ストーリー オブ ザ 球磨   作:ヤングコーン

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旧都で暴れ出した鬼と戦う霊夢さん。近隣の人間は係員の指示に従い避難を開始。しかし、騒ぎに便乗した妖精も暴れ出しました。
妖精と奮闘した甲斐もあって何とか避難は済んで、ようやく自分も避難しようとすると霊夢に向けて発射されたはずの流れ弾がこちらに飛んで来て…。


12話 エレベーター・アクション

まずは銃弾の装填からだ。私はこちらに向かってきた妖精の足元を一度握って離した。左手に現れるマガジンと妖精の放つ弾が6発入っている。それを銃にセットしてスライドを引いた。1,2,3…。1発ずつ狙って撃つ。

 

妖精の弾で妖精を倒せるものの、弾速がいまいちだ。私の力がもっと強かったなら速度ぐらいなんとかなりそうなものだが弾速は弾その物の力に依存している。撃ち落とした妖精を抱きかかえて弾を補充、マガジンを捨てて新しいマガジンに入れ替える。

 

複数の妖精が接近、腕に抱えた妖精の力を奪って武器の先に切れ味を鈍くした斧を取り付け仕る。敵妖精の弾幕を避けられそうにないので、腕に抱えていた妖精をぶん投げて変わり身にし、そして接近して一体の頭を叩く。

 

死角からの弾に当たった。強い衝撃を受けて地面に転がる。痛みに耐えながら他に迫る弾に弾をぶつけて相殺させた。

 

避難が進んでいる。霊夢さんと鬼との戦いは既に霊夢さんの方に形勢が傾いていた。彼女であればこのあたりの妖精も脅威にはならないはず。私は応戦しながら避難区域に下がっていく。

 

この先のエレベーターにのって地下に行けば…。次のエレベーターは人がいっぱいで私が入る隙間はない。次が行って帰ってくるまで私が持てばいいが…。弾は尽きた。倒れている妖精でも近くにいればよかったのに。

 

暴走している妖精の2体がこちらへ突き進んでくる。放たれた弾が数か所あたってしまった。それでも武器を握りしめたままだった事は自分で自分を褒めたい。とにかく倒れた妖精から銃弾を補充しないと。

 

鬼の放った弾の1つが飛んでくる。手持ちの弾もない、逃げられる弾速じゃない、被弾は必至だった。

 

「今日は厄日だなぁ」

 

思わず愚痴を言うと、誰かが私の前に立って弾を放ち相殺させた。

 

「避難活動の協力ありがとうございます。助かりました。ささ、こちらへ」

 

見れば私よりもかなり幼い印象を受ける少女だ。胸のあたりに赤い球体がふよふよと浮いている。彼女は私の手を引っ張る。

 

妖精がまた立ちはだかった。少女は1体を掴んでこちらに弾を撃つつもりで構えている妖精に向けてぶん投げ、もう1体を飛び蹴りで落とし、くるりと振り返っては広範囲に弾幕をばらまいて妖精を複数撃破した。只者じゃない。

 

エレベーターが開いた。私たちは乗り込む。

 

ようやく安全な場所へ行ける。私はほっとした。

 

「…全く、鬼達の粗野さと来たら目に余ります。私達がイメージアップに努めてもこれじゃ意味ないじゃないですか」

 

少女は小声でぶつぶつと言っていた。

 

「あの、助けていただいてありがとうございます。とてもお強いんですね」

 

「いえ、あなたこそ観光客の避難活動を手伝っていただきありがとうございます」

 

…ガコン!!

 

エレベーター内が一瞬揺れて、光が点滅する。それから動かなくなった。少女はボタンを押して何かをしたり、誰かと話している。

 

「う…、大丈夫です。すぐに復旧します」

 

「は、はい。あの…何者なんですか?」

 

彼女はポケットから名刺を出して私に渡した。光が点滅しててわかりづらいが、地霊殿の主と書いてある。ここいらの温泉の責任者ともあるようで…。名前は古明地さとりさんというらしい。

 

「私は球磨と言います」

 

それから、エレベーター内でやる事もないので軽く自己紹介したりした。彼女が言うことが本当なら、これは色々と聞き出すチャンスなのかもしれない。

 

「強かなんですね。こんな状況をビジネスチャンスだと思うなんて」

 

「え、ええ!?」

 

まるで心を読んだようだった。

 

「まるで、ではなく事実読めます。ほう、カッパの店を手伝ってるんですか。ふむ」

 

おおお…、これは…これはとんでもないな妖怪と2人きりになってしまった。心が読まれるのではどんなに体裁を取り繕った言葉も意味がない。とても苦手なタイプだ。困った。

 

当のさとりさんはクスクスと笑い出した。

 

 

 

 

あれからどのぐらい時間が経っただろう。時間を図る物を持っていないため、時間がわからない。長いようにも短いようにも感じられた。体感は1時間といったところだろうか。

 

さとりさんはあまり体調が優れないらしく寝ている。

 

「球磨さんも横になってはいかがです?掃除はしっかりしてあるので今しばらく横になる分には問題ないと思いますが」

 

「いえ、お構いなく…」

 

「別に私が眠ってしまったなら、私の夢を覗いても構いませんよ。私もあなたの心を勝手に覗いてますし気にしないでください」

 

「さとりさん、寝れないんじゃないですか?」

 

さとりさんが横になってからしばらく経つ。私の方から会話をやめても向こうから話題を振ってくる。初めは施設の案内や設備などの事だったが、割と最近の事など話したり聞いたりしていた。

 

