指摘で「///」という表現がおかしいとありましたので修正しました。
(誤字報告してくれた方いたのでそのまま適応しました、ありがとうございますm(__)m)
「佐藤様! これからどうするのですか?? 私に何かできることはありますでしょうか??」
朝食後、相変わらず高級感溢れる部屋のソファで小休止していると、広いソファに関わらず俺の真横にピタリと座っているアリーが俺を覗き込みながらそう質問を投げかけてくる。
旅を共にすることが決まってからというものの、アリーはずっとこの調子だ。
目を輝かせ、曇りのない笑顔で、これからすることの何かもが楽しみで仕方がないといった様子だ。
好意を向けてくれるのは嬉しいが、距離感が近すぎるので心臓に悪いんだよな。まあ、このアリーの笑顔を前にやめてなんて言える訳もないが。
……しかし同じシャンプーと石鹸を使ってるはずなのにアリーから凄くいい匂いがするのはなぜなのだろうか? 不思議だ。
「……じゃあ、アリーのことを教えてくれないか?」
「え? 私のことですか??」
突然の俺の要望に首を傾げ、どういう言意味ですかとアピールをしてくるアリー。
素だとは思うが、こういう女の子らしい仕草は一々可愛いから困る。
少し顔が熱くなるのを感じながらも、それがばれないように言葉を続ける。
「そうそう、順を追って説明するよ。さっきも言ったけど俺は魔王討伐を目指している。当然、その旅は危険なものになる。ここまではいい?」
「はい! 佐藤様と一緒ならばどこまでもお供致します!例えそれが、火の中、水の中でも!」
アリーは、体をぐいっとこちらに乗り出してきながら元気にそう答えるてくる、当然だとばかりに。あまりの勢いにこちらは逆に少し引いてしまったほどだ。
「そ、そうか……。旅では、基本的に俺がアリーを守っていくつもりだが、いざという時の為にアリーがどの程度動けるかを把握しておきたいんだ。……アリーは戦闘の経験とかはある?」
俺のこの質問の意図としては、ある可能性について確認したかったのだ。
ある可能性とは、アリーが実は凄く強いのではないかということだ。
俺にとっては髪と目の色以外、人間も魔女の何が違うのかよく分からないが、どうも魔女という存在そのものが人間を遥かに上回る強さを誇る存在らしいのだ。
というのも人間と魔女の戦争について詳しく知るために、今日の早朝に歴史書を軽く読んだのだが、そこで魔女についての強さの一端を知る機会があったのだ。
ライさんは人間と魔女の戦争は人間が勝利したと言っていた。
確かにそれは正しかった、歴史書にもそう書かれていたからだ。
ただし、その戦争の中身について調べていくと衝撃的事実が分かったのだ。
人間と魔女の兵力差だ。
人間側の兵力は各国から集めた精錬された騎士や腕に覚えがある冒険者1万だったが、それに対し魔女側は僅か1千人だったのだ。
つまり単純に計算すれば実に10倍もの戦力差があったわけだ。
それだけ聞くと結末など誰にでも分かりそうなのだ。
しかし、いざ戦争が始まると兵力数差をものともしない魔女側の激しい猛攻により、人間側が防戦一方の展開に持ち込まれたのだ。
といっても、流石の兵力差に魔女側も攻め切ることはできず、戦争は3年以上続き、その激しい戦いは人間側の生活圏をも巻き込み、甚大な被害を及ぼしていった。
しかし、驚異的な力を誇った魔女側も決して無敵ではなく、人間側の兵力数にモノをいわせた粘り強い抵抗もあり、着実に魔女側の兵力を削っていき、とうとう攻防が逆転し、魔女側が降伏したのだ。
かくして戦争は終結したわけだが、魔女側の死者数900人に対し、人間側の死者数は、戦争に巻き込まれた一般市民なども含めると実に10万人を超える結果となったのだ。
勝利はしたものの、その内容を見ると本当に勝利したのか疑わしくなる結果だったわけだ。
ちなみにその直後、タイミングを合わせたように俺の宿敵でもある魔王軍が疲弊しきった人間側を攻めることになるのだが、まあ、それについて今はいいだろう。
とにかく、この話を聞くと、いかに魔女が規格外な存在かが分かる。
だからこそ目の前にいるか弱そうな少女アリーも実はとんでもなく強いことがあるかもしれないと考えたのだ。
「……すみません。一応、自己防衛用の術をお父さんとお母さんにほんの少しだけ教えてもらいはしましたが、精々スライムやゴブリンを追い払えるくらいで。」
しかし、帰ってきた答えは意外とそんな言葉だった。
申し訳なさそうにそう答えるアリーだったが、俺は内心少しホッとしてしまった。
アリーのような、か弱そうな女の子が実は凄く強かったです、よりは、守ってあげたい存在のままの方が男冥利に尽きるというものだからな。
まあ、とは言ってもアリーがあまり戦えないとなると何か対策が必要だな、どんな方法が良いだろうか?
