不良少女の美竹さん   作:バーサク戦士

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彼の話 蘭story

最初に話したのはいつだったか。確かあたしが数学の授業で一人で問題を解いている時だった気がする。こっちは真面目にやってるのに眼の前で寝ているのがやけに腹が立ったのを覚えている。

 

 それからは少しだけ話すようになった。学校は昼休み以外は退屈だったけど大庭と話すようになってから少しだけ楽しく感じるようになっていた。

 

 自分でもめんどくさい性格だって言うのはわかっているつもりだ。

 

 そんなあたしに付き合ってくれる大庭も変人だ。

 

 そんなことを一人机に向かって考えていた。

 

 今日でた古典のプリントを見ても全く空欄が埋まっていない。あれもこれも全部大庭のせいだ。

 

 あいつが学校に来ないから退屈だった。

 

 でも明日からやっと登校するってお医者さんが言ってた。そしたらやっとあたしも退屈な学校生活がいつも通りに戻る気がする。

 

 今日だってわざわざお見舞いに行ってあげたのにお父さんと出くわすし。それで廊下で言い合いになっていたところも大庭に見られた。

 

 本当に恥ずかしかった。

 

 お父さんのせいで大庭は怯えていたのか今日は全部頷いているだけだった。それが少し頭にきてビンタをしてしまった。

 

「あたしのこと大庭はどう思ってるのかな…………」

 

 少なくとも嫌われているとは思わない。だって嫌いな奴を助けてくれないと思う。いくら友達が少ないあたしでもそれぐらいはわかる。

 

 林間学校の時は最初は喧嘩しちゃったけど大庭はあたしが川に落ちると自分も飛び込んで助けてくれた。

 

 そして気がついたら川辺に二人して流れ着いていた。よく思えばよく無事だったと思う。下手をすれば死んでいたかもしれない。

 

 いつも頼りない奴だと思っていたのに。

 

 その時からだ。少しだけ大庭のことを見直したのは。

 

 普段はおどおどしていて引きこもりのくせにいざと言う時は男らしく見えるから困る。

 

「美竹さんと二人なら別にいいかな…………」

 

 不意にあの日の夜の言葉が頭を過ぎる。あの時はお互いの顔も見えなかったのに絶対にあたしの顔は真っ赤になっていただろう。

 

 考えれば考えるほど大庭のことが頭から離れなくなっていた。

 

 もう、今日は寝よう。これ以上考えると自分がおかしくなってしまう。

 

 急いでベッドに潜って目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「眠い…………」

 

 いつもより釣り上がった目尻をこすりながら何とか学校についた。モカたちがやけに心配してたけど何って返したか覚えていない。

 

 教室の扉がやけに重たい気がする。力の入らない指先で開くとそこにはあたしをこんなことにした張本人が呑気にスマホをいじっていた。

 

「あ、おはよう美竹さん…………どうしたの?」

 

 どうしたの?じゃない。のほほんとしたいつも通りのアホづらだ。

 

「なんでもない…………」

 

 せっかく久しぶりに大庭が学校に来たのに机に突っ伏してしまった。

 

「本当にどうしたの、もしかして具合悪い?」

 

「うぅん…………」

 

 これ以上関わるなと言う声を出して拒絶する。そしたらやっと諦めたのかスマホに視線を落としてしまった。

 

 何、もしかしてあたしはスマホ以下なの。もうちょっと粘ってくれてもいいじゃん。

 

「ん、んん!!」

 

 少しだけ声を出してみる。チラリと視線を向けるとイヤホンをして完璧に聴いていなかった。

 

「ばか…………」

 

 どうせ聞こえていないのにそんなことを呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み。いつも通り屋上でみんなでお昼ご飯を食べていたがあたしの箸は全くと言っていいほど進んでなかった。

 

「蘭〜どうかしたの?」

 

「…………」

 

「おやおや、これは本格的にまずいですなぁ」

 

