猫と風   作:にゃんこぱん

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貧困という名の猛毒 -3

 ブリーズが冷や冷やしながらエールとジェイムズを見守っている同時刻、ジュエンの孤児院にメリィは居た。

 

「メリィ、来てくれたの」

 

「ええ。バオリアに戻ったら、やらなければならないことが大量にありますの。ですから、しばらく会えなくなると思って……」

 

「……そうね。そういえば、あの二人は?」

 

 指しているのはエールとスカベンジャーのことだ。

 

「まだやることがあるそうですわ。1時間ほど後に迎えに来る予定ですの」

 

「……そう」

 

「浮かない顔ですわね。何かありましたの?」

 

 ジュエンらしくないような、どこか落ち着かない表情だった。

 

「子供の一人が……今朝から調子が悪いみたいで。咳が止まらなくて……こんなに暑いのに、寒くて凍えているの」

 

「……病気ですの?」

 

「ええ。前々から体は酷い状態が続いていたけれど……軍病院はもうパンク状態が続いていて治療は受けられないし、まともな物資も薬も手に入らない。私があの子にできることは、何もない」

 

 ジュエンの表情は暗い。

 

「ねえ、メリィ……少し歩かない?」

 

 

 

 

 

 瓦礫の混ざった砂の道、人通りは無いに等しい。数週間前は、食料を求めて彷徨う人々がいたのだが、それも段々と減っていったし、残りの人々は軍病院が仮設されている中央部へと向かったのだろう。

 

「……どちらへ向かっていますの?」

 

「さっき話した子供のところ。今は……少し遠い場所で寝ているから」

 

「遠い場所? どうしてわざわざ……」

 

 前を歩くジュエンにメリィは聞いた。ジュエンはそれには答えず、空を見上げて言う。

 

「メリィ。鉱石病(オリパシー)という病が一体何なのか、私たちは知らなかった。今もそれが何なのか分からないまま……ただ、()()()()にあるのを眺めている──」

 

「……ジュエン?」

 

「メリィ。あなたは感染者についてどう考えている?」

 

「……正直なところ、私の認識はまだ甘いようですわね。バオリアに戻り次第、必要な知識を収集するつもりではあるのですけれど……」

 

「そう。ええ……そうね。ヴィクトリアでは、結局その存在も聞かなかった……というより、皆関心がなかったし、南部エクソリアにそんな病気は存在していなかったもの」

 

 緩い坂を登る。ホークンのすぐ側には山岳地帯が広がっていて、道が繋がっていた。

 

 ジュエンはただ歩いていく。メリィも黙って着いていく。

 

「……小屋?」

 

「ええ。こっちよ、メリィ」

 

 緑の色が濃くなり始めた坂の上に、小さな掘立て小屋がある。偶然戦火に巻き込まれずに済んだ貴重な建物の一つだ。元の持ち主の方はジュエンも知らない。おそらくもう居ない。

 

「あの子の望みで……なるべく高くて、綺麗な場所がいいって。私が運んできた」

 

 扉を開ける。藁で組んだ伝統的な(むしろ)、壁に掛かった草刈り鎌、少し冷えた空気の感触は、ジュエンにとっては慣れ親しんだ農村の家の作りだ。きっと元の持ち主は山仕事をしていたに違いない。

 

 薄く引かれた布の上に、10代の少年が目を閉じて横たわっていた。

 

「ジュエン。その子、もしかして……」

 

「……えぇ。もう、死んでるわ」

 

 浅黒い肌はエクソリア人の特徴。黒髪と同じ色をした源石(オリジニウム)結晶が体の至る所に飛び出ている。

 

「車の音を聞いて、あなたが来たと思って……ほんの十分も目を離していなかった。だけど……見られたくなかったのね。死ぬ瞬間を」

 

 祈るように目を閉じたジュエンを、メリィは何も言えずに見ていた。

 

