ストーリー オブ ザ 球磨   作:ヤングコーン

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レミリアさんやさとりさん、にとりさんの協力のおかげで「にとり雑貨店」は少しずつ売り上げが伸びてきた。私ん家の前には意見箱を置き、そこにあった意見を元に新しい発明品を作ったりする。
まだまだ課題も多いけれど、日々は充実してきた。
ただ1つ、私の何気ない呟きがこの生活に大きく陰りを落とした気がした。


14話 光が強ければ影もまた濃い

あれから私はにとりさんの店にアンケート票を設置したり、人間の里にでかけて売りに行ったりした。様々なコミュニケ―ションを取る事で人間の里での悩みや、どんなものが売れるのか、欲しい物は何かとか聞いたりしては書き留める。

 

それから、店の名前もまだ未定だったという事でとりあえず「にとり雑貨店」として看板を作って立てかけた。私の家の前には欲しい物などをまとめた意見箱を用意した。

 

また、にとり雑貨店には射命丸さんの文々。新聞も置いた。チルノの働きかけで姫海棠さんの新聞、花果子念報も置く事になったが射命丸さんは「売り上げの差がまるわかりって残酷ですねぇ!」と高笑いしていた。今の所それほど売れ行きに差は出ていない。

 

置いておいた意見箱にもそれなりに意見が集まっており、その中からにとりさんと相談してどれを作っていくのかとか相談した。意見箱には商品のその後について感謝の言葉や悪態など様々な意見が届いている。

 

より消費者の声が身近に聞こえるようになり、にとりさんはどんな意見に対しても前向きに向き合って制作にあたった。心なしか彼女も活き活きしている。

 

霊夢さんは私への見張りを緩めた。さすがに見張りのために毎日会うのはアレだったけれど、最近はあまり会う機会がなくてちょっと物寂しい。

 

今日はチルノがカッパコインを稼ぎにやって来ている。最近は忙しくて中々会えない日々を送っていたが、元気そうにしてて良かった。

 

私もぐったりと疲れて近くの畳の上に寝転がった。

 

「あーっ…。疲れた…」

 

「お疲れ、球磨。ちょっと無茶しすぎじゃないか、ちょっとは休め」

 

「好調な今、動けば動くほどビジネスチャンスが舞い込んで来るので何だか休みたくなくて…いつ休めばいいのか分からなくなってきました」

 

「まあそれが今だな」

 

にとりさんが笑う。寝転がる私にチルノが掛布団を持ってきてくれた。あぁ…優しい。うとうとしていると、姫海棠さんが逃げ込む様に駆け込んできた。ぜぇ、ぜぇと肩で息をしている。

 

「助けて!どっか隠れる場所を!どっか!」

 

にとりさんはポカン、としながらも大きな葛篭を指さすとその中に入って行った。少し遅れて射命丸さんがやって来る。

 

「にとりさん!!ここに姫海棠さん来ませんでした!?!」

 

「い、いや…見てないよ」

 

「ちぃ…。じゃあグルーガンないですか?あるいははんだこてと鉛フリーはんだでもいいです」

 

「あるけど…何に使うんだよ…」

 

「姫海棠さんの穴という穴を全て封鎖します」

 

「やめろよ…怖いよお前…」

 

「だってこれ見てくださいよぉ…!」

 

射命丸さんのつけた帽子…烏帽子?じゃない、えっと…そうだ頭襟とか言ったかな。頭襟の先に着いたポンポンを私達に見せてくる。美味しそうなにおいがする。

 

「これ、ポンポンじゃないんです!イカシュウマイなんですよ!姫海棠さんがいつの間にかやってたんです!許せません!!!」

 

射命丸さんは激昂しながらイカシュウマイを1つ食べた。私も気になって1つ食べる。にとりさんも何となく食べた。あ、これ美味しい。このイカシュウマイ美味しい。

 

幻想郷に海がないのにイカが生息している事を聞いて驚いた。博麗神社から人間の里に行くまでの複数の湖に生息している。淡水域なのにどうして生息できるのかまるでわからない。もしかしたらイカによく似た別の生物なんだろうか。もしかして収斂進化?(な訳ない)

 

 

