青緑の本。それは大妖精さんが書いた小説だ。内容はエロ、グロ、猟奇、暴力、宗教など色々と多くの過激表現を含む大妖精さんとチルノの恋愛小説となっている。
全て1巻完結になっているが、1つ1つの本には必ず回収されない伏線があり他の本を読む事でわかる様になっている。青緑の本はそう呼ばれてるだけでタイトルはない。各章ごとのサブタイトルもない。ページ表記はある。
今から10秒、キリンの事を考えないでください。前に丁字路があります、どちらに曲がりますか。頭に「の」と書いてください。
などの文章を見た時、それを思い浮かべたり無意識を探ったり頭に作用するものがある。この本を見て気分が悪くなると言うのは文章を理解する事で頭に特殊な刺激を与える様になっているらしい。
歌で言うならバックワードマスキング、映像作品におけるサブミナル効果の様なほんにゃらほにゃららを利用して、恋愛について理解がないと特にコアビリーフを揺るがし脳の処理に負荷をほんにゃらほにゃららして、脳が人格へのダメージから守るためにほんにゃらほにゃららして思い出せなくするらしい。
確かそんな感じの事を言っていた。
ただでさえ凄まじい内容の青緑の本は、大妖精さんのチルノへの偏愛が本に篭りある一種の魔法の様相をなしている。それが原因でこの本を読む事で飛ばされる特殊な空間が生まれ読者を本の内容の世界に飛ばす。
精神力が強いか、恋愛経験があるか、過激表現に耐性があるなどあれば問題なく読める。表現はとにかく、大筋は割と普通の恋愛本との事らしい。
以上がパチュリーさんが解説だった。
「というのが、ここ数日で調べた青緑の本のあらましよ」
言い終えたころ、パチュリーさんが吐血した。短時間に喋られる文字数を超えたためダメージを負ったようだ。バツ印のついたマスクを着用したようだ。
「ところで大妖精さん、物語で自然に説明すべき所を一か所に集めて数百文字書く事ってどう思います?」
「悪手だと思う」
「更に、今後その説明が活きてくる場面がない場合は…」
「説明しないままにしておいた方がいいと思う」
「ありがとうございました」
様々な経由で大妖精さんの部屋からなくなっていく青緑の本。まさかパチュリーさんの元にまで行き渡っているとは。当の大妖精さんは飽くまで作る事が目的なため部屋から何冊なくなっても、誰に読まれても、どんな風に論評されても特に気にしてない様子だった。
にとりさんは今の話を聞いて、大妖精さんの小説を販売することをあきらめた様だ。
しかし、一体どんな内容なんだろう…。
「ううん…。しかし、せっかくなら一度は読んでみたい気がします」
「球磨、お前はあの鴉天狗の事が好きなんじゃなかったのか?」
「私もそう思ってたんですが…。手っ取り早く恋ってできないですかね」
射命丸さんと付き合ったりしていないからなのか、あるいは私があの人に抱く気持ちが恋ではないのか。私にもそこのところははっきりしない。そういえば、チルノはこの本を読む事ができるんだった。恋を知ってるかもしれないし、恋するコツというのを後から聞いてみてもいいかもしれない。
それからは咲夜さんもメイドとして復帰したので、私達も帰る事になった。大妖精さんは誰彼構わず見せていいというものでもないのか、と少し落ち込んでいた。チルノはすでに読んでる人の事を離したりして元気づけている。
私は割とたんまりある給料袋にご機嫌だ。射命丸さんはまるで最初から怪我などなかったようにツヤツヤとしていた。彼女は紅魔館を出た後、私たちに手短に挨拶をしてすぐに妖怪の山に帰って行った。この感じ、さては何かネタを掴んだな。
「それで、何か有益な情報は得たか?」
「現時点ではまだです。しかし、糸口なら」
私は旧地獄の温泉のパンフレットを渡した。
「ここへ調査に行くのか…。私からは何もしてやれそうにないぞ」