「……命に相応しい結末が訪れる。それがこの大地の慈悲なのだと、経書には記されている。戦争と病に苦しみ、若くして命を失ったこの子は──こうして死ぬのが相応しいと、この大地が判断したということ。この子の魂は大いなる川の向こうへ渡り、在るべき場所へと帰る」

 

 ジュエンが呟くことは、エクソリアの信仰──大地に対する信仰の中で紡がれてきた言葉。全てはこの無慈悲な大地が決めることで、人々はそれを受け入れる他にない。

 

 この諦観に染まった信仰はまさにエクソリアに相応しい。自分の国のことを自分たちで決めることが出来たことなどただの一度もない、弱者のための信仰。

 

「この子供の魂は救済されますわ。それが死後であることに、納得はいかないかもしれませんが……」

 

「そうね。死んでから救われたって遅いでしょう。生きている内に救われたいと願うのが当然。だけどそうはならなかった。ならなかったのよ、メリィ」

 

 ──ガラスにヒビが入るような、小さな音が響く。それと共に、少年の頬から生えていた源石(オリジニウム)結晶が小さく割れた。

 

「……この音は?」

 

「感染者が死んだ後、その身体がどうなるか知っている?」

 

「いえ……まさか、これが?」

 

 小さな音は加速する。ぴき、ぴき……と、それはまるで生き物が動く音にも似ていた。体表に現れた源石結晶は、割れるたびに少しずつその面積を増やしていった。

 

 湖を凍らせるように、表面を覆い始めているのだと、メリィにも分かった。結晶の成長は加速度的だ。一瞬のうちに黒い部分は増えては割れて、まるで振動しているようですらあり──

 

「……なんですの? これは……一体、何が……」

 

 メリィの声色には怯えが混ざっている。恐怖とは未知のものだ。

 

 生物が死後、このような変化を起こすところなど見たことがない。いや、そもそもメリィは死体を見ることすら初めてだ。意思を持っているかのような振動音が怖かった。気持ち悪かった。

 

「目を逸らさないで。メリィ。エクソリアに、こうやって死ぬ人々が現れ始めているということをあなたは知るべき──あなたこそ、知らなければならない」

 

 振動している。それにもう命が宿っていないことなど信じられない。何か──巨大な恐怖が取り憑いているとしか考えられない。

 

 ジュエンの言葉には何か決意のようなものが混ざっていた。真っ直ぐにメリィを捉える瞳が、どこか恐ろしくて思考が纏まらなかった。

 

「そして私は問わなければならない。あなたが創る未来の行方を──この絶望の果てに、あなたが望むものが、一体何なのか答えて貰わなければならない」

 

「──口と目を塞いでいろ」

 

 大剣を構えたスカベンジャーが入り口から飛び込んで、瞬きの内にメリィを抱えて飛び退いた。

 

「え……? あ、あなた──」

 

「喋るな。口を塞げ。息を吸うな」

 

 脇にメリィを抱えた暗殺者が大地を賭ける。とにかく遠くへ、あの山小屋から、少しでも遠くへ。混乱するメリィのことなど気にも掛けずに。

 

「一体、何が……」

 

 咄嗟に背後を振り返ったメリィのことを誰が責められよう。その両眼で見えた光景──目が眩むような美しい光と共に聞こえた何かが爆発する音。

 

 あの小屋の窓から弾ける黒い粒子が夜空の星のように点滅し、大気へと広がっていく。爆弾でも仕掛けてあったのか? 一体何が爆発した? 思考は巡るも、メリィから見た小屋は本当にただの山小屋だった。

 

 目で見える現実と思考の推測が結び付かない。

 

「……」

 

 小脇に抱えられていたメリィは、スカベンジャーが走り終わると共に解放されたが、うまく立てずに座り込んでしまう。

 

「……何ですの? あなた、なぜここに? あれは一体何ですの? 一体……」

 