やがて大きな葛篭から姫海棠さんが出てきた。

 

「そんなに怒らなくてもいいじゃん!!謝ったでしょ!!!ちゃんとポンポン返すから!!!」

 

「絶対許しません!許しませんよォォ!!」

 

射命丸さんは葛篭の中に飛び込んでいった。2人はいる分には少し狭い大きな葛篭の中で2人の鴉天狗が取っ組み合っている。にとりさんは静かに蓋を被せると、横からストレッチフィルムでぐるぐる巻きにし、持ち上げると勾配の急な坂に放り投げた。

 

手をはたきながら戻ってきたにとりさんは一息ついてお茶を飲んだ。

 

「あれで良かったんでしょうか」

 

「いいんだ」

 

 

 

 

「はたて、欲しい物はなんでも言ってごらん。私がなんでもあげよう」

 

「んー…私は文が欲しいな」

 

「ははは、こいつぅ」

 

数時間後、帰って来た射命丸さんと姫海棠さんは異常に仲良くなっていた。今はにとり雑貨店の一角でいちゃついている。にとりさんはイライラしているようだった。

 

「なぁ…、球磨。幻想郷のどっかで石油とか湧かないかな。湧いたらいいのに。そう思うよな?」

 

「香霖堂にあった石油ストーブ、何とか構造を真似て作れたはいいものの燃料を確保できず、代用の油もこれに使うのはもったいないですしねぇ」

 

そういえば森近さん、冬になると石油ストーブが点いてるらしいのだがどこから灯油を確保してきているのだろうか。それを得るルーツがある?あるいは…。

 

「違う。玄武の沢の同志に助けを求めてナパーム弾を作ってそこのそいつらに投げてやるんだ」

 

「や、やめてくださいよ物騒な…」

 

「お前だってイライラするだろう!大体、お前は射命丸が好きなんじゃなかったのか!」

 

「いえ…こうして好きな人が目の前で他に好きな人を愛している様子を見ているとむしろ興奮します」

 

「どうして私の周りは変な奴ばかりしかいないんだ!!」

 

にとりさんは半ば半狂乱で叫ぶ。私は射命丸さんから受け取ったさとりさんからのプレゼント、携帯電話で2人の写真激写する。ううん…妖怪の山の天狗か鴉天狗にこの熱愛報道のネタとして受け取ってもらえないだろうか。

 

お、射命丸さんがついにキスを始めた。連射しておこう。

 

「あ、にとりさん。幻想郷ネットワークの鴉天狗のウェブページありませんでしたっけ」

 

「ああ、あるぞ。それがどうしたんだ」

 

「そこでこの熱愛写真を投稿したらいくらかで売れませんかね」

 

「天才か?」

 

妖怪の山の新聞は射命丸さんと姫海棠さんほど幅広く情報を揃えているものはない。他の新聞はどうかというと、割と身内ネタが多いとの事。彼らの縦社会のため、何らスキャンダルがあったりすると響いたりするんだろうか。とにかく彼らの関心は常に内側に向けられている事が多い。この2人の熱愛写真はそれなりに高く売れるかもしれないのだ。

 

にとりさんは早速とネットで検索を始めると、射命丸さんと姫海棠さんが猛スピードでにとりさんを止めにかかる。

 

「お願いです、マジでやめてください!」

 

「それだけは…お願いします!マジでヤバイです!!」

 

「わああ!お前らはあっちでいちゃついてろ!色情魔!」

 

私は動画を撮っている。動画は容量を撮るので後でにとりさんのパソコンを借りてデータを転送しておこう。

 

「皆スキャンダルは大好きなんです。私たちは皆のお茶の間の娯楽のためにプライバシーを剥奪されてしまいます!」

 

「パパラッチを意識しなきゃいけない生活なんで嫌だぁぁ!!」

 

「やかましい!お前らが普段人にやってる事だろ!」

 

ううん…手ブレが気になる。もっと安定した姿勢で撮るべきか…。撮影時のわずかな手ブレは動画で見るときにはかなり気になるレベルになっている事が多い。これは携帯電話用の三脚を作るべきか、いいカメラを取り寄せるべきか…。私はその場で代用できそうな段ボールを複数重ねてその現場を動画撮影し、作業に戻る。

