第1話 その名は”レッド”‼
「はじめまして! ポケットモンスターの世界へようこそ! 私の名前はオーキド。皆からはポケモン博士と慕われておるよ。この世界には、ポケットモンスターと呼ばれる生き物たちが、至る所に住んでいる! そのポケモンという生き物を、人はペットにしたり、勝負に使ったり・・・・・・そして・・・・・・私はこのポケモンの研究をしてるという訳だ。では、初めに君の事を教えてもらおう!」
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「ふむ・・・・・レッドと言うんだな! レッド! いよいよこれから、君の物語の始まりだ! 夢と冒険と! ポケットモンスターの世界へ! レッツゴー‼」
◆◆◆
「なんか変な夢みた・・・・・・」
マサラタウン。
カントー地方にあるとある町。
その一角にある赤い屋根と白い壁の木造建築が俺が住む家だ。
マサラタウンに住んでいるドードーリオの鳴き声によって目を覚まし、ベッドから上体を起こす。
朝日が眩しい東向きだぜ・・・・・・。
「レッドー、何時まで寝てるの?」
「起きてるってばよ・・・・・・」
部屋の扉を開けて入ってきたのは我が
父はいない。
昔、ある日ふといなくなったから何処に行ったのかを聞いてみたが何かはぐらかされたので、それ以降は聞かないようにしている。
俺が生まれる前には祖父もいたようだが、旅に出てからしばらくして音信不通になったらしい。
中々闇が深い家庭のようだ。
「今日はオーキド博士からポケモンを貰うんでしょ」
「そういや今日だったな」
「早く行かないと、ポケモン貰えないわよ?」
「今日旅立つのは俺とグリーンだけなんだから大丈夫だろ」
俺の住むマサラタウンでは10歳になるとポケモン取扱い免許を許され、町のポケモン研究家オーキド博士から初心者用ポケモン1頭を貰い、ポケモントレーナーを目指して旅立てるのだ。
そして今日、今年で11歳になる俺はこの町を旅立つことになる。
◆◆◆
オーキド研究所。
この町に住むポケモン研究家で、世界的に有名な博士でもある。
マサラタウンに住む子供たちは、みんなオーキド博士からポケモンを貰い、旅立っていくのだ。
俺もその一人。
初心者用のポケモンである炎タイプのヒトカゲ、水タイプのゼニガメ、草タイプのフシギダネの3匹から1匹貰うことが出来る。
どのポケモンを貰おうかなぁ・・・・・・ヒトカゲが良いかなぁ。
まぁ、グリーンと欲しいポケモンが被ったら喧嘩になりそうだから、あんまアレがいいコレがいいとは考えない方がいいか?
別にどのポケモンが強い弱いとかはないだろうし。
「あ、やっと来た!」
「あん?」
ダラダラのんびりと歩いて研究所前に辿り着くと、そこには俺と同じ子供が2人。
「グリーンとブルーか。グリーンはともかくブルーも来てたんだな」
「見送りくらいはね」
「ボンジュール! 相変わらず鈍いなレッドは!」
「?。秒単位で時間ピッタリだが?」
「せめて5分前には来いよ、常識だろ」
「そんな何処の誰が決めたかも分かんねぇ常識に従う義理はねぇ‼」
「まったくもう・・・・・・」
自信家でプライドが高く前髪をファサッてやってる少年グリーンに、嘆息する少女ブルー。
物心ついた時からこの町で一緒に過ごしてきた俺の幼馴染みである。
「よし、そんじゃポケモンを貰いに行くか! 欲しいのが被ったらジャンケンな‼」
俺がそうして意気込んでいると、グリーンとブルーは互いに顔を見合わせ、何か気の毒そうな目を向けられた。
「何だよ?」
「その、気合入ってる所悪いんだけど・・・・・・」
「俺はもうポケモン貰っちまったぜ?」
「なん、だと・・・・・・?」
突然の事実に愕然とする俺に、気の毒な顔を向け続けるブルーに、見下す視線を向けてくるグリーン。
「いや、一応レッドを待った方が良いんじゃないかって言ったんだけどね? けどグリーンが・・・・・・」
「こういうのは早い者勝ちなんだよ、時間ギリギリに来たレッドが悪い」
「・・・・・・まぁ、確かにポケモン貰うのに順番とかは特に決まってなかったけどよ」
それでもちょっとくらい待ってくれても良くない?
