対戦が開始された。通信を切れば次にいつタケノコワッフルとマッチングするか分からないから、このまま続行するしかないとは言え私はまだレバー1つ握った事ない初心者だ。
戦闘開始直後、相手の機体は物陰に隠れる。そして通話の通知が来た。2人に許可を得ると通話をオンにする。
『対戦直後に棒立ちする奴はじめて見たよ。またプレイヤーを交代した?』
ペダルを前後に踏んだり手元のレバーを押したり引いたりして基本操作を確認する。
「宜しくお願いします」
『対戦ありがとうございました』
始まったばかりなのに?そう思っていると、上から相手の機体が落ちてきた。私は咄嗟に後方に下がる。相手の機体はトマホークで斬りつけてくる。一発あたりは早くないが、土地勘がないため背後にあるビルに気付かず背中をぶつけてしまった。
まずい、相手が追撃してくる。
『はい、討ち取ったー!』
「おおーっ!」
私はレバーを思い切り動かして殴ろうとする。リーチ差では圧倒的な差があるため殴って来るとは思っていなかった様で相手は少し戸惑いながら回避していた。とっさの判断だったが、案外と懐まで詰められて猛攻を仕掛けられるとトマホークでの素早い切り替えが難し気な様子だった。
敵機は一度下がってしっかり間合いを取るとすぐにトマホークを振り上げて攻撃を仕掛けて来る。私は右肩を突き出して勢いよくタックルを仕掛けて、相手の機体にぶつかった。
そして体勢を崩した所掴んで持ち上げた。
「このぉ!!」
そして勢いよく地面に叩きつけた。
『こんな戦い方する奴はさすがに初めて見た』
相手の機体がトマホークの片方を落としたので、それを拾って倒れたままの機体に攻撃を仕掛けた。しかし、振り下ろした手を蹴られて攻撃が阻害された。私の機体が大きくのけぞってる間に相手は体勢を整えてビームライフルを構える。
私はブーストを使って後方に下がり、直近の建物の後ろに隠れた。
「おおお、やるじゃんあいつに攻撃を食らわせられるだなんて」
レミリアさんが驚いている。
「いえ、私を初心者だと思って侮っていたため負った傷です。今後はあんなまぐれは期待できません…」
「球磨さん、相手を場所を見失えば防戦を強いられます!果敢に攻めてください!」
今のうちに武装のボタン配置などを確認する。こちらに急に姿を現した瞬間、私はバズーカを撃った。相手はビームライフルを構えたまま回避してこちらにビーム射撃をしてくる。私は回避したつもりだったが、後方で何かが爆発すると体勢を崩してしまう。
何だ、何が爆発した!?後ろにある建物の一部に何かが破損した後がある。先ほどの爆発はこれによるものらしい。
「危険です、前!」
早苗さんの声にハッと我に返った。跳んだ目の前に敵機が迫っている。両手にはトマホーク。負ける。回避のビジョンが見えない。時間がゆっくりと流れるように感じた。
前か、左か右か…。ビームソードでの対応は間に合わない。バズーカはさっき手放した。…いや、ブーストなら…。
私はイチかバチかで両手のレバーのボタンを押して、背中のブースターをつけて出力を上げた。そしてペダルを一気に踏んだ。相手のトマホークの刃先が機体に触れるより早く高速で前進し、回避に成功する。しかし着地も受け身も想定しない動きに機体は様々な各所を打ち付けられた。
『よく回避したと褒めておこうか、けど所詮はその場しのぎ!』
トマホークが地面を叩き切った。抜けなくなったのか、もう片方を振り上げてこちらに襲い掛かってくる。私のボロボロになった機体はやっとの事で起き上がった。そして近くの廃車を1つ掴んだ。相手がトマホークを振り下ろすと、私は車を盾にする。
車は真っ二つに割れ、右腕は肩の近くまで割けた。私は体の向きを右に回転させ、何も持たない左のアームで敵の機体の頭部を殴りつけた。
『し、しまった…メインカメラが。予備は確かこっちに…』
サブカメラで正面は見えな様子だった。視界が悪くなることへ恐怖はもちろんだが、その隙は大きかった。私は相手の機体を蹴って前に押し倒す。
『し、しまったそんな場合じゃない!一度下がらないと…』
ブースターを使って倒れたまま後方への移動を試みる相手。私はすかさず相手を殴りつけようとしたが、操作が上手くいかず勢い余って立ち上がり際にそのまま転んでしまう。
