やっとめんどくさい授業も終わりぼっちにとって至福の時間である放課後になった。そんな放課後僕は教室よりも数倍うるさい場所にいた。
通い慣れた足取りで自動ドアを潜ると目的のゲームのところまで早足で移動する。いつもの定位置の席に座ると財布から取り出した小銭を投入した。
もちろん一緒にやる友達はいないので一人でオンラインプレイだ。
今は良い時代になったものだ。昔だったら僕みたいなやつは大人しくCPUと対戦するしかなかったのに最近のゲームは僕みたいなぼっちにも優しい親切設計になっている。
このゲームは僕がやっているソーシャルゲームのアーケード版だ。そしてこのゲームはとんでもなくリアルマネーがかかってくる。キャラの召喚に一回100円もする。
バイトもしてない僕みたいな貧乏学生には痛い出費だ。でも運がいいことに僕の1番のお気に入りのバニー師匠が当たってくれたのがせめてもの救いか。
誰とも話すことなく一人で黙々とプレイする。家に帰ってもやることがないからここで時間を潰していく。
クレジットも尽きて小銭もなくなったからお札を両替しようと席を立ち振り返ると同時に腰を抜かした。
「み、美竹さん…………」
そこに仁王立ちでいたのは最近少しずつ話すようになった美竹さんだった。
美竹さんは何を言うわけでもなくただそこに突っ立ていた。
もしかして僕がゲームをやっているときにずっと後ろにいたのだろうか。
「大庭…………」
「は、はい…………」
やっと重い口を開いた。
「えっと……………………そのキャラが好きなの」
「えっ⁉︎」
その、と言うのはなんだろうか。ゆっくりと後ろを振り返るとバニー師匠が腕を組み胸を強調しているホーム画面だった。…………死にたい。同級生の女の子にこんな姿を見られるなんて。
「そ、その…………これは」
「まあ…………男子がこう言うキャラクター好きなのは知ってるから」
不良だと思っていた美竹さんが優しい。だけどその優しさが今は僕のメンタルを抉ってくる。
それにしてもなんで美竹さんはこんな場所にいるのだろうか。やっぱりこの時代でも不良=ゲームセンターなのだろうか。昔からガラが悪い人はここを溜まり場にするイメージはあるけど。
「え、えっと…………美竹さんはどうしてここに?」
「別にあたしがどこにいようと勝手でしょ……」
「ご、ごめんなさい」
「別に怒ってないから」
き、気まずい。美竹さんも僕も同じコミュ障だから会話が続かない。とりあえずいまはこの場から一刻も早く逃げ出したかった。
「それじゃあ……僕は行くよ」
「もう帰るの?」
「う、うん」
「そっか……せっかくだから一緒に回りたかったんだけど」
…………………………どういうことだ。美竹さんは別に至って普通に言い切った。落ち着け僕。特に深い意味なんかない。でもここで美竹さんに逆らえば明日彼女の仲間たちに呼び出されて屋上行きになるかもしれない。
それともすでに入り口らへんで待ち伏せしていて、美竹さんの後ろから様子を見ているのかもしれない。そして美竹さんを不快にさせたら直ちに僕のことを拉致をして近くの空き地に連れていかれるかもしれない。
考えれば考えるほど嫌な予感が頭に過ぎる。
「帰るならいいや……また明日ね」
「み、美竹さん………やっぱり一緒に遊んで行きませんか?」
「い、いいけど。急にどうしたの」
「べ、別に深い意味は…………」
ここで逆らったら何をされるかわからないというのは絶対に口が滑っても言えない。
「まあなんでもいいけど。じゃあどれからやる?」
そこからは美竹さんと一緒にいろいろ回った。
これでもゲームセンターのゲームはほとんど制覇していると思っていた僕だったが、美竹さんも慣れた手つきで次々とゾンビにヘッドショットを決めている。
備え付けの銃を構えている姿がやけに様になっている。…………もしかしなくても実家がそういう系統でホンモノの扱いに慣れているのかもしれない。
商店街を抜けた先に和風の大きな家があるがあそこは絶対にそういう家だ。…………まあ、美竹さんの家がそこと決まったわけじゃないが。
「ふう…………久しぶりにヤルとなかなか気持ちいね」
「そ、そうですか。それにしてもうまいですね」
「そう?これでも自信あった方だけど…………大庭もうまいと思うよ」
「あ、ありがとうございます」
基本的に僕と美竹さん会話は、僕が美竹さんに質問をしてそれを美竹さんが答えて終わりだ。
普通の高校生の会話というものが僕にはわからないからこれが普通なのかわからない。
次に向かったのはリズムゲームがたくさん置いてあるコーナーだ。
「これでいい?」
美竹さんが指名したのは太鼓のリズムゲームだ。これが音ゲーというものを世間に大きく認知させることになったゲームの一つだ。