 むにゅっとモカが頬を突いてくるがいつもなら鬱陶しく感じるのだがそれすらも今は気にならなかった。

 

「これは結構重症だな」

 

「ま、まあまあみんなそんな心配しなくても」

 

 ガヤガヤとみんなが憶測でどうしたのか色々と話していた。それにしても何故こんなに退屈に感じるのだろう。いや、別にモカたちと一緒にいるのが退屈というわけではない。

 

 むしろこうして昼休みしか集まれないのだからもっと色々と話していたい。

 

 今頃、大庭は教室で一人でお弁当を食べているのだろうか。最近はあいつと一緒にいたから少しでも離れると何をしているのかが気になってしょうがない。

 

 別に、大庭が誰と一緒に食べていようがあたしには関係ないが。それでもクラスメイトの誰かが一緒に食べているのを想像すると少しだけ嫌だ。

 

 自分でも何故だかはわからないが。

 

 それよりも問題なのが今日はあれからまだ一回も大庭と話していないということだ。別に喧嘩をしているとかじゃなくて、ただ昨日まではどうやって大庭に話しかけていたのかが自分でもわからない。

 

 大庭も大庭で休憩時間になるとずっとゲームばっかやってるし。毎回それとなくサインを送っているが鈍感なのか全く気付いていない。

 

「はぁ…………」

 

 結局半分もお弁当を残してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午後はなんの授業だったか。予鈴がなって急いで屋上から戻ってくると、まだ戻ってきていないのか大庭がいなかった。

 

 それから数分後急いで来たのかだいぶ息が上がっている大庭が帰ってきた。

 

「はぁ…………はぁ、疲れた」

 

「どこ行ってたの?」

 

「ん、ああ、美竹さん。これよかったら」

 

 そう言ってブラックコーヒーを渡してきた。

 

「…………これどうしたの?」

 

「いや、たまたま当たりがでてね。それで美竹さんによかったらと思って…………この前ブラックコーヒーも好きって言ってたから」

 

「そう、ありがとう」

 

「気にしなくていいよ…………美竹さんにはだいぶお世話になったから」

 

 プシュッとタブを開けるとゴクゴクコーラを飲み込んでいた。

 

 あたしがブラック好きなこと覚えてくれたんだ。確か洞窟の中でポツリと言っただけなのだが覚えてくれていた。それがやけに嬉しかった。

 

「それと美竹さん」

 

「何?」

 

「よかったら連絡先交換しない?」

 

「…………は?」

 

 大庭が何をとち狂ったのか、いきなり連絡先を交換しようと言ってきた。

 

「べ、別にいいけど…………」

 

 たった二言だけど、それだけなのにやけに声が震えていた気がする。

 

「ほっ、よかった…………昨日美竹さんが帰った後、母さんがやっと新しいスマホ買ってきてくれたから」

 

 確かに昨日あたしといたときはまだスマホを持っていなかった。今朝からやけにスマホをいじっていたのはそれが原因だったのか。

 

「…………これもらう条件が美竹さんの連絡先を聞いて来いだったから断られなくてよかった」

 

「ふ、ふん。別にあたしは交換しなくていいけど」

 

「そ、そんな。お願いします」

 

「ま、まあ。そこまで言うなら別にいいけど」

 

 連絡帳を開くとそこに登録されて連絡先はお母さんたちとモカたちしかいなかった。我ながら本当に友達がいないと思う。ひまりとかリサさんなら三桁ぐらいは登録しているのかもしれない。

 

 滅多に登録なんかしないから二人して、しどろもどろになんとか登録が終わる。

 

 あ行に大庭と書かれているのがなんだか無性に恥ずかしくなってきた。

 

 そのとき本鈴がなって先生が入ってきた。

 

 大人しく席に着き授業を聞く。だけど内容が全く頭に入ってこない。昼休みはむしゃくしゃしてたけど、今はさっきまでとは違う気がした。

 