一応、待ち合わせしてるんだし。
「止めてくれよブルー」
「ちゃんと止めたよ、止めきれなかったってだけで」
「なんて幼馴染み甲斐の無い奴らだ」
「へっ、敗者の言葉が耳に心地いいぜ!」
「クズだな」
「グリーン、小物っぽいよ?」
「へっ」
それも負け犬の遠吠えと言わんばかりに見下してきやがる。
「で、グリーンは何貰ったんだよ?」
「ま、俺は世界的有名なオーキド博士の孫だからな、それに相応しいポケモンを貰ったぜ」
「グリーンはゼニガメを貰ってたよ」
「初心者用ポケモンじゃねぇか」
「うるせーよ」
てことは、残ってるのはヒトカゲとフシギダネか。
まぁ、元々ヒトカゲが良いかと思ってたし、ゼニガメなら別に問題ないか。
「んじゃ、俺は先に行くぜ」
「なんだ、もう行っちまうのか?」
背を向けて歩き出すグリーンは「当たり前だろ?」と、ベルトに付けているモンスターボールを二個取り出し、開閉する。
「俺はガキの頃から最強のポケモントレーナーを目指してんだぜ? ようやく旅に出ることが出来るんだ。こんな入り口でモタモタしてられるかよ!」
昔と変わらず自信過剰なグリーンに付き従うようにボールから出てきた二体のポケモン。
一匹はゼニガメ。
オーキド博士から最初に貰った初心者用ポケモン。御三家の一匹。
そしてもう一匹は・・・・・・イーブイだった。
「やっぱ、そのイーブイも連れてくんだな」
「当然だろ」
何年か前に、誕生日に姉ちゃんから貰ったって自慢してたからよく覚えている。
その時からこのイーブイと旅に出るといっていたな。
「・・・・・・」
そしてそんなイーブイを見て、一歩後退るブルー。
・・・・・・そういや、コイツ昔このイーブイに噛まれてから苦手になったんだったか。
それに気づいた訳では無いのだろうが、グリーンは2体をボールに戻した。
「目指すはカントーポケモンリーグ・・・来年開催するセキエイ大会に出る為に、カントー地方のジムバッジを8つ手に入れる」
ポケモントレーナーの最高峰であるポケモンリーグ。
世界規模で様々な大会が存在するが、セキエイ高原で行われるカントーリーグセキエイ大会は有名にして高難易度な大会とされている。
この国で最初に始まったポケモンリーグということあって歴史があり、出場するポケモントレーナーの質も高い。
それに出場するだけでも色々条件が存在しているが、一番よく知られている条件はその開催地方にあるポケモンジムのジムリーダーにバトルを申し込み勝利し、ジムバッジを合計8つ獲得する方法だ。
ジムリーダーとはポケモンのタイプを極めた達人が勤めるもので、勝利するのは容易ではない(実力によって加減はしてくれるらしいが)。
「そして、この俺がリーグ優勝し、カントー地方のチャンピオンになり、いずれは世界最強のポケモントレーナーになるのだ‼」
そんな壮大な夢を叫ぶグリーンは此方を見てきて、
「お前もリーグに出るつもりなんだろ、レッド!?」
「ああ」
「お前には無理だね」
「何でだ?」
「決まってんだろ? この俺が出るからだよ‼ リーグに参加は頑張れば出来るかもしれないが、優勝して頂点に立つのはこの俺だ‼」
「ふーん?」
「・・・・・・何だよ、何か言いたげだな」
「別に大したことじゃねぇよ、ただ・・・・・・」
「ただ?」
「夢を見るのは自由だよなってだけだ」
俺が? 否、
ギロっと睨んできた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あー、ハイハイその辺にしたら?」
ガンつけ合う俺とグリーンに、ブルーが手を叩いて制止させた。
確かに、何が悲しくてグリーンなんぞを見つめなけりゃならんのだ、気持ち悪い。
グリーンはゼニガメとイーブイをボールに戻し、颯爽と歩き出す。
「色んなポケモンやトレーナーと戦いまくってポケモンを強くするぜ! レッドなんかじゃ追い付けないくらいにな! んじゃな、バイビー‼」
何か独特なライバルBGMでも聞こえてきそうな雰囲気を撒き散らしながら、グリーンはマサラタウンを旅立って行った。
小さい頃から同い年という事もあって何かと張り合う事が多く、ポケモントレーナーになったらどっちがチャンピオンになるかとか色々語り合ったこともあったっけか。
小さい頃は早く10歳になって旅立ちたくてしょうがなかったが、いざその時になると中々に感慨深い物がある。
そうさ、俺は全世界のポケモンに宣言する。
最高のポケモントレーナー・・・・・・いや、ポケモンマスター!
「そうとも、それは俺だッ‼‼」
そして今日、この日、この時より、この俺、レッドの伝説が始まるのだッ‼‼