「口を閉じて、そのまま動くな。今理解しておくべきことは、あんたはたった今殺されかけたということだけでいい」

 

 視線はずっと山小屋から溢れた煙幕に注がれていた。本来ならばメリィが決して見ることはなかったスカベンジャーの姿。背丈ほどもある大剣を握り、殺気を纏った臨戦体勢の、暗殺者としての姿。

 

「……殺されかけたというのは酷い言い方ね。まるで感染者になった瞬間、死んだも同然だとでも?」

 

「同然だろう。特に──この世間知らずのお嬢様に関しては、な」

 

 空へ消える粒子の中から現れる影はジュエンを置いて他にはいない。しかしメリィは未だに見えた光景が何なのか理解出来ていなかった。正しくは、理解したくなかった。

 

「お前は既に敵だ。ジュエン・リ・ホウト──さっさと始末してやる」

 

 何も分からないメリィを放ったまま、戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 暗殺者が踏み込んだ。まずは小手調べとばかりに距離を詰める。そして──炎が昇った。

 

「……! 炎のアーツか。はっ……」

 

 道を塞ぐように上がった炎がスカベンジャーの邪魔をする。それはジュエンの意思に沿って、そのまま敵へと襲いかかる。

 

「下らない。この程度の炎──」

 

 戦闘経験に裏付けされた的確な動き。炎を避け距離を詰める。術師に対しては身体能力に任せて接近戦に持ち込むのが基本だ。大抵の場合、術師は肉弾戦には弱い。そのため、戦い慣れた術師ほど近づかせないためのなんらかの工夫があるが──ジュエンにはそれがない。それが罠の可能性もある。

 

 しかし戦士としての勘として、戦い慣れた敵ではないとスカベンジャーは判断した。

 

 避ける暇などない大剣の一閃。首を掻き切って終わりになるはずだった。

 

「──当千(blade)

 

 金属同士が衝突する甲高い音が響き渡る。ジュエンの手には白銀に輝く剣が握られていた。返す刀で、逆にスカベンジャーを狙う斬撃に飛び退く──

 

「……どこから取り出した? それに、今の反応速度……お前、何か妙だな」

 

 剣は想像以上に重量がある。素人が振るっても大した脅威にはならない。扱うためには訓練が必要だ。

 

「ちぐはぐだ。慣れたヤツなら、初めからボディガードを想定しておく。邪魔されるだろうことを想定し策を用意しておく。だがお前はあっさりとこの箱入りの()()に失敗した。慣れていないヤツがやるような失敗だ。だが……なんだ? その不釣り合いな身体能力に、突然現れた剣……」

 

 高い身体能力があれば、素人でも話は別だ。訓練不足を補うだけのものがあれば、確かに武器は脅威となる。

 

「……まあいい。どうせお前の結末は一つだ」

 

 警戒はする。だが──殺し切れる。大剣を構え直した。

 

「ま、待ちなさい! あなた、一体何をするつもりですの!?」

 

 邪魔が入った。

 

「見ての通りだ。理解はしなくてもいいが、黙って見ていろ」

 

「……! ジュエン! ジュエン、これは一体どういうことですの!? さっきの爆発は一体何!? 分かるように──私に分かるように説明してください!」

 

 メリィが叫んだ。それはどこか悲痛で、説明してと叫ぶ割に理解を拒むかのような。それも仕方ないことだ。理解すれば壊れるものがある。

 

「感染者が死んで時間が経つとああなるの。全身が加速度的に結晶化して──塵になって、そして光へと変わる。後には何も残りはしない」

 

「……あれが……人の死に方だとでも? あんなものが……一体、なぜ!?」

 

「それが分かりゃ苦労しない。鉱石病(オリパシー)について分かっていることは、ほぼないと言っていい。誰も真面目にあんなものを研究していない。……例外はあるが、それでも成果はない。あの粉塵を吸い込めば確実に感染する。そして、そいつも同じように死んで()()なる」