「うぐーっ、トドメを刺すチャンスなのに…!」
「大丈夫、落ち着いて!その肩に刺さったトマホークを!」
レミリアさんの指示に従って私はトマホークを抜いた。そうか、これは…。
「投げるんですよ、球磨さん!」
早苗さんの言う通り、私はトマホークを投げた。トマホークは宙で数回回転すると、敵機の左アームに直撃した。残念ながら、コクピットは健在だ。敵の生存を確認すると、私はすぐに建物の後ろに隠れて様子をうかがう。
相手の武装は後どのぐらいあるのか…見当もつかない。だが、相手の機体の損傷もかなり激しいはず。私は呼吸を整えた。
『往生際が悪い!!』
「そっちが!」
私は使えなくなっていらなくなった右のアームを乱暴に引きちぎって投げた。敵機は刺さったトマホークを掴んでそれを叩き落とす。そしてトマホークを捨てると、ビームライフルに装備を変えた。私も同じようにビームライフルに武器を変える。今いる所はとても広く大きい通り。ロボットが対面するにも回避の余裕がある。
お互いにここで決着をつけるつもりだったようだ。先制攻撃は私から。敵機は反応速度が速くビームを回避しながら照準を合わせる。相手はコクピットのありそうなボディを狙うかと思いきや、足元を狙ってきた。ビームには当たらなかったが、それによってできたクレーターに転倒しそうになる。
私は手汗で指が滑りながらもブースター切り替えスイッチを押してペダルを踏んで前進を続ける。私の放った次弾が道路の中央で相殺した。
しかし、その閃光で目がくらんだ一瞬の隙に放たれたビーム射撃が私の機体の腹部に直撃してしまった。前のめりに倒れる私の機体。
『勝った…!!』
勝利の確信の声。私は倒れながらも照準を合わせる。緊張で震える私の手をレミリアさんと早苗さんが握ってくれた。相手の次弾でこの戦いは終わる。それでも、私は奇跡を信じて止まなかった。
『あれ……嘘、カートリッジが…』
引き金を何度引いてもビームは発射されない。私は最後まで合わせていた照準を胸部にしっかり合わせて引き金を引いた。ビームが敵機に向かう。
通信の向こうでペダルを一生懸命に踏む音が聞こえた。敵機は棒立ちのまま動く気配はない。
『う、…動かない、ペダルが、操作を受け付けない!こんな、こんな結末…!』
悲痛な通信音声と同時に敵機の胸部に風穴が空いた。コクピットに直撃したため勝負はついた。リザルト画面が出る前に通信が切れたと画面に表示された。兎にも角にも、勝つ事ができた。
私達はハイタッチして勝利を分かち合った。
あの日の興奮は記憶に新しい。ゲーム…チルノの家にも筐体があった。遠い先の事にせよ、いつかゲームを作ってみたい。あの興奮を自ら創造したい。誰かに感動して欲しい。私はそう思った。
家電はしばらくはまだ売れない。娯楽品を作るうえでのいいヒントになるかもしれない。
「うへ、うへへ…」
「また笑ってる…。何がそんなに可笑しいんだ」
「いえ、別に。何でもないです」
にとりさんはため息をつくと、何か変な装置で変なものを作っていた。
「にとりさんは何を作ってるんですか」
「カラーボール」
「ちくわ部しっかりー!」
それはさておき、私が今作っているおもちゃ、もうちょっと安く作れない物か…。楽しく遊べるとは思うのだが、子供がお金を出して買うにはまだまだイマイチな値段だ。うむむ。
駄目だ。作りたいものがある一方でそれを作るための方法とかその他もろもろがからっきし思い浮かばない。私はおもちゃを放り出して寝転がった。私は近くに置いてあった花果子念報を見てみる。何か面白いニュースは…。
妖怪の数が増え過ぎている問題について書いてある。これにおいて人間の出生率を増やすべきか、妖怪の増え過ぎに対して妖怪側から手段を講じるべきかなどなど。
「淘汰&セッ〇ス強化月間…」
「突然何を言い出すんだお前」
「いえ、これです」
私は記事を見せた。にとりさんはしばらくそれを眺めていた。
「人口もそれとなく増えてるらしいんですけど、妖怪の増殖ほどじゃないんですよね」
「知らん。そういうのは妖怪のお偉いさんが考える事だ」
にとりさんは記事を放り出して言った。私は少し前の文々。新聞を取り出す。
