが──。

 

それでは、死んでいった仲間に申し訳が経たない。あの人たちの死に、一体何の意味があったのか分からない。

この任務は、断られることを想定していたそうだ。平和基金からの要望に対する最低限の顔立てだった。

 

だが、僕が希望した。行動隊B2、こいつらも賛同してくれた。

 

正直、一人で行くべきだと思った。僕一人で向かうのが最前で、最もリスクの低い行為だ。だがそれじゃ救助の意味もクソもない。一人で何ができる。

 

「隊長、まだうだうだ迷ってんすか?」

「お前らを巻き込みたくなかった。これは僕のわがままかもしれない」

「いいっす。オレら、死ぬときは隊長と一緒っすよ」

「……ジフ。すまない──でも、死ぬ覚悟なんて決めるなよ。僕らは死なない。さ、行くよ。やるべきことは山積みだ」

 

病院はそれほど大きいものではない──その部分に金がかかってない。貧しい人々から吸い上げた税金は、病院や衛生設備に使われることはないらしい。

 

片足を失った少年が、杖をつきながら隣を歩いていた──リハビリ中だろうか。

 

彼は怪訝な目で僕らを見たが、何も言葉は発さないまま廊下の角に消えていく。

 

──市民への被害。

 

戦場が市街地になっているということ。

 

ジフを連れて院長を訪ねる。暑い国の、薄暗い廊下は不思議な肌触りがあった。

 

院長の部屋も、本来はただの部屋だったのだろうが──人が寝ている。いや、病室になっていると表現すべきか。病室が足りないために、本来病室でもない場所を患者への場所にしている。

 

「すみません、ロドスの者ですが、院長はいますか?」

「──はい、私です」

 

患者を診ていた一人の男性が立ち上がって僕らに振り返る。

 

「あなたたちがロドスの……連絡は受けています。今回の支援、本当に感謝しています」

「いえ──。物資は今、僕の部隊が運び込んでいます。これから僕らロドスはあなたたちの支援に入ります。僕らは医療が専門ではありませんが……できることがあるはずです」

「……感謝します。本当に……ですが、この地域は危険すぎます。突発的な戦闘が展開されることすらあります。巻き込まれて負傷、あるいは死亡する可能性も……」

「ご心配なく。僕らはそうヤワではありません。それより、この地域に関しての詳しい情報をいただけますか?」

「はい、分かりました──」

 

この戦争は、古くから続く国内の分断に端を発している。

 

エクソリアは歴史上、ウルサスの支配を受けていた時期があった。特にその影響はこのエクソリア北部に関して根強い。南部はウルサスに対して抵抗をし続けて、やがてエクソリアは独立したが──。

 

支配されていた百年ほどあまりの間に、エクソリアは完全に両断されてしまったという訳だ。

 

ウルサスに抵抗していたと言っても、実態的には北部の兵士が南部に対して支配を強いる──国内同士の対立だったのが実情だ。ウルサスは強大だ。まともに立ち向かって勝てる相手ではない。エクソリアは未だ発展途上の国だ。

 

結局、独立という自由の果てに残ったのは国内同士の対立、親の代から受け継がれる憎しみだけ。

 

もともと一つだったという理由だけで、今もなお争い続けている。その理由も知らないまま。

 

エクソリア独立から十年。

 

戦禍は広がるばかりだ。

 

「……しかし、こんなことが日常的に起きているんですか、ここでは」

 

院長はシワだらけの顔を伏せて答えた。

 

「日常的とは言いません。ですが……最近はテロや突然の強襲も多い。北部労働党はウルサスからの支援を受けたのではないか、というのがもっぱらの噂です。本格的に南部を……このアルガンの街を陥すつもりなのかもしれない」

「待ってください、ウルサスがどうして今更。独立はもう十年も前の話なんですよ。エクソリアの独立は世界的に認められています。また植民地化なんて、できるはずが」

「ない、などと……言い切れません。特に北部は未だウルサスの影響が根強い。何せ、北部では未だにウルサス語を話す人々がいます。エクソリアは共通語が公用語ですが……文化に至るまでウルサスが入り込んでいるんです。車や医療器具などもそうです……経済までウルサスに寄りかかってなんとかなっているのが現状です。すでに、実質的な支配下にある事実は、独立しても変わっていません」

 

窓の外はまだ日が照っている。

 

……冬が支配し続けるウルサスのイメージとは全く違う。

 

エクソリアに冬なんてこない。来たとしても、雪は決して降らないだろう。エクソリアは一年を通して暖かい国だ。ウルサスとは違う……。

 

だが。

 

「……この紛争はエクソリア統一を目的としたものなんですよね」

「ええ……。百年も分断されていたエクソリア統一は、この国全員が願っていることです。誰も戦争なんて望んではいません」

「ですが、現実には──」

 

ジフが不意に口を開いた。

 

「あの、院長さん。一ヶ月くらい前にもロドスの部隊が来てたはずっす。何か知ってないっすか?」

「……場所を変えましょう。外に私がいつも使っている喫茶店があります。エクソリアのコーヒーは好みですか?」

「いえ……コーヒーはインスタントしか」

「でしたら是非とも。こちらです」

 

病院を出る。

 

「ジフ、お前は物資の方に行け。話は僕だけでも聞ける」

「……護衛は要らないっすか?」

「まだ日も落ちてないだろ。問題ないさ」

「了解っす」

 

エクソリアの街は雑多な活気に溢れている。

 

