不遇キャラを救っていった結果……   作:naonakki

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第11話

 頭部から尾の先まで漆黒の鱗に覆われたカオスドラゴンがその巨大な翼を広げ、大空を舞う様は、まさに昔映画で見た怪獣そのものだ。

 両翼まで加えると、その大きさは実に50メートルを超え、巨大な城が迫ってくるような錯覚を覚える。

 カオスドラゴンは血色の目をこちらに向け、その大きな口を開き、灼熱のブレスを吐きつけてくる。

 天を焼き尽くしながら迫る炎の壁はこの世の終焉を彷彿させた。

 

 俺は魔力を集中させ、神がかり的な速さで超級の水魔法を完成させる。

 魔法の発動とともに目の前に直径20メートルほどの巨大な水柱が生み出され、迫りくる炎を迎えうつ。

 超高温の炎と膨大な魔力が込められた水がぶつかり合ったことによって大量の水蒸気が発生する中、水柱は体積を減らしつつも、その勢いを殺さず、カオスドラゴンに襲いかかる。

 カオスドラゴンは、よもやブレスを打ち消された上に反撃を食らうとは思わなかったのか、空中で大きく態勢を崩し、動揺しているのがわかる。

 これなら攻撃を食らわせれる、そう確信した。

 

 しかし

 

 その瞬間、右方から強烈な衝撃を受け、意識を逸らされたせいで水柱の軌道がずれ、カオスドラゴンに紙一重で避けられてしまった。

 自身の周りに展開させていた結界魔法によりダメージはなかったが、そのあまりの威力に結界魔法の三分の一程度が削られてしまった。

 衝撃を受けた方へ急いで振り向くと、そこには水蒸気を振り払いながらデーモンロードが二度目の攻撃を加えんと、巨大な拳を振り上げている姿が見えた。

 先ほどはどうも純粋に殴られただけのようだ、それであの威力か……。

 頭部には悪魔を象徴するような角が二本左右についており、黄色く光るその瞳は、こちらの命を奪わんと殺気に満ちている。

 人間の数倍の大きさのある人型のデーモンロードは、全身の赤色の皮膚の下に無駄のない隆々とした筋肉が備わっており、その筋肉が武器であり鎧でもあるとでも言わんばかりに装備は最低限であり、ボディービルダーが履くようなブーメランパンツを身に着けているだけである。

 しかし、そのパワーと俊敏性は本物で、こちらの目にもとまらぬ速さで攻撃を加えてくる。さらに厄介なのが、このデーモンロードは見た目にそぐわず、攻撃魔法も得意としており、多彩な攻撃でこちらを翻弄してくるのだ。

 

 デーモンロードの攻撃を回避するために風魔法の突風を利用し、自身を強制的にその場から離脱させ、ついでにあたりの水蒸気を吹き飛ばす。

 だが、こちらの動きを読んでいたように、避けた先にゴッドスライムにより唱えられた超級の炎球魔法が俺を待ち構えていた。

 ドロドロとした液状のモンスターであり、大きさが数十倍以上あること以外は、この世で最も弱いとされるスライムの見た目そのものである。

 しかしその基礎能力はまったく別の生命体そのものであり、超級魔法すら楽々と使いこなすその姿はまさにスライムの神である。

 俺は何とか土魔法を発動させ、大地を盛り上げ、壁にする形で炎球の一部を打ち消す。

 しかし、一瞬のことであり、超級まで至らず上級に留まった土魔法では、摂氏数千度以上を誇る超級の炎球を完全に打ち消すことはできず、大部分の威力を保持したまま直撃を受けてしまう。

 

 そして、その攻撃によって結界魔法が完全に破られてしまった。

 

 さらには、そのタイミングを示し合わせたように体勢を整えたカオスドラゴンの再びの灼熱のブレス、そしてデーモンロードが唱えた雷撃の上級魔法により、二方向から強烈な攻撃が迫ってくる。

 最早避けられるタイミングではなかった。

 せめての抵抗にできるだけ、結界魔法を展開しなおせるところまで展開しなおす。

 

 攻撃が命中した瞬間、あたりに轟音が響き渡る。

 

 ……まじで死ぬかと思った。

 