このエレベーター空気が薄くなる心配はないようだが、一体どんな仕組みなんだろう。

 

「実はそうなんです。ベッドに横になっても、熟睡できないんです」

 

ため息交じりに言った。なんとなく私も横になってさとりさんの視線に合わせる。あれ、この場合はさとりさんの目を見たほうがいいのか、あのふよふよ浮いているあの目玉の方を見るべきなのか。

 

しばらくそうしていると段々私の方が眠くなってきた。

 

「ほほお、私を抱き寄せたいですか」

 

「え?」

 

「頭を撫でたい…私はあなたより年上ですよ」

 

「あの、仰る事がわかりません」

 

「今、私はあなたの心を読んでいます」

 

ううん…さとりさんが私に向かって言っている事はわからないが内心を読む妖怪から言われれと本当はそう思っているんじゃないかとも思えてくる。はたして私は本当にさとりさんを抱き寄せたり頭を撫でたいと思っているんだろうか。

 

個人的には射命丸さんに甘やかしてもらいたい。「球磨さん、ワオキツネザルの鳴き声の声真似にハマってるんですが聴きます?」とか「私の耳、見たいですか?ちょっとだけですよ…んふふ」とか耳元で囁いて欲しい。

 

「あの鴉天狗に何を求めてるんですか…」

 

「これはお見苦しい所をお見せしました」

 

そう言ってうとうとしていると、さとりさんの方から寄ってきた。肌が少し冷たい。さっきの発言といい、まさか本当はただ寒かったんじゃ…。さとりさんはただ私の目を見ている。

 

私も少し寒いと思っていたのでさとりさんと体温を共有する。

 

「球磨さん温かいですね」

 

「どうもです」

 

やがて喋る事もなくなって行って、言葉数も少なくなる。相変わらずさとりさんはこちらをじっと見つめている。一周回って眠くなくなった私もさとりさんの目を見つめ続けた。

 

引くに引けない勝負のように感じてしまってからはずっとそうしていたが、急にニコッと笑われて思わずドキッとした。また元の無表情に戻る。

 

思わず凄く可愛く感じてしまい、不用意に頭に手を伸ばしてしまった。しまった、この相手の頭を撫でるのはまずい。私は寸前のところで手を止めた。

 

「構いませんよ。私の頭…好きに撫でまわすが良いです。ただし、耐えきれず私の頭に手を伸ばして撫でた所、返ってきたのは無表情だけだったと言う事もよくあります。お手並み拝見と行きましょうか、球磨さん」

 

「球磨…参ります!!」

 

わしゃっ…。まずは手のひらを開きすぎず、指立て伏せでもするように掌底が頭につかないようにして指先を頭に立てる。さとりさんの目は微動だにしない。スッ、と指先でソフトに掻きながら手首で引く。そう、その動きはさながらワイヤーヘッドスパ。

 

そして、指の腹を意識してズン、と掌底を頭にソフトに打ち付けつつ指先で髪をかき分け割く様に!

 

「…っ!」

 

そしてまたスゥッと力を抜きながら軽く手を持ち上げる。そこから指の腹に力を込め、頭皮を揉み解すように指をうねらせる。そう、これは髪を洗う時の動作に近い。そう、頭を撫でるのではなく…頭を揉む!!

 

緩急をつけてスリスリ、グーリグリ。頭の上から下にストンと落ちるように…血液の滞りが解消され流れるのをイメージして…ワシャワシャっと、スーリスリ…。

 

脳内で刻むリズムで掻いて撫でて掻いて撫でて、指先で力を込めて圧をかけサァーッと流し。

 

「…んぅ」

 

さとりさんが眠そうに眼を瞬かせている。私はここで鼻から上がしっかり外に出るようにしつつ抱きしめ、腕を回した手で優しく後ろ頭を撫でる。そこから指圧を弱くして、髪の流れに沿って手櫛の様にして撫でる。

 

さぁ…我が腕の中でわずかな安寧の眠りに落ちるがいい!!さあ、この耳に寝息を聴かせろ…その瞼を閉じてしまうがいい!フハハハハ!!

 

コツン。さとりさんから拳骨が飛んで来た。口元を尖らせむすっとしていた。可愛い。今の聞かれてしまったけどいいや。可愛いし。

 

彼女はどうやら眠ったらしい。私も少し寝ようと思う。

 

 

…その後、エレベーターは無事に復旧した。私はあらぬ疑いをかけられる事になったが、その後元気に睡眠を取れたさとりさんから正式に「この人ロリコンです」と言われたので私はさとりさん公認のロリコンとなってしまった。

 

温泉のマッサージに頭の揉み解しサービスを検討されたり、悩みだった不眠解消とあって気に入られたようで話は聞けそうだ。霊夢さんは鬼を倒した後、私が救出されるまでの間に旧都の鬼と丁半で大勝利を収めていたらしくお酒とお金を手に入れてて上機嫌そうだった。

 

初めは調子が悪かったものの、持ち金がなくなって来たあたりから急に正確に目を言い当てるようになり、インチキを疑われたため目隠しをしたりしていた。しかし、それでも正確に目を言い当てるので面白くなかった鬼がインチキしたりするとそれさえ言い当て観客を沸かせたとか。

 

有り金をむしり取られ、しばらく酒が飲めなくなった鬼からは「あんたが鬼や!」と言われ、それに対して「ならあんたは人間ね!」と言い返していたらしい。豪胆すぎやしませんか…。

 

後日改めて向かうと、お話を聞かせてもらえるようだった。

 

 

 

 




手足とか、肩の凝りはにしても頭のマッサージとかあまり考える機会ってあまりないよね。
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