 机の下でスマホを開くとさっき登録したばかりの大庭の欄を開く。

 

 なんだろう。少しだけ口角が上がっている気がする。チラリと隣を見てみると大庭も授業を聞いていないのか机の下でゲームをしていた。

 

 本当に男子ってそんなにゲームばっかりするのだろうか。確かにたまにやると面白いがよくそんなにずっとできるなと思う。

 

 た、試しに何か送ってみようかな。チャットの欄を開くと、何を送ろうか迷っている。そもそもあたしは自分から連絡をするタイプじゃない。どちらかというと連絡をもらうことが多い。

 

 返事が来てもろくに返さないから、よくひまりにちゃんと返してと怒られる。別に既読がついているからわざわざ返さなくてもいいと思う。

 

 どうしようか迷った挙句、よくわからないキャラクターが怒っているスタンプを送った。

 

 そしたらチラリとこちらを見てきた。

 

 すると何かのゲームのキャラクタだろうか、ニコニコしているスタンプが返ってきた。そこからはお互いにスタンプを送り合っていた。

 

 気がつくとあたしと大庭の目の前にスタンプよりも明らかにニコニコしている先生がいた。

 

「あなたたち、授業中にイチャつくのは禁止よ」

 

 そう言って二人のスマホを没収して教卓に戻って行った。

 

 そのとき大庭が婦長と叫びながら泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。職員室にスマホを返してもらいに行った。

 

 ここに入るのはやけに緊張する。大庭の背中に隠れながら先生のところに行くと、次からは気をつけなさいと軽く言われただけですんだ。

 

 今日はみんなそれぞれ用事があるからこれからどうしようか。大庭は泣きながらスマホを抱きしめてよかったと言い続けてるし。ぶっちゃけキモイ。

 

 そのとき廊下に夕日が差し込んで来た。一瞬眩しかったがすぐになれた。

 

「…………美竹さん。よかったら一緒に帰らない?」

 

「えっ!?」

 

「い、いや、用事があるなら別に無理にとは…………」

 

「…………いいよ」

 

「え」

 

「…………だから、一緒に帰ってもいい」

 

 今が夕方でよかった。じゃなければきっと顔が赤くなっているのがバレていた。

 

 校門には帰宅部の生徒がたくさんいて混雑していた。

 

 これじゃあ靴を取りに行くのも一苦労だ。人混みをかき分けて自分の下駄箱にたどり着き靴を履き替えてるとドンと前からぶつけられた。

 

 グラッと姿勢を崩して尻餅をつくと思ったがいつまで経っても衝撃がこない。

 

 恐る恐る視界を開くと後ろから、大庭に抱きしめられていた。

 

「…………よかった。怪我はない」

 

「う、うん…………あ、ありがとう」

 

「別に大丈夫だよ。右手はまだギブスだけど美竹さんを支えることぐらいはできるから」

 

「う、うん…………」

 

 なんで今日、一日中モヤモヤしてたのかやっとわかった。

 

 

 

 

(そっか、あたし大庭のこと…………好きになったんだ)

 

 

 

 

 この日一人の少女は恋に落ちた。

 

 




大庭椿
退院した男子高校生
退院する日の夜やっとスマホが帰ってきたがもらう条件として美竹さんの連絡先を聞いて来いと言われて頭を抱えた
水没したゲームを一から始めようと一人で夜に少ない石でガチャを引いたら婦長が出てひとり夜に駆けたらしい






美竹蘭
恋をした女子高校生
なんであんな陰キャで引きこもりのオタクのことを好きになったのかが最近の悩みらしい
でも夜に大庭のことを考えると何故か眠れなくなるらしい
そのせいで最近は寝不足が続いているのだとか







婦長
清潔!!消毒!!殺菌!!
この時期に密でいる集団を見つけると問答無用で消毒液の風呂に叩き込まれるらしい
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