「いいですよ」
百円玉を二枚入れて二人プレイモードを選択する。誰かと一緒にプレイすることなんかなかったから初めて二人プレイモードの画面を見た。曲は美竹さんが勝手に決めていた。
それは昔からあるロック調の曲だ。曲そのものが激しいから譜面が結構難しい。バンドや譜面とかはよくわからない僕だがこの曲が難易度が高いことだけはわかる。
もちろん僕は一番難しい難易度を選択する。曲が始まると同時に腕を振るった。
中学生の頃はこのゲームをやり込んでいたから少し叩けば勘も取り戻してきた。
なんとか曲が終わると少し汗をかいていた。あまり汗をかくのは好きではないが今日は心地よくてなんだか不思議な感じだ。
「大庭うますぎ…………」
そう言ってくる美竹さんだがフルコンボはできてないがそれでも十分うまいスコアを叩き出していた。
「そ、それほどでも」
「もしかしたら巴といい勝負かもね」
「巴?」
「うん。あたしの友達」
美竹さんの友達。それだけで嫌な予感がするのは僕の想いすぎだろうか。そう言えば隣のクラスに身長が高い女子生徒がいたが、その人と美竹さんが一緒にいるところを少し前に見た気がする。
「あ、あはは。僕なんてまだまだですよ」
「そんなことない思うけど…………今度、巴にも言っておく」
それは遠回しな僕の死刑宣告ではなかろうか。それを考えると背筋が凍ってきた。
美竹さんは遊び疲れてベンチに座っている。アイスの自販機で二人分のアイスを買ってきて美竹さんに渡す。
「ありがと……」
「いえ」
会話もなく二人でスマホをいじって時間を潰していた。そんな僕たちが喧嘩中のカップルにでも見えたのかやけにテンションの高い店員さんが声をかけてきた。
「おやおやおや、喧嘩中かなカップルさん」
「「えっ⁉︎」」
いきなりだったから僕も美竹さんも全く同じ反応をする。
「そんな喧嘩中の二人に仲直りの大チャンス〜!!いまなら今日入荷したばかり新しいプリクラが始動テストでタダで使えちゃいます〜!!」
「あ、えっとっ……」
僕たちの返事も聞かずに僕がこのゲームセンターで近づいたことがなかったプリクナのコーナーに連れていかれた。そのまま見るからに新品なプリクラの中に美竹さんと一緒に押し込まれた。
「ど、どうしよう………今から説明すれば」
「うん…………大庭早く説明してきて」
「えっ⁉︎それは無理だよ…………美竹さんが話してきてよ」
「あたしだって無理だし………………」
「「……………………」」
コミュ障あるある。店員さんに声をかけられない。これは食券のない飲食店がいい例だ。そしてこの場にはコミュ障が二人。ならば答えは必然的に出るだろう。
「はあ……」
美竹さんがため息をつくとタッチパネルを操作し始める。
「美竹さんやり方わかるの?」
「友達にプリクラ好きな子がいるから…………見てないで大庭も手伝ってよ」
「は、はい」
美竹さんに睨みつけられながら二人して不器用な手つきで操作していく。
するといきなりスピーカーから大きな声がした。
『モードを選択してね☆』
「これどっち?」
美竹さんが指を場所に映し出されたのは”女の子同士”と”カップルモード”の二つだった。
どうしよう僕は女の子じゃないし美竹さんとはカップルでもない。二人してしどろもどろしていると機会が急かしてくる。
『早く選んでね☆3・2・1』
もたもたしていたら勝手に女の子モードになってしまった。
「女の子…………ふっ」
美竹さんがこちらを見て笑っている。初めて美竹さんが笑っているところを見たけれどとても可愛い。
結局そのまま二人して指定されたポーズは取れなくてピースだけするというなんとも証明写真風なプリクラになってしまった。
そして二人して逃げ帰るようにゲームセンターを後にした。
大庭椿
ゲームセンターのゲームは大体極めている
結局美竹さんがなぜゲームセンターにいたのかはわからなかった
美竹さんとのプリクラは部屋のキーボードの裏に封印したらしい
美竹蘭
今日はみんな用事で自分一人だけ暇だったので、久しぶりにゲームセンターに行った
その見た目通り大庭はゲームがうまいと感じていた
大庭とのプリクラは捨てようか悩んだが少し可愛そうなので押し入れの一番奥深くにしまった
巴
噂によるととても身長が高く、声が大きいらしい
そして美竹さんと一緒にいると威圧感が凄まじいことになるとか
ゲームの腕は妹に全て持っていかれたが太鼓のリズムゲームだけはうまいらしい
プリクラ好きの友達
とても甘いものが好きそうな気がする
一体何原さんなんだ………?
お○ぱいバニー師匠
大庭が一番ハマっているゲームで1番の推しキャラ
ちなみに中の人もこの人が一番好き(誰も聞いていない)