俺が頭の中で色々思考を巡らせていると、アリーは不安そうにこちらを見てきて
「あ、あの……、迷惑をかけてすみません。で、でも、私、強くなるためなら何でもします。厳しい訓練もします。お父さんもお母さんも凄く強かったので、私もある程度は強くなれると思いますし……。」
と、そんなことを小さな声で言ってきた。
どうも俺が何も答えないから変に不安にさせてしまったらしい。これは失態だ。
「……ごめん、アリー。別にアリーのことを迷惑だなんて思うつもりは毛頭ないんだ。ちょっと考え事をしてたんだ。」
「そ、そうですか?」
「ああ、それに言っただろう? アリーは俺が守っていくって。」
「……そ、そうでしたね。」
ここまで言ってようやくアリーは頬を朱に染め、恥ずかしそうに視線を逸らしながら引き下がってくれた。
ちなみに俺も臭いセリフを放ったせいで、羞恥心で死にそうだ。
もっと他に言いようがあった気もする。
しかし、先ほどアリーは親が強かったと言っていたが、その強かった親が3年前になぜ死んでしまったのだろうか……。
その時だった。部屋内にノック音が響いた。
朝食の直後に何だろうと思いながら「どうぞ」と声をかけると、ガチャリと扉が開き、なんとこの宿屋の主人が姿を現した。その姿には、いつもの余裕がなく少し慌てているようだった。
「どうしましたか? 随分慌てているようですが。」
「佐藤様、それに妹様、おはようございます。ええ、すこしお耳に入れて頂きたいことがありまして。先ほどから少し町が騒がしかったので事情を聞くと、どうもこの町に住みついていた魔女が行方をくらませたようようなのです。いつもの路地にいなかったと。魔女が使っていた毛布のみそこに落ちていたようですが……。」
主人の言葉に、アリーがビクリと体を震わせたのが横目にも分かった。
しかし、そんな様子のアリーを見た主人はアリーが別の意味で体を震わせたのだと思ったらしく、
「妹様、不安なのもごもっともです。しかし町の者は冒険者の集会所も含めて急いで対策を練っていますのでご安心を。……まあ、すでに死にかけていたらしいので心配はないのかもしれませんが。ただ、魔女は危険な存在です。佐藤様については何も心配しておりませんが、一応連絡をと思い伝えさせて頂きました。急に申し訳ありませんでした。」
主人はそう言ってお辞儀をした後、すぐに部屋から出ていった。
俺は、主人が扉を閉めたのを確認した後すぐにアリーに向き直る。
「アリー、大丈夫か?」
「……はい。」
そう答えるアリーだったが、体は震えており、呼吸も少し荒くなっている。
いくら生きる気力を得たといっても、これまで受け続けた心の傷がすぐに癒えるわけではない。特にアリーにとってこの町の人という存在は何よりも恐ろしい存在のはずだ。
当然、アリーには魔法によってアリーが魔女と分からないようにしていると説明はしている。
しかし頭では分かっていても、町の人が自分を探しているという事実は、アリーの精神的によくないことは明白だ。
……。
しばしの思考の末、決断する。
「アリー。」
「は、はい。」
アリーは、俺の様子から何か感じたのか、緊張したように返事し、こちらをじっと見つめてくる。
「すぐにこの町を出よう。」
「……え、すぐにですか?」
「ああ、すぐにだ。」
「……それはもしかして私に気を遣ってもらっているのですか? でしたら大丈夫ですよ! ほ、ほらこの通りです!」