 

「そんな……どうして。どうして……ジュエン、どうして……!」

 

 どうしてこんなことを、と問う。少し考えれば分かることだ──ジュエンはあの粉塵の中から姿を現した。

 

「メリィ。あなたはどう思った」

 

「どうって、何が!」

 

「人の体が鉱石へと変わっていくことなどおかしいと思う? 感染するかもしれないと分かっていても、感染者と同じ場所で生活出来る?」

 

「どういう意味ですの……!?」

 

「メリィ。私も感染者よ」

 

「……っ!」

 

 既に頭の中では分かっていた。あの粉塵の中から現れた時点で……ただ理解を拒んでいた。友人があんな訳のわからない死に方をするところなど想像もしたくなかったのだ。

 

「もう長くは生きられない。だけど、死ぬ前にやるべきことがあった。あなたよ──メリィ・リ・ロゥ。この国で最も立場の高い貴族の一人娘……あなたの意思を、問わなければならない」

 

「意思……私の……?」

 

「あなたの描く未来。あなたがこのエクソリアに生きている人々をどのように扱い、そしてどのような未来を作るつもりでいるのか」

 

 未来という言葉ほど絶望に汚れた言葉はない。人はいずれ死ぬもので、もう死に方が決まっている場合は余計にそうだ。

 

「感染者になる前からずっとそうだった。上流に生きる人々は、まるで私たちが違う生き物であるかのように扱ってきた。見下し、搾り取り、まるで私たちに意思や命がないかのように扱ってきた。実際はそうではないのに」

 

「……ええ。語りましたわね、あるべき貴族の姿について……何度も、何度も」

 

「統治者が甘くてはならない、とあなたは言ったわ。そして外敵から人々を保護する義務があるのだと……しかし、現実には誰も私たちを守ってくれなかった。この国家的な極限状態にありながらも、貴族たちは自分たちの利益にしか興味はなかった。私たちのために剣を掲げてくれたのは、どこから来たのかも分からないような、隻腕の感染者だけだった」

 

 誰だって良かった。

 

 救ってくれるなら誰でも良かったのだ。

 

「だから私はあなたに問わなければならない──月日を共にした友人として、一人のエクソリア人として、一人の感染者として。ねえメリィ、あなたはどうして私を助けてくれなかったの?」

 

 ジュエンの炎はゆらゆらと紅く揺れている。

 

「……ジュエン……(わたくし)は……」

 

「耳を貸すな箱入り。恨み辛みも結構だが、所詮はそれまでだ。自分のことぐらい自分でなんとか出来なければ、どこで野垂れ死ぬかも選べない。それがこの大地のルールだ」

 

「そうね。だから人々は国を作り、大いなる荒野へと対抗するための文明を作り上げた。そして統治を行う人物が現れ、階級が作られた。指導者として、集団を統治する人物が必要だった。それはただの役割だったはず、だけどいつしか軋みが生まれるようになった。今ではそれは疑問に変わった」

 

 炎は怒りの暗示でもある。これはジュエンの──虐げられてきた人々の怒りの炎。

 

「エクソリアに貴族は本当に必要なのか? 答えは明白で、救い人(ソトラ)の行動が物語っている。リン家が崩壊したところで、実際のところ私たちへの悪影響など一つもない。あなたがロゥを名乗るなら、エクソリアにはあなたが必要だということを証明する必要がある」

 

「ただの悪口にしては随分お行儀の良いことだな……御託はもういいか? そろそろ聞き飽きてきた」

 

「邪魔をしないでもらいたいわね、スカベンジャー……救い人(ソトラ)の懐刀。あなたが現れることまで考えが至らなかった。あなたの言う通り、慣れないことは難しいものね」

 

「こっちからしてみれば簡単過ぎることだったがな。国の要人に護衛を付けない方がどうかしてるし──あんたがこの箱入りを恨んでいないと考えないのは、よっぽどの馬鹿だ。こいつを一人にしておけば尻尾を出すと思ったし、事実そうなった」

