ジャーンと音が部屋に響き渡った。
「どうどう、椿ちゃん」
「…………うん。すごくカッコよかった」
「えへへ、そうでしょそうでしょ」
どことは言わないがすごい迫力で胸を張った上原さんから視線を逸らした。
聞いた演奏に美竹さんが歌っていたらもっとカッコよかったと思う。
今どこにいるのだろうか。もう、家に帰ったのかな。
その時ポコンと頭を叩かれる。
「どうしたんだよ、そんな死んだ顔して」
「う、宇田川さん」
「まあまあ、ともちん。椿ちゃんは今は蘭にお熱だからそっとしておいてあげてよ〜」
「え、そうなのか。だったら最初からそう言ってくれればよかったのに」
バシバシと背中を叩いてくる。
いまだに少しだけ宇田川さんのことは怖いけど、誰よりも頼りになってすごく安心する。
「えぇ!!椿ちゃん、蘭のこと好きなの!?」
「い、いや、好きとかじゃなくて…………ただの友達だよ」
「そこのところどうなのモカ」
「ひーちゃん、本当にこの手の話大好きだよね」
「それはそうだよ。いい、わたしたちは花の女子高校生なんだよ。この一瞬一瞬が青春なんだよ!!それに何より今まで恋愛なんかに興味なさそうだった蘭が一番乗りになるかもしれないことにテンションが上がらないわけないでしょ!!」
「う、うん。わかったから少し落ち着こうか」
あまりの形相にあの青葉さんが少しだけ引いている。
「それで、それで椿ちゃんは蘭に告白しないの?」
「こ、告白…………」
僕が美竹さんに告白。
…………ダメダメ、僕なんかに告白されるなんて美竹さんに失礼になるだけだ。
でも、もしかしたら本当に1%の確率でも成功したら嬉しいな。
「椿ちゃん、その表情で好きじゃないって言っても説得力ないよ」
「え!?」
「ほら」
いつの間に撮ったのかスマホに映し出されている僕の表情はすごく気持ち悪かった。
口元がニヤニヤして、目元がいやらしい。
「ふふん、蘭のこと好きなんでしょ」
「え、えっと…………」
ずいっと四人に囲まれる。
それと同時に首を縦に振った。
翌朝。
昨日は完璧に寝付けなかった。
あれからもう少しだけ練習を見て帰った。でもその内容はほとんどが覚えていない。
それからはゲームをしても、音楽を聞いても美竹さんのことが頭から離れなかった。
なんなんだこの感情。今まで僕は自分で気づかないフリをしていただけなのか。
そして布団にくるまっても悶々として全く寝付けなかった。
気がついたらチュンチュンと外で鳥が鳴いていた。
ボーッとして働かない頭でようやく学校に到着した。
ガタンと自分のせきに腰を下ろすと、ポカポカとした陽気に包まれる。その暖かさに少しだけ眠気が襲ってきた。
「おはよう、大庭」
その声を聞いた瞬間。眠気が一瞬で眠気が吹っ飛んだ。その代わりにドキドキと心臓がすごい勢いで音を始めた。
「…………大庭?もしかして寝てる?」
「お、おお、おはよう…………み、美竹さん」
「う、うん。おはよう。どうしたの大庭そんなに震えて」
「今日は少しだけ寒くないかな」
「今日の気温30°行くらしいよ」
「そ、そっか。全く暑さを感じないからわからなかったよ」
「それにしては汗すごいけど」
「え」
美竹さんに言われて拭ってみるとすごい汗だった。
「大庭さっきから少しおかしいよ…………もしかして風邪?暑さ感じないとか言ってるし。ちょっと見せて」
「み、美竹さん。待って…………」
明らかに様子が怪しかったのか美竹さんがこっちに近づいてきた。
最近はよく見てなかったけど、美竹さんはカッコよくもありとても可愛い。
それこそ、僕の主観だが学校の中で一番可愛いかもしれない。
意識すればするほど汗が出てきて心臓が痛いぐらい脈を打っていた。
「いや!!」
ピタッと美竹さんの綺麗な指先が頬に触れた瞬間にパシンと弾いて教室から逃げ出した。
そしてそのまま隣のクラスにいる四人のところに逃げ込んだ。
「それでここまで逃げてきたと」
「う、うん」
ヨシヨシと羽沢さんにいい子いい子されながらさっき起こった出来事が脳裏によぎった。
その瞬間顔が熱くなるのがわかる。
「キャ〜、真っ赤になって可愛い!!」
パシャパシャと上原さんに写真を取られているが今はそれを止める気力すらなかった。
「そこまで行ったなら堂々としてればいいじゃないか」
「椿ちゃんより巴ちゃんの方がよっぽど男らしいよね」
「あはは、そうかな」