流石のアリーも心配されていると気づき、笑顔を浮かべ、元気そうに振舞ってくるが、どう見ても無理をしている。
「アリーはもう少し人に甘えることを覚えるべきだな。」
「……う、で、でも。」
無理をしているのがばれたアリーは気まずそうに目を逸らしてくる。
出会って一日しか経ってないから無理ないんだろうけど、こうも気を遣われるとこっちまで調子が狂うな。俺なんかに気を遣う必要ないのに。
まあ、そこは早く慣れてもらうしかないか。
「はい、というわけですぐに出発だ。ただ、バスローブってわけにもいかないから、これ服ね。サイズが合うといいけど。」
俺はそう言いい、昨日ライさんのところから帰る途中に寄り道をして購入した紙袋に入ったものをアリーに渡す。会った当初、アリーは裸だったから一応服や靴など外に出られる最低限の装備だけ買っておいたのだ。
「え、服ですか!? で、でも昨日佐藤様にもらったローブがありますよ?」
「いやいや、あれは大きいだろう? まあそれも旅向けってわけじゃないけど……。」
「そ、それじゃあ開けますね? ……わあ! これはワンピースですね!」
顔を輝かせたアリーが手に取ったのは純白のワンピースだ。
あまり時間がなかったので店に入って勘で決めたものだ。決して俺の趣味ではない。気に入ってもらえているようなのでよかった。
とはいえ、これはあくまで私服用に買ったもので旅向け用には今日買う予定だったが。
「すまないが、今はそれで我慢してくれ。後は、これに下着とか靴とかも入ってるから洗面所で着替えておいで。」
そう言って、俺は残りの下着や靴などが入った袋をアリーに渡す。一応言っておくが下着は女性店員に決めさせた。
アリーはそれらを宝物でも見るように、ゆっくりと受け取り、「ありがとうございます!」と歓喜にも似たお礼を言い、そのまま洗面所に小走りで消えていった。
そして、しばらくしてからアリーが戻ってきた。
「……あ、あの、どうですかね?」
俺は言葉を失った。
真っ白なワンピースを纏ったアリーは、この世に舞い降りた天使のようだった。
後光が見えるようだ。
恥じらいながら自信なさげに上目遣いで俺を見つめてきているのも、その可愛さを底上げしている。
……やはり、俺の白のワンピースという選択は正しかったのだ。
サイズもぴったりだったようで何よりだ。
……ただ似合っているのは間違いないんだが、やはりそのやせ細った体はどうしても痛々しく見えてしまうのも事実だ。
しかし、逆に言えば元の体に戻った時、どうなるのかという楽しみもできた。
とんでもない美少女になるのは間違いないだろう。
俺がゆっくりと親指を立てるのを見て、アリーは安堵したようにはにかんだ。
少々取り乱したが、その後も準備を進めて最低限の出発の準備は整った。
「アリー、まだ身体は回復していないだろうから、疲れたらすぐに言うんだぞ?」
「はい! あの聞いておきたいんですけどこれからどう動いていくんですか?」
「とりあえずは、色々な街に行って魔王についての情報を集めようと思う。……後は、仲間探しだな。」
「……仲間、ですか?」
「ああ。魔王そのものは勿論、その側近、他にも気になるやつはいるが、流れている情報によると俺一人だけだと厳しそうだからな。」
とはいえ、魔王を相手にできる者なんて限られてくるが……。
そんなことを考えながら瞬間転移魔法を発動させた。