 火事場の馬鹿力のような原理なのか、あの一瞬でもそれなりの結界魔法を展開できていたらしく、思ったよりダメージは少なかった。

 が、それでもブレスによるものなのか、雷撃によるものなのかはわからないが、全身に鈍い痛みが走る。

 回復アイテムは持っているが、バカバカ無計画に使っているとあという間にアイテムがなくなるだろう。回復魔法が使えないのが本当に痛い。

 ここは何とか痛みを我慢して、追撃を避けるために急いでその場を離脱する。

 

 ……わかっていたけど、これは無理ゲーすぎるだろ。

 3体とも強すぎるんだが……。

 後、周囲に展開されている結界魔法もかなり厄介だ。モンスター側は結界の影響を受けないようだが、こちらはほんの半径10メートルほどの結界内のみの移動しか許されない。10秒もあれば結界を破れるだろうが、あの3体を前にそんな時間を使うのは自殺行為でしかない。

 とにかく今のままでは常にこちらが後手に回ってしまう。

 敵の3体は、常に連携をとってきており、攻撃面、防御面での両方でこちらを上回っており、このまま戦い続けてもこちらの負けは濃厚だろう。

 

 ……仕方ない、時間魔法を使うか。

 

 それは、これまで習得してきた魔法の中では一番習得するのに時間がかかったものである。この目で実際に蘇生魔法を見るまでは、この世で一番難しい魔法と思っていたほどだ。

 この魔法は名の通り時間の流れを操るこの魔法であり、俺の奥の手でもある。

 かなり強力な反面、魔力の消費量がかなり激しいというデメリットがある。

 今の俺では、この魔法だけを使用したとしても15分間が限界だろう。そこから攻撃魔法等も使っていくとなると、実際に使用できる時間は5分くらいしかないだろう。一応魔力回復アイムもあるので多少長期戦になろうが心配はないが、アリーが心配だ。

 相手の強さもなんとなくわかってきたし、あとは短期決戦を目指すだけだ。

 

 ゴッドスライムの風魔法によって生み出された無数のかまいたちを土魔法をうまく使いながら防ぎ、時間魔法を構築し発動させる。

 その瞬間俺自身に流れる時間の速さが変化し、周りの景色が先ほどまでの半分の速さで流れていく。今の俺は思考速度も肉体速度もすべてが倍速の状態になったのだ。

 ……さあて、ここから攻防逆転といこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (アリー視点)

 

 魔女の子

 

 確かにそう言った。

 私には、かいとがかけてくれた幻術魔法で黒髪の女の子に見えているはずだ。

 私も魔法を使えるようになってわかったが、この幻術魔法は普通の者には決して見破られないほどの高等な魔法だ。

 

 それを見破られたとなると……。

 

 バッと立ち上がり、あたりを確かめる。

 すると驚くべきごとに先ほどまで、雲に覆われていた空が晴れ渡っていた。

 そして今気づいたが、村中が歓喜の声で包まれていた。

 これは、かいとがうまく呪いを解除できたということなのだろう。

 しかし分かったのはそこまで。肝心の声の正体は見つからない。

 何が起きているか分からず、警戒しながらその場で身構えていると再び声がした。

 

 「そう警戒するな、魔女の子よ。私はお前の敵ではない。むしろお前の望みをかなえてやろうと言っているのだ。」

 

 ……望み?

 まさか、私が力を手に入れたいということを指している?

 警戒しつつも思わず声に耳を傾けてしまう。

 

 「……そうだ。お前は力が欲しいのだろう?」

 

 力は……欲しい。

 かいとに認められるだけの力を。

 本当に……くれるの?

 そう聞かざるを得なかった。

 

 「ふふふ、素直な者は好きだぞ。……あぁ、約束しよう。この力が手に入ればお前の大好きな者にも認められるだけの力を手に入れられるだろう。きっとお前だけを見てくれるだろう。」

 

 私だけを見てくれる……。

 あぁ、それはなんて素敵なことだろう。

 想像するだけで、胸が幸せなな気持ちであふれてくる。

 

 「そうだ、力さえあれば、お前の望む世界を掴めるのだ。……さあ、これを口にすればいいだけだ……。」

 

 いつの間にか、私の目の前には手のひらサイズの黒い球体が浮いていた。

 物凄い量の力を感じる。

 そして分かる。

 

 ……これは、魔物の魔力と生命力だ。

 

 私はそれを手に取る。

 不思議と感触はなく、重さも温度も何も感じなかった。

 