 

「……レオーネに敵対する意思はない。だけど、邪魔をするならば……容赦はしない。──黄影(pyrite)ッ!」

 

 ジュエンの姿が掻き消えた。次の瞬間、火の粉が舞い散ちる。剣と大剣の衝突、咄嗟に受けたのはスカベンジャーの長年の勘によるものだ。それがなければ、既に勝負は決しているだろう。

 

 大剣を切り払う。距離を取れば炎が襲いかかり、詰めれば白銀の剣が振るわれる。

 

「その、身体能力……ジュエン、あなた……どうやって……?」

 

 メリィが知るジュエンは、優秀な学生ではあったがそれ以上ではなかった。瞬間移動とも見紛う瞬歩、大剣を弾き飛ばす腕力はメリィが知るものではない。何かが変だ。

 

 木々の揺れる中、無数の撃ち合う音が響く。メリィの目では追いきれない──ジュエンの姿を捉えられない。前後左右から無規則に襲いかかる斬撃に、スカベンジャーもなんとか対応していくが、なんとなく対応しきれなくなっているように感じる。

 

 逸れた刃がスカベンジャーの頬を僅かに裂く。直後、彼女に炎が襲いかかった。

 

「……!」

 

 爆炎の爆発が起こした熱波に肘を上げて顔を守った。薄目を開ける──炎の跡には誰もいない。

 

「スカ、ベンジャー……?」

 

 その向こうで、ジュエンが剣を杖にして苦悶の表情を浮かべている。炎の温度のせいか額には汗が浮かび、肩で息をしていた。それは不可解な身体能力の代償に見える。

 

「はぁッ、はぁッ……ッ、やった…………──ッ!?」

 

 ジュエンの上から飛んできた何かを、反射的に剣で薙ぎ払った。それは──スカベンジャーの大剣だった。だが大剣しかない──スカベンジャー本人はどこにいる? ジュエンは見回すが──

 

「こっちだ、間抜け」

 

 ナイフが彼女の背中を貫いた。

 

「う、ぐ……!? こ、の……!」

 

 剣を切り返して反撃するが、既に暗殺者は退いている。そして、その運命を告げた。

 

「心臓を貫いた。遺言は今のうちにしておくことだな」

 

「……、…………」

 

 ジュエンの口から赤い液体が溢れた。激痛が襲う中、視線はスカベンジャーを捉えたまま──腰のポーチから注射器を取り出した。シリンダには、透明な液体が入っている。

 

「…………芽生(deepness)、私には……やらなければ、ならないことがある……だから、力を……」

 

 心臓に突き刺して、その液体を体に注入する。大いなる代償とともに傷は塞がり、地面に突き刺さった白銀の刃が真っ赤に染まり始め、炎の勢いが増していく。

 

「ジュエン! なぜ……一体、あなたは私に何をしようとしたのですか!?」

 

「答えて、もらう──……あなたと私は()()なのか……それとも、()()のか……」

 

 ジュエンが炎の色に染まった白銀の剣を大地から引き抜いた。渦巻く炎が収束し、拡散していく。鮮血の色、浮き上がった血管、それは異様な姿で、壮絶な迫力を纏っていた。

 

「……私の、運命──」

 

 炎が上がって、消えた時にはジュエンの影はもはやない。それを認識した次の瞬間、スカベンジャーの体から血飛沫が上がった。赤い液体が宙に待って、地面に落ちる頃には暗殺者は吹き飛んでいた。何が起きたのか全く分からなかった。

 

「……え?」

 

 地面に転がったスカベンジャーはうつ伏せのまま、土を血で汚しているだけで、力なく倒れるばかりだ。

 

 それを見て、剣を握るジュエンとの間にもはや何も障害物はないのだ、と気がついた。

 

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