 

「どこ触ってるんだ!ええい!貴様ら折檻じゃ!そこになおれ!!球磨!助けて!!」

 

「まあまあ、まあまあまあ…ここはビジネスライクに行きましょうよにとりさん。つまり何が望みなんです?」

 

2人の鴉天狗に言い寄られてもみくちゃになるにとりさん。助けろとおっしゃられましても…。ああそうか。私は携帯電話の録画を止めてポチポチといじる。

 

「お二方、データはこちらにあります。ちょっと見ててください」

 

先ほどのデータを選択して削除を選択する画面にしている。2人の視線が十分に集まった所で削除ボタンを押した。先ほどの画像データは2人の目の前で消える。ようやく安心した2人はへなへなとそのまま脱力した。にとりさんが下敷きになっている。

 

まるで取れたての魚の様に身をばたばたとよじらせて脱出するにとりさん。

 

「全く…日頃から人の醜聞を扱ってるやつがいざとなるとプライバシーとは」

 

「まあまあ、魚のを捌く板前さんも自分が解体されるのを覚悟して魚を捌いてませんし」

 

「球磨、それは詭弁だ。撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけなんだぞ」

 

その理屈で言うと、過去に詐欺まがいの事をしているにとり雑貨店は誰からか嵌められて不利益を被っても何も言えなくなるんですが…。

 

さて、私達の新しい発明品の開発を急ぐ。今度作る道具はマジックハンド2号。腕にリングをかけて指輪に特殊な手袋をすると、もう片方の手袋が手の動きに合わせて動く物。腕は曲げた状態で着用し、伸ばすとマジックハンド最大2m50㎝まで伸びて最大2㎏の物を持って運ぶことができる。

 

だが、何よりの強みは無線でこれを行える事だ。充電は1時間とちょっとで3時間は稼働できる優れもの。問題点と言えば、伸ばした状態で着用してしまうと曲げてもそれ以上戻らず、一度曲げて伸ばしても正常な動作をしない事とまだ人間の里は電気が通ってない家庭も多い事だ。まあ…にとり雑貨店にある発電機もそれほど大がかりなものじゃないのであまり電気使用率が伸びても困るのだが。

 

どっかに電気スタンドを立てみる案も考えてみたが、充電を始めると所有者がその場から動けなくなったりそもそも電気スタンドを人間の里の各所に立てるコストと見合う売り上げが出るかなどの問題がある。

 

今後の事もかねて電気スタンドは立てても良いのだが、この間私の家の近くに置いておいた電気スタンド試作機が盗られてしまった。全く使えず処分に困ってたのでむしろ有難かったが。

 

「どっかに発電所とか作れませんかねぇ…」

 

「無理言うな。大規模な発電所ぐらいになると河童も天狗も冷却の面が1つの課題になって中々前に進まないんだ。私たちが個人でどうにかできるレベルじゃないぞ」

 

「…地霊殿の灼熱地獄、熱エネルギーを利用できたらいいのに」

 

「……地熱発電…原子力発電…。もしかしすると、もしかしするか??」

 

にとりさんが呟いた。そういえば、間欠泉地下センターの件もあるし不可能ではないかもしれない。

 

ごくり。唾をのんだ。なんだ、考えてみればいい方法かもしれない。なのだけど、何か嫌な予感がする。何とかさとりさんに相談してここまで電気を引っ張ってくれば私達の悩みの種の1つである発電機の問題も何とかなるかもしれない。引っ張って来るまでは苦労しても、それからの作業は楽になる。

 

なのに何故だろう。凄く嫌な予感がする。汗が服にねばりつき、のどが渇く。この感覚はなんだ?

 

「でも…本当にいいんだろうか」

 

「にとりさん…」

 

「結論は急ぐ事はない。今日はもう店じまいだ。球磨、私にもちょっと考える時間をくれ」

 

「は、はい」

 

今日は私も家に帰った。先ほどの案もまだまだ現時点では荒唐無稽な話なのだが、それでもこの胸騒ぎは尋常ではなかった。心が警鐘を鳴らしている。果たして、この気持ちは一体…。

 

 

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