「はい。レミリアさんに少し聞きました。色々と複雑…なんですよね。大丈夫です。仕事終わりに少しずつ調査を進めます」
「いや、お前は引き続き調査を優先してくれ。私1人でこなすにはそこはかとなく仕事があるが、お前がいるんじゃ割と暇になる。ただし、仕事としていくんだ。怠けたりしたら減給だからな」
「わかりました。必ず期待に沿える様に努力します」
それから、ふと何かを思い出した様に霊夢さんは神社に帰って行った。にとりさんも途中で別れた。無茶をしないように念を押されて。
そして私たちはチルノの家の方角に向かう。私は新しい家を買った事などを話した。チルノが射命丸さんに送っていた写メの事などを話したりして笑いあったけど、結局どこでなにをしていたのかまでは教えてもらえなかった。
「そういえば質問なんだけど、どうすれば恋ってできるの?」
私はチルノと大妖精さんに聞いた。2人は一度見合わせた後に少し考え込む。
「良く分からない。そもそも私は誰かに恋したっけ」
チルノは身に覚えがない様子だった。そんな曖昧なものなんだろうか。
「まあ、球磨さん。恋なんて言うのは探している時は見つからないのに、探すのをやめると途端に向こうから現れるもんだよ」
「そういうもんなんですか…」
そういえば私という存在も両親の恋愛の産物なんだな。
私を産んだ両親を馬鹿にしていた私が恋をしてみたいなどと思うだなんて、人生と言うものは奇怪、奇ッ怪、奇々怪界の摩訶不思議。こうして生命は紡がれていくんですねぇ。
やがて家が見えてくると、大妖精さんと別れて一緒にチルノの家に帰る。
「思えばそのうちここへは帰れなくなるのかぁ…」
「自宅ができれば帰るではなく出かけるになるからね。でも、ここへ来たくなったらいつでもくればいいよ」
「ありがとう、チルノ」
家に入ると、チルノはすぐにベッドに入って寝た。帰る途中もうつろうつろしていた時もあったし今日は疲れたのかもしれない。私は明日に向けて準備がある。カッパコインを入れて電気を供給した。この幻想郷で多くの妖怪は弾幕勝負として勝負を挑んでくれるが、下級も下級、意思疎通ができないレベルになると普通に襲われたりしかねない。
それに、妖怪でなくともただの野生の動物も脅威だ。なので私は武器を作っている。できる事ならこれは使わないでやり過ごしたいものだ。
動作確認を終えると、私も電気を消して寝た。
翌日、私は早く起きた。チルノはまだ寝ている。小さめのショルダーバッグを持つと私は早速旧地獄へ向かった。立ち寄って学ぶ事はきっと多いはず。道中は肌寒い。
チルノ達みたいに空を飛べたなら良かったのになぁ、なんて思う。しばらく歩いていると霊夢さんが目の前に降りてきた。
「ああ、おはようございます。朝は冷えますね」
「ええ、おはよう。昨日の話だと行先は旧地獄なんだって?」
「はい。なんでも最近ホットな場所なんだとか。是非とも販売戦略のヒントを見つけたいものです」
「販売戦略ね…。私も儲け話の1つでも欲しいものだわ」
私はこの販売戦略で成功したら、そのお金で開発費を稼いでもっと色んなものを作ったりしたい。そのためのお金が欲しいだけ。しかし、もし霊夢さんが大金を手にしたら何をするんだろう。今の生活にそれほど不満を持ってるようにも見えないが…。
旧地獄までの道は楽だった。妖精や妖怪には基本的に避けられ、悪戯しようものならお札1つでポンだ。私の持ってきた武器も使わずじまいで済みそうだ。
そんな風に思っていた矢先、温泉街で鬼の1体が暴れている。人が襲われようとしているのを確認すると、霊夢さんはすぐに飛び出して鬼に先制攻撃を仕掛ける。周囲の安全のため、人間たちを安全な場所に誘導している係が見える。
しかし、騒ぎに便乗して興奮気味の妖精も暴れだしている。力不足ではあるものの、人間よりはわずかに戦える。私は先に妖精を倒す事にした。私は眼鏡を取ってそれを握りしめて割る。割れた眼鏡のレンズが光になって銃へと形を変えた。