 これを体内に取り込めば……。

 魔術書にも書いてあった。魔物の魔力を取り込めば、莫大な力を手に入れられると……。

 

 ゴクリと、息を吞む。

 

 いつの間にか謎の声の正体に対する警戒心が無くなっていたが、アリー自身それには気づかない。

 アリーの目には、もはやこの妖しい黒い球体しか映っていなかった。

 

 その状態でしばらく動きのない時間が流れる。

 

 アリーは一度、黒い球体から目を離し、空を仰いだ。

 

 

 

 

 

  ……かいと、待っててね

 

 

 

 

 

 アリーは、そのまま視線を戻し、手に持った黒い球体を口に運んだ。

 味はなく、不思議と噛みもしないうちに、それはどろりと体内に吸い込まれるように、胃へと流れていった。

 

 ……これで力が手に入った?

 

 特に変化がなく、訝しげに思った瞬間だった

 

 

 

  

 

 ドクンッ

 

 

 

 

 

 

 私の中で何かが弾けた

 

 「あっ!? あ、あああああああああっ!!??」

 

 取り込んだ魔力が、想像を絶する魔力が、私の中で行き場を求めるように荒れ狂う。

 そのあまりにも破壊的で膨大な量に私の全身が悲鳴を上げている。

 全身が張り裂けるような激痛に襲われ、たまらず絶叫を上げ、その場に倒れ、地面の上をのたうち回る。

 さらにそんな私に追い打ちをかけるように、頭の中に何かが流れ込んでくる。

 

 

 

 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ

 

 

 

 感じたことのないほどの破壊衝動が私の脳内を埋める。

 それ以外の感情を持つことを許さない、そう言われているようだった。

 頭が割れるように痛く、思わず頭を抱えるが破壊衝動は時間とともにどんどんと加速していく。

 しかし、それとともに体内で暴れていた魔力が行き場を見つけたように徐々に私が本来持っていた魔力に溶け込んでくる。

 それに伴い、体の痛みは引いていくが逆にそれが、意識を思考へ向ける余裕を作ってしまい、破壊衝動に飲み込まれるきっかけとなる。

 

 違う、そんなこと私は望んでない!

 ……私を、奪うなっ!

 

 頭を地面に何度も打ち付け、自分を支配せんとするこの破壊欲求を追い出そうとする。打ち付けるうちに傷ができたのだろう、額から大量の血が流れてきているが、構わず打ち付ける。

 しかし、現実は無常で徐々に自分という存在が侵食されていくのがわかる。

 

 

 

 ……かいと

 ……助けて

 

 

 

 

 気づけば私はそんなことを思っていた

 

 

 

 ……自分は何をしているのだろうか?

 力もなければ、欲求に目がくらみ自分を失いかけている。

 挙句の果てには、かいとに助けを乞うなんて……。 

 

 何かが私の中で崩れていくようだった。

 

 

 

 気づけば、私は暗闇の中にいた。

 

 

 

 何を抵抗している?

 お前が望んだ力を与えてやったというのに

 

 

 

 ……これが、望んだ力?

 

 

 

 ほら、ちょうどお前の邪魔者の一人が目の前に現れたぞ?

 早速、その力を振るう時が来たようだぞ?

 

 

 

 ……邪魔、者?

 

 

 

 気づけば、私の目の前から暗闇は無くなっていた。

 頭痛も全身を襲っていた痛みもいつの間にか無くなっていた。

 その変わり、体中からあふれる生命力と魔力が私を包んでいた。

 

 そして私の目の目に立ちはだかる存在が一人

 

 

 

 「……この魔力、貴様、人間に化けたモンスターか? いや、その目を見ればわかる。人々を苦しめるモンスターは私が斬る。」

 

  

 

 英雄の子であり、世界最強の美しい剣士

 そしてかいとが探し求める、勇者候補の一人

 

 イリア

 

 それは光り輝く剣を抜き去り、こちらにその剣先を向けてきていた。

 

 

 

 どうして私があいつに剣を向けられなければいけないの?

 ……やっぱりあいつは、私の邪魔な存在なんだ。

 

 

 

 邪魔なら排除しなくちゃいけないよね?

 

 

 

 そしたら、きっとかいとも褒めてくれるよね?

 

 

 

 見ててね、かいと?

 

 

 

 私強くなったよ?

 

 

 

 それをあいつを使って証明してみせるから……

 

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