「こっちには月の民の移住計画に書いてあります。既に工作員が幻想郷に交じっているとか、永遠亭が視察団の手引きをしてるとか色んな噂もあります」
「うちは手引きなんてしてない」
そう言いながら鈴仙さんが現れた。そういえば、在庫が切れたから品を注文してたんだった。彼女は段ボールをおろして私の持ってる新聞を読む。そしてため息をついて置いた。それから次号を探して一部の訂正とお詫びのコラムを見せてきた。
そこには誤解を与える記述と一部誤りがあったため訂正とお詫びを申し上げますという事が書いてある。永遠亭と月の民の関与を否定する内容だった。
「大きく誤報して小さく訂正。誤解は解けないまま、こっちは迷惑してるよ。『メディアはあらゆる権力を監視しています』とか言うけど報道局を監視する機関が、ファクトチェックが必要よ」
鈴仙さんはとても怒ってるようだった。花果子念報も拾って見ている。
「月のお偉方と師匠が、関係改善に向けて落し所を探ってるのは確か。でも懐柔はされてない。こちらの要求もあちらの要求も互いにとても飲めないものだから。だから私達だって幻想郷の一員として医療の支えになる様に努力してるでしょ」
逆に、幻想郷の人間の生命線となっている事を快く思わない一部の界隈もあるようだ。事実、今すぐ彼らが月の民側についた場合、医療の支援が全面的にストップされたら場合は混乱を極めるはずだ。彼らの教育により人間の里の医療知識のレベルは少しずつ上がっているとは思うが…。射命丸さんはその事についてあまり期待はできないと言っていた。
また、元は病気などの原因を妖怪や神様の怒りなどとして信仰心によっての治療を試みる動きが昔の風習として残っている事もあり結果的のその信仰心が神様に力を与えて治療に成功した事例が複数ある事から脱医学薬学を唱え信仰心を強めるべきとの主張もあるようだった。
「全く、古株からすれば何百年住もうといつまで経っても余所様なんだわ。それに力を入れて調査するんだったら月の民の工作員とかそういうのを調べればいいのに」
「じ、実在するんですか?」
「確かな証拠はないけど、いると思って間違いないしもっと警戒した方がいい。幻想郷が月の民にとっての非常時の移住先の1つとして幻想郷が上がっていた事実をもっと幻想郷の民は深刻に受け取るべき」
「何とか受け入れられればいいんですけど…」
「月の民にとって幻想郷の民がどう見えてて、どんな文化を築いているのかとかその辺を勉強した方がいいと思う。…とはいえ、この新聞がやった事みたいに偏った知識が広がるんじゃ私達へ反感が高まるだけだし…」
鈴仙さんは考え込むと深くため息をついた。かなり苦労しているようだ。私は奥からお茶を持って来て彼女に出すとお礼をいって近くに腰を掛けて飲む。私は袖をまくった。
「肩、揉みましょうか?」
鈴仙さんは時計を確認してからうなずいた。
「じゃあ、ちょっとだけお願い」
そう言いながら上着を脱いだ。私はワイシャツの上からグッグッと揉み解す。
「ああ…。さとりさんから聞いた事があったけど、あなた本当にマッサージ上手いんだね」
「資格とかはないですけど、こうやると母が喜んでたので。良かったら横になってください。背中に足までやりますよ」
「…じゃあ、言葉に甘えて」
背中はこのぐらいの力加減で…、足はここをこう曲げて、このあたりをこうグリグリッと。もう片方の足もこうして…。そうしていると電話が鳴った。電話に出ないなと思ってると、鈴仙さんはすっかり寝てしまってるようだった。
にとりさんが代わりに電話に出た。
「永琳か。にとりだ。お前ん所のウサギは今しがた寝てるようだ。…うん、そうかわかった。じゃ」
「なんて言ってました?」
「後1時間は起こさないでやってくれだそうだ」
「分かりました」
肩、腕、手、指…私は順番に揉み解す。起きる頃には少しは体が楽になっていると良いのだが…。
それにしても、妖怪の数の増加や人間の里の出生率や月の民の移住計画と工作員。悩む事は多くても個人にできる事は少ないものだなと思う。これから私がこの問題を受けて何かできる事ってあるんだろうか。ぼんやりと考えていた。
すみません、ちょっと頭が回らなくてややこしい所とか誤字脱字の見逃しあるかもです。前書きは最近本当に思い浮かばないです。