街の人々は自転車を主な交通手段としているらしい。あるいはバスか……だが、片手を失くした人や昼間から酔っ払って路地に寝っ転がっている人、あるいは……ドラッグか。

 

人々はとても若い。若者が多い。

 

じめっとした空気と、太陽に照らされる木造りの建物、それに混ざった白い建物は遠い異国の情緒を生み出していて、なんだか現実味が薄いような気もした。

 

院長についていく。白いペンキが特徴的な、ごちゃっとした店だった。

 

「──それで、改めて聞かせてください。一ヶ月前に来ていたはずのロドスの部隊について、知っていることがあるんですね」

「ええ、知っています……。彼らも、勇気ある人々でした」

「僕が聞きたいのは一つです。彼らは……単純にこの紛争に巻き込まれただけなのか、それとも……誰かに殺されたのか。僕は誰かが意図してロドスを襲ったのではないかと考えています」

「どうして誰かに殺された、と?」

「彼ら──LogosさんもWhitesmithさんも、ただ巻き込まれただけで死ぬ程度のヤワな人たちじゃありません。僕の先輩で、仲間でした。ロドスに届いたのは彼らが死んだという情報のみです。それしか届かなかった。彼らがただで死ぬはずがない」

「……そうでしたか。あなたの名前を聞いても?」

「Blastです。隊長を務めています」

「そうですか、Blastさん……私はグエンと言います。アルガン市立病院の院長をしています。私はおそらく、あなたの知りたいことを知っています……彼らの死には、少し複雑な背景があるのです。全てお話ししましょう」

 

グエンさんはシワを寄せてコーヒーを含んだ。香りがこっちまで伝わる。

 

確かエクソリアはコーヒー豆が採れるんだったか。興味はなかったが──地元の人に愛されているのだろうか。

 

ふと、そんなことを思った。

 

「この国が南部と北部に分かれて戦争をしていることはご存知でしょう。エクソリア統一戦争──我々は統一戦争と呼んでいますが……やっていることは、ただの殺し合いに過ぎません」

 

黙って続きを促した。

 

グエンさんはせっかちな僕を眺めて少し苦笑いしたようにも思う。気のせいかも。

 

ただ、僕は真実が知りたいだけだ。今はそれ以外どうでもいい。

 

「テロも絶えません。特に、駅や兵器の工場施設は頻繁にテロの対象にされます。何十名の人々が巻き込まれて死んだことかわかりません。戦争の終わりが見えない。北部の使っている武器は、ウルサスで作られたものなんです。私たち南部に現代風の優れた武器を作る技術はありませんし、資源もそう豊富でもない。徐々に擦り潰されていっているのが、肌でわかります」

 

やはりウルサスが絡んでいる。北部はウルサスの傀儡ということか?

 

「そして南部の首都、ここアルガンの市長が変わりました。一年ほど前のことです。それから戦況は急激に悪化しました。物価も値上がりして、南部はより厳しい状況に立たされるようになりました」

「市長が関係あるってことですか?」

「……公にはされていませんが、実は。結論から申し上げて、市長は北部と通じています」

「それはつまり……──ッ!? 待ってください、そんな訳が」

「ない、と言えない状況もあるということです。特に……この国では。すでに私たち南部には、敗北の二文字が浮き上がりつつあります。じわじわと終わりつつあるこの街から奪い取れるだけ奪い取ろうとする輩は後を断ちません。市長は、その一角です」

「具体的には──」

「金です。つまり、北部の軍隊を南部に手引きする対価です。このアルゴンに北部、ウルサスの支援を受けた強襲部隊が潜んでいる可能性が非常に高い」

 

絶句した。

 

Logosさんたちは──。

 

「北部の強みは、徹底した情報戦にあります。遮断し、自らの正体を知らせず奇襲する。神出鬼没の彼らに、南部は何度も敗北を重ねています──」

「……院長とは言え、なぜあなたがそこまでの情報を得ているんですか」

「あなたを信用して話します。私──いえ、()()()とてこのまま北部に吸収されるわけには行きません。再びウルサスの支配下に置かれれば、一体どんな生活が待っているか想像もしたくない。私たちはゲリラです」

「そうか、だから──」

「一ヶ月前支援に来てくださったロドスの皆さんは、暗殺されました」

 

グエンさんはそう言い放った。

 

その目的はなんだ? なぜ彼らは殺されたんだ? 市長にそこまでの力があるのか?

 

「つまりは、私たちゲリラを支援していると判断されたのです。罠に釣り出され、街中で戦闘が起きました。彼らの最期は、アルゴンの市民を庇って死んだ、というものだと報告されています」

「────」

「私は彼らに深い感謝と、尊敬を抱きます。Blastさん、我々とともに戦っていただけませんか」

「少し……時間をください」

 

正直言って、混乱している。

 

予想してないわけではなかった。

 

……ロドスは傭兵じゃない。僕たちは人命救助の任務でここに来た。戦いに来たわけじゃない。

 

「私たちに、この街に残された時間はそう多くありません。どうか、人々のために」

「今日の……夕方までには回答します。僕は、ここで失礼させてもらいます」

 

席を立った。

 

結局、コーヒーに口をつけないまま。

 

 




・Blast
特に書くことがない

・行動予備隊B2
オリキャラの集団

・グエンさん
現地ゲリラの老人。ゲリラでも重要な地位にある人

・エクソリア
ベトナムがモデルです。ボロが出るでしょうが許して
移動都市ではありません。これについては後々……


あと全編シリアスの塊です。
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