「これは本格的に重症ですな。椿ちゃん今日放課後時間ある?」
「う、うん。放課後は特に何もないけど」
「了解〜、だったら放課後またこっちに来てね〜」
「わかった」
「それと、お迎えきてるよ」
「え」
青葉さんが入り口の方を見てみるとパキポキと指と首を鳴らしている美竹さんがいた。
「帰りたくない」
自然とその言葉が出てきた瞬間にホームルーム開始のチャイムが学校に鳴り響いた。それが死刑宣告の音に聞こえたのは気のせいじゃないだろうか。
「…………何話てたの?」
「い、いやそんな特には」
「でも、すごく楽しそうだったじゃん」
「そんなことないよ」
「じゃあ、なんであたしから逃げてモカ達の方に行ったの」
美竹さんが可愛すぎて逃げ出した。なんて口がさけても言えなかった。
「そ、それは」
「うん」
「…………なんでもない」
「…………あっそ。じゃあもういい」
完璧に怒ってしまったのかそっぽを向いてしまった。
そこからはこっちから声をかけても完璧に無視され続けた。
昼が終わり、放課後になった。
美竹さんは何も言わずにすぐに帰ってしまった。
終わった。完全に嫌われてしまった。今頃連絡先は消されているかもしれない。
「お〜い、やっぱりここにいた。ずっと来ないから…………ってあれどしたの〜」
「…………青葉さん」
「大丈夫〜?」
「もう無理、辛い」
「ありゃりゃ、これはこっぴどくやられましたな」
「どうしよう、美竹さんに嫌われたら、もう生きていけない」
「うわ、めんどくさ。椿ちゃんって案外メンヘラ気質だったんだ。とりあえずほら行くよ」
完璧に死んでいる僕の腕を掴んで引きずられるように連れて行かれた。
引きずられるように連れてこられてきた場所は昨日のライブハウスだった。
「こんにちは〜まりなさん」
「あ、モカちゃんどうしたの?」
「今から、入れますか」
「う〜んちょっと待って…………うん今から一時間なら大丈夫だよ」
「じゃあお願いします」
「了解〜、そっちの子も一緒に入るの?」
「はい、二人でお願いします〜」
「うん、入れとくね。これ鍵ね」
「ありがとうございます〜。ほら行くよ」
ずるずると連れて行かれると、昨日ぶりのスタジオに入った。
「はいこれ」
「え」
青葉さんにギターを渡される。
「えっと」
「昨日蘭に聞いたよ。椿ちゃんバンド好きなんだってね」
「う、うん。音楽とゲームぐらいしか趣味はないけど」
「じゃあ、弾いてみたくない?」
「…………弾きたい」
「OK〜、このモカちゃんがミッチリと鍛えてあげましょう」
「お、お願いします」
「まずは〜」
そこからは青葉さんにみっしりと基礎を叩きこまれた。
「指痛い」
ヒリヒリとする指先を撫でながら労る。
「はいこれ、ハンドクリーム」
どこぞの猫型ロボットのように鞄から取り出したハンドクリームをくれた。それを手に塗りたぐると少しは楽になった。
「それにしても飲み込み早いね。モカちゃんびっくり」
「そ、そうかな」
「うん、初めてにしては中々よかったよ〜。このまま続ければうまくなるかもね」
やけに褒めてくれる、青葉さんに悪い気はしなかった。
家に帰ってからもパソコンでギターの初心者セットを色々と調べてみる。
今までは誰も教えてくれる人がいなかったから聞く専門だったけど、今だったら青葉さんたちに教えてもらえるから挑戦してみようかな。
…………それにいつか僕がギターを弾けるようになったら美竹さんと一緒にセッションとかできるのかもしれない。
そう考えたらやけにやる気が出てきた。気がついたら一番安い初心者セットをポチり買いをしていた。
大庭椿
恋心に気づいた男子高校生
今までは意識していなかったが四人に詰め寄られる形でようやく自分の気持ちに自覚した
美竹さんに嫌われていないかが最近の悩みらしい…………乙女か
美竹蘭
怒っている女子高生
せっかく自分が心配しているのに肝心の大庭が逃げ出してどこに行ったかと思えば四人と一緒にいたことにやけに腹が立ったらしい
最近は大庭が四人と一緒にいるとやけに心配らしい
特に接触があった日には夜に滅多に送らないRINEを自分から送って何を話していたか聞いてるらしい
初心者セット
中学生の時に買いがち
作者も弾けたらかっこいいからと中学の頃に買ったが結局一人では何もわからず今では物置で埃をかぶっている
ギターでもなんでも楽器を弾ける人はめっちゃかっこいい